鼓膜チューブ(耳管チューブ)留置の手術について
概要
鼓膜チューブ留置術(こまくチューブりゅうちじゅつ)は、耳の鼓膜(こまく=耳の奥にある薄い膜)に小さな穴をあけ、そこに小さなチューブを入れる治療です。チューブは、鼓膜の内側の中耳(ちゅうじ=鼓膜の奥の小さな空間)にたまった液体を外へ出し、空気の通り道を保つ役目をします。特にお子さんの中耳炎(ちゅうじえん=耳の奥の炎症)で、耳に水がたまったまま何か月もよくならないときに使われることが多い治療です。手術といっても日帰りで行われることが多く、時間も短めです。
重要な事実
- 鼓膜に小さな穴をあけてチューブを入れる治療で、中耳にたまった液体を抜き、耳の換気を助けます。
- 多くは日帰りで行われ、全身麻酔か、眠らせるタイプの麻酔で行われます。入院が必要な場合もあります。
- チューブは数か月から1年ほどで自然に外れることが多く、外れた穴も多くの場合は自然にふさがります。
- チューブを入れても、聞こえや言葉の発達の確認のため、しばらく通院が必要です。
はい、とてもよく行われる治療です。特に生後6か月から3歳くらいのお子さんで、中耳炎をくり返したり、耳に水がたまった状態(滲出性中耳炎=しんしゅつせいちゅうじえん)が長びいたりしたときによく検討されます。世界的にも、多くの子どもたちが受けている治療です。
主な対象は、中耳炎をくり返すお子さんや、耳に水がたまって聞こえにくい状態が続くお子さんです。成人でも、耳管(じかん=中耳と鼻の奥をつなぐ管)の働きが悪くなったときや、飛行機に乗った後・ダイビングの後に耳の詰まった感じが続くときなどに検討されることがあります。
症状
- 高熱と首の硬さ(首が前に曲がらない)がある
- 意識がもうろうとしている、けいれんが起きた
- 顔の片側が動かない、口がゆがむ
- 耳の後ろが赤く腫れて、触ると強く痛む
- 激しい頭痛や、何度も吐く
- ⚠耳だれが続いて止まらない
- ⚠耳の痛みが強く眠れない
- ⚠急に聞こえが悪くなった、耳鳴りが急に強くなった
- ⚠チューブが入っている耳から出血した、またはチューブが見えなくなった
- ⚠発熱が続いて、ぐったりしている
一般的な症状
- 耳が痛い、または耳の奥がずきずきする
- 耳が詰まった感じ、水が入ったような感じが続く
- 聞こえにくい、音がこもって聞こえる
- 耳だれ(耳から液体が出る)
- 発熱や、機嫌が悪くなる(特にお子さん)
- 耳をよく触る、引っぱる
子供の症状
- 呼びかけに反応しにくい、聞き返しが多い
- テレビや動画の音量を以前より大きくする
- 言葉の発達がゆっくりに感じる、発音がはっきりしない
- 耳を触る、耳を引っぱる、機嫌が悪い
- 保育園や学校でぼんやりしているように見える
- K大人しい、集中しにくいと言われることがある(聞こえにくさが原因のことがあります)
高齢者の症状
- 耳の閉塞感(詰まった感じ)が長く続く
- 聞こえが悪くなった気がする、会話が聞き取りにくい
- 飛行機の搭乗後やダイビング後に耳の調子が戻らない
- 鼻や副鼻腔の調子が悪いとき、耳の症状も一緒に悪くなる
原因
主な原因
- 中耳炎をくり返す(急性中耳炎=きゅうせいちゅうじえん)
- 滲出性中耳炎:耳に水がたまった状態が長く続く
- 耳管の働きが悪くなる(耳管機能不全=中耳の空気の入れかえがうまくいかない状態)
- アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎、鼻づまりの慢性的な状態
- 扁桃(へんとう)の腫れや、口蓋裂(こうがいれつ)、ダウン症など、耳管の形や働きに関わる体の特徴
リスク要因
- 生後6か月から3歳くらいの年齢(耳管がまだ短く水平に近いため)
- 集団保育など、かぜをもらいやすい環境
- 受動喫煙(家族のたばこの煙)にさらされている
- 人工乳(ミルク)主体で育てている、または寝かせたまま哺乳びんをくわえる習慣
- きょうだいが多い、季節(秋から冬にかけてかぜが多い)
- アレルギーや免疫の体質、鼻やのどの形の特徴
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 耳の痛みが強く、眠れない、泣き止まない
- 耳だれが出て止まらない
- 急に聞こえが悪くなったと感じる
- チューブ留置後に耳から出血した、強い痛みが出た
- 高熱が続く、ぐったりしている、水分がとれない
定期受診を予約すべき場合:
- 耳が詰まった感じが2週間以上続く
- 聞き返しが増えた、テレビの音量が大きくなった
- 中耳炎を短期間にくり返している
- ことばの発達が気になる
- チューブが入っているが、耳だれや耳の違和感が続く
- チューブが外れた、あるいは見えなくなった気がする
診断
まず問診で、症状がいつから続いているか、中耳炎を何回くり返したか、聞こえの様子や言葉の発達を確認します。そのうえで耳の中をのぞく診察(耳鏡=じきょう)を行い、鼓膜の様子や中耳に水がたまっていないかを観察します。必要に応じて、鼓膜の動きを測る検査や聴力検査を行い、チューブが必要かどうかを総合的に判断します。
行われる可能性のある検査
- 耳鏡(じきょう)・耳内視鏡による鼓膜の観察
- ティンパノメトリー(鼓膜の動きやすさを測り、中耳に水がたまっていないかを見る検査)
- 聴力検査(聞こえの程度を調べる検査)
- 必要に応じて画像検査(CTなど)や血液検査
- お子さんの場合、ことばの発達や生活の様子についての聞き取り
診察で予想されること
診察は短時間で、痛みもほとんどありません。聴力検査は、お子さんの年齢によっては遊びのような形で行われます。検査の結果はその場で説明されることが多く、チューブを入れるかどうかは、症状の続き具合、聞こえの程度、言葉への影響、くり返す回数などを合わせて相談して決めていきます。すぐに決める必要はなく、ご家庭でよく話し合ってから決めて大丈夫です。
治療
治療は、まず薬や鼻のケアで様子を見ることから始まります。それでも耳に水がたまった状態や聞こえにくさが続くとき、中耳炎をくり返すときに、鼓膜チューブ留置が検討されます。チューブは、たまった液体を外に出し、中耳に空気を通しやすくすることで、聞こえを改善し、中耳炎のくり返しを減らす助けになります。
自宅でのセルフケア
- 鼻をかむときは片方ずつ、やさしくかむ
- かぜをひいたら早めに休み、鼻づまりを長引かせない
- チューブが入っている間は、医師の指示に従って耳に水が入らないようにする(耳栓を使う、プールや海は医師に確認する)
- 家族のたばこの煙を避ける
- 授乳のときは頭を少し高くし、寝かせたまま哺乳びんをくわえさせない
- 気になる症状をメモしておき、診察のときに伝える
医療治療
まずは保存的な治療が行われます。鼻の炎症やアレルギーをやわらげる治療、鼻づまりを取るケア、必要に応じて抗菌薬などの薬物治療が検討されます。薬は医師の判断で選ばれ、自己判断で量を変えたり中止したりしないことが大切です。薬で改善しない場合や、聞こえの低下が続く場合に、鼓膜切開(鼓膜に小さな穴をあけて液体を抜く処置)やチューブ留置が検討されます。治疗内容は症状や年齢によって変わるため、かかりつけの医師とよく相談してください。
手術が検討される場合
鼓膜チューブ留置は、次のような場合に検討されます。中耳に水がたまった状態が3か月以上続き、聞こえが悪いとき。中耳炎を短期間に何度もくり返すとき。聞こえにくさが言葉の発達に影響している可能性があるとき。鼓膜や中耳の状態が悪くなっていく心配があるとき。手術は短時間で、多くは日帰りで行われます。麻酔の方法や入院の必要性は、年齢や体の状態、施設の方針によって変わります。
この病気と共に生きる
チューブが入っている間は、耳に水が入らないようにすることが大切です。髪を洗うときや入浴のときは、医師や看護師に教わった方法で耳を守りましょう。プールや海、川遊びについては、チューブの種類や状態によって判断が変わるので、必ず診察で確認してください。チューブは数か月から1年ほどで自然に外れることが多く、外れた後も多くの場合は穴が自然にふさがります。定期的な通院で、聞こえや鼓膜の状態を確認していきます。
生活習慣のアドバイス
- 家族全員でたばこの煙を避ける(受動喫煙は中耳炎のリスクを上げます)
- 手洗いやうがいを習慣にし、かぜをひきにくい環境をつくる
- 鼻づまりを放置せず、必要なら耳鼻咽喉科で相談する
- チューブ留置中は、医師の指示に沿って耳の水濡れ対策をする
- 飛行機に乗る予定があるときは、事前に医師に相談する
- 予防接種の予定を確認し、かかりつけ医と相談しておく
食事と運動
特別な食事制限は必要ありません。バランスのよい食事と十分な睡眠で、かぜをひきにくい体づくりを心がけましょう。運動はふだんどおりで問題ないことが多いですが、チューブ留置中は耳に水が入る可能性のある遊び(潜水など)について医師に確認してください。
精神的健康と心の健康
お子さんが手術を受けると聞くと、保護者の方は不安になったり、自分を責めてしまったりすることがあります。それは自然な気持ちです。チューブ留置はよく行われる治療で、聞こえを助け、くり返す中耳炎を減らすための前向きな選択肢のひとつです。お子さん自身も、病院や耳の処置に緊張することがあります。ゆっくり説明し、安心できる声かけをしてあげてください。保護者の方の不安が続くときは、かかりつけ医や看護師、地域の子育て相談窓口に話してみてください。つらい気持ちが強いときは、一人で抱えず、身近な相談先や医療機関に相談することが大切です。
予防
中耳炎や耳に水がたまる状態を完全に防ぐことはできませんが、リスクを下げる工夫はあります。家族のたばこの煙を避ける、かぜをひいたら早めに休む、鼻づまりを長引かせない、授乳のときは頭を少し高くする、といったことが役立ちます。かぜをひきやすい環境では、手洗い・うがいを習慣にしましょう。
ワクチン
肺炎球菌やヒブ(インフルエンザ菌b型)などの予防接種は、中耳炎の原因になる細菌による感染を減らすのに役立つとされています。定期接種のスケジュールは自治体によって案内がありますので、母子健康手帳で確認し、かかりつけ医に相談してください。インフルエンザワクチンなど任意接種についても、かかりつけ医に相談するとよいでしょう。
検診プログラム
乳幼児健診では、 hearing(聞こえ)の確認や耳の診察が行われることがあります。聞こえの反応が乏しい、呼びかけに反応しにくいと感じたら、健診を待たずに耳鼻咽喉科で相談してください。成人の場合は、聞こえにくさや耳の詰まりが続くときに早めに受診することが大切です。
合併症
治療しない場合
- 聞こえにくい状態が長く続く
- お子さんの場合、ことばの発達や学習に影響することがある
- 鼓膜が薄くなったり、へこんだままになったりする
- 鼓膜に穴があいたままになる(穿孔)
- まれですが、中耳にできものができる真珠腫(しんじゅしゅ)や、耳の後ろの骨の感染(乳様突起炎)などの重症な状態につながることがある
長期的な見通し
多くのお子さんは、チューブ留置によって聞こえが改善し、中耳炎のくり返しも減っていきます。チューブは自然に外れ、鼓膜の穴も多くの場合はふさがります。経過には個人差がありますが、定期的に通院して状態を確認していくことで、安心して過ごせるケースがほとんどです。心配な点は、その都度かかりつけ医に相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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