透析(血液透析・腹膜透析)
概要
透析(とうせき)は、腎臓(じんぞう)の働きが大きく低下したときに、機械や体の中の膜を使って血液をきれいにする治療です。腎臓は、体の老廃物(ろうはいぶつ=体で使ったあとのいらないもの)と余分な水分を尿として外に出し、血圧や体の中のミネラルのバランスを整える働きをしています。腎臓がほとんど働けなくなった状態(末期腎不全)になると、その働きを透析が代わりに担います。透析は腎臓を治す治療ではなく、腎臓の働きの一部を助ける治療です。
重要な事実
- 透析には主に「血液透析」と「腹膜透析」の2つの方法があり、体の状態や生活スタイルに合わせて選びます
- 血液透析は、週に数回、1回数時間かけて通院して行うことが一般的です
- 透析は腎臓の働きを完全に代わるものではありませんが、老廃物と水分を取り除いて体調を安定させることができます
日本では、透析治療を受けながら生活している方がたくさんいます。決して珍しい治療ではありません。糖尿病や高血圧などから腎臓の働きがゆっくり低下して透析が必要になる方が多く、年々、高齢の方が増えています。
透析が必要になる方は、糖尿病による腎臓の障害(糖尿病性腎症)や高血圧、慢性の腎臓病を持つ方が多いですが、年齢は幅広く、若い方や子どもが先天性の腎臓・尿路の病気で透析を受けることもあります。
症状
- 胸の強い痛み、息が苦しくて横になれない
- けいれん、意識がもうろうとする、呼びかけに反応がない
- 透析中や直後に意識を失う、立っていられないほどのめまい
- シャント(透析用に作った腕の血管)からの出血が止まらない
- ⚠発熱や寒気がある
- ⚠シャントの拍動や血流の音が感じられない、赤く腫れて痛い
- ⚠数日の間に体重が急に増えた、全身が大きくむくむ
- ⚠吐き気や嘔吐が続いて水分がとれない
- ⚠透析を予定どおり受けられず、体調が悪くなってきた
- ⚠透析後にぐったりして、なかなか回復しない
一般的な症状
- 疲れやすい、だるさが続く
- 足やまぶたのむくみ
- 尿の量が減る、夜中にトイレに起きる回数が増える
- 食欲がない、吐き気がする
- 息切れがする、階段で苦しい
- 皮膚のかゆみ
- 頭がぼんやりする、集中しにくい
- 透析中や透析後に、血圧が下がって気分が悪くなる、足がつる、強い疲労感が出る
子供の症状
- 身長・体重の増えがゆっくりになる
- 食欲がなく、むくみやすい
- 疲れやすく、遊びや体育を嫌がる
- 学校で集中しにくい、ぼんやりしているように見える
- おしっこの量や回数の変化
高齢者の症状
- むくみや息切れが目立ちやすい
- 食欲低下と体重減少
- ぼんやりする、物忘れが増えたように見える
- 立ちくらみ、転びやすくなる
- 透析中に血圧が下がりやすい
原因
主な原因
- 糖尿病性腎症(糖尿病による腎臓の障害)
- 慢性糸球体腎炎(腎臓のフィルターに炎症が続く病気)
- 高血圧による腎臓の障害(腎硬化症)
- 多発性のう胞腎などの遺伝性の腎臓の病気
- 尿の流れが悪くなる病気や、先天性の腎臓・尿路の病気
- 急性の腎臓の障害から回復せず、透析が必要になる場合
リスク要因
- 糖尿病、高血圧
- 長く続く腎臓病、尿にたんぱくが出ていると言われたことがある
- 鎮痛薬の一部を長期間使うこと
- 家族に腎臓病の人がいる
- 心臓や肝臓の病気
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息苦しさ、胸の痛み、強い動悸がある
- 発熱、寒気がある
- シャントの拍動や音が弱い、感じられない、腫れて痛い
- 体重が数日で急に増えた、尿が出ない
- 透析後に強いめまいや意識が遠のく感じがある
定期受診を予約すべき場合:
- むくみやだるさが続いている
- 健診や病院で「腎臓の数値が悪い」「たんぱく尿が出ている」と言われた
- 透析を始めるかどうか、いつ始めるかを相談したい
- 食事や水分の制限、仕事や旅行との両立について相談したい
- 気分の落ち込みや不安が続いている
診断
腎臓の働きは、血液検査のクレアチニン値やeGFR(推算糸球体ろ過量=腎臓のろ過の力の目安)で推測します。透析が必要かどうかは、数値だけでなく、むくみ、息苦しさ、吐き気、体の中のミネラルの異常、尿毒症(老廃物がたまることで起こる症状)の有無などを総合して判断します。急に必要になる場合と、時間をかけて準備する場合があります。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(クレアチニン、尿素窒素、eGFR、カリウム、重炭酸など)
- 尿検査(たんぱく尿や血尿の確認)
- 腎臓の超音波(エコー)検査
- 胸部X線、心電図
- 必要に応じて腎臓の組織を調べる検査(生検)
- 透析の準備として、腕の血管の状態、感染症、心臓の状態の確認
- 腹膜透析を選ぶ場合、おなかの状態の確認
診察で予想されること
診察や検査の多くは痛みが少なく、短時間で終わります。透析の準備は、体調が急に悪くなる前に進めるのが理想です。医師だけでなく、看護師、管理栄養士、ソーシャルワーカー(生活の相談を支える専門職)がチームで説明してくれます。家族と一緒に話を聞いたり、聞きたいことをメモして持っていったりすると安心です。
治療
透析は、老廃物と余分な水分を取り除き、体のバランスを保つ治療です。方法は「血液透析」と「腹膜透析」の2つが中心で、腎移植という選択肢もあります。目標は、体調を安定させ、これまでに近い生活をできるだけ続けられるようにすることです。どの方法が合うかは、体の状態、生活スタイル、家族のサポートなどを話し合って決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 水分と塩分の量は人によって違うため、医療チームが決めた目安を守る
- 透析の予定を守り、変更が必要なら早めに連絡する
- 毎日体重を測って記録する
- シャントのある腕を圧迫しない、重い物を持たない(血圧測定や採血を避けるなど、施設の指示に従う)
- 処方された薬を自己判断でやめたり減らしたりしない
- 発熱や体調の変化は早めに伝える
- 旅行や出張の前に、旅行先で透析を受けられるよう相談する
医療治療
血液透析では、腕に作った血管(シャント)から血液を体外に取り出し、ダイアライザーという「人工の腎臓」を通して老廃物と水分を取り除き、体に戻します。週に数回、1回数時間の通院が一般的です。腹膜透析では、おなかの中にある腹膜(ふくまく)をフィルターとして使い、おなかの中に透析液を入れて老廃物を移し、あとで液を出します。自宅で自分で行えることが多く、仕事や通学に合わせやすい面もあります。どちらも、食事や血圧の管理、貧血や骨の変化への対応など、体の状態に合わせた治療と組み合わせて行われます。具体的な治療の内容は主治医と相談して決めてください。
手術が検討される場合
血液透析を始める前に、腕の血管を太くしてシャントを作る小さな手術をすることが多く、計画的に準備できると体への負担が少なくなります。腹膜透析では、おなかの中に透析液を出し入れするための管(カテーテル)を留置する処置を行います。腎移植は手術による治療の選択肢のひとつです。
この病気と共に生きる
透析の日は時間がかかるため、予定の組み立てが大切です。体調に波があることも普通のことです。体重・血圧・水分を記録しておくと、体調の変化に気づきやすくなります。透析は生活の一部になりますが、工夫しながら仕事や趣味を続けている方はたくさんいます。
生活習慣のアドバイス
- 通院のスケジュールを家族や職場・学校と共有する
- 旅行先でも透析を受けられる仕組みがあるので、早めに相談する
- 仕事や学校との両立は、主治医やソーシャルワーカーに相談する
- 手洗いや傷の清潔など、感染予防を心がける
- 禁煙を考える
- 体調に合わせた無理のない運動を、医療者に相談してから始める
- 睡眠を十分にとる
食事と運動
塩分・水分・たんぱく質・カリウム・リンの適量は人によって違います。管理栄養士と相談して、自分用の目安を作り、家庭で続けられる範囲で工夫しましょう。運動は、散歩や軽いストレッチなど無理のないものから。透析中に血圧が下がりやすい方は、運動するタイミングを医療者に相談してください。
精神的健康と心の健康
透析は生活に大きな変化をもたらすため、不安、落ち込み、イライラ、「なぜ自分が」という気持ちがわくのは自然なことです。気分の落ち込みが2週間以上続く、眠れない、何も楽しめないと感じるときは、一人で抱えずに医療者に伝えてください。こころのケアも治療の一部です。つらいときは、地域の相談窓口や医療機関の相談支援につながることもできます。
予防
透析が必要になる原因の多くは、糖尿病や高血圧など、早めの管理で進行をゆるやかにできるものです。腎臓病は初期には自覚症状が少ないため、健診での尿検査と血液検査が大切です。血圧・血糖・体重を整えること、禁煙、腎臓に負担をかける薬の使い方に気をつけることが助けになります。すでに腎臓病と診断されている場合は、進行をゆっくりにする治療と生活管理が中心になります。
ワクチン
透析を受けている方は感染症にかかると重症化しやすいため、インフルエンザや肺炎などのワクチンについて主治医に相談してください。接種の可否や時期は体の状態によって変わります。
検診プログラム
健診(特定健診など)の尿検査(たんぱく尿)と血液検査(クレアチニン・eGFR)が基本です。糖尿病や高血圧のある方、家族に腎臓病の人がいる方は、かかりつけ医に相談して定期的にチェックを受けましょう。厚生労働省も、健診での腎臓の働きの確認をすすめています。
合併症
治療しない場合
- 尿毒症(老廃物がたまり、吐き気や意識の変化などが起こる)
- 心不全や肺に水がたまる状態(肺水腫)
- 血液中のカリウムが高くなり、不整脈や心停止の危険がある
- 骨がもろくなる、貧血になる
- 感染症にかかりやすくなる
長期的な見通し
透析は病気を治す治療ではありませんが、続けることで体調を保ち、長く生活を続けることができます。日本では、透析を受けながら長年生活している方がたくさんいます。治療法の選択、食事、仕事、気持ちの面まで、チームで支える体制があります。今の状態を早めに相談することが、これからの選択肢を広げます。
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最終更新: 2026年11月3日
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