妊娠中の息切れ
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
妊娠中に、少し動いただけでも「息が苦しい」「深く息を吸いたい」と感じることがあります。これは、赤ちゃんが育つにつれて子宮が大きくなり、肺を圧迫することや、妊娠によるホルモンの変化が呼吸を速めるために起こります。多くの場合は心配いらない正常な変化ですが、ときに別の病気が隠れていることもあるため、注意が必要なサインも知っておきましょう。
重要な事実
- 妊娠中の息切れはとても一般的で、多くは心配のないものです。
- 妊娠初期からホルモンの影響で息切れを感じることがあり、後期には子宮が肺を圧迫してより強く感じます。
- 突然の強い息切れや胸の痛み、意識を失いそうな感覚がある場合は、すぐに救急車(119番)を呼んでください。
はい、非常に一般的です。妊娠中の女性の約60~70%が、特に妊娠後期に息切れを経験すると言われています。
妊娠中のすべての方に起こり得ます。初めての妊娠かどうかは関係なく、双子や多胎妊娠、妊娠前からぜんそくや心臓の病気があった方、貧血のある方は特に息切れを感じやすい傾向があります。
症状
- 急に激しい息切れが起こり、横になっても治らない
- 胸の強い痛みや圧迫感、背中やあごへの痛みがある
- 唇や顔色が青白い、または青紫色になる
- 血を吐く、またはコップ半分以上の鮮血を伴うせきが出る
- 意識がもうろうとする、または突然ふらっとして倒れそうになる
- 息を吸うときにゼーゼーと音がする、または呼吸が止まる感覚がある
- ⚠いつもより息切れが明らかに強くなった、または悪化している
- ⚠安静にしていても息苦しさが続く
- ⚠足や手のひら、顔のむくみが急に出てきた
- ⚠ひどい頭痛や視界のぼやけを伴う息切れ
- ⚠動悸(心臓がバクバクする)が続き、息切れとともにある
一般的な症状
- 軽い運動や階段の上り下りで息切れする
- 「息を吸っても足りない」と感じ、ため息をつくように深く吸いたくなる
- 横になると息苦しく、座るか横を向くと楽になる
- 呼吸の回数がいつもより多い
原因
主な原因
- 大きくなった子宮が肺の下にある横隔膜を押し上げ、肺が十分に広がりにくくなるため
- 妊娠中に増えるプロゲステロン(黄体ホルモン)というホルモンの影響で、呼吸が速くなり、息を吸いたい感覚が強くなるため
- 血液量が増えて心臓がより働き、肺を通る空気の量も増えるため
- 貧血(赤血球に含まれるヘモグロビンが少ない状態)で、体中に酸素を運ぶ力が足りなくなるため
リスク要因
- 妊娠前からぜんそくやCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、心臓の病気がある
- たばこを吸っている、または受動喫煙がある
- 双子や三つ子などの多胎妊娠
- 妊娠前に肥満がある、または妊娠中に体重が増えすぎている
- 鉄分不足による貧血
- 妊娠中に感染症(かぜや肺炎など)にかかった
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息切れが突然始まり、数分以内に強くなる
- 安静にしていても息苦しく、横になれない
- 胸の痛み、手足の冷や汗、吐き気、めまいを伴う
- 意識が飛びそうになる、またはふらついて立っていられない
定期受診を予約すべき場合:
- 日常の動作(歩く、話す)で息が切れてつらい
- 息切れが日を追うごとに悪化している
- 妊娠中に急にむくみが増えたり、体重が急に増えたりする
- 息切れが原因で眠れない夜が続く
- 自分では正常かどうか判断できない場合
診断
かかりつけの産婦人科医または呼吸器内科医が診察を行います。まず、息切れがいつから、どんなときに強くなるのか、安静にすると楽になるかなどを詳しく聞きます。次に、血圧や脈拍、酸素飽和度(パルスオキシメーターを使う)を測定し、肺の音を聴診器で確認します。必要に応じて血液検査で貧血や甲状腺の異常を調べます。
行われる可能性のある検査
- 問診(いつから、どのような状態で息切れが出るか)
- 血圧測定
- パルスオキシメーターによる血液中の酸素濃度測定
- 聴診器で肺や心臓の音を聴く
- 血液検査(ヘモグロビン値、鉄分、炎症反応など)
- 心電図(心臓のリズムに問題がないか)
診察で予想されること
診察では、着衣をゆるめてリラックスした状態で呼吸を観察します。多くの場合、安静時の酸素濃度が正常なら心配いらないと言われます。もし異常が見つかった場合は、追加の検査が必要になることもありますが、妊娠中に安全な範囲で行います。結果はその場で説明されることが多く、安心につながります。
治療
治療は原因によって異なります。多くの場合は妊娠による正常な変化のため、特別な治療は必要なく、日常生活の工夫で症状をやわらげることができます。もし貧血や喘息、心臓の問題などが原因で息切れが起きている場合は、その病気の治療を行います。妊娠中でも安全な治療法を医師が選択しますので、自己判断せずに相談してください。
自宅でのセルフケア
- 動作は少しゆっくりと行い、息を整える休憩をこまめにとる
- 背筋を伸ばし、座るときは前かがみを避けて肺を広げる姿勢をとる(例:椅子に座り、ひじを机につけてリラックスする)
- 眠るときは左側を下にして横になり、背中の後ろにクッションを入れる
- 部屋の空気を入れ替え、風通しをよくする
- 妊娠中はきつめの下着やベルトを避け、ゆったりした服装をする
- 特に妊娠後期は、お腹を圧迫しないように横を向いて休む
医療治療
医師が妊娠中に安全な範囲で治療を行います。例えば、貧血が原因なら鉄分の補給が検討されますが、具体的な薬剤名や用量は医師があなたの状態に合わせて決めます。喘息が原因の場合は、妊娠でも使いやすい吸入薬を処方することがあります。心臓や肺に異常が見つかった場合は、産婦人科だけでなく、呼吸器内科や循環器内科の医師が連携して治療にあたります。いずれにしても、必ず医師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
妊娠中の息切れが原因で手術が行われることはほとんどありません。ただし、まれに肺血栓症や重度の心臓病などが見つかった場合、入院による治療が必要になることがあります。妊娠中であっても安全な治療法を専門医が判断します。
この病気と共に生きる
自分の体をいたわることを大切にしましょう。めまいや強い息切れを感じたときは、無理をせずその場で休んでください。家事や仕事では、一度にやる量を減らし、できるだけ座って行う、休憩を挟むなど、ペースを調整しましょう。
生活習慣のアドバイス
- たばこを吸わない、受動喫煙を避ける
- アルコールは妊娠中は控える(息切れの原因になることもあります)
- 妊娠20週以降は、仰向け(あおむけ)で長く寝ないようにする。左側を下にして寝ると心臓への負担が減ります
- 家庭内で加湿器を使い、空気が乾燥しすぎないようにする
- ストレスをためず、好きな音楽を聴くなどリラックスできる時間をつくる
食事と運動
バランスの良い食事を心がけ、特に鉄分を多く含む食材(ほうれん草、赤身の肉、レバー(妊娠中は食べ過ぎに注意)、豆類など)を適量とりましょう。ただし、サプリメントは医師の指示がある場合のみにしてください。運動は、かかりつけ医が許可していれば、ゆっくりしたウォーキングやマタニティヨガなどが有酸素運動として肺活量を保つのに役立ちます。決して無理はせず、息がはずむ程度なら進めますが、苦しいと感じたらすぐに中止してください。
精神的健康と心の健康
息切れは、不安や恐怖を感じさせることがあります。「息ができない」という感覚はストレスを呼び、ますます呼吸が苦しくなることがあります。これは決してあなたのせいではなく、妊娠中の体の変化が原因です。リラックスする深呼吸(鼻からゆっくり吸って、口から長く吐く)を練習すると、落ち着きやすくなります。自分ひとりで抱え込まず、パートナーや家族に気持ちを話しましょう。
予防
妊娠中の息切れは、体が赤ちゃんに合わせて変化するため完全には予防できません。しかし、健康状態を良好に保つことで、つらい症状をやわらげたり、ひどくなったりするのを防ぐことができます。妊娠中は定期的に健診を受け、貧血や血圧の変化を早期に発見することが大切です。
ワクチン
妊娠中はインフルエンザや新型コロナウイルスなどの呼吸器感染症にかかりやすく、重症化すると息切れが悪化することがあります。医師と相談のうえ、妊娠中に接種しても安全なワクチン(インフルエンザや新型コロナなど)を検討しましょう。接種の時期や種類については、かかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
妊婦健診では、血圧測定や尿検査、体重測定、血液検査(貧血チェック)が定期的に行われます。これらは妊娠高血圧症候群や貧血などの早期発見に役立ちます。健診の際には、気になる息切れの症状も伝えましょう。
合併症
治療しない場合
- 重症の貧血が続くと、母体が疲れやすく、赤ちゃんの発育に十分な酸素が届かないことがある
- 妊娠高血圧症候群が進行すると、胎盤の機能が低下し、赤ちゃんの成長に影響が出る可能性がある
- 肺血栓塞栓症(血の塊が肺の血管を詰まらせる)は命に関わるため、突然の息切れや胸の痛みがある場合は緊急対応が必要
- 喘息の悪化は赤ちゃんの酸素不足につながる可能性があり、早めの治療が必要
長期的な見通し
妊娠中の息切れのほとんどは、元に戻る一時的なものです。出産後は子宮が小さくなり、横隔膜が元の位置に戻るため、息切れは自然に改善します。もし原因となる病気が見つかった場合でも、妊娠中に安全な治療を適切に行えば、母子ともに健康に過ごせる可能性が高いです。かかりつけ医とよく話し合い、心配な症状があれば早めに相談すれば大丈夫です。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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