乳房再建について
概要
乳房再建(にゅうぼうさいけん)は、乳がんなどの治療で乳房を切除したり、形が大きく変わったりしたあとに、胸のふくらみをもう一度つくる手術です。自分の体の一部の組織を移す方法や、人工の材料(インプラント)を入れる方法などがあります。見た目を整えるだけでなく、服の着心地や体のバランス、気持ちの面での回復を助ける目的もあります。乳房再建は「がんで命を守る治療」とは別の、自分で選ぶことができる手術です。
重要な事実
- 乳房再建は、乳がんの手術で乳房を失ったあとなどに、胸のふくらみを再びつくる手術です。
- 方法は大きく分けて、自分の体の組織を移す方法、人工の材料(インプラント)を入れる方法、そして両方を組み合わせる方法があります。
- 命に関わる治療ではないため、受けるかどうか、いつ行うかは自分で選べます。すぐに決める必要はありません。
日本でも乳房再建を受ける人は年々増えています。乳がんの手術を受ける人の全員が選ぶわけではありませんが、決して珍しい手術ではなく、多くの病院で行われています。
乳がんで乳房を切除した人、乳房の一部だけを切除して形が変わった人、遺伝的な理由で予防的に乳房を切除する人、生まれつき乳房が小さい・形が異なる人などが対象になります。年齢や病状だけで一律に決まるものではなく、体の状態と本人の希望をもとに、主治医と相談して決めます。
症状
- 息苦しさ、胸の強い痛み、動悸が急に出た(血栓のサインのことがあります)
- 手術のあと、意識がもうろうとする、顔色が悪くぐったりしている
- 伤口的出血が止まらない、大量に出血している
- ⚠38度以上の発熱がある
- ⚠手術した部分が急に赤く腫れて、熱を持っている
- ⚠膿(うみ)のような、においのある液体が出てくる
- ⚠痛みが急に強くなった、痛み止めが効かない
- ⚠片方の脚が腫れる、痛む(血栓のサインのことがあります)
一般的な症状
- 胸が平らになった、左右のバランスが変わったと感じる
- 服の似合い方や下着のフィット感が変わり、気になる
- 肩や背中がこる、姿勢が変わったように感じる
- 手术した側の腕が上がりにくい、胸の皮膚がつっぱる(再建後)
- 傷あとのしびれ、違和感、かゆみ(再建後)
- 鏡を見るのがつらい、人前に出るのが不安になる
子供の症状
- 乳房再建は大人の手術で、子どもが受けることは基本的にありません。
- 思春期に乳房の形の違いを気にしている場合は、小児科や形成外科に相談できます。
高齢者の症状
- 持病(高血圧、糖尿病、心臓の病気など)があると、手術の前に詳しい確認が必要になります。
- 回復に時間がかかることがあり、入院期間や自宅での介助について事前に相談しておくと安心です。
- 年齢だけで再建が難しいと決まることはなく、体力や希望をふまえて相談します。
原因
主な原因
- 乳がんの手術で乳房を全部または一部切除したこと
- 乳房を一部切除したあと、形や左右のバランスが大きく変わったこと
- 遺伝的なリスクが高いために、予防的に乳房を切除したこと
- 生まれつき乳房が小さい、または形が左右で大きく異なること
リスク要因
- 喫煙(傷の治りが悪くなり、合併症が増えやすくなります)
- 糖尿病や血糖値の高い状態
- 肥満、体重の急な変化
- 以前に胸の放射線治療を受けたことがある
- 血液が固まりやすい病気、血栓の既往
- 過去の手術ややけどのあと(傷あと)がある
- これらの項目は「再建できない」という意味ではなく、相談しておきたい目安です。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 手術のあとに38度以上の熱が出た
- 傷の周りが急に赤く腫れて熱を持つ、膿のような液体が出る
- 息苦しさ、胸の痛み、片方の脚の腫れや痛みがある
- 痛みが急に強くなり、自分では対処できない
定期受診を予約すべき場合:
- 乳房再建を考え始めた、どんな方法があるのか知りたい
- 手術のあと、傷の痛みやつっぱりが長く続く
- 腕が上がりにくい、肩や背中がこる
- 胸の形や左右差が気になる、服のフィット感に困っている
- 気持ちの面でつらく、日常生活に影響が出ている
診断
乳房再建は「診断する病気」ではなく、あなたの体の状態と希望に合った方法を選ぶための話し合いと検査を行います。形成外科医と乳腺外科医が一緒に説明することが多く、必要に応じて看護師や心理面の支援者も加わります。
行われる可能性のある検査
- 診察(胸の皮膚や組織の状態、やけどや傷あとの確認)
- 血液検査(手術に耐えられるかの確認)
- 画像検査(CT・MRI・超音波などで組織の厚みや血流を確認)
- これまでの治療歴の確認(手術の内容、放射線治療や薬物療法の有無)
- 希望や生活スタイルについての聞き取り(仕事、育児、スポーツなど)
診察で予想されること
説明では、それぞれの方法の長所と短所、入院期間、回復にかかる時間、傷あとの場所、費用(公的医療保険が使える範囲)などを聞くことができます。一度で決める必要はなく、家族と相談したり、別の病院で意見を聞いたりしてもかまいません。わからない言葉はその場で聞き返しましょう。
治療
再建の方法は大きく3つに分かれます。1つは、お腹や背中、太ももなど自分の組織を胸に移す方法です。2つ目は、人工の材料(インプラント)を胸に入れる方法です。3つ目は、まず風船のようなものを入れて皮膚を少しずつ広げ、あとでインプラントに入れ替える方法です。乳頭や乳輪を再建したり、左右のバランスを整える手術を追加したりすることもあります。
自宅でのセルフケア
- 禁煙する(傷の治りをよくするために大切です。医師や薬剤師に相談すると支援が受けられます)
- 手術前に体力づくりとバランスのよい食事を心がける
- 術後は指示された範囲で、肩や腕を動かすリハビリを少しずつ始める
- 傷あとを毎日観察し、赤み・腫れ・液体が出ていないか確認する
- 通院の予定を守り、自己判断で運動や入浴の制限をゆるめない
- サポート下着など、体に合った下着を使う
医療治療
治療の中心は手術です。痛みや感染を防ぐための薬は医師の判断で処方されるので、指示どおりに使い、自己判断で中止したり量を変えたりしないでください。放射線治療や薬物療法の予定がある場合は、その順番や時期を主治医と相談して決めます。手術後のリンパ浮腫(腕のむくみ)に対しては、ケアやリハビリが行われることがあります。
手術が検討される場合
乳房を切除する手術と同時に行う「同時再建」と、治療が落ち着いてから行う「二次再建(後から行う再建)」があります。放射線治療の予定がある場合や、持病の治療中である場合などは、時期を調整することがあります。急いで決める必要はなく、体調と気持ちが整ってから行うこともできます。
この病気と共に生きる
回復には数週間から数か月かかります。最初は腕が上がりにくい、胸がつっぱる、疲れやすいといったことがありますが、少しずつ日常に戻っていくのがふつうです。傷あとは紫外線を避け、保湿などのケアを続けると安心です。仕事や家事の再開は、主治医の指示に合わせて無理のない範囲で進めましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける(傷の治りと全身の健康の両方に役立ちます)
- 適正な体重を保つ
- 体に合った下着やサポートウェアを選ぶ
- 腕のむくみを防ぐため、けがや日焼けを避け、皮膚を清潔に保つ
- 睡眠と休息を十分にとる
食事と運動
食事は特定のものを避ける必要はなく、野菜・たんぱく質・主食をバランスよくとることが回復を助けます。運動は、医師の許可が出てから肩や腕のストレッチなど軽いものから始め、少しずつ強度を上げていきます。いきなり重いものを持ったり、激しい運動をしたりするのは避けましょう。
精神的健康と心の健康
見た目の変化に戸惑うこと、決断に迷うこと、パートナーや家族との関係に悩むことは珍しくありません。再建をしても気持ちがすぐに晴れるとは限らず、時間がかかることもあります。つらい気持ちが続くときは、一人で抱え込まずに医療者や相談窓口を頼ってください。もし自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療機関や地域の相談窓口、救急(119)に連絡してください。
予防
乳房再建は手術であり、「予防する」という考え方にはなじみません。ただし、禁煙や血糖値の管理、適正体重を保つことは、手術の合併症を減らす助けになります。
検診プログラム
再建したあとも、反対側の乳房や手術した側の経過観察は必要です。乳がん検診や通院の予定は、主治医の指示に従って続けましょう。
合併症
治療しない場合
- 再建をしないこと自体は病気ではなく、治療が遅れるという心配はありません。
- 再建をしない場合でも、胸の平坦さによる服のフィット感の悩みには、装具(エピテーゼ)などで対応できます。
- 気持ちのつらさや体のバランスの悩みが続く場合は、がまんせずに相談してください。
長期的な見通し
乳房再建を受けた多くの人が、日常生活に戻り、満足していると報告されています。一方で、形を微調整する追加の手術が必要になることや、左右が完全に同じにならないこともあります。期待と現実の違いを事前に知っておくと、気持ちの準備がしやすくなります。迷ったときは、何度でも主治医に相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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