旅行中の静脈血栓を予防しよう
国際的な診療ガイドラインに基づく
概要
下肢静脈血栓症(しじょうじょうみゃくけっせんしょう)は、足の深い静脈の中に血液のかたまり(血栓)ができる病気です。「エコノミークラス症候群」とも呼ばれ、長時間、座った姿勢を続けたときに起きやすいことが知られています。血栓が肺に飛ぶと、命にかかわる肺塞栓症につながることがあるため、予防が大切です。
重要な事実
- 長時間同じ姿勢で座っていると、足の静脈に血液がたまりやすくなります。
- 飛行機や新幹線での長距離移動では、1時間ごとに立ち上がって歩くのが予防の基本です。
- 足のむくみや痛み、胸の痛みなどがあるときは、すぐに医療機関へ相談してください。
健康な人ではまれですが、長時間の移動(4時間以上)をするときにみられることが、海外の調査で報告されています。飛行機や長距離バスなど、座りっぱなしの状況で起こりうるため、注意が必要です。
誰にでも起こる可能性がありますが、60歳以上、妊娠中・産後、肥満、静脈瘤、がん治療中の人、過去に血栓症の経験がある人などは、より注意が必要です。
症状
- 突然の息切れや呼吸困難
- 胸の鋭い痛み(特に深呼吸で悪化する)
- 血を混じったせきやたん
- 気が遠くなる・意識がもうろうとする
- ⚠移動後に片足が大きくはれ、痛みが強い
- ⚠足の色が青白い、または紫っぽくなっている
- ⚠発熱や悪寒を伴う足の痛みと腫れ
一般的な症状
- 片方の足(特にふくらはぎ)がはれている
- 足に痛みや圧迫感がある
- 触ると足が熱い
- 皮膚が赤っぽく変色している
子供の症状
- 子どもではまれですが、長時間の乗り物移動後に、足の痛みやはれ、歩きにくさを訴える場合は受診を検討しましょう。
高齢者の症状
- 高齢者では症状がわかりにくいことがあります。急に息苦しくなったり、原因のはっきりしない発熱や倦怠感に加えて下肢のはれがあるときは、注意が必要です。
原因
主な原因
- 血液が流れにくくなる長時間の座位(飛行機・車・電車など)
- けが、手術、入院などで体を動かせない状態
- 妊娠や産後(ホルモンの変化と血流の停滞)
- 抗がん剤治療やホルモン療法による影響
リスク要因
- 60歳以上であること
- 肥満(体格指数BMIが30以上など)
- 静脈瘤や過去の静脈血栓の既往
- 経口避妊薬などのホルモン薬を服用中
- 糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病
- 長距離旅行(4〜6時間以上)の直前・直後
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 片足の強い痛みとはれが続き、歩くのもつらい
- 胸痛や息切れなど、肺塞栓症を疑う症状がある(救急要請を含め早急な対応が必要)
定期受診を予約すべき場合:
- 長距離旅行の前に、持病や薬の有無を医師に伝え、予防方法について相談しておきましょう。
- 過去に血栓症にかかったことがある人は、旅行計画の時点で受診することをおすすめします。
診断
医師が問診と診察を行い、必要に応じて血液検査や画像検査を組み合わせて診断します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(Dダイマーなどの血栓由来の物質を調べる)
- 静脈超音波(エコー)検査(足の血管の流れを視覚的に確認する)
- CT検査や造影検査(静脈の中の血栓の場所や広がりを詳しくみる)
診察で予想されること
診察では、症状の始まりや旅行の状況、既往歴を詳しく尋ねられます。必要なら速やかに検査が行われ、その日のうちに今後の方針が説明されます。
治療
治療の目的は、血栓が大きくなるのを防ぎ、肺に飛んで肺塞栓症を起こさないようにすることです。診断された時点から、医師の指示に基づいた治療が始まります。
自宅でのセルフケア
- 医師の許可があれば、適度に足を動かし、血流を保つ
- 足を心臓より高い位置に上げて休む
- 締め付ける衣服を避け、ゆったりした服装と靴を選ぶ
- 水分を十分にとり、アルコールや過度なカフェインは控える
医療治療
抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)を内服や注射で使うのが一般的です。薬の種類や期間は血栓の大きさ・場所・原因によって異なり、自己判断でやめたり量を変えたりせず、医師の指示に従うことが大切です。また、肺塞栓症のリスクが高い場合は、カテーテル治療や血栓の溶解治療が行われることもあります。
手術が検討される場合
多くの場合、手術ではなく薬による治療が中心です。ただし、血栓が広範囲におよぶ場合や、薬が使えない例では、静脈内の血栓を取り除く手術が検討されることがあります。
この病気と共に生きる
血栓症を経験した後は、医師の指示どおり薬を続け、定期通院を守りましょう。長時間じっとせず、日中はこまめに歩くことを心がけます。
生活習慣のアドバイス
- 座るときも足を組み替えたり、かかとを上げ下げしたりする軽い運動を
- 1〜2時間に一度は立ち上がって歩く
- 禁煙し、体重管理に努める
- 弾性ストッキングの着用を医師からすすめられた場合は、サイズを合わせて普段から使う
食事と運動
水分をこまめにとり、野菜や果物を多く含むバランスのよい食事を心がけましょう。塩分をとりすぎるとむくみやすくなります。ウォーキングなど、脚の筋肉を動かす有酸素運動を週2〜3回程度続けるのがおすすめです。
精神的健康と心の健康
血栓ができたあとは、「また起こるのでは」と不安を感じることがあるかもしれません。病気について正しく理解し、予防策を習慣にすると、安心して日常を過ごせるようになります。つらい気持ちが続くときは、医師や看護師に相談してください。
予防
大部分の旅行者は、以下の対策で血栓を予防できます。乗り物に乗っている間も、1時間に1回は立ち上がって歩き、座ったままで足首の運動やふくらはぎのストレッチを行うと効果的です。
検診プログラム
高リスクの人は、旅行前に医師に相談し、弾性ストッキングや抗凝固薬の使用の必要性を確認してもらえます。
合併症
治療しない場合
- 血栓がはがれて肺の血管に詰まる肺塞栓症(生命にかかわることがある)
- 慢性の足のむくみ・色素沈着・皮膚潰瘍などの静脈弁障害(血栓後症候群)
- 再発のリスクが高まる
長期的な見通し
適切な治療と予防策を続ければ、多くの人は日常生活に支障なく戻れます。旅行は十分に楽しめます。医療チームと相談しながら、無理のない方法を選んでいきましょう。
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必ず医師に確認してください
健康ガイドラインは国や地域によって異なります。この記事の情報は国際的な臨床ガイドラインに基づいていますが、お住まいの国の具体的なガイドライン、薬、または診療慣行を反映していない場合があります。健康上の懸念は常にご自身の医師または医療提供者と相談し、利用可能な場合は地域の国家ガイドラインを参照してください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
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情報源とガイダンス
この記事は教育目的で、利用可能な場合は認知された健康情報および臨床ガイダンスの情報源を参照して作成されています。具体的な情報源リンクはトピックによって異なる場合があります。
最終更新: 2026年7月31日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
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