ドナーリンパ球輸注(DLI)
概要
ドナーリンパ球輸注(DLI)は、造血幹細胞移植(骨髄移植・末梢血幹細胞移植・臍帯血移植などの総称です)を受けたあとに、そのときのドナー(細胞を提供してくれた方)のリンパ球を点滴で追加して入れる治療です。リンパ球は、体の中のがん細胞やウイルスに感染した細胞を見つけて攻撃する、免疫の中心になる細胞です。移植を受けた方の体では、ドナーの免疫細胞が残った病気の細胞を攻撃する力が働くことがあり、これは移植片対白血病効果と呼ばれます。DLIはこの力を強めることで、再発した白血病などを抑えることを目指します。
重要な事実
- ドナーから採ったリンパ球を、点滴で患者さんの体に入れる治療です。手術ではありません。
- 主に、造血幹細胞移植のあとに病気が再発したときや、再発の危険が高いと判断されたときに行われます。
- 効果が出るまでに数週間から数か月かかることがあり、移植片対宿主病(GVHD=ドナーの免疫細胞が患者さんの体を攻撃してしまう状態)などの副作用に注意しながら進めます。
造血幹細胞移植を受けたすべての方に行われる治療ではなく、再発時などに限って検討される専門的な治療です。移植を行う病院の中でも、経験のある施設で行われます。
症状
- 息が苦しい、呼吸が速い、唇や顔色が青白い
- 意識がもうろうとしている、けいれんが起きた
- 高熱が続き、ぐったりして反応が鈍い
- 急に全身へ広がる発疹や、のどの腫れ・息の詰まり
- 血便や大量の下痢、止まらない嘔吐で水分がとれない
- ⚠38℃以上の発熱や強い寒気
- ⚠皮膚の発疹が広がる、水ぶくれになる
- ⚠1日に何度も続く下痢や強い腹痛
- ⚠目や皮膚が黄色くなる(黄疸)
- ⚠あざができやすい、歯ぐきや鼻から血が止まりにくい
- ⚠尿の量が極端に減る、むくみが強い
一般的な症状
- 発熱(輸注のあとに起こることがあります)
- 皮膚の発疹・赤み・かゆみ
- 下痢や食欲の低下
- 倦怠感(だるさ)や疲れやすさ
- 口内炎や味覚の変化
- 血液検査での肝臓の数値の上昇
- 白血球や血小板が一時的に減り、感染症にかかりやすくなったり、出血しやすくなったりする
子供の症状
- 子どもでも大人と同じように点滴で行います。
- 感染症にかかりやすい時期があるため、手洗いや人混みを避けるなどの予防をより丁寧に行います。
- 学校生活や成長への影響が長引くこともあるため、小児科の医師と移植チームが一緒に支えます。
高齢者の症状
- 高齢の方は感染症やGVHDが重症化しやすいことがあり、体力や持病の状態を見ながら時期や量を調整します。
- 入院が長くなりやすいため、リハビリや栄養のサポートを早めに始めることが大切です。
原因
主な原因
- 造血幹細胞移植のあとに白血病などが再発したとき
- 再発の危険が高いと判断され、予防的に行うことがある
- 移植後にウイルス感染症が重くなったとき(免疫の力を借りる目的で行うことがあります)
リスク要因
- ドナーとの型の違い(HLA不一致)が大きい
- 輸注する細胞の数が多い
- 以前にGVHDがあった
- 移植からの期間が短い
- 感染症や肝臓・腎臓の状態が良くない
- 高齢であること
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 38℃以上の発熱、強い寒気
- 皮疹、下痢、黄疸など、これまでになかった症状が出た
- 出血しやすい、あざが増えた
- 水分がとれない、尿が極端に少ない
定期受診を予約すべき場合:
- 定期的な血液検査と診察の予定を守る
- 毎日の体調の変化をメモして診察時に伝える
- 薬の飲み忘れや、自己判断での中止について相談する
診断
DLIそのものを診断する検査はありません。「行うかどうか」を決めるために、再発の有無や全身の状態を調べます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(血球の数、肝臓・腎臓の働き、ウイルスの状態など)
- 骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
- キメリズム検査(血液や骨髄の中に、ドナーの細胞がどれくらいあるかを調べる検査)
- 画像検査(CT、超音波など)
- HLA検査(ドナーとの型の一致を確認する検査)
診察で予想されること
主治医から、再発の状況、DLIで期待できること、起こりうる副作用、ほかの治療の選択肢について説明があります。ドナーへの連絡や調整が必要になるため、決断までに時間がかかることがあります。納得できないときは、セカンドオピニオンを求めることもできます。
治療
DLIは、ドナーからリンパ球を採って点滴で入れる治療です。ドナーはすでに移植で細胞を提供してくれた方で、今回は別の日に、採血の機械を使ってリンパ球だけを集めます(多くのドナーは通院で行えます)。患者さんは入院して行うことが多く、輸注のあとはGVHDや感染症の兆候を注意深く観察します。効果が出るまでに数週間から数か月かかることがあります。
自宅でのセルフケア
- 毎日、体温・体重・尿の量を記録する
- 皮疹・下痢・だるさなど、体の変化をメモして診察時に伝える
- 手洗い・うがい・マスクなど、感染予防を続ける
- 人混みや生もの、新しいサプリメントは主治医に相談してからにする
- 薬は自己判断でやめたり減らしたりしない
医療治療
DLIの前後には、免疫の働きを調整する薬(免疫抑制薬)を使ってGVHDを抑えることがあります。感染症の予防や治療、輸血、水分や栄養の補助なども、状況に応じて行います。治療の内容や量は、血液検査の結果や体調を見ながらその都度調整されます。具体的な薬の種類や使い方については、主治医や薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
DLIは点滴で行う治療で、手術ではありません。ただしドナー側では、腕の血管から血液を出し入れする処置を行ってリンパ球を集めます。
この病気と共に生きる
輸注のあとは、しばらく通院が続きます。体調の記録と感染予防を続けながら、無理のない範囲で日常生活を戻していきます。GVHDの症状が出たときは、早めに医療チームへ連絡することが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活と十分な睡眠
- 手洗い・うがい・換気・マスクの習慣
- ペットや土いじりなど、感染の機会になる行動は主治医に相談する
- 歯みがきなど口腔ケアを丁寧に行う
- たばこ・アルコールは主治医に相談する
食事と運動
食事は、衛生面に気をつけて十分に加熱すること、たんぱく質と水分を意識してバランスよくとることが基本です。生ものや加熱が不十分な食品は避けます。運動は、感染の心配が少ない時期に、散歩など軽いものから始め、疲れをためない範囲で続けます。主治医や管理栄養士、リハビリのスタッフに相談しながら進めてください。
精神的健康と心の健康
再発や再治療は、不安や落ち込み、眠れないといった気持ちを伴いやすい出来事です。それは自然な反応で、あなたの弱さではありません。家族や友人、医療者に話すだけでも気持ちが軽くなることがあります。つらさが続くときは、遠慮なく医療チームに相談してください。こころの相談窓口や患者会を利用することもできます。
予防
DLIは治療であるため、「予防する」という性質のものではありません。ただし副作用を軽くするために、事前の状態確認、感染予防、定期的な検査、症状の早期報告が大切です。
ワクチン
移植後は免疫が弱く、これまでに受けたワクチンの効果が下がっていることがあります。生ワクチンは避け、不活化ワクチンを主治医の計画に沿って受け直します。時期や種類は移植からの期間や体調で変わるため、自己判断せず主治医に確認してください。
検診プログラム
輸注のあとは、血液検査・骨髄検査・キメリズム検査などを定期的に行い、再発やGVHDの兆候を早く見つけることが大切です。
合併症
治療しない場合
- 移植片対宿主病(GVHD):ドナーの免疫細胞が、患者さんの皮膚・腸・肝臓などを攻撃してしまう状態
- 血球減少:白血球・血小板・赤血球が減り、感染症や出血の危険が高まる
- 感染症にかかりやすくなる
- 肝臓や腎臓の働きの変化
- DLIを行わない場合、再発した病気が進み、選べる治療が限られてくる
長期的な見通し
DLIは、移植後の再発に対する有効な選択肢のひとつで、効果が得られる方も多く報告されています。ただし効果や副作用の出方は一人ひとり異なり、結果を約束できる治療ではありません。移植チームと十分に話し合い、定期検査を続けながら、一歩ずつ進めていくことができます。
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最終更新: 2026年11月3日
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