脳の手術(脳外科手術)について
概要
脳の手術(脳外科手術)は、脳やそのまわりの血管、頭蓋骨(ずがいこつ=頭の骨)、脳を包む膜などの病気を治すために行う手術です。脳は体の動きや言葉、記憶、気持ちをコントロールしているとても大切な器官なので、手術は脳をできるだけ傷つけないように、MRIやCTなどの画像で場所を確かめながら慎重に行われます。手術が必要かどうかは、病気の種類や大きさ、症状の強さ、年齢や体の状態をふまえて、担当の医師とよく話し合って決めていきます。
重要な事実
- 脳の手術には、頭を開けて行う開頭(かいとう)手術のほか、鼻や小さな穴から内視鏡(カメラ)を入れる方法、血管の中から治療する方法など、いくつかの種類があります。
- 手術の目的は、病気を取り除くことだけではありません。出血を止める、脳を圧迫しているものを減らす、腦にかかる負担を和らげるなど、目的は人によってさまざまです。
- 手術のあとの回復には時間がかかります。リハビリテーション(体や言葉の機能を回復するための訓練)を続けることが、生活に戻るための大切なステップになります。
脳の手術は、心臓の手術などに比べると件数は多くありませんが、全国の専門の病院で毎年たくさん行われている、決してめずらしくない治療です。
子どもから高齢者まで、年齢を問わず行われます。生まれつきの病気が原因のこともあれば、成人してから見つかる脳腫瘍(のうしゅよう=脳にできるできもの)や脳の血管の病気、頭を打ったけがが原因のこともあります。高齢になるほど、脳の血管の病気や転倒によるけがのリスクは高くなります。
症状
- 意識がない、または呼びかけても反応がにぶい
- けいれんが数分以上続く、またはくり返す
- 突然の激しい頭痛で、今まで経験したことのない痛み
- 顔の片側が下がる、片方の手足が動かない、言葉が出ない(脳卒中のサインの可能性)
- 呼吸がおかしい、息が苦しい
- 頭を強く打ったあと、何度も嘔吐する、意識がもうろうとする
- ⚠頭痛が日ごとに強くなっている
- ⚠吐き気や嘔吐が続いて水分がとれない
- ⚠見え方の異常(視野が欠ける、二重に見える)が出てきた
- ⚠手足の麻痺(まひ)やしびれが新しく出てきた
- ⚠発熱と頭痛が同時にあり、首が硬く感じる
- ⚠手術を受けたあとで、傷の周りが赤く腫れる、膿のようなものが出る、熱が出る
一般的な症状
- 頭痛が続く、または今までにない強い頭痛がある
- 手足に力が入りにくい、しびれる、動かしにくい
- 言葉が出にくい、ろれつが回らない、相手の言葉が理解しにくい
- けいれん(ひきつけ)が起きた
- 視界が欠ける、ものが二重に見える
- 歩きにくい、ふらつく、バランスがとりにくい
- 物忘れが急に増えた、ぼんやりする時間が増えた
- 吐き気や嘔吐(おうと)をくり返す
子供の症状
- 頭が大きくなる、頭の形が気になる
- ミルクを飲む力が弱い、飲み方が変わった
- けいれんを起こす
- 機嫌が悪い状態が続く、泣き方がいつもと違う
- 発達の遅れを指摘された
- 歩き始めたのに、また転びやすくなった
高齢者の症状
- 急に物忘れが増えた、話がかみ合わない
- 歩幅がせまくなった、すり足になり転びやすい
- 尿が出にくい、または間に合わずもれてしまう
- 食事のむせが増えた、飲み込みにくい
- 頭を打ったあと、しばらくしてから調子が悪くなった
原因
主な原因
- 脳腫瘍(脳やそのまわりにできるできもの)
- 脳の血管の病気(動脈瘤=血管のふくらみ、脳出血、脳梗塞など)
- 頭を強く打ったときの出血やむくみ(頭部外傷)
- 水頭症(すいとうしょう=脳の中の水が増えて脳を圧迫する状態)
- てんかんの原因となる脳の病変
- 生まれつきの脳や血管の形のちがい
リスク要因
- 高血圧(血圧が高い状態が続くこと)
- 喫煙、過度の飲酒
- 年齢(高齢になるほど血管の病気のリスクが上がる)
- 家族に脳の血管の病気や脳腫瘍の人がいる
- 頭を打つけがの経験、転倒しやすい環境
- 糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 今までにない強い頭痛や、急に出現した手足の麻痺・言葉の出にくさがある(ためらわず救急へ)
- 頭を打ったあとに意識がぼんやりする、嘔吐をくり返す
- けいれんが起きた
- 手術後の傷が腫れて膿が出る、熱が高い
定期受診を予約すべき場合:
- 頭痛が何週間も続く、または少しずつ強くなっている
- 物忘れや歩きにくさが気になり始めた
- 視界の異常や耳鳴りが続く
- 家族に脳の病気の人がいて心配がある
- 健診で血圧が高いといわれた
診断
まず問診(症状や経過、これまでの病気、家族の病気などを聞くこと)と神経の診察(手足の動き、反射、目の動き、言葉などを確かめること)が行われます。そのうえで、脳の画像検査を行い、病気の場所や大きさ、脳への影響を調べます。手術が必要かどうかは、検査の結果と体の状態をあわせて、脳外科の医師が中心となって検討します。
行われる可能性のある検査
- MRI(磁気を使って脳の様子をくわしく見る検査)
- CT(X線を使って頭の中の出血や骨の様子を見る検査)
- 血管造影(血管の形や血流を調べる検査)
- 脳波検査(脳の電気的な動きを調べる、主にけいれんの原因を探す検査)
- 血液検査、尿検査(全身の状態や手術前の確認)
- 神経心理検査(記憶や注意力などを調べる検査)
診察で予想されること
検査の内容や所要時間は病院によって異なります。MRIは音が大きいので、耳栓を用意してくれることが多く、体内に金属がある場合は事前に伝えてください。血管造影などでは入院が必要なこともあります。結果の説明のときは、疑問に思ったことをメモしておき、家族や信頼できる人と一緒に話を聞くと安心です。
治療
脳の手術は、病気の種類や場所、症状、全身の状態によって、方法も目的も大きく変わります。「手術をするかどうか」「どの方法を選ぶか」は、いくつかの選択肢を比べながら、担当の医師とよく話し合って決めていきます。手術をしないで様子を見る、薬で治療する、放射線で治療するという選択肢が適している場合もあります。
自宅でのセルフケア
- 頭を強く打たないように、転倒しにくい環境を整える(手すり、滑りにくい床、夜間の照明)
- 血圧を測る習慣をつけ、記録しておく
- 禁煙する、飲酒はほどほどにする
- 睡眠を十分にとり、無理な運転や高所での作業を避ける
- 手術後は、医師に指示された範囲で少しずつ体を動かす
- 気になる症状をメモしておき、診察のときに伝える
医療治療
治療には大きく分けて、薬による治療、手術、放射線による治療、血管の中から行う治療などがあります。薬は、むくみを和らげる、けいれんを抑える、血圧を調整する、感染を防ぐなどの目的で使われることがあり、内容は医師が体の状態にあわせて決めます。手術には、頭を開けて行う方法、鼻や小さな穴から内視鏡を入れる方法、血管の中に細い管を入れて治療する方法などがあります。放射線による治療は、手術が難しい場所や体への負担を抑えたい場合に選ばれることがあります。どの治療も、効果と負担の両方を考えて選ばれます。
手術が検討される場合
手術が検討されるのは、脳を圧迫しているものや出血を取り除く必要があるとき、良性でも大きくなる可能性があるできものがあるとき、薬で症状を抑えきれないとき、画像検査で今後の危険が高いと判断されたときなどです。反対に、小さくて症状がなく、急いで治療する必要がない場合は、定期的な画像検査で様子を見ることもあります。最終的な判断は、脳外科の医師とご家族を交えて話し合って行います。
この病気と共に生きる
手術のあとは、体力や集中力が戻るまでに時間がかかります。退院後も通院やリハビリが続くことが多く、生活のペースを少しずつ取り戻していくイメージが大切です。運転や仕事に戻る時期は、医師の指示に従ってください。服薬や通院の予定はカレンダーやスマートフォンで管理すると安心です。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活と十分な睡眠を心がける
- 転倒予防のため、家の中の段差や物の置き方を整える
- 家族や友人と話す時間をつくる
- 無理のない範囲で外出や趣味を続ける
- 疲れやすいときは、こまめに休む
- 飲酒・喫煙は医師に相談する
食事と運動
食事は、塩分を控えめにし、野菜やたんぱく質をバランスよくとることが基本です。血圧や血糖値の管理にもつながります。運動は、医師の許可を得たうえで、散歩や軽いストレッチなど無理のないものから始めましょう。手術後しばらくは、頭に強い衝撃が加わる運動や、力む動作は避けるよう指示されることがあります。
精神的健康と心の健康
脳の手術は、本人にとってもご家族にとっても大きな出来事です。不安、落ち込み、いらいら、集中しにくさを感じることは自然なことです。気持ちの変化は、手術後の回復の過程でよくみられます。つらい気持ちが続くときは、一人で抱え込まず、担当の医師や看護師、地域の相談窓口に話してください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えてしまうようなときは、ためらわずに救急(119)やお住まいの地域の緊急相談窓口に連絡してください。
予防
すべての脳の手術を予防することはできませんが、リスクを下げられるものもあります。血圧を良い状態に保つ、禁煙する、飲酒を控える、糖尿病などの生活習慣病を治療する、転倒や事故を防ぐことが大切です。頭を打ったときは、症状が軽く見えても受診をためらわないようにしましょう。
ワクチン
ワクチンで防げる感染症の中には、脳やそのまわりの病気に関わるものもあります。接種歴や年齢に応じた接種については、かかりつけ医やお住まいの自治体の案内を確認してください。
検診プログラム
脳の病気そのものを早期に見つけるための一般的な健診は決まっていませんが、血圧測定や生活習慣病の健診を受けることは、脳の血管の病気のリスク管理につながります。家族に脳の血管の病気が多い場合などは、医師に相談してみてください。
合併症
治療しない場合
- 脳を圧迫しているものが大きくなり、手足の麻痺や言葉の障害が残ることがある
- 出血が広がって意識が低下する危険がある
- けいれんをくり返す
- 脳の中の水がたまって頭痛や歩きにくさが強くなる
- 命に関わる状態に進むことがある
長期的な見通し
脳の手術は、以前に比べて安全性が高くなり、多くの方が社会復帰しています。回復のスピードや程度は、病気の種類、手術前の状態、年齢、リハビリの取り組み方によって大きく異なります。時間はかかっても、少しずつできることが増えていくことは少なくありません。不安なときは、担当の医師やリハビリのスタッフに、今の状態とこれからの見通しを具体的に聞いてみてください。
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最終更新: 2026年11月3日
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