頸動脈内膜剥離術(けいどうみゃくないまくはくりじゅつ)— 首の血管の手術について知る
概要
頸動脈(けいどうみゃく)は、首の左右を通って脳に血液を送る大切な血管です。この血管の内側にコレステロールのかたまり(プラーク)がたまると、血管が狭くなったり、かたまりがはがれて血の流れをさえぎったりして、脳梗塞(のうこうそく/脳の血管がつまってしまう病気)の原因になることがあります。頸動脈内膜剥離術は、首を小さく切って血管を開き、内側にたまったプラークを取り除いて血流をよくする手術です。脳梗塞を起こす危険を減らすことを目的としています。
重要な事実
- 首の血管(頸動脈)が狭くなっている人の中には、脳梗塞を予防するためにこの手術が勧められることがあります。
- 手術は全身麻酔で行われることが多く、入院は数日から1週間ほどが一般的です。
- 手術だけですべてが解決するわけではなく、禁煙や血圧・血糖・コレステロールの管理を続けることが大切です。
頸動脈が狭くなること自体は、高齢の方では比較的よくみられます。ただし、手術が必要になるのは狭窄の程度が強く、症状があったり今後脳梗塞の危険が高いと判断された場合に限られます。狭窄が見つかっても、多くの方はまず生活習慣の改善と薬による治療から始めます。
主に50代以降の方に多く、特に高血圧・糖尿病・脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い状態)のある方、たばこを吸う方、過去に脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA/一時的に脳の血流が悪くなる発作)を経験した方に多くみられます。
症状
- 顔の片側が急にゆがむ、腕の片側が急に上がらない(脳卒中のサイン)
- 急に言葉が出ない、ろれつが回らない、人の話が理解できない
- 突然の激しい頭痛、意識がもうろうとする、呼びかけに反応しない
- 急に片方の目が見えなくなった、ものが二重に見える
- これらの症状が1つでもあれば、すぐに119番に電話をして救急車を呼んでください。時間が勝負になります。
- ⚠片側の手足のしびれや力の入りにくさが数分から数時間続いたが、今は良くなった(一過性脳虚血発作の可能性)
- ⚠一時的に目が見えにくくなった、ろれつが回らなくなったが、元に戻った
- ⚠こうした「一時的で消えた症状」は、近いうちに本当の脳梗塞が起きるサインのことがあります。その日のうちに医療機関を受診してください。
一般的な症状
- 頸動脈が狭くなっていても、多くの場合は自覚症状がありません。健康診断の頸動脈エコーなどで初めて見つかることが少なくありません。
- 片方の目の前が急に暗くなる、カーテンが下りたように見えなくなる(数分で元に戻る)ことがあります。
- 片側の手足がしびれる、力が入りにくい、うまく動かない(一時的なことが多い)。
- ろれつが回らない、言葉が出てこない、人の言うことが理解しにくい。
- 片側の顔がピリピリする、口元が下がる。
子供の症状
- 小児で頸動脈が狭くなることは非常にまれです。
- 小児で問題になる場合は、生まれつきの血管の病気や、過去の放射線治療など特別な背景があることが多いです。
- 小児で気になる症状があるときは、まず小児科の医師に相談してください。
高齢者の症状
- 症状がなくても、健診や人間ドックの頸動脈エコーで狭窄が見つかることがあります。
- 加齢とともに動脈硬化が進みやすく、狭窄の程度が強くなることがあります。
- めまいやふらつきを「年のせい」と思わず、一度相談すると安心です。ただし、頸動脈の狭窄と物忘れの関係はまだはっきりしておらず、心配しすぎる必要はありません。
原因
主な原因
- 動脈硬化:血液中のコレステロールなどが血管の内側にたまり、プラーク(かたまり)を作ります。
- プラークが大きくなると血管が狭くなり、脳へ流れる血液が減ります。
- プラークが破れて、その上に血のかたまり(血栓)ができると、脳の血管をつまらせることがあります。
リスク要因
- 高血圧(血圧が高い状態が続くこと)
- 糖尿病(血糖値が高い状態が続くこと)
- 脂質異常症(コレステロールや中性脂肪が高い状態)
- たばこを吸う(受動喫煙も含む)
- 肥満、特に内臓脂肪が多い
- 運動不足、塩分の多い食事、野菜や魚が少ない食事
- 飲みすぎ(大量の飲酒)
- 年齢(50代以降で増えます)
- 家族に脳卒中や心臓病の人がいる
- 睡眠時無呼吸(寝ている間に呼吸が止まる)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 片側の手足のしびれ、力が入らない、ろれつが回らない、目が見えにくいといった症状が突然出たとき(119番)
- そのような症状が数分で消えても、必ずその日のうちに受診してください。
- 手術後に、首が急に大きく腫れる、息がしにくい、飲み込みにくい、声がかすれて出にくい、傷口から血が出る、熱が高いといった症状が出たときは、すぐに連絡してください。
定期受診を予約すべき場合:
- 健診で「頸動脈に狭窄がある」「プラークがある」と言われた
- 血圧や血糖、コレステロールが高いと言われたことがある
- 家族に脳卒中になった人がいる
- たばこをやめたい、食事や運動を見直したい
診断
まず問診と診察を行い、首に聴診器を当てて血流の音(血管雑音)を聞きます。そのうえで、頸動脈の狭さの程度やプラークの性質を調べる画像検査を行います。脳梗塞が起きていないか、心臓やほかの血管に問題がないかも合わせて確認します。
行われる可能性のある検査
- 頸動脈エコー(超音波検査):首に機械を当てて、血管の狭さやプラークの様子を調べます。痛みはなく、体への負担が少ない検査です。
- 頭部MRI・MRA:脳の状態と、脳に流れる血管の様子を調べます。
- CT血管造影(CTA):血管の狭さを立体的に確認します。
- 血液検査:コレステロール、血糖、腎機能などを調べ、動脈硬化の進みやすさを確認します。
- 心電図・心臓の検査:心臓の病気が原因でないかを確認します。
診察で予想されること
検査によっては、造影剤を使うものがあり、事前の説明があります。検査の結果をもとに、手術の利益と危険性をくらべて、治療方針を主治医と一緒に決めていきます。セカンドオピニオン(別の医師の意見)を聞くこともできます。
治療
治療は大きく分けて、①生活習慣の改善、②薬による治療、③手術の3つがあります。狭窄の程度、症状の有無、年齢や体の状態、手術の危険性を総合して、あなたにとって一番よい方法を選びます。
自宅でのセルフケア
- たばこをやめる(最も効果が大きいと言われています)
- 減塩を心がけ、血圧を自分で測って記録する
- 野菜・魚・大豆製品を増やし、脂っこい食事や甘い飲み物を控える
- 無理のない範囲で、歩くなどの運動を続ける(主治医に相談してから)
- 適正体重を保つ
- 処方された薬を、自己判断でやめずに続ける
- 飲みすぎを控える
医療治療
動脈硬化を進めにくくするために、血圧・血糖・コレステロールを管理する薬や、血のかたまりができにくくする薬(抗血小板薬)が使われることがあります。どの薬をどのくらい使うかは、医師があなたの状態に合わせて判断します。薬の名前や量、飲み方を自己判断で変えず、気になる点は医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
手術が検討されるのは、頸動脈が強く狭くなっていて、しかも一時的な症状や脳梗塞を経験した方、あるいは症状はなくても狭窄が非常に強い方などです。手術で脳梗塞を防げる利益が、手術の危険性(神経の傷つき、出血、手術中の脳梗塞など)を上回るときに選ばれます。手術には頸動脈内膜剥離術のほか、カテーテルで血管を広げる治療が選ばれることもあります。担当医から詳しい説明を受け、納得してから決めてください。
この病気と共に生きる
手術を受けた場合は、数日から1週間ほどの入院が一般的です。首の傷は小さく、首の痛みや軽いしびれが出ることがありますが、多くは少しずつ落ち着きます。退院後は、傷口を清潔に保ち、医師の指示に従って通院してください。仕事復帰の時期は体の状態や仕事の内容で変わるため、主治医と相談して決めましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける。必要なら禁煙外来を利用する
- 毎日血圧を測り、記録を残す
- 処方された薬を決まった時間に飲む
- 十分な睡眠と、こまめな水分補給を心がける
- 首の傷を強くこすらない、マッサージしない
- 体調の変化を家族と共有する
- 車の運転や激しい運動の再開は、必ず医師の許可を得てから
食事と運動
食事は、塩分を控え、野菜・果物・魚・大豆製品・全粒穀物を多めにし、脂身の多い肉や加工食品、甘い飲み物を控えると動脈硬化の予防につながります。運動は、散歩など無理のない有酸素運動を、主治医に確認したうえで少しずつ始めましょう。手术后すぐの激しい運動は避け、首に強い力がかかる運動は控えます。
精神的健康と心の健康
「また脳梗塞になるのでは」という不安は自然な気持ちです。手術を決めるとき、術後の生活を考えるときに、不安や落ち込みが続くことがあります。眠れない、食欲がない、気持ちが晴れない状態が2週間以上続くときは、担当の医師や看護師、地域のこころの相談窓口に相談してください。つらい気持ちを一人で抱える必要はありません。もし自分を傷つけたいと考えてしまうときは、すぐに119番に電話をして救急を呼ぶか、近くの人に助けを求めてください。
予防
頸動脈の狭窄のもとになる動脈硬化は、生活習慣を見直すことで進みにくくできます。禁煙、減塩、バランスのよい食事、適度な運動、適正体重を保つこと、そして血圧・血糖・コレステロールをきちんと管理することが基本です。すでに狭窄がある人でも、これらの対策は脳梗塞の予防に役立ちます。
検診プログラム
頸動脈エコーは痛みの少ない検査で、健康診断や人間ドックで受けられることがあります。血圧が高い、たばこを吸う、糖尿病があるなど動脈硬化の心配がある方は、かかりつけ医に検査が必要かを相談してみてください。日本の健康診査(特定健診など)で血圧や血糖、脂質の値を確認することも大切です。
合併症
治療しない場合
- 脳梗塞(脳の血管がつまって、体のまひや言葉の障害が残ることがある)
- 一過性脳虚血発作(TIA)を繰り返し、その後に本当の脳梗塞を起こす危険が高まる
- 目が見えにくくなる、ものが見えにくい状態が残ることがある
- 飲み込みにくさや話しにくさが残ることがある
長期的な見通し
頸動脈内膜剥離術は、脳梗塞を防ぐために長く行われてきた治療です。手術を受けた多くの方は、術後の生活に戻り、通常どおり暮らしています。手術を受けない場合でも、生活習慣の改善と薬による治療を続けることで危険を下げることができます。不安なことがあれば、担当医に何度でも質問して、あなたに合った方針を一緒に考えていきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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