子宮筋腫核出術(しきゅうきんしゅかくしゅつじゅつ)— 筋腫だけを取りのぞく手術
概要
子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)は、子宮の筋肉の一部がこぶのようにふくらんだもので、ほとんどが「良性(りょうせい)」、つまりがんではない腫瘍(しゅよう)です。子宮筋腫核出術は、この筋腫だけを取りのぞき、子宮はそのまま残す手術です。子宮を残したい人、とくに将来妊娠を考えている人にとって大切な選択肢のひとつです。手術には、おなかに小さな穴をあけて行う腹腔鏡(ふくくうきょう)手術、おなかを開いて行う開腹(かいふく)手術、膣(ちつ)から内視鏡を入れて行う子宮鏡(しきゅうきょう)下手術など、いくつかの方法があります。筋腫の大きさや数、位置によって、どの方法が合うかが変わります。
重要な事実
- 子宮筋腫核出術は、筋腫だけを取りのぞき、子宮を残す手術です。子宮を全部取る手術(子宮全摘術)とは異なります。
- 手術の方法は、腹腔鏡(おなかに小さな穴)、開腹(おなかを開く)、子宮鏡(膣から入れる)などから、筋腫の状態に合わせて選ばれます。
- 筋腫は残した子宮に再びできることがあり、手術後も定期的な診察が必要になることがあります。
子宮筋腫はとてもよくある病気で、月経のある年代の女性のおよそ3〜4人に1人ほどに見つかると言われています。いつも症状があるわけではなく、気づかないまま過ごしている人も少なくありません。そのため、筋腫の手術を受けることも珍しいことではありません。
主に月経のある年代(20代後半から40代)の女性に見られます。閉経(へいけつ:月経が終わること)を過ぎると、筋腫は小さくなることが多いとされています。10代など思春期より前の女の子にはほとんど見られません。
症状
- 手術後に、ナプキンを1時間ももたないほどの大量の出血がある、または止まらない
- 息切れ、胸の痛み、片脚の急な腫れや痛み(血栓〈けっせん〉の可能性)
- 意識がもうろうとする、ふらついて立てない、顔色が真っ白
- 激しい下腹部の痛みで動けない、何度も吐く
- 38度を超える高熱と、ぐったりした状態が続く
- ⚠手術の傷が赤く腫れる、膿(うみ)のようなものが出る、痛みが強くなる
- ⚠出血が少しずつ増えてきた、血のかたまりが大きくなってきた
- ⚠37.5度以上の熱が続く
- ⚠尿が出にくい、おなかが張って排便・排ガスがない
- ⚠手術後、痛み止めを使ってもつらい痛みが続く
一般的な症状
- 月経量が多くなる、レバーのような大きな血のかたまりが出る
- 月経の出血が長く続く(7日以上など)
- 生理痛のような下腹部の痛みや、腰の重さ・痛み
- 貧血(ひんけつ:血が足りず、だるさ・息切れ・めまいが起こる状態)
- おなかがふくらむ、下腹部にしこりを感じる
- 頻尿(ひんにょう:トイレが近くなる)、尿が出にくい
- 便秘(べんぴ)になりやすい、おなかが張る
- 性交時の痛み
- 妊娠しにくい、流産をくり返すなど、妊娠に関わる問題(筋腫の場所による)
子供の症状
- 思春期前の子どもにはほとんど見られません。
- 10代で見つかる場合は、月経痛が強い、月経量が多いなどの症状で受診して分かることがあります。
- 子どもの場合は、まず小児科や婦人科(思春期外来など)で相談してください。
高齢者の症状
- 閉経後は筋腫が小さくなることが多く、症状が軽くなることもあります。
- 閉経後に出血がある場合は、筋腫とは別の原因を確かめる必要があるため、早めに婦人科を受診してください。
- 高齢の方は、貧血や心臓・血圧などの持病があると手術のリスクが変わるため、事前の相談が大切です。
原因
主な原因
- 子宮筋腫ができるはっきりした原因はまだ分かっていません。
- 女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の影響が関係していると考えられています。閉経後に小さくなるのはそのためです。
- 遺伝的な体質や、細胞の変化が関係しているという研究もあります。
- 筋腫は「がん」ではありません。良性のこぶのようなものです。
リスク要因
- 月経のある年代(とくに30〜40代)であること
- 家族(母・姉妹など)に子宮筋腫の人がいる
- 肥満(ひまん)ぎみであること
- 初経(はつけい:初めての月経)が早かった
- 出産の経験がない
- 食生活や運動などの生活習慣も、研究で関連が指摘されています(はっきりした因果はまだ分かっていません)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 月経の出血が止まらず、立ちくらみや動悸(どうき)がある
- 下腹部の激しい痛みが急に出た
- 手術後に、大量の出血・高熱・息切れ・胸の痛みがある(救急要請を)
定期受診を予約すべき場合:
- 月経量が多い、月経が長い、生理痛が年々強くなっている
- トイレが近い、便秘が続く、おなかが張る感じが続く
- 貧血を指摘された、疲れやすい・息切れがする
- 妊娠を考えていて、筋腫があると言われた
- 筋腫と言われて数年たち、そろそろ状態を確認したい
診断
まず問診で、月経の量や痛み、トイレの回数、妊娠の希望などをうかがいます。そのうえで内診(腟から指で子宮の大きさや形を確かめる診察)と超音波(ちょうおんぱ)検査を行い、筋腫の大きさ・数・位置を確認します。必要に応じてMRI検査や血液検査(貧血の確認)を行います。診断は痛みを伴うものではなく、多くの場合その日のうちに概要が分かります。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状・月経の記録・妊娠の希望などを確認)
- 内診(子宮の大きさや形を確かめる)
- 経腟(けいちつ)超音波検査、または腹部超音波検査
- MRI検査(筋腫の位置や数をくわしく見る、手術方法を決めるのに役立つ)
- 血液検査(貧血の程度、腎機能や凝固〈ぎょうこ〉の状態などを確認)
- 場合により子宮鏡(しきゅうきょう)検査(子宮の内側をカメラで見る)
診察で予想されること
検査は外来で行えるものがほとんどです。超音波検査は痛みがなく、10〜20分ほどで終わります。MRIは大きな音がしますが、体の負担は少ない検査です。検査結果をもとに、症状の強さ、筋腫の状態、妊娠の希望、生活の予定をふまえて、手術をするか、別の方法を選ぶかを先生と相談していきます。
治療
子宮筋腫の治療には、①経過を見る、②薬で症状をやわらげる、③手術で筋腫を取りのぞく、という大きく3つの選択肢があります。症状が軽ければ、定期的に検査しながら様子を見ることもできます。手術には、筋腫だけを取る「核出術」と、子宮を取る「全摘術」があります。妊娠を考えている方、子宮を残したい方には核出術が検討されます。どの方法が合うかは、筋腫の大きさ・数・位置、症状の強さ、年齢、妊娠の希望、持病などによって変わります。
自宅でのセルフケア
- 月経の量・日数・痛みを手帳やアプリに記録しておくと、受診のときに役立ちます。
- 貧血ぎみのときは、鉄分を多く含む食品(赤身の肉・魚・ほうれん草・大豆製品など)を意識してとりましょう。
- 痛み止めは、自分で判断して使い続けず、まずは医師や薬剤師に相談してください。
- 疲れやすいときは無理をせず、睡眠と休養をしっかりとるようにしましょう。
- 手術後は、先生に指示された期間、重いものを持つことや激しい運動を控えましょう。
医療治療
薬での治療は、月経量や痛み、貧血をやわらげる目的で行われます。女性ホルモンの働きを調整する治療や、出血を減らす治療、痛みを和らげる治療などがあり、年齢や症状、妊娠の希望に合わせて選ばれます。薬だけで筋腫が完全になくなるわけではなく、治療をやめると症状が戻ることがあります。薬の種類や使い方については、必ず医師・薬剤師の説明を受けてください。
手術が検討される場合
手術は、次のようなときに検討されます。月経量が多くて貧血が進み、日常生活がつらい。痛みや圧迫感(頻尿・便秘など)が強い。筋腫が大きい、または急に大きくなってきた。妊娠を考えていて、筋腫が妊娠に影響している可能性がある。薬での治療では症状がおさまらない。手術の方法や時期は、生活の予定や体の状態をふまえて先生と相談して決めましょう。
この病気と共に生きる
手術後の回復には個人差がありますが、腹腔鏡手術では2〜4週間ほど、開腹手術では4〜6週間ほどで日常生活に戻れることが多いと言われます。入院中は早めに体を動かし始めることが回復に役立ちます。退院後も、疲れやすさや傷の違和感がしばらく続くことがあります。仕事や家事は、少しずつペースを戻していきましょう。
生活習慣のアドバイス
- 手術後は、先生の指示に従って少しずつ歩くなど、無理のない範囲で体を動かしましょう。
- 重いものを持つ、腹筋に力が入る運動、長時間の入浴(指示があるまで)は控えましょう。
- 傷口は清潔に保ち、指示された方法でケアしましょう。
- 月経が再開したら、量や痛みを記録しておきましょう。
- 妊娠を考えている場合は、手術後の妊娠可能な時期について必ず先生に確認しましょう。
- 定期的な診察を受け、再発がないかを確認しましょう。
食事と運動
バランスのよい食事を心がけ、鉄分・たんぱく質・野菜をしっかりとりましょう。便秘はおなかの張りや痛みを強くすることがあるので、水分と食物繊維をとることも大切です。手術後は、回復に合わせて散歩などの軽い運動から始め、体力が戻ってきたら無理のない範囲で続けましょう。
精神的健康と心の健康
手術は体だけでなく、気持ちにも大きな影響を与えることがあります。痛みや出血から解放される安心感がある一方で、手術への不安、傷あとや体の変化への戸惑い、妊娠についての心配、再発への心配など、さまざまな気持ちがわいてくるのは自然なことです。パートナーや家族、友人に話すこと、同じ経験をした人の話を聞くことが助けになることもあります。つらい気持ちが続くときは、一人で抱えず、医療機関やお住まいの自治体の相談窓口、公的な相談サービスを利用してください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えたときは、ためらわず救急(119番)や医療機関に連絡してください。
予防
子宮筋腫を確実に防ぐ方法は、今のところ分かっていません。ただし、バランスのよい食事、適正体重を保つこと、適度な運動などの生活習慣は、体全体の健康に役立ちます。症状がなくても、月経の変化に気をつけておくことが大切です。
検診プログラム
子宮筋腫そのものをみつける決まった検診はありませんが、自治体のがん検診などで婦人科を受診したときに見つかることがあります。月経量が多い、生理痛が強い、トイレが近いなどの症状があるときは、我慢せずに婦人科で相談してください。厚生労働省も、気になる症状があるときの早めの受診をすすめています。
合併症
治療しない場合
- 月経量が多くなり、貧血(ひんけつ)が進んで、だるさ・息切れ・めまいが続くことがあります。
- 頻尿や便秘、おなかの張りなど、生活の質が下がる症状が強くなることがあります。
- 筋腫が大きくなると、手術が難しくなったり、開腹手術が必要になったりすることがあります。
- 妊娠を考えている場合、筋腫の場所によっては妊娠しにくさや流産のリスクに関わることがあります。
- まれですが、筋腫が急に大きくなる、強い痛みが出るなどの変化があると、別の病気との区別が必要になります。
長期的な見通し
子宮筋腫核出術は、多くの人にとって症状をやわらげ、生活の質を上げる助けになります。子宮を残せるため、妊娠を希望する人にとって大切な選択肢です。一方で、筋腫が再びできることはあり、数年で1〜3割程度の人に再発すると言われることもあります。手術後も定期的に診察を受け、気になる症状があれば早めに相談することが安心につながります。あなたの状況に合った方法を、先生と一緒にゆっくり選んでいきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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