頸椎人工椎間板置換術(首の椎間板を人工のものに替える手術)
概要
頸椎(けいつい)とは首の骨のことです。首の骨は7つの骨が積み重なってできていて、その骨と骨のあいだにあるクッションの役割をするのが椎間板(ついかんばん)です。椎間板がすり減ったり、中の軟らかい部分が外に飛び出したりすると、近くを通る神経を圧迫して、首・肩・腕の痛みやしびれが起こります。頸椎人工椎間板置換術は、傷んだ椎間板を取り除き、その場所に人工の椎間板(金属や特殊なプラスチックでできた小さな部品)を入れる手術です。首の骨を金具で固定してしまう手術(固定術)とは違い、首がある程度動く状態を残せる可能性があるのが特徴です。
重要な事実
- 首の椎間板の病気で、神経が圧迫されて痛みやしびれが続く人に行われる手術です。
- 全身麻酔で行い、入院して受ける手術です。手術にかかる時間は一般的に数時間程度といわれています。
- 首の動きを残せることが期待できますが、すべての人に合う手術ではなく、向いているかどうかは検査の結果をもとに医師が判断します。
首の椎間板の手術全体でみると、日本では骨を固定する手術が主流で、人工椎間板置換術はまだ限られた医療機関で行われている、比較的新しい選択肢です。報告される件数は増えてきていますが、病院によって経験の差が大きいのが現状です。
主に成人で、とくに30〜50代の、頸椎椎間板ヘルニアや変形性頸椎症と診断された人が対象になります。薬やリハビリなどの保存的な治療を続けても、痛みやしびれが十分よくならない場合に検討されます。高齢の方では骨の状態や他の病気の有無を確かめたうえで判断されます。子どもでは椎間板の病気自体がまれで、この手術が行われることはほとんどありません。
症状
- 急に手足が動かなくなった、力が入らない
- 尿や便の感覚がなくなり、自分で排泄をコントロールできない
- 転倒や事故のあとに首が激しく痛み、動かせない
- 息が苦しい、飲み込みにくい、声が出しにくい
- 意識がもうろうとしている
- ⚠腕や手の力が急に弱くなった、字が書きにくくなった
- ⚠歩きにくい、足がもつれる感じがする
- ⚠手の細かい動き(ボタンを留める、箸を使う)が急にできなくなった
- ⚠痛みやしびれが急に強くなり、眠れないほどになった
一般的な症状
- 首の痛み、とくに後ろに反らせたり、長時間同じ姿勢をとったときに強くなる痛み
- 肩から腕、手にかけて広がる痛み
- 指先のしびれや、物に触れた感覚が鈍くなる感じ
- 腕や手に力が入りにくい、物を落としやすくなる
- 肩甲骨のあいだの痛みや、後頭部の痛み
- 首を動かすと腕にしびれが走る(神経の圧迫で起こる症状)
子供の症状
- 子どもでは首の椎間板の病気自体がとてもまれで、この手術が行われることはほとんどありません。
- 子どもの首の痛みやしびれは、けが、姿勢、感染症など別の原因のことが多いので、まず小児科や整形外科に相談してください。
高齢者の症状
- 年齢とともに骨のとげ(骨棘)や脊柱管の狭まりを伴うことが多く、症状の出方や手術方法の選び方が変わります。
- 骨が弱くなっている場合や、他の持病がある場合は、手術の前にしっかりした検査と相談が必要です。
- 血液を固まりにくくする薬などを飲んでいる場合は、必ず医師と薬剤師に伝えてください。
原因
主な原因
- 加齢による椎間板のすり減り(変性)
- 椎間板の一部が外に飛び出して神経を圧迫する状態(椎間板ヘルニア)
- 首のけがやむち打ちのような外傷
- 生まれつき首の神経の通り道が狭い場合
- 長年の姿勢や仕事による首への負担の積み重ね
リスク要因
- 長時間のデスクワーク、スマートフォンやパソコンの見過ぎ
- うつむき姿勢や、同じ姿勢を長く続けること
- 重い物を運ぶ仕事や、首に振動が伝わる作業
- 喫煙(椎間板への血流を悪くすると考えられています)
- 肥満や運動不足
- 過去の首のけがの経験
- 家族に首の椎間板の病気が多い場合
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 手足の麻痺、排尿・排便の異常、歩行の乱れがあるとき
- 痛みやしびれが急に強くなったとき
- 腕の筋力が明らかに落ちてきたと感じたとき
定期受診を予約すべき場合:
- 首や腕の痛み、しびれが2週間以上続くとき
- 市販の痛み止めを使っても改善せず、生活に支障が出ているとき
- 仕事や家事、睡眠に支障が出ているとき
- 手術を検討している、あるいは勧められて迷っているとき
診断
問診と診察で、痛みやしびれの出方、力の入り方、反射の様子などを確認します。そのうえで画像検査を行い、どの椎間板が神経を圧迫しているのか、手術が合うタイプかを総合的に判断します。
行われる可能性のある検査
- レントゲン検査(骨の並びや安定性、首の動きをみます)
- MRI検査(椎間板や神経の状態を詳しくみます)
- CT検査(骨の細かい形や骨の硬さをみます)
- 神経伝導検査(神経の伝わり方を調べます)
- 血液検査(炎症や感染がないかを確認します)
- 必要に応じて他の科の診察や、全身の状態の確認
診察で予想されること
検査は基本的に痛みのないものが多く、MRIでは機械の中に入るため少し閉じた感じがすることがあります。検査結果はすぐに出るものと、数日かかるものがあります。医師から説明を受けるときは、質問をメモにしておくと安心です。手術を急に決める必要はなく、納得いくまで相談してかまいません。
治療
まずは手術ではない方法で症状をやわらげることを目指します。安静や姿勢の工夫、リハビリ、痛みの管理を組み合わせ、それでも日常生活が難しい場合に手術が選択肢になります。
自宅でのセルフケア
- 長時間同じ姿勢を避け、30分ごとに軽く首を動かしたり休んだりする
- 画面の高さを目に合わせ、うつむき姿勢を減らす
- 痛みの少ない範囲で、首や肩まわりのストレッチを無理なく行う
- 睡眠を十分にとり、枕の高さを見直す
- 喫煙している場合は禁煙を考える
- 重い物を一度に持たない、首に負担のかかる姿勢を避ける
医療治療
医療機関では、痛みをやわらげる薬や、神経の痛みに働く種類の薬、湿布などが使われることがあります。加えて、理学療法士によるリハビリ、姿勢の指導、神経のまわりの炎症をしずめる注射などが行われることもあります。どの治療をどの順番で行うかは、症状の強さや生活状況に合わせて医師と相談して決めます。薬の内容や量については、必ず処方した医師・薬剤師の説明に従ってください。
手術が検討される場合
手術は、薬やリハビリを続けても腕の痛みやしびれが強く残る場合、筋力の低下や日常生活の支障がはっきりしている場合、画像で神経の圧迫が確認できる場合などに検討されます。頸椎人工椎間板置換術は、首の動きを残したい人に向く一方、骨の状態が悪い、椎間板の高さが保てない、複数の椎間板が傷んでいる、といった場合には別の方法が選ばれることがあります。手術の利益とリスクの両方を、担当医から詳しく説明してもらってください。
この病気と共に生きる
手術のあとは、医師の指示に従って少しずつ動くことが大切です。首の動きには一時的な制限がつくことがあります。日常生活では、重い物を持ち上げる、長時間うつむく、急に首をひねるといった動作を控えめにし、体の使い方を少しずつ調整していきましょう。
生活習慣のアドバイス
- デスクやスマートフォンの位置を調整し、姿勢を意識する
- 定期的に立ち上がって体を動かす習慣をつくる
- 禁煙を検討する
- 適正体重を保つ
- 運転やスポーツの再開時期は、必ず医師に確認する
- 痛みやしびれの変化を記録しておき、診察のときに伝える
食事と運動
特別な食事制限が必要なわけではありませんが、野菜・たんぱく質・乳製品などをバランスよくとり、骨と筋肉の健康を保つことが大切です。運動は、痛みの出ない範囲でのウォーキングや、肩甲骨まわりの軽いストレッチから始めると続けやすくなります。新しい運動や強い負荷をかける運動は、主治医や理学療法士に相談してからにしましょう。
精神的健康と心の健康
首の痛みやしびれが長く続くと、眠れない、集中できない、気分が落ち込むといった変化が起こることがあります。手術を迷う気持ちや、術後の不安も自然なことです。ひとりで抱え込まず、家族や友人、医療者に話してみてください。つらい気持ちが続くときは、医療機関の相談窓口や地域の相談サービスを利用する方法もあります。気持ちが追い詰められていると感じたら、早めに専門家に相談してください。
予防
首の椎間板の病気を完全に防ぐことはできませんが、首への負担を減らす工夫でリスクを下げられる可能性があります。姿勢や作業環境の見直し、適度な運動、禁煙、体重管理が役立ちます。
検診プログラム
この病気のための決まった検診はありません。首や腕の痛み、しびれが続く場合は、検診を待たずに整形外科などで相談してください。
合併症
治療しない場合
- 神経の圧迫が続き、腕や手のしびれ・筋力低下が進むことがあります
- 細かい手の動きがしにくくなる、歩きにくくなるなど、日常生活に支障が出ることがあります
- 痛みで眠れない、仕事や家事が難しい状態が続くことがあります
- まれですが、膀胱や腸の働きに影響が出る場合があります
長期的な見通し
首の椎間板の病気は、多くの場合、保存的な治療で症状が軽くなっていきます。手術が必要な場合も、検査を重ねて適した方法を選ぶことで、痛みやしびれの改善が期待できます。人工椎間板置換術は、首の動きを残せる可能性がある選択肢のひとつです。経過には個人差があるため、心配なことは遠慮なく医療者に相談しながら、自分のペースで進めていきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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