アデノイド切除術(アデノイドを取る手術)
概要
アデノイドは、鼻の奥とのどの境目にあるリンパ組織のかたまりです。扁桃(へんとう)と同じように、細菌やウイルスから体を守るはたらきをしています。子どもでは成長とともに大きくなることが多く、大きくなりすぎると鼻の通り道をふさいでしまいます。アデノイド切除術は、鼻づまりやいびき、睡眠中の呼吸の乱れ、繰り返す耳のトラブルなどの原因になっているアデノイドを、口の中から取り除く手術です。顔の皮膚を切ることはないため、外見に傷は残りません。
重要な事実
- アデノイドは鼻の奥にある免疫の組織で、子どものころに大きくなりやすい
- 大きすぎると、鼻づまり・いびき・睡眠中の呼吸の乱れ・繰り返す中耳炎などの原因になる
- 手術は口の中から行うため、顔の外に傷は残らない。全身麻酔で行うことが多い
アデノイドが大きい子どもはめずらしくありません。アデノイド切除術は、子どもに行われる手術の中でも比較的よく行われるもののひとつです。
主に2〜10歳ごろの子どもに見られます。大人でアデノイドが問題になることはまれで、その場合はほかの鼻や耳の病気が隠れていないかを確認します。
症状
- 呼吸がとても苦しそうで、唇や顔色が青白い・紫色に見える
- 意識がぼんやりしている、呼びかけに反応が弱い
- 息が止まる状態が長く続き、戻らない
- 手術後に口から大量の血が出て止まらない、または吐血のような血が出る
- 手術後に呼吸ができにくくなった、声が出ないほど急にのどが腫れた
- ⚠睡眠中の息が止まる回数が急に増えた
- ⚠熱と首の腫れ、飲み込めずによだれが出る(すぐに受診が必要なサイン)
- ⚠耳の痛みや聞こえにくさが数日続く
- ⚠手術後に38度以上の熱が続く、または出血が少量でも長く続く
- ⚠水分がほとんどとれない、おしっこの量が減っている
一般的な症状
- 鼻がつまって口で息をする(口呼吸)
- いびきが大きい、いびきをかく
- 鼻声になる、声がこもる
- 鼻をかんでもすっきりしない、鼻水が奥にたまる感じがする
- 中耳炎を繰り返す、耳が聞こえにくいと言われる
- 副鼻腔炎(ちくのう)を繰り返す
- 寝ているときに息が浅い、いびきの途中で息が止まるように見える
- 食欲が落ちる、食べるのに時間がかかる
子供の症状
- 授乳や食事のときに息が苦しそうになる、途中で休む
- いびきの途中で息が止まり、その後大きく息を吸う(睡眠時無呼吸のサイン)
- 日中の眠気、ぼんやりする、集中しにくい
- 夜中に何度も目が覚める、夜尿(おねしょ)が続く
- 成長がゆっくりに見える、体重が増えにくい
- 口をぽかんと開けていることが多い、いわゆる「口ぽかん」の顔つきになる
- かぜをひきやすい、かぜが長引く
高齢者の症状
- 大人ではまれですが、鼻づまり・いびき・睡眠中の呼吸の乱れとして気づくことがあります
- 繰り返す副鼻腔炎や耳のつまり感が続く
- 大人の場合は、アデノイド以外の鼻・のど・耳の病気がないかを調べることが大切です
原因
主な原因
- アデノイドそのものが大きくなること(アデノイド肥大)
- かぜやのどの感染を繰り返すことで、アデノイドが腫れて大きくなる
- アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎があり、鼻の奥が慢性的に炎症を起こしている
- 多くの場合は、成長の過程で大きくなるもので、はっきりした原因がないことも多い
リスク要因
- 幼い年齢(2〜6歳ごろはアデノイドが大きくなりやすい)
- かぜや上気道の感染を繰り返している
- アレルギー性鼻炎がある
- 家族にいびきやアデノイドが大きい人がいる
- たばこの煙を吸う環境(受動喫煙)がある
- 肥満がある(睡眠中の呼吸の乱れに関係することがある)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 寝ているときに息が止まっているのを家族が気づいた
- 呼吸が苦しそう、顔色が悪い
- 飲み込めずによだれが出る、首が腫れて痛い
- 手術後に出血が続く、熱が高い
定期受診を予約すべき場合:
- いびきが何か月も続いている
- 口で息をする癖が続き、日常生活に影響している
- 中耳炎や副鼻腔炎を繰り返している
- 聞こえにくいと言われる、呼んでも反応が遅いことがある
- 朝起きると頭が痛い、日中の眠気が強い
診断
まず問診で、いびき・口呼吸・睡眠中の様子・耳や鼻のトラブルの回数を確認します。次に診察で鼻やのどの中を観察し、必要に応じて鼻の奥を細いカメラでのぞいて、アデノイドの大きさや空気の通り道の狭さを調べます。睡眠中の呼吸の状態が気になる場合は、睡眠の検査を行うことがあります。
行われる可能性のある検査
- 鼻咽頭(びいんとう)ファイバースコープ:細いカメラで鼻の奥を観察する検査
- 鼓膜の観察と聴力検査:中耳炎や聞こえの状態を確認する
- 首のレントゲン撮影:鼻の奥の通り道の狭さを確認する
- 睡眠時無呼吸の検査(終夜睡眠ポリグラフ、または自宅で行う簡易検査)
- アレルギー検査や血液検査:鼻炎や感染の影響を確認する
診察で予想されること
診察やカメラの検査は数分で終わり、痛みはほとんどありません。子どもが嫌がる場合は、無理をせず短時間で終える工夫をします。検査の結果は、症状の強さとあわせて総合的に判断されます。
治療
症状の強さと、睡眠・耳・成長への影響をみて治療方針を決めます。軽い症状であれば、鼻の炎症を整えながら様子を見ることもあります。睡眠中の呼吸の乱れがはっきりしている場合や、繰り返す中耳炎・鼻づまりで生活に支障がある場合は、手術が検討されます。
自宅でのセルフケア
- 部屋を加湿し、乾燥を避ける
- たばこの煙を避ける(本人も周りの人も)
- 手洗い・うがいを習慣にし、かぜを予防する
- 寝ているときのいびきや息の止まりをメモしておき、受診のときに伝える
- 鼻がつまるときは、医師に相談したうえで鼻をやさしく洗う方法を教えてもらう
医療治療
鼻の粘膜の腫れやアレルギー性鼻炎をやわらげる治療(点鼻薬や飲み薬など)、繰り返す中耳炎に対する治療(鼓膜に小さなチューブを入れる方法など)を行うことがあります。ただし、薬でアデノイドそのものを小さくすることは難しいとされています。治療の内容は医師が症状に合わせて選びます。
手術が検討される場合
睡眠中の呼吸の乱れがはっきりしている、中耳炎や副鼻腔炎を繰り返す、鼻づまりで日常生活や睡眠に支障がある、成長や発達への影響が心配される、といった場合に手術が検討されます。手術は全身麻酔で行われることが多く、入院して行う場合と日帰りで行う場合があります。担当の医師から、メリットとリスクの説明を受けたうえで決めましょう。
この病気と共に生きる
手術を受けた場合は、1〜2週間ほどのどの痛みや鼻づまりが続くことがあります。手術直後は鼻づまりが一時的に強くなったように感じることもありますが、回復とともに楽になっていくのが一般的です。学校や幼稚園への復帰の時期は、医師の指示に従ってください。
生活習慣のアドバイス
- 回復期は刺激の少ない、やわらかい食事をとる
- こまめに水分をとり、のどを乾燥させない
- 激しい運動やプールは、医師に許可されるまで控える
- かぜをひかないよう、手洗い・うがい・換気を心がける
- 睡眠時間を十分にとり、生活リズムを整える
食事と運動
回復期は、やわらかく温度が刺激にならない食事と十分な水分が大切です。回復したあとは通常の食事と運動に戻せます。肥満がある場合は、体重を整えることが睡眠中の呼吸の乱れをやわらげる助けになることがあります。食事や運動の再開については、担当の医師や管理栄養士に相談してください。
精神的健康と心の健康
子どものいびきや口呼吸は、本人も家族も心配になるものです。睡眠が浅いと、日中の集中力や機嫌に影響することもあります。手術を受けるかどうかで迷う気持ちも自然なことです。不安や疑問は遠慮なく医師に話し、家族で気持ちを共有しながら進めていきましょう。
予防
アデノイドが大きくなること自体を完全に防ぐ方法はありません。ただ、かぜや感染を繰り返さないこと、アレルギー性鼻炎を整えること、たばこの煙を避けることは、鼻やのどの炎症を軽くし、症状をやわらげる助けになる可能性があります。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌など、その年齢で勧められるワクチンを接種しておくことは、感染症を防ぐ助けになります。接種の時期や種類については、かかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
アデノイド肥大のための特別な健診はありません。いびきや口呼吸が続く場合は、かかりつけ医や耳鼻咽喉科に相談することが早期の気づきにつながります。
合併症
治療しない場合
- 睡眠中の呼吸の乱れ(睡眠時無呼吸)が続き、睡眠の質が下がる
- 日中の眠気や集中力の低下、学習面への影響
- 成長や体重の増え方への影響
- 繰り返す中耳炎による聞こえの低下
- 副鼻腔炎の慢性化
- 口呼吸が続くことによる、歯並びやかみ合わせへの影響
長期的な見通し
アデノイド切除術は比較的よく行われる手術で、多くの場合、いびきや鼻づまり、睡眠の質が改善したと感じられます。出血などの合併症は起こりうるものの頻度は低く、多くの子どもは無事に回復します。症状が気になる場合は、早めに医療者に相談しながら、お子さんに合った方法を一緒に選んでいきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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