輸血(血液の輸血)について
概要
輸血とは、けがや病気、手術などで足りなくなった血液を、献血で集められた血液(または血液の一部)で補う治療のことです。血液は「赤血球(酸素を運ぶ)」「血小板(出血を止める)」「血漿(けっしょう:血液の液体部分)」に分けられ、必要な部分だけを補う「成分輸血」が一般的です。輸血は、原因を取り除く治療ではなく、体が自分で血液を作れるようになるまでの「支え」として行われます。
重要な事実
- 輸血に使う血液は、すべて善意の献血から届けられ、感染症の検査などを経て慎重に準備されます。
- 自分自身の血液を手術前に貯めておき、それを戻す「自己血輸血」という方法が選べる場合もあります。
- 輸血はとても大切な治療ですが、まれに発熱や発疹などの副反応が起こることがあるため、輸血中と輸血のあとは体調の変化をよく観察します。
輸血は、大きな手術、出産、がんの治療、血液の病気など、多くの場面で行われている身近な医療のひとつです。日本では年間を通して多くの患者さんが輸血を受けています。
輸血が必要になるのは、手術やけがで出血が多い人、貧血(血のなかの酸素を運ぶ成分が足りない状態)が強い人、抗がん剤や放射線治療で血液を作る力が落ちた人、白血病などの血液の病気の人、出産時に出血が多かった人などです。年齢を問わず、子どもから高齢者まで必要になることがあります。
症状
- 輸血中や輸血の直後に、息苦しさ・胸の痛み・のどのつまり感が出た
- じんましんが出て、同時に息が苦しい・声が出しにくい(アレルギー反応の可能性)
- 寒気と高熱が急に出て、震えが止まらない
- 意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が弱い、顔色が真っ青
- 大量の吐血や下血(黒い便・血の混じった便)が止まらない
- ⚠輸血のあと数時間〜数日のうちに、強い疲れ・息切れ・動悸が続く
- ⚠尿の色が濃い(コーラ色・赤っぽい)
- ⚠輸血を受けた部位や腕が腫れる、赤くなる、痛む
- ⚠発熱が続く、皮膚に発疹が出て広がる
- ⚠めまいで立っていられない、歩くのがつらい
一般的な症状
- 階段や坂道で息が切れる、動悸(どうき:心臓がドキドキする感じ)がする
- 疲れやすい、少し動いただけでくらくらする
- 顔色が悪い、唇や爪の色が白っぽい
- 立ちくらみ、頭がぼんやりする
- 原因不明のあざや、歯ぐき・鼻の出血が止まりにくい(血小板が足りないとき)
子供の症状
- ぐったりして元気がない、遊ばない
- 母乳やミルクを飲む力が弱くなる、哺乳(ほにゅう)が続かない
- 顔色や唇の色が青白い、手足が冷たい
- 泣き方が弱い、すぐに疲れて眠る
- 言葉でつらいと伝えられないことが多いため、様子の変化に気づくことが大切です
高齢者の症状
- 息切れや動悸が目立たず、なんとなく元気がない・ぼんやりする形で現れることがあります
- 急な転倒や、歩くのが遅くなる、日常生活の動作がおっくうになる
- 心臓や腎臓に持病があると、少ない貧血でも息苦しさが強く出やすい
- すでに別の病気があると症状が隠れやすいので、いつもと違う様子に注意します
原因
主な原因
- 手術や大きなけがによる出血
- 胃や腸からの出血(潰瘍や炎症などによる)
- 貧血:鉄分が足りない、腎臓の働きが落ちた、血液を作る細胞の病気など
- がんの治療(抗がん剤や放射線)で血液を作る力が落ちること
- 白血病や骨髄の病気など、血液そのものの病気
- 出産時の多量の出血
- 赤血球が壊されやすい病気(溶血性貧血)
リスク要因
- 大きな手術や、出血が予想される手術を受ける予定がある
- 抗がん剤や放射線治療を受けている
- 慢性の腎臓病がある
- 血液の病気(白血病、骨髄異形成症候群など)がある
- 出血しやすくなる薬(血液を固まりにくくする薬など)を使っている
- 妊娠・出産、とくに帝王切開や多胎の出産
- 胃や腸の潰瘍、肝臓の病気がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 手術や治療のあとで、息切れ・動悸・めまいが急に強くなった
- 輸血を受けたあとに発熱、発疹、息苦しさ、寒気が出た
- 出血が止まらない、黒い便や血の混じった便が出た
- 尿の色が明らかに濃い、量が極端に少ない
定期受診を予約すべき場合:
- 以前より疲れやすい、階段で息が切れるようになった
- 顔色が悪いと家族に言われた
- 血液検査で貧血や血球の少なさを指摘された
- 手術や出産の予定があり、輸血の可能性について聞きたい
診断
輸血が必要かどうかは、症状の聞き取り、血液検査の数値、出血の量、持病や治療の内容を合わせて医師が判断します。輸血が決まった場合は、まず血液型を調べ、提供された血液との相性を確認する検査(交差適合試験・クロスマッチ)を行います。これは、体に合わない血液を入れないための大切な安全確認です。
行われる可能性のある検査
- 血算(けっさん:赤血球・白血球・血小板の数と hemoglobin〈ヘモグロビン〉を調べる検査)
- 血液型検査(ABO型・Rh型)
- 不規則抗体検査(血液に合わない相手かどうかを調べる検査)
- 交差適合試験(実際に使う血液との相性を確かめる検査)
- 凝固(ぎょうこ)の検査(血が固まりやすいか、止まりにくいか)
- 腎臓・肝臓の働きや電解質の検査
- 原因をさぐるための内視鏡検査や画像検査(必要に応じて)
診察で予想されること
輸血の前には、問診、採血、血圧・脈・体温の確認があります。輸血は腕の点滴の管から行われ、開始時と一定時間ごとに看護師が体調を確認します。手続きとして、内容を説明されたうえで同意書を書くことが一般的です。所要時間は輸血の種類や量によって異なり、数十分から数時間かかることがあります。
治療
輸血は、足りない血液の成分だけを補う「成分輸血」が中心です。赤血球を補う輸血、血小板を補う輸血、血漿を補う輸血などがあり、目的に合わせて選ばれます。あわせて、出血の原因や貧血の原因そのものを治療することが大切です。輸血は「一時的に支える」治療で、体が自分で血液を作れるようになるまでの時間をかせぐ役割を持っています。
自宅でのセルフケア
- 輸血中・輸血後に少しでも体調の変化を感じたら、すぐに看護師や医師に伝える
- 輸血のあとは、しばらく激しい運動や飲酒を控え、ゆっくり休む
- こまめに水分をとり、体を冷やしすぎない
- 出血しやすい薬を使っている場合は、自己判断でやめずに必ず医師・薬剤師に相談する
- 次回の検査日・受診日を守り、体調の記録をつけておく
- 献血は、輸血を支える大切な善意です。自分にできる範囲で関心を持ってみましょう
医療治療
輸血の種類と量は、血液検査の値・症状・出血の状況をもとに医師が決めます。輸血の前後には体温・血圧・脈を測り、副反応(発熱、発疹、息苦しさなど)が出ていないかを確認します。原因に応じて、貧血を改善するための治療や、出血を抑える治療、血液を作る働きを助ける治療などが組み合わせられることがあります。薬の内容や量については、担当の医師・薬剤師にご確認ください。
手術が検討される場合
手術で出血が多く見込まれる場合には、あらかじめ自分の血液を貯めておき、手術中や手術後に戻す「自己血輸血」が選ばれることがあります。また、手術の前後で貧血を整えておくことで、輸血の量を減らせる場合もあります。
この病気と共に生きる
輸血を受けたあとは、多くの人が数日で体調の変化を感じなくなりますが、しばらくは無理をせず、ふだんの生活に少しずつ戻していくのが安心です。輸血は「一度受けたら終わり」ではなく、原因によっては繰り返し必要になることもあります。受診を続け、血液検査の結果を一緒に確認していくことが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠と休養を十分にとり、疲れをためない
- 出血しやすい薬(痛み止めなど)は自己判断で使わず、医師・薬剤師に相談する
- 飲酒はほどほどにし、輸血直後は控える
- たばこは血管や心臓に負担をかけるため、減らす・やめることを考える
- 入浴や運動は、体調と担当医の指示に合わせて少しずつ再開する
- 体調の変化をメモしておき、受診のときに伝える
食事と運動
食事は、鉄分やたんぱく質を意識して、主食・主菜・副菜をそろえたバランスのよい内容を心がけましょう。貧血の原因によっては、鉄分の多い食品が役立つことがあります。運動は、散歩など軽いものから始め、息切れや動悸が強くならない範囲で行います。どの程度まで動いてよいかは、担当医に相談して決めると安心です。
精神的健康と心の健康
輸血と言われると、感染症のことや「自分の血ではないものが入る」ことに不安を感じる方は少なくありません。現在の日本の輸血は、献血の段階での検査と、輸血前の詳しい確認によって安全性が高く保たれています。それでも不安が続くときは、一人で抱えずに看護師や医師、家族に話してみてください。気持ちがつらい状態が続くときは、地域の相談窓口や医療機関の相談室も利用できます。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわずに身近な人や医療機関、地域の緊急の相談窓口に連絡してください。
予防
すべての輸血が防げるわけではありませんが、予防できる部分はあります。貧血を早めに見つけて治療する、出血しやすい薬を使うときは医師と相談する、胃や腸の潰瘍を放置しない、手術が決まっている場合は事前に貧血を整えておく、自分自身の血液を貯めておく自己血輸血を検討する、といった方法があります。
検診プログラム
健康診断などの血液検査で貧血(ヘモグロビンの値)を確認することが、早期発見につながります。貧血を指摘されたら、自己判断で様子を見ずに医療機関で相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 貧血が進むと、心臓に負担がかかり、動悸や息切れが強くなる
- 酸素が体に行きわたらなくなり、だるさ、集中力の低下、意識がもうろうとする状態になる
- 血小板が大きく減ると、出血が止まりにくくなり、命に関わることがある
- 大量の出血が続くと、血圧が下がってショック状態になることがある
長期的な見通し
輸血は、多くの人にとって命を支える安全な治療です。副反応が起こることはありますが、ほとんどは軽く、医療スタッフの観察で早めに対応できます。輸血の必要性や量は、その人の原因や体の状態によって変わります。主治医とよく相談しながら、治療の目的と見通しを一緒に確認していくことが、安心につながります。
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最終更新: 2026年11月3日
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