妊娠中の下肢静脈瘤(脚の血管の膨らみ)
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
妊娠中に脚の静脈(血管)が太く膨らんで、青く浮き出て見える状態を下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)といいます。妊娠によって血液の量が増え、大きくなった子宮が血管を押すことで静脈に負担がかかり、血液が逆流してたまることが原因です。多くの場合、出産後には自然に改善します。
重要な事実
- 妊娠中の女性の約3人に1人が経験するといわれています
- ほとんどは出産後数か月で目立たなくなります
- まれに血栓(けっせん)という血の塊ができることがあるため、注意が必要です
- 日ごろの姿勢や運動で症状を楽にできます
はい、とてもよくある状態です。妊娠中はホルモンの変化や血流量の増加によって、静脈瘤ができやすくなります。特に2回目以降の妊娠や、家族に静脈瘤の人がいる場合に多くみられます。
妊娠中の女性なら誰でも可能性がありますが、家族に静脈瘤の人がいる方、立ち仕事をしている方、体重が多い方、2回以上の出産経験がある方、高齢での妊娠の方に多くみられます。
症状
- 脚全体が急に赤く腫れて、激しい痛みがある場合は、すぐに119番を呼んでください
- 胸の痛みや急な息切れ、血を吐くなどがある場合は、すぐに119番を呼んでください
- 静脈瘤から出血が止まらない場合は、すぐに119番を呼んでください
- ⚠脚の片方だけが急に腫れて痛む(深部静脈血栓症の可能性があるため、当日中の受診が必要です)
- ⚠脚の皮膚が赤く熱を持っている(炎症や血栓の可能性があるため、すみやかに受診してください)
- ⚠静脈瘤の周りの皮膚に潰瘍(ただれ)ができている
一般的な症状
- 脚の血管が青紫色に膨らんで見える
- 脚がだるい・重い感じがある
- 脚がむくむ
- ふくらはぎの痛みやかゆみ
- 夜間のこむらがえり(足がつる)
子供の症状
- この記事は妊娠中の女性を対象にしています。子どもの場合、生まれつき血管の異常があると脚の血管が目立つこともありますが、妊娠が原因ではありません。気になる場合は小児科で相談してください。
高齢者の症状
- この記事は妊娠中の静脈瘤の情報です。高齢者の脚の血管の膨らみは、加齢や生活習慣、他の病気(心不全や下肢の動脈硬化など)が原因のこともあります。症状があれば医師に相談しましょう。
原因
主な原因
- 妊娠中は血液量が増えるため、静脈に負担がかかります
- 黄体ホルモン(プロゲステロン)の影響で血管の壁がゆるみ、血液がたまりやすくなります
- 子宮が大きくなると、骨盤内の静脈が圧迫され、脚からの血液が心臓に戻りにくくなります
- 遺伝的な要因や、体重増加・運動不足なども関与します
リスク要因
- 家族に静脈瘤がある
- 妊娠回数が多い
- 妊娠前から体重が多い
- 立ち仕事や長時間座っている仕事
- 年齢(高齢出産ほどリスクが大きい)
- 以前の妊娠で静脈瘤ができた
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 脚の片方だけが急に腫れて痛む(血栓が疑われます)
- 胸の痛み、息切れ、めまいがある(血栓が肺に飛んだ可能性があります)
- 静脈瘤から出血が止まらない
定期受診を予約すべき場合:
- 脚の血管が膨らんでいるのが気になる
- 脚のだるさやむくみがある
- 痛みやかゆみがあって日常生活に影響している
診断
診断は、おもに医師の診察(見た目や触り方)と、超音波(エコー)検査で行います。妊娠中でも安全に受けられる検査です。問診では、症状がいつからあるか、仕事や生活習慣なども聞かれます。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状、妊娠経過、家族歴など)
- 視診・触診(血管の膨らみや皮膚の状態を見る)
- 下肢静脈エコー(超音波で血流や逆流を調べる)
診察で予想されること
検査は外来で行われ、痛みはありません。超音波検査ではゼリーを足に塗って、棒のような機械を当てるだけなので、安心してください。結果はその場で説明されることが多く、出産までの過ごし方や、出産後の治療が必要かを一緒に相談します。
治療
妊娠中の静脈瘤は、特別な治療をしないことも多いです。まずは症状をやわらげるための生活習慣の見直しと、弾性ストッキングなどの圧迫療法から始めます。多くの場合、出産後しばらくすると症状が楽になります。
自宅でのセルフケア
- 脚を高くして休む(横になるときは足を少し高く)
- こまめに足を動かす(ふくらはぎの筋肉を動かすと血流がよくなります)
- 長時間立ちっぱなし・座りっぱなしを避ける
- 弾性ストッキングの着用を検討する(医師や助産師に相談して正しいサイズを選びましょう)
- 左側を下にして寝る(子宮が大静脈を圧迫するのを避け、血流がよくなります)
医療治療
妊娠中は使用できる薬が限られており、むくみや痛みがある場合でも、医師・薬剤師に相談してからにします。医師の指示がない限り、市販の外用薬や内服薬を使わないでください。圧迫療法(弾性ストッキング)は、妊娠中から安全に使える方法としてよく用いられます。血管をふさぐ注射やレーザーなどの治療は、通常、出産後まで待つことが多いです。
手術が検討される場合
妊娠中の手術は、出血や潰瘍など重症な合併症がある場合を除き、原則として行いません。出産後に症状が落ち着いてから、あらためて治療の必要性を検討するのが一般的です。
この病気と共に生きる
日常生活では、足を休めるときに少し高くすることを意識しましょう。むくみが強い日は、無理をせず横になって休みます。立ち仕事のときは、こまめに足踏みをするなどして血流を促してください。また、弾性ストッキングを使うときは、朝起きてすぐに履くと効果的です(医師に相談のうえ)。
生活習慣のアドバイス
- 毎日20〜30分のウォーキングを日課にする
- 足首をぐるっと回す、足の指を動かすなどの軽い運動をこまめに行う
- 同じ姿勢を1時間以上続けず、こまめに休憩する
- きつい下着や靴下で圧迫しない
- 妊娠中の体重増加は医師の指導に従い、適正な範囲に保つ
食事と運動
塩分を控えめにし、野菜や果物、食物繊維をしっかり取ることで、むくみや便秘を予防しましょう。適度な運動は血流をよくするので、ウォーキングやマタニティヨガなど、担当医に相談して安全に取り組んでください。激しい運動は避け、休憩を挟みながら行いましょう。
精神的健康と心の健康
妊娠中はホルモンの変化や体調の変化から、気分が不安定になりがちです。脚の見た目に悩むこともあるかもしれませんが、多くの方が経験する症状であり、出産後に落ち着くことがほとんどです。つらい気持ちや不安はひとりで抱え込まず、パートナーや家族、医師に話してください。もしもうつうつとした気持ちが続く、眠れないなどがあれば、専門的なサポートが必要なサインです。かかりつけ医に相談し、妊娠中でも利用できる心の支援について聞いてみましょう。日本では、厚生労働省の相談窓口や各自治体の相談支援を通じて、専門家につながることができます(詳しくはお住まいの自治体へ)。
予防
完全に予防するのは難しいですが、日ごろの姿勢や運動、体重管理によって、症状の悪化や強い痛みを予防することは可能です。特に、長時間立ったり座ったりする場合は、こまめに休憩をとり、脚の筋肉を動かすことが大切です。弾性ストッキングを予防的に使うことも有効ですが、着用については医師と相談してください。
合併症
治療しない場合
- 症状が進行すると、脚のむくみや痛みが強くなることがある
- まれに、静脈の中に血栓(血の塊)ができることがある(深部静脈血栓症)
- とてもまれに、血栓が肺に飛んで肺塞栓症を起こすことがある(命に関わるため、急な息切れや胸痛があればすぐに受診してください)
長期的な見通し
ほとんどの妊娠中の静脈瘤は、出産後3~6か月で改善します。たとえ残っても、多くの場合は症状が軽く、治療をしなくても日常生活に問題はありません。ただし、症状が続く場合は、出産後に血管専門医の診察を受けるとよいでしょう。適切なケアと健診で、多くの方が安心して妊娠期間を過ごせます。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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