痔(いぼ痔)の日常生活のヒント
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
痔とは、おしりの穴(肛門)のまわりや直腸の静脈がうっ血して、こぶのように腫れたり、痛みや出血を起こしたりする状態です。正式には「痔疾(じしつ)」と呼ばれ、いぼ痔・切れ痔・あな痔の3つの種類があります。ここでは、肛門のまわりの血管が腫れる「いぼ痔」について中心にお話しします。
重要な事実
- 痔はとてもありふれた病気で、成人の約3人に1人は経験するといわれています。
- 便秘やいきみ、長時間の座位などが主な原因になります。
- 生活習慣の見直しだけで症状がよくなることも多く、我慢せずに早めに相談することが大切です。
はい、非常に一般的です。国民病ともいわれ、日本人の3人に1人以上が痔の症状を経験したことがあるという調査もあります。恥ずかしいと感じる方も多いですが、多くの人がかかる病気です。
大人に多く、特に30〜50代の働き世代でよく見られます。妊娠・出産を経験した女性や、長時間座って仕事をする方、慢性的な便秘の方に多い傾向があります。子どもにもみられますが、大人ほど多くはありません。
症状
- 便に大量の血が混ざる、トイレが血で真っ赤になる
- 肛門から出血が止まらない
- 強い痛みで立っていられない、動けない
- 意識がもうろうとする、めまいがして倒れそうになる
- ⚠肛門のしこりが急に大きくなり、激しく痛む(血栓性外痔核の可能性)
- ⚠痔から出ているものが戻らなくなった(嵌頓の可能性)
- ⚠出血が数日続く、貧血のようなだるさ・息切れがある
- ⚠黒い便が出る(消化管出血の可能性)
一般的な症状
- 排便時に出血する(トイレットペーパーに血がつく、便に血が混じる)
- 肛門のまわりが痛い、かゆい、違和感がある
- 触るとこぶのようなしこりがある
- 排便後も「まだ便が残っている」感じがする(残便感)
- 肛門のまわりが腫れてぽっかり出てくる(脱出)
子供の症状
- 子どもでは便秘によるいきみが原因で起こることがあります。
- 少量の出血や、排便時の痛みを訴えることがあります。
- おむつかぶれや皮膚のただれと間違われることもあるため、気になる場合は小児科で相談しましょう。
高齢者の症状
- 加齢で肛門のまわりの筋肉や組織が弱くなるため、症状が出やすくなります。
- 座っている時間が長くなりがちで、血流が滞りやすくなります。
- 便秘や下痢の薬を飲んでいる場合、それらが症状に影響することもあります。
原因
主な原因
- 便秘や下痢で排便時に強くいきむこと
- 長時間座りっぱなしで、肛門のまわりに血がたまること
- 妊娠や出産でお腹の中の圧力が高まり、血管がうっ血すること
- 重いものを持ち上げるなど、お腹に力を入れる動作
- 便が硬くて肛門の粘膜を傷つけること
リスク要因
- 慢性的な便秘または下痢
- 食物繊維の不足、水分不足
- 運動不足で腸の働きが弱い
- 長時間の座位や運転業務
- 妊娠・出産
- 肥満による腹部の圧力増加
- 加齢による組織のゆるみ
- 糖尿病や内臓疾患などで血流が悪くなっている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 大量の出血がある、または出血が続く
- 激しい痛みがある
- 痔のしこりが腫れて歩くのもつらい
- 発熱がある
- 痔とは関係ないかもしれないお腹の症状(黒い便、粘血便)がある
定期受診を予約すべき場合:
- 排便時の出血や痛みが何度も続く
- 肛門のかゆみや違和感が1週間以上続く
- 痔の症状が生活に影響している
- 市販のセルフケアを試しても改善しない
診断
医師が肛門の外観・内部を直接確認して診断します。触診や視診を行い、必要に応じて肛門鏡を使って内側を観察します。問診では、症状の始まり、排便の様子、生活習慣などについて聞かれます。
行われる可能性のある検査
- 視診:肛門の外側の状態を目で確認します。
- 触診:指を肛門内に挿入して、しこりや内痔核の状態を調べます。
- 肛門鏡検査:細い筒状の器具で肛門の内側を直接見ます。
- 注腸造影や大腸内視鏡検査:便に血が混じる場合や、がんでないことを確認するために行われることがあります。
診察で予想されること
診察は数分で終わることがほとんどです。少し違和感はありますが、痛みは軽く、特別な準備は不要です。受診時には、症状がいつから始まったか、出血の有無、排便の頻度や硬さなどを伝えるとスムーズです。下着に血がつく場合は、そのまま伝えてください。
治療
痔の治療は、まず生活習慣の改善と市販の外用薬(薬局で購入できる塗り薬など)を用いる保存療法が中心です。症状が強い場合や改善しない場合は、医療機関で診断を受けて、専門的な治療(処置や手術)を検討します。何よりも「いきまない・便秘をしない・座りっぱなしを避ける」が基本です。
自宅でのセルフケア
- 水分を十分にとり、便を柔らかく保つ(1日1.5〜2リットルを目安に)
- 食物繊維を多く含む野菜・果物・海藻類を意識して食べる
- 排便時は強くいきまず、ゆっくりと便意を感じたときに行く
- トイレに長く座らない(5分以内を目安に)
- 座り仕事の合間に立ち上がって歩き、血流を促す
- ぬるめのお湯(38〜40℃)に腰までつかる、または温めたタオルで肛門を温める
- 冷えや締め付けの強い下着を避け、通気性のよい綿の下着を選ぶ
- 長時間の運転や座位は避け、クッションを使う
- アルコールや刺激物のとりすぎに注意する
- 市販の座薬や塗り薬を使う場合は、添付文書をよく読んで用法・用量を守る
医療治療
医療機関では、症状に合わせて座薬・塗り薬・内服薬などの薬物療法を行います。これらの薬には炎症を抑えたり、止血・痛みを和らげたりするものがあります(具体的な薬剤名はここでは示しません)。また、痔のタイプや症状に応じて、ゴム輪で縛る結紮療法、注射による硬化療法、レーザーや冷凍凝固療法などの「処置」が行われることがあります。これらの方法は外来や日帰りでできることが多く、入院が必要になるのは重度のケースに限られます。
手術が検討される場合
日常生活に支障をきたすほどの強い痛み・繰り返す大量出血・保存療法や処置で改善しない場合には、痔核を切除する手術が検討されます。最近は痛みが少ない手術法も増えています。最終的な適応は医師の診察をふまえて決まりますが、手術をすすめられた場合でも、不安なことは納得するまで質問しましょう。
この病気と共に生きる
痔は慢性化しやすい病気です。そのため、症状がおさまった後も、便秘や座りっぱなしを避けるなど、毎日の生活を整えることが治療と同じくらい大切です。症状が出そうな時期には、早めにセルフケアを始めて、悪化させないようにしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 排便は我慢せず、便意を感じたらすぐに行く
- お腹を冷やさず、温かくして血流をよくする
- 週に2〜3回は軽い運動(ウォーキングなど)をする
- ストレスをためないように十分な睡眠をとる
- 喫煙は血流を悪くするので控える
- 排便後はぬるま湯で洗うなど、清潔を保つ
- 肛門を強くこすらず、やわらかいトイレットペーパーを使う
食事と運動
食事は、野菜・果物・全粒穀物・海藻類など食物繊維を豊富に含む食品を意識し、朝食をきちんととって排便のリズムを整えましょう。また、水分をこまめに飲むことで便がやわらかくなります。運動は、お腹の血行をよくする軽い筋トレ(ウォーキング、ヨガ、床上の体操など)が効果的です。ただし、重いウエイトトレーニングなど、お腹に強く圧力をかける運動は逆効果になることがあるため注意しましょう。
精神的健康と心の健康
肛門の症状は人に相談しづらく、孤独や不安を感じることがあります。また、痛みや出血のために外出をためらい、生活の質が下がることもあります。そうした気持ちは自然なものです。無理に自分で抱え込まず、かかりつけ医や薬局の薬剤師、家族や友人に話すだけでも気が楽になります。必要であれば、心のサポートを受けることも検討してください。
予防
完全に防ぐことは難しいですが、便秘や下痢を予防し、排便時のいきみを減らすことで、痔の発症や悪化のリスクを大きく下げることができます。座りっぱなしを避け、定期的に歩くことも予防に役立ちます。
合併症
治療しない場合
- 痔核が肛門の外に完全に脱出し、戻らなくなる(嵌頓)
- 痔の内部に血の塊ができて激しい痛みを伴う(血栓性外痔核)
- 慢性的な出血から貧血になる
- 肛門の周囲に感染が広がり、膿瘍(のうよう)になる
- 排便がますます困難になり、便秘や腸のトラブルを悪化させる
長期的な見通し
痔は多くの場合、適切な生活習慣の改善で軽快します。医療機関での治療も効果が高く、症状をしっかりコントロールできます。恥ずかしいとか大したことはないと我慢せずに、早めに相談すれば、日常生活の質を保ったまま安定した状態を目指せます。
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健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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