過敏性腸症候群(IBS)の予防と対策
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
過敏性腸症候群(IBS)は、大腸に炎症や傷がないのに、腹痛やおなかの張り、下痢や便秘などの症状が繰り返し起こる機能性の消化管の病気です。便通のリズムの乱れや便の様子の変化を伴い、症状は数か月から長期間続くことがあります。きちんと検査しても、がんや炎症など目に見える異常がないのが特徴です。
重要な事実
- 腹痛やおなかの張り、下痢や便秘が慢性的に繰り返します
- 大腸には炎症やがんなどが見つからないことが多いです
- ストレスや食生活などの影響を強く受ける病気です
- 症状は辛いですが、命にかかわる病気ではありません
とても一般的な病気で、日本では約10人に1人が一生のうちに経験すると言われています。普段の生活に支障を感じながらも、医療機関を受診していない人も多いと考えられています。
10代から40代の若い世代に多く見られ、特に女性のほうが男性よりも受診する割合が高い傾向があります。子どもや高齢者でも起こることがありますが、典型症状は異なることもあります。
症状
- 激しい腹痛が突然始まり、我慢できないほどの痛みがある
- おなか全体が強く張って硬くなり、立っていられない
- 血液や便と一緒に大量の出血がある
- 意識がもうろうとしている、または失神しそうになる
- ⚠便に血液が混ざっている、または真っ黒な便が出る
- ⚠理由はっきりしない体重が急に減った
- ⚠安静にしていても明け方に痛みで目が覚めるか、毎晩症状が続く
- ⚠発熱とともに強い腹痛や下痢がある
- ⚠何度も嘔吐を繰り返す
一般的な症状
- おなかの痛みや不快感が便通(排便)とともに出たり治まったりする
- 下痢になったり便秘になったりを繰り返す
- おなかが張ってガスが溜まっているような感じがする
- 便に粘液がつくことがある
- 便意が急に来て我慢できない(切迫便意)
子供の症状
- 小学生から中学生ごろの子どもにも見られます
- おなかが痛いとよく言う、学校を休みたがる
- トイレに行く回数が急に増えたり、逆に便秘でトイレに行きたがらなくなったりする
- ストレスのサインとして消化器症状が出ることがあります
高齢者の症状
- 高齢者では下痢よりも便秘が目立つことが多いです
- 便が出にくいことで食欲が減り、体重が減る場合もあります
- 腹痛がはっきりせず、おなかの張りや不快感だけということもあります
原因
主な原因
- 腸の動き(ぜん動運動)が過剰あるいは不十分になる
- 腸が少しの刺激にも過敏に反応する(内臓知覚過敏)
- 脳と腸の連絡システム(脳腸相関)のバランスが乱れる
- ストレスや不安が腸の働きに強く影響する
- 腸内細菌のバランスが崩れている
リスク要因
- ストレスや不安・緊張を抱えて生活している
- 不規則な食事や早食い、過度の飲酒・喫煙
- 高脂肪・低食物繊維の食事が中心になっている
- 感染性胃腸炎(おなかの風邪)にかかった後
- 近親者に過敏性腸症候群の人がいる(遺伝的傾向あり)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 血便や黒色便が出た
- 原因不明の体重減少が続いている
- 夜中に症状で目が覚め、腹痛や下痢がひどくなる
- 発熱を伴う激しい腹痛がある
定期受診を予約すべき場合:
- 腹痛、下痢、便秘、おなかの張りなどの症状が3か月以上続いている
- 日常生活や仕事・学校に支障を感じている
- 便通の変化が繰り返し起こり、心配になっている
診断
診断は、症状の経過や体の状態を詳しくお聞きして、ほかの病気(炎症、腫瘍、潰瘍など)がないことを確かめた上で行われます。問診と腹部の診察を中心に、必要に応じて検査を行います。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状の種類、いつから、どのくらい続いているか)
- 腹部の診察(痛みや張りの場所を確認)
- 採血検査(炎症や貧血の有無を調べる)
- 便検査(肉眼や顕微鏡で細菌、血液、炎症物質などを調べる)
- 大腸内視鏡検査(直腸から大腸全体を観察し、他の病気を除外するために行うこともある)
診察で予想されること
受診すると、まず症状について質問されます。特に排便回数や便の硬さ・形の変化、腹痛との関係を聞かれます。そのうえで、必要に応じて血液検査や大腸の検査が行われます。診断までには少し時間がかかることもありますが、事前に症状の記録をつけておくと診断に役立ちます。
治療
過敏性腸症候群の治療は、まず食事や生活習慣の改善、ストレスとの付き合い方を見直すことから始まります。それでも症状が続く場合は、薬を使って症状をやわらげます。治療は患者さんと医師が協力して進めていくことが大切です。
自宅でのセルフケア
- 規則正しい時間に3食しっかり食べる
- 朝に十分な時間を確保して、ゆっくりトイレに行く
- 腹式呼吸や軽い運動でリラックスする時間を持つ
- 自分が食べると具合が悪くなる食品(刺激物、脂っこいもの、人工甘味料など)を控える
- 水分をこまめに摂りましょう(濃いコーヒーやアルコールは控えめに)
医療治療
医療機関では、おなかの痛みをしずめる薬、便通を整える薬、下痢を落ち着かせる薬などが、症状に合わせて処方されることがあります。便秘にはおなかをやわらかくする薬を、下痢には腸の動きを正常に近づける薬を使う場合もあります。また、ストレスの関与が強い場合は、抗不安薬や抗うつ薬が症状を改善することがあります。どの薬を使うかは医師が慎重に判断しますので、必ず処方どおりに服用してください。非薬物療法として、認知行動療法やマインドフルネス瞑想などの心身療法も効果があります。
手術が検討される場合
過敏性腸症候群に対しては、基本的に手術は行いません。腸の切除などの外科治療は通常は必要なく、症状の管理は内科的な方法で進められます。
この病気と共に生きる
日々の生活では、ストレスをため込まないことが何より大切です。つらい症状がある日は無理をせず、少し休むことも必要です。便通のリズムが乱れやすい人は、外出先でのトイレの場所を確認しておくなど、安心して行動できる工夫をしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 毎日同じ時間に起きて、朝日を浴びる
- 睡眠時間を十分に確保する(7~8時間を目安に)
- 適度な運動(ウォーキングやヨガなど)を習慣にする
- 深呼吸や入浴など、自分なりのリラックス方法を見つける
- 仕事や人間関係のストレスを抱え込まず、相談先を作っておく
食事と運動
食事は低脂肪・高食物繊維を心がけましょう。食物繊維は腸の動きを整えるのに役立ちますが、急にたくさん取るとおなかが張ることがあるため、少しずつ増やします。また、低フォドマップ食(発酵しやすい糖質を控えた食事)が一部の患者さんに有効ですが、必ず担当医や管理栄養士の指示のもとで試してください。運動は毎日20分ほどの軽いウォーキングがおすすめです。
精神的健康と心の健康
おなかの症状が続くと、不安や気分の落ち込みを感じることは自然です。逆に、不安やストレスは腸の症状を強くします。ストレスを完全になくすことはできませんが、趣味に没頭する、友人に話す、カウンセリングを利用するなど、気分を楽にする方法を見つけることが症状改善にもつながります。
予防
過敏性腸症候群を完全に予防する方法はまだ見つかっていません。しかし、ストレスをうまく管理し、バランスのよい食事や規則正しい生活を送ることで、症状が強く出るリスクは下げられます。おなかの感染症の後は症状が起こりやすいため、手洗いや食品の衛生に注意しましょう。
検診プログラム
過敏性腸症候群そのものを早期発見するための集団検診はありません。ただし、便通の変化や腹痛が続く場合は、ほかの病気を見つけるためにも、早めに医療機関を受診してください。日本では、健康診断の便潜血検査などで大腸がん検診が行われていますが、これは過敏性腸症候群の検査とは異なります。
合併症
治療しない場合
- 症状が続いて、仕事や学校に通えなくなるなど生活の質が低下する
- 極端な食事制限や下痢のために栄養不足になることがある
- 便秘が長く続くと、腸閉塞(腸が詰まる)や痔を合併するリスクがある
- うつ病や不安症など、こころの病気を併発することがある
長期的な見通し
過敏性腸症候群は、症状を完全に消すことは難しくても、多くは適切な管理により日常生活を快適に送れるようになります。食べ物や生活リズムの見直し、ストレス対策、そして医療機関のサポートを続ければ、症状は和らぎ、穏やかな生活を取り戻せる見込みは十分にあります。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
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