高齢者の肺炎|家族と本人のためのやさしい解説
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
肺炎(はいえん)とは、肺の中に細菌やウイルスなどが入り込み、肺が炎症を起こす病気です。炎症によって肺に分泌物がたまると、酸素を取り込みにくくなり、せきや発熱、息苦しさなどの症状があらわれます。高齢者は体力や免疫力が低下していることが多く、重症化しやすいため、早めの気づきと対応が大切です。
重要な事実
- 高齢者は肺炎の症状がわかりにくいことがあります。発熱やせきがなくても、元気がない、食欲がない、ぼんやりしているなどの変化がサインになる場合があります。
- 肺炎は、食べ物や唾液が気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」が原因で起こることもあります。
- 早く発見して適切な治療を受ければ、多くの高齢者は回復します。
- 予防のために、日ごろの健康管理とワクチン接種がすすめられています。
肺炎は、日本では高齢者に多い病気です。特に65歳以上の方では、かかる頻度が高くなり、重症化しやすいため、注意が必要です。
主に65歳以上の方、特に心臓や肺の持病がある方、糖尿病の方、体力が低下している方、寝たきり傾向のある方に多く見られます。また、お口のケアが十分でない方や、食べる・飲み込む力が弱くなった方もかかりやすくなります。
症状
- 呼吸が止まっている、止まりそうなほど苦しそう
- 唇や爪の色が青い、紫色になっている
- 呼びかけに反応しない、意識がもうろうとしている
- 息をすることができず、汗を大量にかいている
- このような場合は、すぐに119番に電話して救急車を呼んでください。
- ⚠高熱が続いている
- ⚠息苦しさが強くなっている
- ⚠せきがひどくて眠れない、食事がとれない
- ⚠水分がほとんどとれない
- ⚠顔色が悪く、ぐったりしている
- ⚠このような場合は、当日中に医療機関を受診してください。
一般的な症状
- たんが出る
- 息苦しさ
- 胸の痛み
- 全身のだるさ
子供の症状
- 子どもでは、せきや発熱に加えて、呼吸が速くなる、肩で呼吸をする、ぐったりするなどの症状が見られます。
- 息を吸うときにのどのあたりがへこむ、唇や顔色が青い場合は緊急です。
高齢者の症状
- 高齢者では、発熱やせきがはっきりしないこともあります。
- 元気がない、食欲が落ちる、ぼんやりする、声に力がなくなる、などの変化が見られることがあります。
- 「何だかおかしい」という家族の感覚も大切なサインです。
- せきが出ず、たんがのどにからんでゼーゼーすることもあります。
原因
主な原因
- 細菌(きん)やウイルスが肺に入って感染を起こすこと
- 食べ物や唾液(だえき)、胃液などが誤って気管や肺に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」による肺炎
- 免疫力が下がっているときに、のどや口の中の細菌が肺に流れ込むこと
リスク要因
- 加齢による体力・免疫力の低下
- 心臓病、肺の病気、糖尿病などの持病がある
- 寝たきりや活動量の低下
- 低栄養や食欲低下
- せきや飲み込む力の低下
- お口の清掃が不十分で、口の中に細菌が多い
- 誤嚥(ごえん)を起こしやすい状態
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさが急に強くなった
- 高熱が続いている
- 意識がぼんやりする、呼びかけに反応が鈍い
- せきやたんがひどく、食事や水分がとれない
- 顔色が悪い、唇が紫っぽい
定期受診を予約すべき場合:
- せきやたん、微熱が数日続く
- 食欲がなく、元気がない
- 「いつもと何か違う」と感じる変化がある
診断
診断は、医師が問診(症状や経過を聞くこと)と聴診器で肺の音を聴くことから始めます。そのうえで、必要に応じて検査を行い、肺炎かどうか、どのような原因かを調べます。
行われる可能性のある検査
- 胸部X線(レントゲン)検査:肺に影がないかを確認します。
- 血液検査:炎症の程度や全身の状態を調べます。
- たんの検査:原因となっている菌を調べます。
- パルスオキシメーター:指に挟む機械で、血液中の酸素の量を調べます。
診察で予想されること
おおまかな検査は痛みを伴わないものが多く、短時間で終わることがほとんどです。結果がわかるまでに数日かかることもあります。医師の説明をよく聞き、安心して検査に臨んでください。
治療
肺炎の治療は、原因となる細菌やウイルスへの対処と、からだの回復を助けることが中心です。高齢者では、脱水や低栄養を防ぎながら、症状をやわらげ、体力の回復をはかります。症状の重さに応じて、自宅で治療する場合と、入院して治療する場合があります。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとる(ただし、持病の関係で水分制限がある人は医師の指示に従う)
- 食事は無理のない範囲で、消化のよいものを少しずつ食べる
- 十分な休息と睡眠をとる
- 部屋を適度な湿度に保つ
- 禁煙する
- せきやたんの状態を観察し、悪化があればすぐに医師に伝える
医療治療
細菌が原因の肺炎では、抗生物質を使って治療します。どの薬を選ぶか、どのように使うかは、医師が年齢や症状、持病などを考えて決めます。ウイルスが原因の場合は、からだの回復を支えながら症状を和らげる治療が中心になります。酸素が足りない場合は酸素吸入、食事や水分がとれない場合は点滴などが行われることもあります。症状が重い場合は、入院して治療を受けます。
手術が検討される場合
通常、肺炎そのものに対して手術を行うことはありません。肺に膿がたまるなど、特別な合併症がある場合にのみ、医師が手術が必要かどうか説明します。
この病気と共に生きる
肺炎から回復するまでには、時間がかかることがあります。熱が下がった後も、体力が戻るまでは無理をせず、少しずつ日常生活に戻りましょう。無理に動こうとせず、日中はソファで過ごすなど、休養を優先してください。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける
- 手洗い・うがいを習慣にする
- 歯磨きや入れ歯のお手入れなど、お口の中をきれいに保つ
- 加湿器や濡れタオルで部屋の湿度を調整する
- 人混みや感染症がはやっている時期の外出をさける
- 毎日の体調観察を習慣にし、変化に気づいたら早めに対応する
食事と運動
回復期は、たんぱく質やビタミンを含む食事を意識しましょう。肉や魚、卵、豆腐などを無理のない範囲で取り入れてください。運動は、医師と相談しながら、散歩や軽い体操などから始め、体力に合わせて続けることが大切です。
精神的健康と心の健康
肺炎をきっかけに体力が落ち、気分が沈んだり不安を感じたりすることもあります。無理に気持ちを強く持たなくて大丈夫です。主治医や家族、介護者に気持ちを伝え、必要なときは相談しましょう。
予防
肺炎は、多くの場合予防が可能です。日ごろから免疫力を高める生活を送り、必要に応じてワクチン接種を受けることで、かかるリスクや重症化するリスクを減らせます。
ワクチン
日本では、高齢者を対象にした肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンが、厚生労働省の指針に沿って推奨されています。接種の時期や回数については、かかりつけ医に相談しましょう。
検診プログラム
高齢者の肺炎を早期に見つけるには、健康診断やかかりつけ医での定期チェックが役立ちます。症状がなくても、不安なことがあれば相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 呼吸不全(酸素が十分に取り込めなくなる)
- 敗血症(細菌が血液中に入り、全身に重い感染を起こす)
- 胸膜炎(肺を包む膜に炎症が広がる)
- 臓器障害(心臓や腎臓など、体の重要な臓器に負担がかかる)
長期的な見通し
肺炎は、早く見つけて適切な治療を受ければ、多くの高齢者が元の生活に戻っています。治療には時間がかかることもありますが、医師や看護師、家族の支えがあれば、少しずつ回復に向かうことができます。決してあきらめず、前向きに治療に取り組みましょう。
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情報源とガイダンス
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最終更新: 2026年7月31日
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