両心室ペースメーカー(心臓再同期療法)について
概要
両心室ペースメーカーは、心臓の左右の心室(心臓の下側にある血液を送り出す部屋)に電気の刺激を送り、心臓がよりそろって動けるように手助けする小さな医療機器です。心臓再同期療法(CRT)とも呼ばれます。心不全(心臓が十分な血液を送り出せなくなった状態)の中でも、左右の心室の動きがずれている人に使われます。機器は胸の皮膚の下に埋め込み、細い電線(リード)を通して心臓につなぎます。
重要な事実
- 胸の皮膚の下に埋め込む小さな機器で、細い電線を通して心臓に電気の刺激を送ります。
- 左右の心室の動きのずれを減らし、心臓のポンプの働きを助けることを目的とします。
- 電池は数年ごとに交換が必要で、定期的な通院での点検が大切です。
- 心臓を治すというより、心臓の働きを支えて症状をやわらげる治療です。
心不全の患者さんのうち、心電図で心室の動きのずれが見られる一部の方に行われる治療です。めずらしい治療ではありませんが、すべての心不全の方に必要というわけではなく、適応は心臓の専門医が総合的に判断します。
主に、心不全の症状があり、心臓の筋肉の働き(駆出率)が低下していて、心電図で電気の伝わり方が乱れて左右の心室がずれて動いている方です。中高年以降の方に多いものの、若い方に必要になることもあります。
症状
- 強い胸の痛みが続く
- 突然の激しい息苦しさ、息ができない感じ
- 意識がない、呼びかけに反応がない
- 顔や唇が青白い、冷や汗がひどい
- 脈がとても速い、または遅くて気を失いそうになる
- ⚠足のむくみが急に強くなった、2〜3日で体重が急に増えた
- ⚠横になると息苦しく、夜中に息が苦しくて目が覚める
- ⚠動悸が続く、ふらついて立てない
- ⚠ペースメーカーを入れた傷口が赤い・腫れている・膿が出る・熱がある
- ⚠ペースメーカーの周りの筋肉がピクピク動き続ける
一般的な症状
- 息切れ(歩いたとき、階段をのぼったときなど)
- 疲れやすい、体がだるい
- 足や足首のむくみ
- 横になると息苦しい、夜中に息が苦しくて目が覚める
- 動悸(心臓の鼓動が強く感じる)、脈の乱れ
- 数日のうちに体重が急に増える(体に水分がたまるため)
子供の症状
- 母乳やミルクを飲む力が弱い、飲みながら休む
- 体重がなかなか増えない
- 汗をかきやすい、呼吸が速い
- 少し遊ぶとすぐ疲れて休みたがる
- 顔色が悪い、唇の色が悪く見える
高齢者の症状
- 息切れより先に、食欲が落ちる・体力が落ちる
- 歩くのが遅くなる、ぼんやりする時間が増える
- 足のむくみや体重の増加に気づきにくい
- 夜に何度もトイレに起きる(体にたまった水分が出るため)
原因
主な原因
- 心筋梗塞など冠動脈の病気による心臓の筋肉のダメージ
- 高血圧による心臓への長期的な負担
- 心筋症(心臓の筋肉そのものの病気)
- 弁膜症(心臓の弁の病気)
- 心臓の電気の伝わり方の異常(左脚ブロックなど)
- 先天性の心臓病、心筋炎、大量の飲酒など
リスク要因
- 脂質異常(コレステロールなどが多い状態)
- 肥満、運動不足
- 塩分の多い食事、過度の飲酒
- 睡眠時無呼吸
- 心臓病の家族歴
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 安静にしていても息苦しい、横になれない
- 体重が数日で急に増えた、むくみが急に強くなった
- 動悸が続く、ふらつく、気が遠くなる
- 傷口の赤み・腫れ・膿・発熱
- 機器の周りの筋肉がピクピクする、ふらつきや失神があった
定期受診を予約すべき場合:
- 階段や坂で息切れが増えてきた
- 以前より疲れやすい、体が重い
- 足のむくみが続いている
- ペースメーカーの定期点検の時期が来た
- 旅行やMRI検査などの予定がある(事前に相談を)
診断
まず問診と診察で、息切れやむくみなどの症状とこれまでの病歴をうかがいます。次に心電図で心臓の電気の流れ(左右の心室のずれ)を確認し、心エコー(超音波)で心臓の動きと血液を送り出す力を調べます。その結果をあわせて、両心室ペースメーカーが役立ちそうかを総合的に判断します。
行われる可能性のある検査
- 心電図(心臓の電気の流れを調べる)
- ホルター心電図(24時間の心電図を記録する)
- 心エコー検査(超音波で心臓の動きと弁を調べる)
- 胸部X線検査
- 血液検査(心不全の程度を示す数値を調べる)
- 必要に応じて心臓カテーテル検査、CT、MRI
- 6分間歩行試験など、体の動きと症状を確かめる検査
診察で予想されること
検査の多くは痛みが少なく、短時間で終わります。日を分けて行うこともあり、結果が出るまでに数日かかる場合もあります。結果をもとに、担当医と治療の選択肢をゆっくり相談してください。わからないことは遠慮なく質問してよい場面です。
治療
両心室ペースメーカーは、心不全の薬による治療や生活管理と組み合わせて使われます。植え込みは通常、局所の麻酔と鎮静で行われ、胸の皮膚の下に機器を入れて、静脈を通して心臓に細い電線を届けます。入院は数日程度が一般的です。植え込み後も、定期的な点検と生活管理を続けることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 毎日同じ時間に体重を測り、記録する
- 血圧と脈拍を記録する
- 塩分を控えめにし、水分の取り方は主治医の指示に従う
- 処方された薬を自己判断でやめたり減らしたりしない
- 禁煙し、飲酒は控えめにする
- 傷口は清潔に保ち、赤みや腫れがないか見る
- 携帯電話やスピーカーなどは機器から少し離して使う
- MRIなど強い磁気を使う検査の前には、必ず機器のことを伝える
- 定期点検を欠かさない
医療治療
心不全の治療は、生活管理と薬による治療、そして必要に応じて機器による治療を組み合わせて進めます。薬の種類や量は人によって異なるため、主治医や薬剤師に確認しながら続けてください。両心室ペースメーカーの植え込みには、感染、出血、電線のずれ、まれに肺を傷つけることなどのリスクもあります。担当医から説明を受け、わからない点は事前に質問しておきましょう。
手術が検討される場合
薬による治療を続けても心不全の症状がよくならず、心電図で心室の動きのずれがあり、心臓のポンプ機能が低下している場合などに検討されます。植え込みが適切かどうかは、心臓の専門医が症状・検査結果・生活背景をあわせて判断します。
この病気と共に生きる
多くの方は植え込み後、これまでに近い日常生活を送れます。入浴は傷が治ってからになります。家電は通常どおり使えますが、電子レンジの扉の近くに長く体を寄せない、強い磁石を胸に近づけないなどの基本的な注意を守りましょう。空港の保安検査では、機器が入っていることを伝えてください。運転については症状や地域の決まりによって異なるため、必ず主治医に相談してください。
生活習慣のアドバイス
- 体重・血圧・脈を毎日記録する
- 処方された薬を決まった時間に続ける
- 禁煙し、飲酒は控えめにする
- 睡眠を十分にとり、無理な疲労をためない
- 手洗いや歯のケアで感染を予防する
- 旅行や引っ越しの予定は早めに医療機関へ伝える
- 気温の変化が大きい時期は体調の変化に気をつける
食事と運動
塩分は1日6g未満を目安にするとよいとされることが多く、汁物を減らす、加工食品を控えるなどの工夫が役立ちます。水分の量は人によって違うため、主治医に確認してください。運動は、心臓リハビリやウォーキングなど、息が上がりすぎない範囲で無理なく続けるのが基本です。始める前と運動中に体調を確認し、苦しければすぐ休みましょう。
精神的健康と心の健康
息切れや疲れやすさが続くと、気分が落ち込んだり、将来への不安が強くなったりすることがあります。体内に機器があることへの不安や、音や振動への違和感を感じる方も少なくありません。つらい気持ちを一人で抱えず、家族や主治医、看護師、医療ソーシャルワーカーに話してみてください。日本の厚生労働省も、心の相談窓口に関する情報を提供しています。気持ちの落ち込みが続くときは、遠慮なく医療機関に相談を。
予防
両心室ペースメーカーが必要になる状態そのものを完全に防ぐことは難しいですが、心臓病のリスクを減らすことは大切です。血圧・血糖・コレステロールを管理し、禁煙、適正体重の維持、塩分控えめの食事、節酒、適度な運動、睡眠時無呼吸の治療などを心がけましょう。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンは、心不全の方が感染症で体調を大きく崩すのを防ぐのに役立つと、厚生労働省などが勧めています。接種のタイミングは主治医と相談してください。
検診プログラム
健診での血圧測定・心電図・血液検査は、心臓の変化に早く気づく助けになります。息切れやむくみが気になるときは、健診を待たずに早めに受診しましょう。
合併症
治療しない場合
- 心不全が悪化し、入退院をくり返すことがある
- 息切れや疲れやすさで日常生活が制限される
- 不整脈が起きやすくなる
- 腎臓の働きが悪くなることがある
- 急に息が苦しくなる状態(急性の悪化)を起こすことがある
長期的な見通し
両心室ペースメーカーは、心臓の動きのずれがある方にとって、息切れなどの症状や生活の質を改善することが期待できる治療です。心臓そのものを治すものではありませんが、薬や生活管理と組み合わせることで、多くの方が落ち着いた毎日を送っています。体調の変化を記録しながら主治医と定期的に相談を続けることが、安心につながります。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年11月3日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.