NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を安全に使うために
概要
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、痛み・熱・炎症(はれや赤み)をやわらげる薬のグループです。日本では、病院で出してもらう薬にも、薬局やドラッグストアで買える市販の解熱鎮痛薬や風邪薬にも含まれています。飲み薬だけでなく、座薬、塗り薬、貼り薬などの形があります。よく効く一方で、胃や腎臓(尿を作る臓器)に負担をかけることがあるため、使い方に少しコツがいる薬です。
重要な事実
- 痛み・発熱・炎症をしずめる薬のグループで、飲み薬・座薬・塗り薬・貼り薬などさまざまな形があります
- 胃の粘膜を守る働きや腎臓の血流を保つ働きも一緒に抑えてしまうため、胃の不快感やむくみなどが起こることがあります
- 市販の風邪薬や総合感冒薬にも同じグループの成分が入っていることがあり、気づかないうちに重なって使ってしまうことがあります
とても身近な薬です。頭痛や発熱、肩こり、生理痛、けがの痛みなどで、多くの人が一生のうちに何度も使います。市販薬の多くにも含まれているため、知らないうちに使っていることもあります。
子どもから高齢者まで、誰でも使う可能性があります。ただし、65歳以上の方、胃や十二指腸の溃疡(かいよう)があった方、腎臓・肝臓・心臓に持病のある方、ぜんそくのある方、妊娠中の方、血液を固まりにくくする薬などを併用している方は、特に注意が必要です。
症状
- 便が黒い(タール状)、または血が混じった便が出た、コーヒー色のものを吐いた ― 胃や腸からの出血の可能性があります。すぐに119番に連絡してください
- 息苦しさ、のどのつまり感、顔や唇のはれ、全身に広がるじんましん ― アナフィラキシー(強いアレルギー反応)の可能性があります。すぐに119番に連絡してください
- 意識がもうろうとしている、けいれんが起きた
- 尿がほとんど出ない、急に体が大きくむくんで息苦しい
- 激しい胸の痛み、息が吸いにくい
- ⚠強いおなかの痛みや胃の痛みが続く
- ⚠吐き気やおう吐が止まらない
- ⚠皮膚の発疹が広がる、水ぶくれができる、口の中や目がただれる
- ⚠足のむくみが急に出た、数日のうちに体重が大きく増えた
- ⚠原因のわからない発熱が続く、強いだるさが続く
一般的な症状
- 胃の不快感、むかつき、胸やけ、げっぷ
- おなかの痛み、胃のあたりの痛み
- 軽い頭痛やめまい
- 手足や顔のむくみ、体重の増加
- 軟便や下痢
- 貼り薬や塗り薬を使った部分の赤み、かゆみ、発疹
子供の症状
- 子どもの場合は脱水(体の水分が足りなくなること)になりやすく、腎臓への負担が強まることがあります
- 発熱や下痢・おう吐で水分が失われているときは、使用について必ず医師や薬剤師に相談してください
- 一部の解熱鎮痛薬は、ウイルスによる感染症にかかった子どもには使うべきでないとされています。自己判断で市販薬を使わず、まず医療機関に相談してください
- 子どもの体重に合った量が決められています。大人の薬を半分に割って与えるようなことはしないでください
高齢者の症状
- 年齢とともに腎臓の働きは自然に低下するため、同じ量でも効きすぎたり副作用が出やすくなったりします
- 胃や腸からの出血が起こりやすく、気づいたときには貧血になっていることもあります
- 血圧の薬や血液を固まりにくくする薬など、複数の薬を飲んでいることが多く、薬どうしの飲み合わせに注意が必要です
- のどの渇きを感じにくく、暑い季節や発熱時は脱水になりやすいので気をつけてください
原因
主な原因
- NSAIDsは、体の中で作られるプロスタグランジンという物質の働きを抑えることで、痛みと炎症をしずめます。この物質は、胃の粘膜を守る働きや、腎臓に血を送る働きも担っています。そのため、痛みはやわらぐ反面、胃や腎臓に負担がかかることがあります
- 飲みすぎ・使いすぎ(必要以上に長く続ける、説明書の量を超えて使う)
- 空腹のまま飲む、水が少ない状態で飲む
- 血液を固まりにくくする薬、血圧の薬、ステロイドの薬などとの飲み合わせ
- 発熱・下痢・暑さなどで体の水分が足りなくなっているときの使用
リスク要因
- 65歳以上である
- これまでに胃・十二指腸の溃疡や胃の出血を起こしたことがある
- 腎臓病、肝臓病、心臓病(特に心不全)がある
- ぜんそくがあり、これまでNSAIDsで発作が出たことがある
- 妊娠中(特に妊娠後半)・授乳中である
- 血液を固まりにくくする薬やステロイドの薬を飲んでいる
- 喫煙や飲酒の習慣がある
- 脱水ぎみである(発熱、下痢、夏場の暑さ、水分不足など)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 黒い便、血の混じった便、コーヒー色の嘔吐があった ― すぐに受診してください
- 強いおなかの痛みが続く、痛み止めを飲んでもどんどん悪くなる
- 急に息苦しくなった、のどや顔がはれた、じんましんが全身に出た
- 尿がほとんど出ない、急に体がむくんだ
- 皮膚に広がる発疹や水ぶくれが出た
定期受診を予約すべき場合:
- 市販の解熱鎮痛薬を1週間以上続けて使おうとしている
- 持病(腎臓・肝臓・心臓・胃腸・ぜんそくなど)がある
- ほかの薬を飲んでいる、または最近飲み始めた
- 妊娠中・授乳中、または妊娠を考えている
- 痛みが繰り返し出て、薬の量や回数が増えている
診断
NSAIDsそのものを診断する検査はありません。診断というより「この薬をこの人が安全に使えるかどうか」を確かめる作業になります。医師や薬剤師は、痛みや発熱の症状、これまでの病歴、飲んでいる薬、アレルギーの有無、妊娠の可能性などを聞き取り、必要に応じて検査を行います。市販薬を買うときも、薬剤師に同じことを伝えると安心です。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状、持病、飲んでいる薬、アレルギー、妊娠の可能性の確認)
- 血液検査(腎臓の働き、肝臓の働き、貧血の有無を調べます)
- 尿検査(腎臓の状態やたんぱくの有無を調べます)
- 便潜血検査(便に目に見えない血が混じっていないかを調べます)
- 症状に応じて胃カメラ(内視鏡)などの画像検査
診察で予想されること
特別な処置は必要ありません。問診と採血・採尿が中心で、結果は多くの場合その日のうち、あるいは数日でわかります。長期に使う場合は、定期的に血液検査をして腎臓や肝臓の状態を確認することがあります。診察のときは、飲んでいる薬の名前がわかるように「お薬手帳」を持っていくのがおすすめです。
治療
NSAIDsを安全に使うためのポイントは「必要最小限の量と期間で使うこと」「胃や腎臓への負担を減らす工夫をすること」「ほかの薬との飲み合わせを確認すること」の3つです。痛みの原因や体の状態によっては、NSAIDs以外の方法のほうが向いていることもあります。治療の進め方は医師が総合的に判断します。
自宅でのセルフケア
- 食後、または食事と一緒に飲むと胃への負担が軽くなります(説明書に空腹時と書かれている場合はそれに従ってください)
- 「痛いときだけ、必要な分だけ」を基本にし、決められた量と回数を守る
- 飲んでいる間は飲酒を控える(胃への刺激が重なります)
- 水分をこまめにとる(特に発熱時や暑い季節)
- 市販の風邪薬・総合感冒薬・湿布などに同じグループの成分が入っていないか確認し、重複を避ける
- 貼り薬は説明書に書かれた時間を守り、広い範囲に何枚も貼りすぎない
- 使った日と症状、気になる体調の変化を簡単にメモしておくと、受診のときに役立ちます
医療治療
医師は、痛みや熱の原因、年齢、持病、ほかの薬との飲み合わせをふまえて、いちばん合った方法を選びます。NSAIDsを使う場合でも、胃への負担を減らす薬を一緒に出す、貼り薬や塗り薬など体全体に吸収されにくい形を選ぶ、といった工夫をすることがあります。また、痛みの種類によっては、別の系統の痛み止めや、痛みの原因そのものに対する治療、リハビリや物理療法などが向いていることもあります。薬の種類や量は医師の指示に従い、自己判断で変えないでください。
手術が検討される場合
NSAIDsを使うこと自体が手術の対象になるわけではありません。ただし、胃や腸の出血や穿孔(穴があくこと)、腎臓の病気など重い副作用が起きた場合には、処置や手術が必要になることがあります。そのような状態は非常にまれですが、強い痛みや出血のサインがあればすぐに受診してください。
この病気と共に生きる
痛み止めは「困ったときの助け」として上手につきあうのがコツです。使った日時と量、痛みの強さを簡単に記録しておくと、自分に合っているかどうかが見えやすくなります。また、市販薬も含めて使っている薬はすべて「お薬手帳」にまとめ、受診や薬局で必ず見せてください。痛みが続く場合は、薬を増やす前に、痛みの原因を調べてもらうことが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を心がける(胃や血管への負担が減ります)
- 飲酒は控えめにする、特に薬を飲んでいる日は避ける
- 適正な体重を保つ(腎臓や心臓への負担が減ります)
- 睡眠と休息をしっかりとる
- 水分をこまめにとる習慣をつける
- 薬は子どもの手の届かない場所で、湿気や直射日光を避けて保管する
食事と運動
食事は、胃に刺激の強いもの(強い香辛料、アルコール、コーヒーの飲みすぎなど)を控えめにし、よくかんで食べると胃の負担が軽くなります。適度な運動(ウォーキングなど)は、慢性的な痛みやこりをやわらげ、気分の面でも役立ちます。痛みが強いときは無理をせず、体調に合わせて少しずつ動くようにしてください。
精神的健康と心の健康
痛みが続くと、気分が沈んだり、イライラしたり、よく眠れなくなったりすることがあります。これは弱さではなく、痛みがあるときの自然な反応です。つらい気持ちが続くときは、一人で抱え込まず、かかりつけ医や地域の相談窓口に話してみてください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたい気持ちがわいたときや、命の危険を感じたときは、ためらわず119番、またはお住まいの地域の救急・相談窓口に連絡してください。
予防
NSAIDsによる副作用の多くは、使い方の工夫で減らせます。必要最小限の量と期間にする、食後に飲む、飲酒を控える、水分をとる、ほかの薬との重なりを確認する、そして気になる症状があれば早めに相談する — この積み重ねが予防になります。
検診プログラム
持病のある方や高齢の方は、あらかじめ腎臓・肝臓の働きを血液検査で確認しておくと安心です。長期間使う場合は、定期的な血液検査や便潜血検査で体の状態をチェックすることがあります。市販薬を長く使う前にも、一度かかりつけ医や薬剤師に相談してみてください。
合併症
治療しない場合
- 胃や十二指腸の溃疡、そこからの出血(黒い便や贫血につながることがあります)
- 腎臓の働きの低下(むくみ、尿量の減少など)
- 心不全や高血圧の悪化
- ぜんそく発作の誘発
- 肝臓の働きの低下
- 皮膚の強いアレルギー反応
長期的な見通し
ほとんどの方は、正しい量と期間を守って使えば、NSAIDsを問題なく使えます。副作用のサインを頭の片すみに置いておき、少しでも「いつもと違う」と感じたら早めに相談することが、安心してつきあっていく一番の近道です。痛みそのものについても、原因に合った対処を一緒に考えていくことで、多くの場合は改善が期待できます。
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最終更新: 2026年11月3日
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