間欠的空気圧迫装置(IPC)―足のむくみや血栓を防ぐ医療機器
概要
間欠的空気圧迫装置(IPC)は、ふくらはぎや足、ときには腕に巻きつける「袖(カフ)」の中に、空気を一定のリズムで入れたり抜いたりする医療機器です。空気が入ると袖がふくらんで手足をやさしく締めつけ、空気が抜けるとゆるみます。この締めつけとゆるみの繰り返しが、筋肉がポンプのように血液を押し上げる動きを助け、血液やリンパの流れをよくします。その結果、むくみが軽くなり、血の塊(血栓=血液が固まって血管の中にできる塊)ができにくくなります。
重要な事実
- 病院では、手術の前後や長くベッドで安静にするときに、血栓予防のために広く使われています。
- むくみ(リンパ浮腫など)をやわらげる目的で使われることもあります。
- 圧迫の強さや装着する時間は人によって違うため、自分で強くしたり長時間にしたりせず、指示どおりに使いましょう。
- 機器は医療者の指示のもとで使うもので、ふつうは診察で必要性を判断したうえで使います。
とてもよく使われる機器です。病院では手術後の血栓予防や、動けない状態が続く人のケアとして日常的に使われています。持ち運びできるタイプもあり、退院後に自宅で使う人もいます。
手術を受けた人、長い間ベッドで過ごす人、脳卒中のあとで体を動かしにくい人、がん治療中の人、リンパ浮腫(リンパの流れが滞って手足が腫れる状態)のある人などが対象になります。年齢を問いませんが、高齢の方や体力が落ちている方では特に使われることが多いです。
症状
- 突然の息切れ、呼吸の苦しさ(肺の血管に血栓が詰まった可能性があります)
- 胸の強い痛み、冷や汗、咳に血が混じる
- 意識がもうろうとする、ぐったりして呼びかけに反応が弱い
- 片足が急に大きく腫れて、強く痛む
- 顔の片側が動かない、ろれつが回らない、手や足に急な力が入らない(脳卒中のサインのことがあります)
- ⚠足の腫れが急に強くなった、痛みが増した
- ⚠足の皮膚が赤く熱を持つ、触ると痛い
- ⚠袖の下の皮膚が赤くただれる、水ぶくれができる、皮がむける
- ⚠装着中に強い痛み、しびれ、冷たさを感じる
- ⚠発熱や体のだるさが続く
一般的な症状
- 足のむくみ(腫れぼったさ、靴や靴下の跡がくっきり残る)
- 足のだるさ、重い感じ、疲れやすさ
- 片足だけが腫れる、反対側と比べて太さが違う
- 長時間同じ姿勢でいたあとの足の違和感
- ふくらはぎの痛み、赤み、熱っぽさ(血栓のサインのことがあります)
- 皮膚が張って、つっぱる感じがする
子供の症状
- IPCは子どもに使われることは多くありませんが、必要と判断されれば体の大きさに合った袖を使って行われます。
- 子どもは痛みや違和感をうまく伝えられないことがあるため、泣く・嫌がる・袖をはずそうとする様子はサインかもしれません。
- 装着中に皮膚が赤くなっていないか、しびれていないかを大人がこまめに確認しましょう。
- 子どもの血栓はまれですが、手術後や長期間動けないときには注意が必要です。
高齢者の症状
- 高齢の方は血栓ができやすいため、IPCが使われることが多くなります。
- 皮膚が薄く弱くなっているため、かぶれ、赤み、圧迫の跡が残りやすい傾向があります。
- 体力に合わせて無理のない範囲で行い、痛みや違和感があればすぐに伝えましょう。
- 自分で意思を伝えにくい場合は、家族や介護する人が様子を見守ることが大切です。
原因
主な原因
- 血液の流れが滞ること:長く動かない、手術を受けた、体の一部が麻痺している、など
- リンパの流れが悪くなること:リンパ浮腫(手術や放射線治療のあとに起こることがあります)
- 心臓や腎臓の働きの変化によるむくみ
- 長時間の同じ姿勢(長距離の移動など)による血流の滞り
リスク要因
- 長期間ベッドで安静にする、ギプスなどで動けない状態
- 手術(特に足や股関節、おなかの手術)
- 脳卒中や脊髄の病気による手足の麻痺
- がん治療中、またはがんの既往
- 血栓の既往がある、家族に血栓の人がいる
- 肥満、高齢、妊娠・出産後
- 脱水、長時間のフライトや車の移動
- 一部のホルモンに関わるくすりを使っている(内容は医師・薬剤師に確認しましょう)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 片足だけ急に腫れて、痛みや赤みがある
- 息切れ、胸の痛み、血の混じった痰がある
- 装着中に皮膚が破れた、水ぶくれができた、強く痛む
- しびれや冷たさが続いて感覚がおかしい
定期受診を予約すべき場合:
- むくみが何日も続く、少しずつ悪くなっている気がする
- 圧迫が強すぎる、または弱すぎると感じる
- 装着のしかたや使用時間について不安がある
- 旅行や手術の予定があり、血栓予防について相談したい
- 皮膚のかゆみ、赤みが繰り返す
診断
IPCが必要かどうかは、診察と症状、これまでの病気や手術の履歴をもとに判断します。血栓が疑われるときは、足の血管の状態を調べる検査を行います。むくみの場合は、腫れの程度や皮膚の状態を観察し、必要に応じて他の原因(心臓・腎臓・リンパの病気など)を確かめます。
行われる可能性のある検査
- 診察と問診(症状の出方、仕事や生活の様子、既往歴を聞きます)
- 足の周径計測(巻尺で測って左右差を比べます)
- 血液検査(血栓ができているかの目安になる数値を調べます)
- 超音波(エコー)検査(血管の中の血栓や血液の流れを見ます)
- 必要に応じてCT検査やMRI検査
- 皮膚の観察(かぶれや傷がないかを確認します)
診察で予想されること
検査は痛みの少ないものがほとんどです。超音波検査はゼリーを塗って機械を当てるだけで、放射線も使いません。診察では、いつから腫れているか、片側か両側か、痛みがあるかを伝えると判断の助けになります。機器を使う場合は、装着のしかたと注意点の説明を受け、実際に試してから始めることが多いです。
治療
IPCは、病気を治すというより、血液やリンパの流れを助けて「むくみを減らす」「血栓を防ぐ」ためのサポート役の機器です。医療者が圧迫の強さや装着時間を決め、ほかのケア(歩くこと、弾性ストッキング、リンパマッサージなど)と組み合わせて行います。
自宅でのセルフケア
- できる範囲で体を動かす(ベッドの上でも足首を上下に動かす運動が役立ちます)
- 長時間同じ姿勢を続けず、こまめに姿勢を変える
- 水分をこまめにとる(脱水は血栓のリスクを上げます)
- 休むときは足を少し高くして、むくみを戻しやすくする
- 指示された弾性ストッキング(圧迫ストッキング)は正しく着用する
- 禁煙を心がける
- 適正な体重を保つ
- 装着前にトイレを済ませ、コードやチューブにつまずかないよう周りを片づける
医療治療
医療者は、体格や症状に合わせて袖のサイズ・圧迫の強さ・使用時間を決めます。装着中は皮膚の状態や血の流れを定期的に確認します。血栓が見つかった場合やその疑いが強い場合は、血液が固まりにくくなる治療が行われることがあり、その判断は医師が行います。リンパ浮腫では、専門的なリンパドレナージ(手でリンパの流れを促すケア)や包帯による圧迫などと組み合わせることがあります。具体的な治療方針や薬については、必ず担当の医師・薬剤師に確認してください。
この病気と共に生きる
装着中はテレビを見たり、本を読んだり、話をしたりしながら過ごせます。袖の中は少し暖かく感じます。音が気になる場合は、医療者に相談すると工夫できることがあります。自宅で使う場合は、使用する時間帯を決めて習慣にすると続けやすくなります。
予防
血栓やむくみは、ある程度予防できる部分があります。IPCはその方法のひとつで、ほかに「動くこと」「水分をとること」「圧迫ストッキングの使用」「長時間動かないときの工夫」などがあります。手術前後に血栓のリスクを評価してもらうことも大切です。
検診プログラム
手術の前や入院時には、血栓のリスクを確認するための問診や検査が行われることがあります。自分や家族に血栓の既往がある場合は、受診のときに伝えておきましょう。
合併症
治療しない場合
- 深部静脈血栓症(足の深い血管に血の塊ができる状態)
- 肺塞栓症(血栓が肺の血管に流れて詰まる、命に関わる状態)
- 血栓後症候群(血栓のあとに足の腫れや痛み、色の変化が長く続く状態)
- リンパ浮腫の悪化(腫れが広がり、皮膚が硬くなる)
- 皮膚のトラブル(かぶれ、傷、感染)
長期的な見通し
多くのかたは、IPCと生活の工夫を組み合わせることで、むくみやだるさが楽になっていきます。血栓も、早く気づいて対応すれば心配が少なくてすみます。気になる症状があれば早めに相談することが、安心につながります。
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最終更新: 2026年11月3日
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