乾癬のセルフケアの基本——毎日の暮らしで症状をやわらげるために
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
乾癬(かんせん)は、皮膚の細胞が通常よりも速く増えすぎることで、赤い発疹(ほっしん)の上に白いかさぶたのようなフケが重なる、慢性(長く続く)の皮膚の病気です。かゆみや痛みをともない、体のどこにでも現れることがありますが、特にひじ、ひざ、頭皮、腰にできやすい傾向があります。人にうつることはありません。
重要な事実
- 乾癬は免疫(めんえき)の働きが関係していると考えられていますが、はっきりした原因はまだすべて解明されていません。
- 乾癬はうつる病気ではないので、周りの人にうつす心配はありません。
- 症状はよくなったり悪くなったりをくり返すことが多く、適切なケアと治療でコントロールできます。
- ストレスや皮膚のけが、感染症などがきっかけで症状が悪化することがあります。
- 乾癬は体の表面だけでなく、関節に炎症を起こすこともあります(乾癬性関節炎)。
乾癬は決してめずらしい病気ではありません。日本でも、100人に1人前後(約50~100万人)がいると考えられています。
乾癬は子どもからお年寄りまで、どの年齢でも発症する可能性がありますが、多くは20代から40代の成人で最初に症状が現れます。男性と女性で大きな差はないとされています。
症状
- 全身の広い範囲が突然真っ赤に腫れ、強い痛みや水ぶくれがある(紅皮症(こうひしょう)の可能性)
- 高熱や悪寒(おかん)があり、皮膚が広範囲にただれて痛む(汎発性膿疱性乾癬(はんぱつせいのうほうせいかんせん)の可能性)
- 呼吸が苦しい、めまいがする、意識がもうろうとするなど、全身状態が急激に悪化している
- ⚠乾癬の症状が急に広がり、日常生活に支障をきたすほどの痛みやかゆみがある
- ⚠関節が急にはれ上がり、熱をもって動かせない
- ⚠皮膚の赤みが急に増し、発熱がある
- ⚠皮膚のひび割れから感染して、膿(うみ)が出る、腫れる、熱を帯びる
一般的な症状
- 皮膚が赤く盛り上がり、その上に銀白色のフケのようなかさぶたが重なる(鱗屑=りんせつ)
- かゆみやヒリヒリした痛み
- 皮膚が乾燥してひび割れる、出血しやすい
- 爪が分厚くなる、へこむ、色が変わる
- 関節の痛みやはれ(乾癬性関節炎のサイン)
- 頭皮にフケがたくさんつく、かゆみがある
- 症状がよくなったり悪くなったりをくり返す
子供の症状
- 子どもでは頭皮やおしり、おむつに触れる部分に赤い発疹として現れることがあります。
- かゆみが強く、かきむしってしまうことがあります。
- 風邪などの感染症をきっかけに、小さな赤い点のような乾癬が全身に広がることもあります(滴状乾癬)。
高齢者の症状
- 皮膚が薄く乾燥しやすいため、症状が強く見えることがあります。
- ヒザやヒジ、腰など関節の動く部分にできやすく、動かすと痛むことがあります。
- 内服している他の薬(高血圧や心臓病などの薬)が乾癬に影響を与える可能性があるため、医師に相談することが大切です。
原因
主な原因
- 免疫の異常:本来はウイルスや細菌から体を守る免疫システムが、自分の皮膚を攻撃しすぎることで皮膚細胞が速く増えていると考えられています。
- 遺伝的な要素:家族に乾癬の人がいると発症しやすい傾向があります。
- 環境や体調の変化:ストレス、皮膚のけが(引っかき傷、日焼け、虫刺されなど)、のどや皮膚の感染症、冷え・乾燥する気候、飲酒、喫煙などが症状を悪化させるきっかけになります。
- 乾癬は「生活習慣が悪いからなる」とか「うつる」などの誤解がありますが、どちらも正しくありません。
リスク要因
- 家族歴(親や兄弟姉妹に乾癬の人がいる)
- 強いストレスを抱えている
- たばこを吸う
- お酒を過剰に飲む
- のどの感染症(溶連菌感染症など)にかかりやすい
- 皮膚を傷つける習慣がある(かきむしる、強いこすり方)
- 肥満や糖尿病などの代謝性の病気を抱えている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然、全身に赤い発疹が広がる、または皮膚が広範囲にただれる
- 高熱、悪寒、激しい関節痛がある
- 皮膚の症状が強い痛みや膿をともなって急に悪化している
定期受診を予約すべき場合:
- 赤い発疹やフケが数週間以上続く、または治ったり再発したりを繰り返す
- かゆみや痛みが強く、日常生活や睡眠に影響する
- 爪の変形や関節の痛み・はれがある
- 市販の保湿剤や市販薬でよくならず、皮膚の症状が広がっている
診断
乾癬の診断は、基本的に皮膚科の医師が皮膚の見た目や症状を確認し、問診(病歴)を聞くことで行われます。特別な検査が必要な場合もありますが、多くの場合は診察だけで診断できます。
行われる可能性のある検査
- 視診・触診:発疹の形、色、場所、かさぶたの様子を詳しく確認します。
- 問診:いつから症状が出たか、かゆみの程度、家族歴、服用中の薬、生活習慣について尋ねられます。
- 皮膚生検(ひふせいけん):はっきりしない場合に、皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べることがあります。
- 血液検査:関節症状がある場合や、皮膚の感染が疑われる場合に行うことがあります。
診察で予想されること
初診では、医師が症状を確認し、日常生活で気をつけることや治療の選択肢について説明してくれます。診断がついたら、軽い症状の場合は保湿剤と塗り薬から始めるのが一般的です。症状に合わせて治療は変わりますので、不安なことは何でも相談しましょう。
治療
乾癬の治療は、症状を抑えて、皮膚をきれいに保ち、再発を防ぐことを目的にします。完治は難しいかもしれませんが、多くの方が治療によって症状をうまくコントロールできています。症状の重さや部位、体の状態に合わせて、塗り薬、光線療法、飲み薬・注射薬などを組み合わせて行います。
自宅でのセルフケア
- 毎日(できれば入浴後3分以内に)保湿剤を塗って、皮膚の乾燥を防ぎましょう。香料や着色料が少ないものを選ぶと刺激が少ないです。
- 入浴はぬるめ(38~40℃)のお湯に短めにつかり、ゴシゴシこすらず、やさしく洗いましょう。
- かゆみがあるときは、爪を短く切って、叩いたり冷やしたりしてかきむしりを避けましょう。
- のどや皮膚の感染症(かぜ、扁桃炎、水虫など)は乾癬を悪化させることがあるので、早めに対処しましょう。
- ストレスをためないために、深呼吸、散歩、好きな趣味の時間など、自分に合ったリラックス方法を見つけましょう。
- 飲酒はほどほどにし、喫煙は避けましょう。
- 皮膚の擦れや傷を防ぐため、ゆったりした綿の衣類を選びましょう。
- 日焼けは症状を悪化させることがありますが、これは皮膚科の医師に相談し、適切な日光の浴び方を教えてもらいましょう。
医療治療
乾癬の治療には、ステロイドやビタミンD3などの成分を含む塗り薬、皮膚の新陳代謝を調整する光線療法(紫外線を一定量あてる治療)、および免疫の働きを調整する飲み薬や注射薬(生物学的製剤などを含む)があります。症状の範囲や重症度に応じて医師が選択します。治療には、それぞれに効果と注意点(副作用)がありますので、医師とよく話し合って決めることが大切です。特定の薬の名前や用量を自己判断で使わず、必ず医師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
乾癬そのものに対して手術が必要になることはほとんどありません。ただし、乾癬性関節炎で関節が傷み、日常生活に大きな支障がある場合には、整形外科の医師と相談して手術が検討されることがあります。これは一般的なケースではなく、個別の判断によるものです。
この病気と共に生きる
乾癬とともに暮らすには、「毎日の保湿」「かゆみを抑える工夫」「きっかけ(誘因)を避ける」の3つが基本です。症状が軽い日も悪い日もありますが、記録をつけて自分の症状のパターンを知ると、対処しやすくなります。皮膚を見せることが恥ずかしいと感じるかもしれませんが、乾癬はうつりませんし、あなたのせいで発症したわけではありません。
生活習慣のアドバイス
- 入浴後はすぐに保湿剤を塗る習慣をつけましょう。
- 睡眠を十分にとり、体のリズムを整えましょう。睡眠不足は免疫やストレスに影響します。
- 適度な運動(ウォーキングや水泳など)は血行をよくし、ストレスを減らすのに役立ちます。皮膚をこすらないように動きやすい服装を選びましょう。
- 禁煙と節酒を心がけましょう。特に喫煙は乾癬の重症化と関連があるといわれています。
- 石鹸は刺激の少ないものを使い、保湿をするなどして皮膚をいたわりましょう。
食事と運動
乾癬に特別効く「この食べ物」は決まっていませんが、バランスの良い食事は皮膚の健康と免疫機能を支えます。野菜、果物、魚、全粒穀物を積極的にとり、脂肪分の多い食べ物や砂糖の多い食品は控えめにしましょう。肥満は乾癬を悪化させることがあるため、体重が多めの方は、医師と相談しながら適度な運動と食事管理を続けることがすすめられます。
精神的健康と心の健康
乾癬は見た目の変化をともなうため、恥ずかしさ、不安、気分の落ち込みなどを感じることがあります。それは決して「弱さ」ではなく、病気の一部として自然な反応です。つらい気持ちを一人で抱え込まずに、家族や友人、医師に話してみましょう。気分の落ち込みが続いたり、日常生活に支障をきたしたりする場合は、心の専門家(心療内科や精神科)のサポートを受けることも大切です。
予防
乾癬そのものを完全に予防する方法はまだありません。しかし、発症しやすい体質の人でも、日常のセルフケアを充実させ、誘因を避けることで、症状の悪化や再発をかなり防ぐことができます。バランスの良い生活習慣は、乾癬のコントロールだけでなく、全身の健康にも役立ちます。
ワクチン
乾癬そのものを予防するワクチンはありません。ただし、乾癬の治療で免疫に影響する薬を使っている場合は、感染症にかかりやすくなることがあります。インフルエンザや肺炎などのワクチン接種について、どのタイミングで受けるとよいか、主治医に相談しましょう。
検診プログラム
乾癬の患者さんでは、関節の症状(乾癬性関節炎)や、高血圧・糖尿病・心臓病などの合併症が起こりやすいことが知られています。定期診察では、関節の痛みや腫れがないか確認しましょう。また、気になる症状があれば、我慢せずに医師に伝えることが大切です。
合併症
治療しない場合
- 皮膚の症状が広がり、かゆみや痛みが強くなって、日常生活や睡眠に支障をきたす。
- 皮膚のひび割れから細菌が入って、感染症を起こす。
- 関節に炎症が広がり、乾癬性関節炎を発症して、関節の変形や動きの制限につながる。
- 見た目が気になることで、不安やうつ状態などの精神的な影響が生じやすくなる。
- 治療せずに放置すると、全身の炎症が続き、心血管疾患(心臓病や脳卒中)などのリスクが高まる可能性が指摘されている。
長期的な見通し
乾癬は長く付き合っていく病気ですが、治療法は年々進歩しており、今は多くの人が症状をうまくコントロールして、普通の生活を送っています。セルフケアと医師の治療を続けることで、皮膚がきれいな状態を保てる可能性は十分にあります。あなたは一人ではありません。あせらずに、自分に合ったケアと治療を見つけていきましょう。
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最終更新: 2026年7月31日
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