カテーテルアブレーション(心臓の不整脈を治す治療)
概要
カテーテルアブレーションは、心臓の「不整脈」を治療する方法のひとつです。不整脈とは、心臓の拍動のリズムが速すぎたり、遅すぎたり、乱れたりする状態をいいます。この治療では、足の付け根や腕などの血管から細い管(カテーテル)を入れ、血管の中を通して心臓まで届けます。そして、不整脈を起こしている場所を調べ、その部分に高周波の熱や冷たいエネルギーを短時間あたえて、異常な電気の通り道を減らします。胸を大きく切る手術ではなく、体の負担が比較的少ない治療で、多くの場合は入院して数日で退院できます。
重要な事実
- カテーテルという細い管を血管から心臓まで通して行う治療で、胸を大きく切る手術ではありません。
- 不整脈の原因となっている場所を突き止めて、そこだけにエネルギーをあたえるため、体への負担が比較的少ない方法です。
- 効果や再発の可能性は不整脈の種類によって異なるため、主治医とよく相談して受けるかどうかを決めます。
日本でも広く行われている治療で、年間で何万件も実施されています。不整脈の治療の選択肢として、標準的なもののひとつになっています。
動悸(心臓がドキドキする感じ)や脈の乱れなどの不整脈がある人が対象になります。心房細動という不整脈では中高年の方に多くみられますが、若い方や子どもが受けることもあります。年齢だけで決まるものではなく、不整脈の種類や症状の強さ、生活への影響などをもとに判断されます。
症状
- 意識を失う、倒れる、けいれんする
- 胸の強い痛みが続く
- 急な息苦しさで話すのもつらい
- 冷汗が止まらない、顔色が真っ青になる
- 脈が非常に速く、意識がもうろうとする
- ⚠動悸が何時間も続き、横になっても楽にならない
- ⚠脈の速い状態が続いて、ふらつきや息切れがある
- ⚠胸の不快感が繰り返し起きるようになった
- ⚠立ちくらみで日常生活に支障が出ている
一般的な症状
- 動悸(心臓がドキドキする、脈が跳ぶ感じがする)
- 脈が速い、または脈が不規則に感じる
- 息切れや、少し動いただけで苦しくなる感じ
- 胸の不快感や圧迫感
- めまい、ふらつき、立ちくらみ
- 疲れやすさ、だるさ
- 不安感や落ち着かない感じ
子供の症状
- 胸のあたりの違和感や動悸を「胸が変」「苦しい」と伝えることがあります
- 運動中や遊んでいるときに急に立ち止まる、息が上がる
- 顔色が悪くなる、汗をかく
- ふらつく、転ぶ、意識が一瞬とおくなる
- 赤ちゃんでは、ミルクの飲みが悪い、ぐったりして元気がないように見えることがあります
高齢者の症状
- 動悸よりも、だるさ・息切れ・疲れやすさとして感じることがあります
- めまいやふらつき、転びやすさとして現れることがあります
- 脈が速いまま続いて、体が重く感じる
- 食欲が落ちる、眠りが浅くなるなど、はっきりしない不調として出ることがあります
原因
主な原因
- 心臓の中に、異常な電気の回路や、不整脈を起こしやすい場所があること
- 心臓の筋肉や弁の病気、生まれつきの電気の通り道の異常
- 高血圧や動脈硬化などにより心臓に負担がかかっていること
- 甲状腺(のどにあるホルモンの器官)の働きの異常
- 睡眠時無呼吸(寝ている間に呼吸が止まる状態)
- 過度の飲酒、強いストレス、睡眠不足、カフェインのとりすぎ
- 加齢にともなう心臓の電気の仕組みの変化
リスク要因
- 高血圧、糖尿病、心臓病などの持病がある
- 喫煙、過度の飲酒
- 肥満、運動不足
- 睡眠時無呼吸がある
- 強いストレスや不規則な生活が続いている
- 家族に不整脈や心臓病の人がいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 意識が遠のく、気を失ったことがある
- 胸の痛みや強い息苦しさをともなう動悸がある
- 脈がとても速い状態が長く続いている
- ふらつきや息切れが急に強くなった
定期受診を予約すべき場合:
- 動悸や脈の乱れをときどき感じる
- 健康診断の心電図で異常を指摘された
- 動悸のせいで生活や睡眠が妨げられている
- 不整脈があると言われ、治療の選択肢を知りたい
診断
まず問診で、どんな症状が、いつ、どのくらいの時間続くのかをくわしく聞きます。そのうえで心電図などの検査を行い、不整脈の種類と、アブレーションが向いているかどうかを判断します。必要に応じて、心臓の電気の流れを直接調べる検査(電気生理学的検査)を行い、不整脈を起こしている場所を特定します。
行われる可能性のある検査
- 心電図(安静時に心臓の電気の波形を記録する検査)
- ホルター心電図(24時間など長時間、心臓のリズムを記録する検査)
- 心臓超音波検査(心臓の形や動き、弁の状態をみる検査)
- 血液検査(甲状腺の働きや心臓への負担を調べる)
- 胸部レントゲン検査
- 運動負荷心電図(運動したときの心臓の反応をみる検査)
- 心臓CT・MRI検査(心臓の形をくわしく調べる画像検査)
- 電気生理学的検査(カテーテルを心臓に入れて電気の流れを直接調べる検査)
診察で予想されること
検査の多くは痛みがほとんどなく、短時間で終わります。電気生理学的検査はカテーテルを使うため入院が必要になることがあり、当日は安静が必要です。検査の前に、飲んでいる薬を中止するよう指示されることがありますので、自己判断でやめず必ず医師の指示に従ってください。
治療
治療の方針は、不整脈の種類、症状の強さ、年齢や持病、生活への影響をふまえて決めます。カテーテルアブレーションは、薬だけでは症状が落ち着かない場合や、薬の継続が難しい場合などに選ばれます。治療の流れは、①入院して準備を行い、②足の付け根などの血管からカテーテルを入れ、③心臓の中で不整脈の原因となる場所を調べ、④その部分にエネルギーをあたえ、⑤カテーテルを抜いて止血する、という順番が一般的です。処置そのものは数時間かかることが多く、終わったあとはしばらく安静にして、穿刺した部分の出血や腫れがないかを確認します。
自宅でのセルフケア
- 治療後は指示された時間、ベッドで安静にし、急に立ち上がったり歩き回ったりしない
- 穿刺した部分(足の付け根など)を強く圧迫しない、こすらない、温めない
- 穿刺した部分の出血・腫れ・痛み・色の変化を観察し、気になればすぐに伝える
- 入浴や運動の再開时期は医師の指示に従う
- 水分を適度にとり、指示された薬は自己判断で中止しない
- 動悸や脈の変化を感じたら、日時と症状をメモしておき診察時に伝える
医療治療
不整脈の治療には、大きく分けて次のような方法があります。①生活習慣の見直し(睡眠、飲酒、カフェイン、ストレスへの対処)、②医師が処方するお薬による治療(脈を整えるお薬や、血のかたまりができるのを防ぐお薬など、不整脈の種類に合わせて選ばれます)、③カテーテルアブレーション、④電気的除細動(電気の力で心臓のリズムを整える処置)、⑤ペースメーカーなどの植え込み型の機器。どの方法を組み合わせるかは、不整脈の種類と体の状態によって変わります。お薬の内容や量については、必ず処方した医師や薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
カテーテルアブレーションは、胸を切らずに行う「カテーテル治療」です。これとは別に、心臓を直接手術する方法(開胸手術)が検討されるのは、ほかの心臓の病気を同時に治す必要がある場合や、カテーテル治療で十分な効果が得られない場合など、限られた状況です。担当医から目的とリスクの説明を受け、納得したうえで決めることが大切です。
この病気と共に生きる
治療後は、多くの方が以前より動悸を感じにくくなります。ただし、しばらくの間は脈の変化に気をつけて過ごし、無理をしないことが大切です。治療の効果には個人差があり、再発して追加の治療が必要になることもあります。通院の予定を守り、体調の変化を記録しておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠を十分にとり、生活のリズムを整える
- 飲酒は控えめにし、一気に多く飲まない
- カフェイン(コーヒー、濃いお茶、エナジードリンクなど)のとりすぎに注意する
- 禁煙を心がける
- ストレスをためず、リラックスする時間をつくる
- 寒い場所と暑い場所の急な移動など、体に負担のかかる行動を避ける
食事と運動
食事は、塩分や脂っこいものを控えめにして、野菜や魚をバランスよくとることを心がけましょう。体重を適正に保つことは、心臓の負担を減らす助けになります。運動は、主治医に確認したうえで、ウォーキングなど無理のない範囲から始めるとよいでしょう。治療後すぐの激しい運動や水泳は、指示があるまで控えてください。
精神的健康と心の健康
動悸があると「また起きたらどうしよう」という不安が続き、眠れなくなったり、外出を控えたくなったりすることがあります。これは自然な気持ちです。一人で抱え込まず、家族や友人、医療者に話してみてください。不安が強いときや気分が落ち込む状態が続くときは、医療機関に相談することが大切です。つらい気持ちが強いときは、地域の相談窓口や相談電話を利用してください。
予防
不整脈そのものを完全に防ぐことは難しいですが、心臓に負担をかける生活習慣を見直すことで、起こりにくくすることはできます。高血圧や糖尿病などの持病がある場合は、きちんと治療を続けることが大切です。アブレーションを受けたあとも、生活習慣の見直しは再発を減らす助けになります。
検診プログラム
健康診断の心電図検査は、自覚症状のない不整脈を見つけるきっかけになります。動悸や脈の乱れが気になるときは、次の健診を待たずに医療機関で相談してください。
合併症
治療しない場合
- 動悸や息切れが続き、日常生活や睡眠の質が下がることがあります
- 脈がとても速い状態が長く続くと、心臓に負担がかかります
- 心房細動では、心臓の中に血のかたまりができ、脳の血管が詰まる病気(脳卒中)のリスクが上がることがあります
- 不安が強くなり、外出や運動を控えるようになることがあります
長期的な見通し
カテーテルアブレーションは、多くの方にとって症状を軽くし、生活の質を上げる可能性のある治療です。効果には個人差があり、再発して再度治療が必要になることもありますが、その場合も治療の選択肢はあります。主治医とよく話し合い、無理のないペースで治療とつきあっていくことが大切です。
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最終更新: 2026年11月3日
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