放射線治療のあとに前立腺がんが再発したときの凍結療法(サルベージ凍結療法)
概要
サルベージ凍結療法は、前立腺がんが一度治療したあとで、同じ前立腺の中に再び見つかったときに行うことのある治療です。「サルベージ」は英語で「救済」という意味で、前立腺を手術で取り除く代わりに、細い針を前立腺に刺し、その先を冷やして、がん細胞を凍らせて壊します。おなかを大きく切る手術ではないため、体への負担が比較的少ない方法です。ただし、誰にでも向いている治療ではなく、がんの広がり方やこれまでの治療の内容、体の状態などをみて、医師が適しているかどうかを判断します。
重要な事実
- 放射線治療(外から照射する治療や、前立腺の中に小さな線源を入れる治療)を受けたあとに、前立腺の中だけで再発した方の選択肢のひとつです。
- 針を刺して凍らせる方法で、入院は数日程度になることが多い治療です。全身麻酔か、腰のあたりに麻酔をかけて行います。
- 治療のあとは、排尿の変化や性機能の変化が出ることがあります。あらかじめどんな変化が起こりうるかを知り、準備しておくことが大切です。
決して多い治療ではありません。前立腺がんが再発した方すべてに行うものではなく、再発の場所や大きさ、これまでの治療、体力や持病などを総合して、適しているかどうかを慎重に判断します。
主な対象は、放射線治療を受けたあとに、前立腺の中だけでがんが再発した成人男性です。多くは中高年の方ですが、年齢だけで決まるものではなく、体の状態や本人の希望も含めて話し合って決めます。
症状
- おしっこがまったく出ず、下腹部が張って強く痛む(尿閉=尿がたまったまま出せない状態)
- 38度以上の熱と、体の震えが止まらない
- 大量の血尿が続き、ふらつく・顔色が悪い
- 意識がぼんやりする、会話がかみ合わない
- 息苦しさや胸の痛みが急に出た
- ⚠血尿が2日以上続く
- ⚠37.5度以上の発熱がある
- ⚠排尿時の痛みが強く、トイレがつらい
- ⚠治療を受けた部分の傷口が赤く腫れる、膿のようなものが出る
- ⚠おしっこが途中から出にくくなってきた
一般的な症状
- 再発そのものは、自覚症状がほとんどないことが多く、血液検査のPSA値(前立腺でつくられるたんぱく質の値)の上昇で見つかることが多いです。
- おしっこが出にくい、勢いが弱い、途中で途切れる
- トイレの回数が増える(とくに夜間)
- 排尿のあとに残った感じがする、すっきりしない
- 尿に血が混じる(血尿)
- 骨盤のあたり、腰、背中の鈍い痛み
- 射精のときに痛みを感じる、精液に血が混じる
子供の症状
- この治療は前立腺がんの成人男性のためのもので、小児には行いません。お子さんの排尿の症状については、小児科の医師にご相談ください。
高齢者の症状
- 高齢の方は、もともとの排尿の弱さや頻尿があることが多く、治療後の変化がわかりにくいことがあります。
- 心臓・腎臓・糖尿病などの持病があると、治療の負担が大きくなることがあるため、事前に主治医へすべて伝えておきましょう。
- 体力や生活の状況をふまえ、治療の目的(がんを抑えること)と、生活の質(ふだんの暮らしやすさ)のどちらをどれだけ大切にするかを、家族も交えて話し合うことが役立ちます。
原因
主な原因
- 前立腺がんの再発:放射線治療のあと、前立腺の中に残っていたがん細胞が増えてくることがあります。
- 再発は多くの場合、自覚症状ではなくPSA値の上昇で最初に見つかります。
- 前立腺の外に広がっていない「局所再発」であることが、この治療を考えられる条件のひとつです。
リスク要因
- もとのがんの悪性度が高かった(検査の点数で高いとされた)
- 治療後にPSA値が下がりきらず、下がっても早く上がってきた
- 放射線治療からある程度の期間がたっている
- 前立腺のサイズが大きい
- 喫煙などの生活習慣
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- おしっこが出ない、または出にくくて下腹部が張っている
- 発熱や悪寒がある
- 血尿が続く、または血のかたまりが出る
- 強い痛みがある
定期受診を予約すべき場合:
- 治療後にPSA値が上がってきたと言われた
- トイレの回数や尿の勢いの変化が気になる
- 勃起や射精の変化について相談したい
- 治療を受けるかどうか迷っている、ほかの選択肢も聞きたい
診断
まず血液検査でPSA値を測り、これまでの値と比べてどう変化したかをみます。次に、直腸から指で触れる診察や、MRIなどの画像検査で、前立腺の中のどこに、どれくらいの大きさで再発しているかを確認します。前立腺の外や骨などに広がっていないかを調べる検査も行います。必要に応じて、前立腺に細い針を刺して組織をとる検査(針生検)を行い、がんの性質を確かめます。
行われる可能性のある検査
- PSA血液検査(数か月ごとの変化をみる)
- 直腸診(肛門から指で前立腺の状態を触れる診察)
- MRI検査(前立腺の中の再発の場所や大きさをみる)
- CT検査(リンパ節などへの広がりをみる)
- 骨シンチグラフィやPET検査(骨などへの転移を調べる、施設によって行われます)
- 前立腺針生検(必要に応じて)
- 尿の検査、腎臓の働きの血液検査
診察で予想されること
検査は何回かに分けて行われ、結果がそろうまでに数週間かかることがあります。待っている間は不安なものです。結果が出たら、治療の選択肢を主治医から説明してもらうので、質問をメモしておくとよいでしょう。必要であれば、別の病院の医師の意見を聞くこと(セカンドオピニオン)もできます。
治療
再発したときの治療は、再発の場所と広がり、これまでの治療の内容、年齢や体力、持病、そして「何を大切にしたいか」を合わせて決めていきます。選択肢には、急がずにPSA値を定期的にみていく方法、サルベージ凍結療法、前立腺をとる手術(サルベージ手術)、男性ホルモンの働きを抑える治療(ホルモン療法)、放射線を追加で行う方法などがあります。それぞれに良い点と注意点があるため、ひとつに決めつけず、比べてみることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 水分をこまめにとり、便秘を防ぐ(便秘は排尿のつらさを強めることがあります)
- カフェインやアルコールは、排尿の症状が強いときは控えめにする
- 骨盤底筋体操(肛門をきゅっと締める動きを繰り返す運動)を、看護師や理学療法士に教わって続ける
- 治療後は尿の回数や量を簡単に記録すると、受診時に役立ちます
- 禁煙する
- 無理のない範囲で体を動かし、体重を管理する
- つらい症状や不安は我慢せず、遠慮なく医療者に伝える
医療治療
治療法は大きく分けて、前立腺を凍らせて壊す方法(凍結療法)、手術で前立腺を取り除く方法、男性ホルモンの働きを抑えてがんの成長を遅らせる方法(ホルモン療法)、放射線を追加で当てる方法などがあります。どの方法が合うかは、再発の状態や体の状態によって変わります。薬を使う場合も、薬の種類や量は医師・薬剤師から説明を受け、自己判断で始めたりやめたりしないようにしてください。この記事では特定の薬の名前や量はお伝えしません。
手術が検討される場合
サルベージ凍結療法は、針を刺して行う手術の一種です。全身麻酔、または腰のあたりに麻酔をかけて行われ、入院は数日程度のことが多いです。治療のあと数日から2週間ほど、尿を体外に出すための管(尿道カテーテル)が入ることがあります。放射線治療後の手術は、組織が硬くなっているため難しくなることがあり、経験のある施設で受けることが大切です。
この病気と共に生きる
治療のあと、しばらくはトイレの回数が増える、尿もれがある、排尿時にしみるといった変化が出ることがあります。多くは数週間から数か月かけて落ちてきますが、個人差があります。勃起や射精の変化が出ることも多く、これも事前に知っておくことで心の準備ができます。PSA値を定期的に測りながら、ゆっくり日常に戻っていくイメージを持ってください。
生活習慣のアドバイス
- 排尿の症状が強いときは、外出先のトイレの場所をあらかじめ確認しておくと安心です
- 下着の替えを持ち歩くなど、尿もれへの備えをしておく
- 長時間の移動のときは、こまめにトイレに寄る
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- 喫煙はしていれば卒業を目指す
- 痛みやつらさをがまんせず、必要なら医療者に相談する
食事と運動
食事は特別な制限があるわけではありませんが、野菜・果物・魚・大豆製品などをバランスよくとり、塩分や加工肉をとりすぎないようにするとよいでしょう。排尿の症状が気になるときは、コーヒーやお茶などカフェインの多い飲み物、アルコールを控えめにすると楽になることがあります。運動はウォーキングなど無理のないものを、続けられる範囲で行いましょう。骨の健康のためにも、日光を浴びて体を動かすことが役立ちます。
精神的健康と心の健康
「また再発したらどうしよう」という不安や、気分の落ち込み、眠りにくさを感じる方は少なくありません。これは弱さではなく、誰にでも起こることです。気持ちがつらいときは、一人で抱えずに主治医、看護師、家族、友人、あるいは同じ経験をした人の集まりに話してみてください。もし、気持ちが追い詰められて眠れない、消えてしまいたいと感じるようなことがあれば、すぐに医療機関や地域の相談窓口に連絡してください。緊急のときは119番で救急を呼ぶこともできます。
予防
前立腺がんの再発を100%防ぐ方法は今のところありません。ただし、治療後もPSA検査を続けて変化を早く見つけること、禁煙、バランスのよい食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけることは、体全体の状態を保つ助けになります。
ワクチン
この治療や前立腺がんの再発に関して、予防できるワクチンはありません。
検診プログラム
治療後は、PSA値を定期的に測ることが再発を見つける一番の方法です。通院の間隔は状態によって変わるため、主治医の指示に従ってください。排尿の変化など気になる症状があれば、次の予定を待たずに相談してかまいません。
合併症
治療しない場合
- 再発したがんが大きくなり、前立腺の外へ広がる可能性があります
- 骨やリンパ節など、離れた場所へ転移する可能性があります
- 排尿が困難になる、おしっこが出なくなる(尿閉)
- 血尿が続く
- 腰や骨盤、骨の痛みが出ることがあります
長期的な見通し
サルベージ凍結療法を受けた方の多くは、治療後にPSA値が下がり、落ち着いた状態を長く保てています。経過は一人ひとり違い、排尿や性機能の変化が残ることもありますが、それらへの対処法も増えています。治療を受けるかどうかを含め、安心して決められるよう、主治医とよく話し合ってください。
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最終更新: 2026年11月3日
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