カンガルーケア(肌と肌のふれあい)
概要
カンガルーケアは、赤ちゃんをおむつだけにして、お母さんやお父さんの素肌の胸の上にうつぶせに抱き、その上から毛布などをかけて温かくする抱き方です。おなかの袋で赤ちゃんを育てるカンガルーに似ていることから、この名前がつきました。「肌と肌のふれあい(スキンシップ)」とも呼ばれます。特別な道具はいらず、誰でも行うことができるシンプルなケアです。
重要な事実
- 1回30分以上、できれば1時間以上行うと、赤ちゃんが落ち着きやすいといわれています。
- もともとは、早く生まれた小さな赤ちゃんの体温を保つ方法として始まり、今では世界中の産院で行われています。
- お母さんだけでなく、お父さんや家族も行うことができます。
はい。日本を含む多くの国で、病院や産院ではあたりまえのケアのひとつになっています。早く生まれた赤ちゃんだけでなく、予定どおりに生まれた赤ちゃんにも広く行われています。
主に生まれたばかりの赤ちゃんと、その家族です。とくに早産児(予定より早く生まれた赤ちゃん)や低出生体重児(生まれたときの体重が小さい赤ちゃん)では、体を温めて安定させるために大切にされています。赤ちゃんの状態によっては、医療スタッフの判断で行わないこともあります。
症状
- 呼吸が苦しそう、息が止まる、ゼーゼーと苦しそうな音がする
- 唇や顔色が青白い、または紫色をしている
- ぐったりして、抱いても反応が弱い、ほとんど泣かない
- けいれん(体がぴくぴくする、がくがくする)
- 体がとても熱い、またはとても冷たい
- ⚠母乳やミルクをほとんど飲まない
- ⚠おしっこが半日以上出ない
- ⚠黄疸(皮膚や目の白目が黄色くなること)が強くなっている
- ⚠体重が増えない、元気がない
- ⚠発熱がある(とくに生後3か月未満の赤ちゃんは注意が必要です)
一般的な症状
- 心拍や呼吸が落ち着いて安定する
- 体温が保たれやすくなる
- 泣くことが減り、よく眠るようになる
- 母乳を飲みやすくなる、飲む量が増えることがある
- お母さん・お父さんの気持ちが落ち着き、赤ちゃんへの愛情を感じやすくなる
子供の症状
- 早く生まれた赤ちゃんでは、保育器の中にいるときより呼吸や心拍が安定することがあります
- 肌が触れ合うことで温かさが伝わり、体温が下がりにくくなる
- 母乳を飲む力がまだ弱い赤ちゃんでも、落ち着いて飲めることがある
- opposite(反対に)ぐずりが減り、眠る時間が長くなることがある
高齢者の症状
- カンガルーケアは生まれたばかりの赤ちゃんのためのケアなので、高齢者に直接あてはまるものではありません。
- ただし「家族や大切な人と手や肌でふれあうと気持ちが落ち着く」という考え方は、どの年代にも通じます。
原因
主な原因
- カンガルーケアは治療法ではなく、赤ちゃんと家族のためのケアなので、「原因」というものはありません。
- もともとは、早く生まれた小さな赤ちゃんの体温を保つ機械が少なかった時代に、お母さんの胸で温める知恵として始まりました。
- 今では、体温を保つだけでなく、呼吸や心拍を安定させ、家族の絆を育てるケアとして研究が進められています。
リスク要因
- 赤ちゃんの状態が不安定なとき(呼吸や心拍が落ち着かないなど)
- お母さんの体調がすぐれないとき(出血が多い、発熱、強い痛み、出産後の回復が十分でないなど)
- 強い眠気があるとき、または眠ってしまいそうなとき(赤ちゃんを落としたり圧迫したりする危険があるため)
- 感染症にかかっている、またはその疑いがあるとき
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 上の「救急」にあてはまる症状があるときは、ためらわずに119番へ連絡してください。
- 母乳を飲まない、元気がない、黄疸が強いなど、いつもと違うと感じたら、その日のうちに小児科や産院に連絡しましょう。
定期受診を予約すべき場合:
- カンガルーケアのやり方や、家での続け方がわからないとき
- 母乳やミルクの量、体重の増え方が気になるとき
- 自分の気持ちが落ち込んでつらいとき(出産後の気分の落ち込みはよくあることです)
診断
カンガルーケアは「診断」するものではなく、赤ちゃんの状態を見て、安全に行えるかどうかを医療スタッフが判断します。入院中は、赤ちゃんの心拍・呼吸・体温を見ながら、スタッフがそばで見守ります。
行われる可能性のある検査
- 心拍と呼吸のモニター(入院中)
- 体温の測定
- 血中の酸素の量を測る装置(パルスオキシメーター)
- 体重の測定
- 黄疸の検査(必要に応じて)
診察で予想されること
入院中は、赤ちゃんをおむつだけにして、お母さんやお父さんの素肌の胸の上にうつぶせにします。頭は少し横に向けて、息の通り道がふさがらないようにします。上から毛布をかけ、スタッフが姿勢や赤ちゃんの様子を確認します。初めてのときは15〜30分くらいから始め、慣れてきたら1時間以上かけて行うこともあります。
治療
カンガルーケアは、それ自体が「ケア」で、薬のように治療するものではありません。赤ちゃんの状態に合わせて、安全な方法と時間を医療スタッフと一緒に整えていくことが中心になります。
自宅でのセルフケア
- 家では、赤ちゃんの機嫌がよく、お母さん・お父さんが眠くなっていないときに、少しの時間から始める
- 赤ちゃんはおむつだけにし、大人は前開きの服を着て、素肌で抱く
- 赤ちゃんの顔が見えるように、頭を少し横に向ける
- 毛布やバスタオルをかけ、背中を支える
- 眠ってしまいそうなときは、赤ちゃんをベビーベッドに寝かせる
- ソファや柔らかすぎる場所ではなく、安全な椅子やベッドの上で行う
医療治療
入院中は、医療スタッフが赤ちゃんの状態に合わせて時間や方法を調整します。早く生まれた赤ちゃんでは、保育器の外で行う前に、体温や呼吸が安定しているかを確認します。必要に応じて、モニターや点滴をつけたまま行うこともあります。「治療」というより、赤ちゃんの成長を支える毎日のケアのひとつとして位置づけられています。
手術が検討される場合
カンガルーケアは手術とは関係ありません。赤ちゃんが手術を受けた場合や、体に管が入っている場合は、行えるかどうかを担当の医療スタッフに確認してください。
この病気と共に生きる
退院後も、家で続けることができます。「決まった時間にしなければ」と決まりがあるわけではありません。授乳やおむつ替えのあとなど、生活のリズムに合わせて、無理のない範囲で取り入れてみてください。
生活習慣のアドバイス
- 1日に1〜2回、短い時間から始める
- お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん、きょうだいも一緒に行う
- 疲れているときや眠いときは無理をしない
- 室温を快適に保ち、赤ちゃんが暑すぎないようにする
食事と運動
お母さんは、バランスのよい食事と水分をとり、休める時間を確保しましょう。カンガルーケア自体は軽い姿勢で行うものですが、長時間同じ姿勢でいると腰や背中が疲れます。クッションで腕を支えるなど、楽な姿勢を選ぶと続けやすくなります。
精神的健康と心の健康
赤ちゃんとのふれあいは、お母さん・お父さんの気持ちを落ち着かせ、自信につながるといわれています。一方で、出産後はホルモンの変化や睡眠不足で気分が揺れやすく、うまくいかないと自分を責めてしまうこともあります。2週間以上気分の落ち込みが続く、涙が止まらない、赤ちゃんをかわいいと思えない、自分や赤ちゃんを傷つけたい気持ちがわいてくる——こうしたときは、一人で抱えず、産院や市区町村の相談窓口、医療機関に連絡してください。緊急の場合は119番へ。
予防
カンガルーケアは「予防する」ものではありませんが、赤ちゃんの体温低下やストレスを減らし、家族の絆を育てる助けになると考えられています。無理のない範囲で、安全に行うことがいちばん大切です。
ワクチン
カンガルーケア自体にワクチンはありません。赤ちゃんの感染症を防ぐための予防接種は、決められた時期に受けましょう。スケジュールは母子健康手帳やかかりつけ医で確認できます。
検診プログラム
赤ちゃんの健康は、新生児訪問や乳幼児健診(1か月健診など)で確認します。気になることがあれば、健診を待たずに相談してください。
合併症
治療しない場合
- カンガルーケアをしないことが「病気になる」ことではありません。行わなくても、赤ちゃんは保育器や抱っこなど、ほかの方法でしっかりケアされます。
- 早く生まれた赤ちゃんの場合、体温が下がりやすい、泣きやすい、母乳が進みにくいといったことが起こりやすくなることがあります。
- 家族が赤ちゃんとのふれあいを感じる機会が、少し少なくなることがあります。
長期的な見通し
カンガルーケアは、世界中で何十年も行われてきた、安全でシンプルなケアです。赤ちゃんの成長に合わせて、無理のない範囲で続けていけば大丈夫。できた日を数えるほうが、できなかった日を数えるよりずっと気持ちが楽になります。
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最終更新: 2026年11月3日
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