モース手術(モース法)で皮膚のがんを切除する治療
概要
モース手術(モース法)は、皮膚にできた「がん」の中でも、主に基底細胞がんや有棘細胞がん(皮膚の表面近くにできる、ひろがりやすい種類のがん)を切除するための、精密な手術の方法です。ふつうの手術では、がんの周りをある程度まとめて切除しますが、モース手術では、がんをいちばん薄い層から少しずつ削り取り、そのたびに手術中に顕微鏡で「がんが残っていないか」を確認します。がんが確認できなくなった時点で終わるため、健康な皮膚をできるだけ残せるのが特長です。多くの場合は局部麻酔(その場所だけをしびれさせる麻酔)で行い、日帰りで受けられることが多い治療です。
重要な事実
- がんを薄い層ごとに切除し、その都度その場で顕微鏡で確認しながら進める手術です。
- 健康な皮膚をより多く残せ、がんの取り残しを減らせる可能性がある方法です。
- 多くは局部麻酔で日帰りに行われますが、場所や大きさによっては入院や再建(傷あとを整える処置)が必要になることもあります。
皮膚のがんは年々増えているといわれ、モース手術は特に顔や耳、鼻など、見た目や機能をできるだけ保ちたい場所のがんに対してよく選ばれる方法です。日本でも皮膚科や形成外科で行われています。
日光(紫外線)を長く浴びてきた方、日焼けしやすい明るい肌の方、高齢の方に多くみられます。また、免疫の働きが低下する治療を受けている方や、以前に皮膚のがんになったことがある方も注意が必要です。
症状
- 傷や手術のあとから血が止まらず、押さえても出血が続く
- 傷の周りの赤みや腫れが急速に広がり、高熱やぐったりした様子がある
- 意識がもうろうとする、呼吸が苦しいなど全身の具合が急に悪くなった
- ⚠手術後の傷が腫れて痛みが強くなり、膿のようなものが出てきた
- ⚠傷の周りに熱感があり、発熱がある
- ⚠手術後に傷が大きく開いてしまった、または出血が続いている
一般的な症状
- 治りにくい小さなできものや、かさぶたが繰り返しできる場所がある
- 光沢のある、ろうのような小さなふくらみがある
- 少しぶつけただけで出血しやすい、赤いできものがある
- ほくろの色・形・大きさが少しずつ変わる
- 数年かけてゆっくり大きくなる、痛みの少ないしこりがある
子供の症状
- 子どもに皮膚のがんができることは非常にまれです。
- 子どもの皮膚の変化は、ほくろや湿疹など別の原因が多いため、心配なときは小児科や皮膚科に相談してください。
- 子どもの日焼けは将来のリスクにつながるため、紫外線対策が大切です。
高齢者の症状
- 長年の紫外線の蓄積により、顔や頭、手の甲など日焼けした場所にできやすい傾向があります。
- 高齢者は痛みや変化に気づきにくいことがあるため、家族や介護スタッフによる皮膚の観察が役立ちます。
- 複数の持病や薬を服用している場合は、手術の前に主治医とよく相談することが大切です。
原因
主な原因
- 太陽の光に含まれる紫外線によって、皮膚の細胞の遺伝子が傷つき、それが長年にわたり積み重なること
- 日焼けや屋外での作業など、紫外線を長く浴びてきた履歴
- 一部は遺伝的な体質や、免疫の働きが低下する病気・治療が関係すること
リスク要因
- 紫外線を長く浴びてきた、日焼けの回数が多い
- 肌が明るい、そばかすができやすい、日焼けで赤くなりやすい体質
- 高齢であること
- 免疫の働きが低下する治療を受けている、または免疫の病気がある
- 以前に皮膚のがんや前がん病変(がんになる前の段階の変化)を指摘されたことがある
- 慢性の傷や炎症、やけど、放射線を浴びた経験がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 皮膚のできものが急に大きくなる、盛り上がる
- 何週間も出血やかさぶたが繰り返す
- ほくろの色や形が急に変わる、境目がぼやける
- 傷や手術のあとに強い痛み、腫れ、発熱がある
定期受診を予約すべき場合:
- 治りにくいできものや、気になる皮膚の変化が数週間以上続いている
- 家族や自分で見ていて、ほくろの変化が気になる
- 以前に皮膚のがんを指摘されたことがあり、再発が心配
- 紫外線対策や皮膚のセルフチェックの方法を知りたい
診断
まず皮膚科医が皮膚の状態を診察し、拡大して見る器具(ダーモスコピー)で詳しく観察します。確定のためには、できものの一部を採取して顕微鏡で調べる「生検(組織検査)」を行います。モース手術そのものは治療ですが、手術中に切除した組織をその場で顕微鏡で確認するため、治療と確認が同時に進むのが特長です。
行われる可能性のある検査
- 皮膚の診察とダーモスコピーによる観察
- 生検(組織を少し採取して顕微鏡で調べる検査)
- 手術中に行う切除組織の顕微鏡検査(がんが残っていないかの確認)
- 必要に応じて、ひろがりを確認するための画像検査や血液検査
診察で予想されること
診察では、できものがいつごろからあるか、大きさの変化、出血の有無などを聞かれます。生検の結果が出るまでには数日から1〜2週間ほどかかるのが一般的です。モース手術は局部麻酔で行い、切除と顕微鏡確認を繰り返すため、数時間かかることがあります。何層になるかは事前にはっきり分からないこともあります。
治療
モース手術は、皮膚のがんをできるだけ確実に取り除きながら、健康な皮膚を残すことを目指す治療です。がんの種類、大きさ、場所、これまでの治療歴などをふまえて、担当医がほかの治療法と比較しながら提案します。
自宅でのセルフケア
- 手術後は、医師や看護師に教わった方法で傷を清潔に保つ
- 傷をかくしたり、こすったりしない
- 手術後しばらくは、医師の指示に合わせて運動や入浴の制限を守る
- 紫外線を避け、外出時は帽子や日傘、日焼け止めを使う
- 傷の変化(赤み、腫れ、出血、痛み)を毎日観察し、気になれば早めに連絡する
医療治療
治療の選択肢には、手術で切除する方法(モース手術を含む)、病変を削って焼く方法、凍らせて取り除く方法、放射線による治療、外用による治療などがあります。どの方法が合うかは、がんの種類や大きさ、場所、体の状態によって変わります。具体的な治療方針や薬の種類については、必ず担当の医師と相談してください。
手術が検討される場合
顔や耳、鼻、指など、見た目や機能をできるだけ保ちたい場所のがん、再発したがん、境界が分かりにくいがんなどで、モース手術が検討されることがあります。手術が適切かどうかは、皮膚科や形成外科の医師が個別に判断します。
この病気と共に生きる
手術のあとは、傷の治りに合わせて通院しながら経過を見ていきます。日常生活の多くは、医師の指示を守ることで徐々に戻していけます。傷あとの見た目が気になる場合は、遠慮せずに医師や看護師に相談してください。
生活習慣のアドバイス
- 日中の紫外線が強い時間帯は、日陰を選ぶなど工夫する
- 帽子、日傘、長袖などを活用する
- 日焼け止めをこまめに塗り直す
- たばこは傷の治りに影響することがあるため、禁煙を検討する
- 睡眠や食事を整え、体調を保つ
食事と運動
特別な食事制限が必要になることは多くありません。バランスのよい食事と、無理のない範囲の運動は、体力の維持や傷の回復に役立ちます。手術後は、医師から運動の再開時期について指示を受けてください。
精神的健康と心の健康
「がん」という言葉や、顔などの見た目の変化への不安から、気持ちが落ち込みやすくなることがあります。不安や眠れない状態が続くときは、一人で抱え込まず、医療者や身近な人に話してみてください。
予防
紫外線を浴びすぎないことが、皮膚のがんのリスクを下げるうえで大切です。環境省や厚生労働省も紫外線対策の情報を出しており、日中の紫外線が強い時間帯を避ける、帽子や日傘を使う、日焼け止めを活用するといった方法が勧められています。完全に防ぐことは難しいものの、日々の工夫でリスクを減らせます。
ワクチン
皮膚のがんを防ぐワクチンは、一般的にはありません。
検診プログラム
皮膚は自分でも見やすい場所です。月に一度など決まったタイミングで、全身の皮膚を鏡などで観察する習慣が役立ちます。気になる変化があれば、皮膚科で相談してください。
合併症
治療しない場合
- がんが周りの皮膚や組織を徐々に壊して広がる
- 見た目や、耳・鼻・目の働きに影響が出ることがある
- まれですが、リンパ節やほかの臓器に広がる(転移する)ことがある
- 治療が大きくなり、切除する範囲が広がる可能性がある
長期的な見通し
皮膚のがんは、早く見つけて適切に治療すれば、多くは良好な経過が期待できます。モース手術は再発が少ないとされる方法で、傷あとも比較的小さく抑えられる可能性があります。定期的な通院と紫外線対策を続けることが、安心につながります。気になることがあれば、いつでも担当医に相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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