Postural tachycardia syndrome
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
起立性調節障害(きりつせいちょうせつしょうがい)の一種で、立ち上がったときに心拍数(心臓のドキドキ)が急に速くなり、めまいやだるさを感じる病気です。正式には「体位性頻脈症候群(ポスチュラー・タキカーディア・シンドローム、略してPOTS)」といいます。自律神経(じりつしんけい)という、体の機能を自動で調整する神経のバランスが乱れることで起こります。
重要な事実
- 立ち上がると心拍数が1分間に30回以上増えることが特徴です。
- 命に関わることはほとんどありませんが、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
- 適切な治療と生活の工夫で症状が改善することが多いです。
あまり珍しい病気ではありません。特に若い女性に多く見られますが、子どもや中高年でも起こることがあります。正確な患者数ははっきりしていませんが、100人に1人程度とも言われています。
10代から30代の女性に最も多く見られます。また、思春期の子どもや、妊娠・出産後、大きな手術の後、ウイルス感染症の後に発症することもあります。男性でも起こることがあります。
症状
- 意識を失って倒れた場合(失神)
- 胸の強い痛みや圧迫感がある
- 息が苦しくて横になっても楽にならない
- ⚠めまいや動悸がひどくて歩けない
- ⚠症状が急に悪化して、安静にしていても治まらない
- ⚠何度も失神しそうになる
一般的な症状
- 立ち上がったときや長時間立っているときに起こるめまいや立ちくらみ
- 動悸(どうき)――心臓がドキドキする感じ
- 疲れやすく、体がだるい
- 頭がぼーっとする、集中できない(ブレインフォグ)
- 吐き気やおなかの不調
- 冷たい手足や、異常な発汗(はっけん)
- 立っていると気分が悪くなり、横になると楽になる
子供の症状
- 朝なかなか起きられない(起立性調節障害の一種とされる)
- 学校で立ちくらみがして保健室に行くことが多い
- 体育の時間に気分が悪くなる
- だるさや頭痛を訴える
高齢者の症状
- めまいやふらつきによる転倒(ころぶこと)のリスクが高まる
- 立ち上がるのがおっくうになる
- 疲労感が強く、活動量が減る
- 薬の副作用と間違われることがある
原因
主な原因
- 自律神経(じりつしんけい)の調節がうまくいかなくなることで起こります。立ち上がると重力で血液が下半身にたまりやすくなりますが、通常は自律神経が働いて心拍数を上げて血液を脳に送ります。POTSではこの反応が過剰になり、心拍数だけが異常に上がります。
- 原因は完全にはわかっていませんが、ウイルス感染(例:新型コロナウイルス感染症の後)、大きなケガや手術、妊娠・出産、強いストレスなどがきっかけになることがあります。
リスク要因
- 家族に同じような症状を持つ人がいる
- 線維筋痛症(せんいきんつうしょう)や慢性疲労症候群(まんせいひろうしょうこうぐん)などの持病がある
- 関節が柔らかすぎる(関節過可動性(かんせつかかどうせい))
- 長期間の寝たきりや安静状態
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 初めて気絶(失神)した
- 症状が急に悪化して日常生活が送れない
- 胸痛や息切れがある
定期受診を予約すべき場合:
- 立ちくらみや動悸が続く
- だるさや疲れで学校や仕事に支障が出ている
- 症状に気づいてから数週間以上経つのに良くならない
診断
医師が問診(しつもん)をして症状の特徴を聞き、心拍数や血圧の変化を調べます。他の病気(心臓病や貧血など)がないかを確認しながら診断を進めます。
行われる可能性のある検査
- 起立試験(きりつしけん):横になってから立ち上がり、心拍数と血圧の変化を測ります。POTSでは心拍数が1分間に30以上増えます。
- ホルター心電図:24時間心電図を記録し、不整脈がないか調べます。
- 血液検査:貧血や甲状腺(こうじょうせん)の異常がないかを確認します。
- 自律神経機能検査:発汗や血管の反応などを評価します。
診察で予想されること
診断には時間がかかることがあります。症状を詳しく伝えるために、症状がいつ、どんなときに起こるかメモしておくと役立ちます。他の病気を除外するため、いくつかの検査を受ける場合があります。
治療
治療の中心は、生活習慣の見直しとリハビリです。必要に応じて薬を使うこともあります。症状に合わせて医師と一緒に治療計画を立てます。
自宅でのセルフケア
- 水分を十分に取る(1日2リットル程度を目安に)
- 塩分を適度に多く取る(医師の指示がある場合)
- 弾性ストッキング(だんせいストッキング)を着用して足の血液のたまりを防ぐ
- 急に立ち上がらず、ゆっくり動作をする
- 長時間立っているときは足を動かすか、片足ずつ交互に体重をかける
- 寝るときは上半身を少し高くする
医療治療
薬物療法としては、心拍数を落ち着かせる薬や、血管を収縮させて血圧を上げる薬などが使われることがあります。ただし、どの薬も医師の処方が必要です。自分で判断して薬を使わないでください。また、運動療法(たいいく療法)として、椅子やベッドでできる筋力トレーニングから始め、徐々に立ち姿勢での運動に慣らしていくリハビリが有効です。
手術が検討される場合
この病気に対して手術が行われることは通常ありません。
この病気と共に生きる
日常生活では、症状を悪化させる状況を避けながら、できることを増やしていくことが大切です。疲れをためすぎず、自分のペースで活動しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい睡眠を心がける
- カフェインの取りすぎに注意する(症状が悪化することがある)
- アルコールは控えめにする
- 暑い場所や混雑した場所は避ける
- ストレスをためないようにする
食事と運動
食事は、バランスよく、塩分を適度に含むものを選びます(ただし高血圧の人は医師に相談)。運動は横になった状態から始め、徐々に強度を上げるプログラムが推奨されます。水泳や水中ウォーキングなど、熱がこもりにくい運動も良いとされています。
精神的健康と心の健康
慢性的な症状は気分の落ち込みや不安を引き起こすことがあります。自分の状態を受け入れ、無理をしすぎないことが大事です。必要なら心理カウンセリングや認知行動療法(にんちこうどうりょうほう)も役立ちます。
予防
はっきりした予防法はわかっていません。しかし、感染症にかかった後や大きなストレス後は、無理をせず体を休めることで発症リスクを減らせる可能性があります。
合併症
治療しない場合
- 生活の質が大きく低下する(学校や仕事に行けなくなる)
- 転倒によるけが
- うつ病や不安障害などの精神的な問題を併発するリスク
- 長期間の安静による筋力低下や体力低下
長期的な見通し
POTSの症状は多くの場合、時間とともに改善します。適切な治療と生活の工夫により、ほとんどの人が日常生活を送れるようになります。完全に治る人もいれば、症状が続く人もいますが、適切な管理で十分に活動的な生活を送ることが可能です。希望を持って治療に取り組みましょう。
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最終更新: 2026年7月9日
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