前立腺がんのフォーカルセラピー(焦点療法)
概要
前立腺は、男性だけにあるクルミくらいの大きさの臓器で、膀胱(尿をためるところ)のすぐ下、尿の通り道を囲むようにあります。前立腺がんは、この前立腺にできるがんです。 フォーカルセラピー(焦点療法)は、前立腺を全部とったり、前立腺全体に放射線をかけたりするのではなく、画像で見つけた「がんがある部分」とそのすぐ周りだけを狙って治療する方法の総称です。前立腺の残りの部分をできるだけ残すことで、尿もれや性機能などへの影響を小さくできる可能性があります。ただし、まだ新しい選択肢で、長い目で見た治療成績は研究中です。
重要な事実
- 前立腺全体を治療する標準的な方法(手術・放射線)に比べ、排尿や性機能への負担を減らせる可能性がある一方、長期的なデータはまだ集まっている途中です。
- 対象になるのは主に、がんが前立腺の片側や限られた範囲にとどまっている比較的早期の方です。
- 日本では保険がきかず、自由診療(全額自己負担)で行われることが多い治療です。
- 治療後もPSA検査(血液検査)やMRI、必要に応じて針生検で、がんが残っていないかを長く確認していく必要があります。
前立腺がん自体は、男性のがんの中でとても多いがんで、日本でも患者数は増えています。一方でフォーカルセラピーは比較的新しい治療の考え方で、まだ標準治療とは位置づけられておらず、実施している施設も限られています。
主に50歳以上の男性に多いがんで、年齢を重ねるほどリスクが高くなります。フォーカルセラピーを検討できるのは、そのうち早期がんで、がんが前立腺の限られた範囲にとどまっていると判断された方の一部です。小児には起こりません。
症状
- 尿がまったく出なくなり、下腹部が張って激しく痛む(尿閉)。
- 38℃以上の高熱と寒気がして、ぐったりして動けない(感染症が全身に広がった可能性)。
- 大量の血尿が続き、ふらつく、顔色が悪い、動悸がする。
- 急に腰や背中が強く痛む、足に力が入らない、尿や便の感覚がおかしい(脊髄が圧迫されている可能性)。
- ⚠血尿が数日続く。
- ⚠発熱がある、寒気がする。
- ⚠排尿時の痛みが強い。
- ⚠治療を受けたあとに尿が出にくい、または熱が出た。
一般的な症状
- 初期はほとんど症状がなく、健康診断やPSA検査で見つかることが多いです。
- 尿の出が悪い、出始めるまでに時間がかかる、尿が細い。
- トイレが近い(頻尿)、夜中に何度もトイレに起きる。
- 尿に血が混じる、射精のときに痛みがある、精液に血が混じる。
- 腰や背中、太ももの骨の痛み(がんが広がった場合)。
子供の症状
- 前立腺は男性だけの臓器で、前立腺がんは小児には起こりません。お子さんの排尿の症状は別の原因が多く、気になるときは小児科に相談してください。
高齢者の症状
- 年齢とともに前立腺肥大症(がんではない、前立腺が大きくなる病気)も増えるため、排尿の症状がどちらによるものか区別しにくくなります。
- 持病や体力、生活で大切にしたいこと(仕事、趣味、性生活など)をふまえて、治療を選ぶことが大切です。
- 複数の病気の薬を飲んでいる場合は、治療の前に薬剤師や主治医にまとめて相談しておくと安心です。
原因
主な原因
- 前立腺がんがなぜできるのかは、まだ完全には分かっていません。
- 細胞の遺伝子の変化が積み重なって、少しずつがんになっていくと考えられています。
- 年齢(加齢)が最も大きな要因で、50歳を過ぎるとリスクが上がります。
リスク要因
- 50歳以上の男性(特に65歳以上)。
- 家族歴:父や兄弟に前立腺がんがある。
- 遺伝子の生まれつきの違い(一部のがん関連遺伝子など)。
- 肥満、高脂肪の食事に偏った食生活、喫煙、運動不足。
- 前立腺がんが多い地域・民族的な背景(アフリカ系に多いとされます)。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿がまったく出ない、下腹部が張って痛い。
- 高熱と寒気がある。
- 血尿が続く、または血のかたまりが出る。
定期受診を予約すべき場合:
- トイレが近い、尿の出が悪いといった症状が続いている。
- 健康診断や人間ドックでPSAが高いと指摘された。
- 家族に前立腺がんの人がいて心配。
- 前立腺がんと診断され、治療の選択肢を知りたい(フォーカルセラピーを含む)。
診断
まず血液検査でPSA(前立腺から出るタンパク質で、高いと前立腺の病気が疑われる値)を測ります。高い場合や直腸診(おしりから指で前立腺の硬さをみる診察)で気になる所見があれば、泌尿器科でMRIを撮り、前立腺に細い針を刺して組織を採る針生検(MRIの画像を見ながら狙う「狙い撃ち生検」も行われます)で、がんかどうか、悪性度はどうかを確かめます。フォーカルセラピーが向いているかどうかは、MRIと生検の結果から、がんの位置・広がり・悪性度(グリソンスコアという数字で表します)を総合して判断します。
行われる可能性のある検査
- PSA血液検査(必要なら数か月あけて再検)。
- 直腸診(おしりから指で前立腺を触る診察)。
- 前立腺MRI(がんの位置と広がり、生検の狙い場所を決めるのに使います)。
- 前立腺針生検(組織を採って、がんかどうか・悪性度を調べます)。
- 転移が心配な場合のCTや骨シンチグラフィ(骨に広がっていないかの検査)。
- 排尿の状態をみる検査(尿流量測定、残尿測定など)。
診察で予想されること
針生検は局所麻酔で行われ、数日間、尿や精液に血が混じることがあります。結果が出るまでに1〜2週間ほどかかります。フォーカルセラピーを受けられるかどうかは、検査結果を専門医と一緒に見ながら決めていきます。納得できないときは、遠慮なくセカンドオピニオン(別の医師の意見)を求めてよいものです。
治療
前立腺がんの治療は、がんの広がりと悪性度、年齢、持病、そして「生活で何を大切にしたいか」をふまえて選びます。早期がんなら、すぐに治療せずに定期的に検査しながら様子をみる「監視(アクティブサーベイランス)」、前立腺を全部とる手術、放射線治療、そしてフォーカルセラピーなどが候補になります。フォーカルセラピーは「がんのある部分だけを狙う」考え方の治療で、代表的な方法として、高密度焦点式超音波(HIFU:超音波の熱で治療する)、凍結療法(クライオ:凍らせて治療する)、光線力学的療法などがあります。日本では保険がきかず自由診療で行われることが多い点も、よく確認しておきましょう。
自宅でのセルフケア
- 排尿の記録(回数・量・時間)をつけておくと、診察で役立ちます。
- 骨盤底筋体操(肛門をキュッと締める運動を繰り返す)は、尿もれの予防に役立ちます。
- 便秘を防ぐ(水分と食物繊維、規則的な排便)。
- 禁煙し、お酒はほどほどに。
- 治療後は言われた通りの時期にPSA検査を受け、自己判断で受診を中断しないこと。
医療治療
フォーカルセラピーは、MRIや超音波の画像で治療する範囲を決め、麻酔をかけたうえで前立腺の一部だけを熱や冷気などで処理する方法です。日帰り、あるいは数日の入院で行われることが多いです。治療後は、PSA検査やMRI、必要に応じて針生検で、がんが残っていないか、再発していないかを定期的に確認します。起こりうる合併症には、一時的な血尿、頻尿、尿もれ、排尿の痛み、感染、直腸への影響などがあり、また狙った範囲の外にがんが残る(取り残し)可能性があるため、長く通院を続けることが大切です。標準治療と比べてどうかは、施設ごとの経験や成績の情報も含めて専門医と相談して決めてください。薬の名前や量については、必ず主治医・薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
前立腺を全部とる手術(全摘出術)は、がんが前立腺の外に広がっている、悪性度が高い、フォーカルセラピーや放射線のあとに再発した、といった場合に検討されます。手術をせずに経過をみていく選択肢もあります。体力や持病も含めて、泌尿器科の医師とよく話し合って決めましょう。
この病気と共に生きる
治療のあとしばらくは、血尿、頻尿、尿もれ、坐骨のあたりの違和感などが出やすいですが、多くは時間とともに落ち着いていきます。PSA検査の予定を守ることが、いちばん大切な再発チェックになります。発熱や尿が出ない状態があれば、我慢せずにすぐ医療機関に連絡してください。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙する。お酒はほどほどに。
- 適正体重を保つ。
- 骨盤底筋体操を毎日の習慣にする。
- 便秘を防ぐ(水分・食物繊維・適度な運動)。
- 治療後しばらくは、医師の指示に合わせて入浴や性生活の再開時期を確認する。
食事と運動
野菜、果物、豆類、魚、全粒穀物を中心にしたバランスのよい食事がおすすめです。加工肉や高脂肪の食事は控えめに。運動は、ウォーキングなど息が少しはずむ程度のものを、週に合計150分くらいを目安に、無理のない範囲で続けましょう。治療直後は、医師から運動の制限を言われることがあるので従ってください。
精神的健康と心の健康
「標準治療ではない治療を選ぶ」ことへの不安、再発への心配、性機能や尿の変化への悩みは、多くの方が感じます。一人で抱え込まず、パートナーや家族、医療者に話してみてください。不安で眠れない、気分が落ち込んで何も手につかないといった状態が続くときは、泌尿器科の医師や看護師、がん相談支援センターに早めに伝えましょう。つらい気持ちが強いときは、地域の相談窓口や医療機関を頼ってください。
予防
前立腺がんを確実に防ぐ方法は、今のところ分かっていません。ただし、禁煙、適正体重を保つこと、バランスのよい食事、適度な運動といった生活習慣は、がん全般のリスクを下げるのに役立つと考えられています。フォーカルセラピーは予防法ではなく、あくまで治療の選択肢です。
検診プログラム
日本では、前立腺がんのPSA検査は、国のがん検診として全国一律には決まっておらず、自治体や職場の健康診断で任意に実施されていることがあります。受けるかどうかは、早期に見つかる利益と、見つかっても治療が不要なものを拾ってしまう不利益(過剰診断)の両方をふまえて、かかりつけ医や泌尿器科医と相談して決めましょう。症状がなくても気になるときは、泌尿器科で相談できます。
合併症
治療しない場合
- 前立腺がんは進行がゆっくりなことが多く、すぐに命に関わるとは限りません。ただし放置すると、前立腺の外に広がったり、骨などに転移したりすることがあります。
- フォーカルセラピーの場合、狙った範囲の外にがんが残っている可能性があり、追跡検査を受けないと見逃すおそれがあります。
- 治療のあと、尿もれや排尿のトラブル、性機能の変化が続くことがあります。
長期的な見通し
早期に見つかり、適切に経過をみたり治療を続けたりできれば、多くの方は長く元気に日常生活を送れています。フォーカルセラピーは、生活の質をできるだけ保ちながら治療したい方にとっての選択肢の一つです。一方で、長期的な成績のデータはまだ集まっている途中なので、最新の情報と自分の状況を照らし合わせて、納得いくまで相談して決めることが大切です。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年11月3日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.