ダビンチ手術(ロボット支援手術)— やさしくわかる解説
概要
ダビンチ手術(ロボット支援手術)は、医師が操作台に座り、ロボットの腕を動かして行う手術です。手術をしているのはあくまで医師で、ロボットは医師の手の動きを精密に再現する「道具」です。ロボットが自動で手術をするわけではありません。腕がとても細く、関節が自由に曲がるため、体の狭いところでも細やかな動きがしやすいのが特長です。おなかや胸に数か所の小さな穴をあけ、そこからカメラと器具を入れて行います。
重要な事実
- 手術を行うのは医師で、ロボットは医師の動きを助ける道具です。自動で動くことはありません。
- 小さな穴で行うため、体への負担が比較的少なく、出血や痛みが抑えられることが多いとされています。ただし個人差があります。
- 日本では、前立腺、腎臓、膀胱、胃、大腸、肺、子宮などいくつかの手術で公的医療保険の対象になっています。対象かどうかは病名や病院によって異なります。
- すべての手術に向いているわけではなく、病気の種類や体の状態によって、開腹手術や腹腔鏡(ふくくうきょう)手術のほうが適していることもあります。
日本では前立腺がんの手術をきっかけに対象となる手術が広がり、近年は行われている件数も増えています。ただし、対応している病院や医師の経験には差があり、すべての病院で受けられるわけではありません。
手術が必要だと医師が判断した人が対象になります。年齢だけで決まることはありませんが、持病の状態や体力、これまでの手術の経験などによって、向いているかどうかを総合的に判断します。
症状
- 手術のあと、傷口から血が止まらない、または大量に出血している
- 胸の強い痛み、息苦しさ、意識がぼんやりする、顔色が悪い
- 突然の激しい腹痛で立てない、おなかが硬く張っている
- 高熱とともに血圧が下がる、冷や汗が出る、尿がまったく出ない
- 手術前でも、耐えがたい痛みや大量の出血があれば、ためらわず救急に連絡してください。
- ⚠手術のあと38度以上の熱が続く
- ⚠傷口が赤く腫れて、膿のようなものが出る
- ⚠吐き気や嘔吐が続いて水分がとれない
- ⚠痛み止めを使っても痛みが強くなっていく
- ⚠尿が出にくい、おなかが張って排ガスも出ない
- ⚠ふくらはぎの痛みや腫れ(血栓の可能性があります)
一般的な症状
- ダビンチ手術は「病気」ではなく治療の方法なので、ここでは手術が検討されるきっかけになる症状を紹介します。
- 尿に血が混じる、排尿しにくい、トイレが近い
- おなかや骨盤のあたりの痛み、張り、しこり
- 便に血が混じる、便通の習慣が変わった
- 月経以外の性器出血、強い月経痛、下腹部の重さ
- せきが長く続く、血の混じった痰が出る
- とくに症状がなく、健診や人間ドックの検査で見つかることも少なくありません。
子供の症状
- 小児では、生まれつきの腎臓や尿路の形の異常などで手術が検討されることがありますが、大人に比べると件数は多くありません。
- お子さんの場合は、小児科や小児外科のある施設で、成長への影響も含めて相談します。
高齢者の症状
- 高齢の方は、持病、体力、日常生活の様子、もの忘れの程度などを合わせて、手術を受けるかどうかを話し合います。
- 年齢が高いというだけで手術ができないと決まるわけではありません。麻酔や手術に耐えられるかを検査で確認します。
- 手術以外の治療方法を選ぶことも、十分に意味のある選択です。
原因
主な原因
- ダビンチ手術は治療の方法なので、「ダビンチ手術が必要になる原因」というより、手術が必要になる病気がある、という考え方になります。
- がんで、手術で取り除く必要があるとき
- 前立腺肥大症で、薬による治療でも排尿の症状がよくならないとき
- 子宮筋腫、子宮内膜症、骨盤臓器脱などの女性の病気
- 胆のう、胃、大腸など消化管の病気
- 腎臓や尿路の病気
- 医師は、病気の性質と体の状態を見て、開腹手術・腹腔鏡手術・ダビンチ手術の中から合う方法を提案します。
リスク要因
- おなかや骨盤の手術を受けたことがあり、癒着(ゆちゃく:組織がくっついてしまうこと)が強い
- 肥満がある
- 心臓や肺に持病がある
- 血液が固まりにくい状態、または血を固まりにくくする薬を使っている
- 担当する医師や病院の経験・体制に差がある
- こうした点は「受けられない」と決まるものではなく、手術方法を選ぶときの判断材料になります。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 手術のあとに高熱、傷の腫れや膿、出血が続く
- 水分がとれないほどの吐き気や嘔吐がある
- 尿が出ない、息苦しい、ふくらはぎが腫れて痛む
- 痛みが日ごとに強くなっている
定期受診を予約すべき場合:
- 手術をすすめられたが、決めかねている
- ダビンチ手術と開腹手術・腹腔鏡手術の違いをくわしく知りたい
- 自分の病気にほかの治療の選択肢がないか知りたい
- 別の医師の意見(セカンドオピニオン)を聞いてみたい
- 手術のあとの痛みや疲れが長引いている
- 費用や入院期間、仕事への復帰の見通しを知りたい
診断
手術の前には、「どんな病気か」を確かめる検査と、「どの手術方法が自分に合うか」を比べるための検査の両方を行います。画像で病気の広がりを見たり、組織を採って性質を調べたり、麻酔に耐えられるかを確認したりします。そのうえで、利点と欠点をふまえて方針を話し合います。
行われる可能性のある検査
- 血液検査、尿検査
- 超音波(エコー)検査
- CT検査、MRI検査
- 内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラなど)
- 病理検査(組織の一部を採って、顕微鏡で調べる)
- 前立腺の場合は血液の腫瘍マーカー検査や針で組織を採る検査
- 心電図、呼吸機能検査、胸部レントゲン(麻酔に耐えられるかの確認)
- 必要に応じて、循環器内科などほかの科の診察
診察で予想されること
検査の結果は、写真や図を見せながら説明されるのが一般的です。手術のよい点だけでなく、出血や合併症の可能性、入院期間、費用の目安も聞いてください。よくわからない言葉はその場で遠慮なくたずねてよいものです。納得できないときは、別の病院で意見を聞くセカンドオピニオンを利用できます。
治療
ダビンチ手術は、治療の選択肢のひとつです。開腹手術(おなかを大きく開く)、腹腔鏡手術(小さな穴から細いカメラと器具を入れる)、放射線による治療、薬による治療、経過を見ていく方法などと比べて、どれが自分に合うかを医師と一緒に考えます。どの方法にも、それぞれ利点と注意点があります。
自宅でのセルフケア
- 禁煙する:傷の治りがよくなり、肺の合併症も減りやすくなります。手術の数週間前からが目安です。
- 入院前に、医師や看護師に質問をメモにまとめておく
- 家族に同席してもらい、説明を一緒に聞く
- 入院中の持ち物や、退院後の家事・買い物の段取りを決めておく
- 手術前後の呼吸の練習(器具を使う深呼吸など)を教わっておく
- 術後は、指示された範囲で早めに歩くことが回復を助けます
- 痛みや体調の変化は我慢せず、その都度スタッフに伝える
医療治療
手術以外にも、病気の種類に応じて、薬による治療、放射線による治療、ホルモンの働きを調整する治療、定期的に経過を見ていく方法などがあります。どの方法を選ぶかは、病気の進み具合、年齢、体力、生活の希望によって変わります。治療の名前や進め方は担当医から説明を受けてください。自分に合う方法を一緒に選んでいくことが大切です。
手術が検討される場合
手術がすすめられるのは、手術で取り除くことで治癒や症状の改善が見込めるとき、ほかの治療では十分な効果が期待しにくいとき、あるいは出血や閉塞など差し迫った問題があるときです。ダビンチ手術はその中の一つの方法で、病院の体制や医師の経験、病気の広がりによって選ばれます。急いで決める必要がない場合は、時間をかけて比べてもかまいません。
この病気と共に生きる
退院後しばらくは、疲れやすかったり、傷のあたりに違和感があったりします。多くは数週間から数か月かけて少しずつ良くなっていきますが、回復の速さには個人差があります。無理をせず、できたことを増やしていく感覚で過ごしてください。
生活習慣のアドバイス
- 傷口は清潔に保ち、指示された方法でケアする
- 車の運転や重い物を持つ時期は、担当医の指示に従う
- 長時間同じ姿勢を続けず、ときどき体を動かす
- 飲酒や入浴の再開時期も、あらかじめ確認しておく
- 仕事への復帰は、体の回復と仕事の内容に合わせて段階的に
- 睡眠をしっかりとり、疲れたら休む
食事と運動
食事は、バランスよく、水分をしっかりとることが基本です。便通が乱れるとおなかに負担がかかるため、野菜やきのこ、海藻など食物繊維をとり、必要に応じて水分を増やしましょう。運動は、散歩など軽いものから始め、少しずつ時間や距離を延ばしていきます。痛みや息苦しさが出たら休み、無理をしないことが大切です。
精神的健康と心の健康
手術の前は「本当に受けてよかったのだろうか」と不安になったり、術後は思うように動けず落ち込んだりすることがあります。これはとてもよくある気持ちです。眠れない、気分の落ち込みが続く、涙が出るといった状態が長引くときは、ひとりで抱えずに医療者に話してください。
予防
ダビンチ手術そのものを予防する、という考え方はありません。ただし、手術が必要になるきっかけとなる病気は、生活習慣を整えたり検診を受けたりすることで、リスクを下げたり早く見つけたりできるものがあります。
検診プログラム
自治体のがん検診(大腸がん、胃がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんなど)は、症状が出る前に病気を見つける助けになります。前立腺については、血液の腫瘍マーカー検査を希望するかどうかを医師と相談するのが一般的です。対象年齢や受け方はお住まいの自治体の案内で確認できます。
合併症
治療しない場合
- 手術をしない場合にどうなるかは、病気の種類によって大きく異なります。「ダビンチ手術をしない=治療をしない」ではありません。
- がんであれば、時間の経過とともに広がる可能性があります
- 前立腺肥大症であれば、排尿の症状が続いたり、尿が出にくくなったりすることがあります
- 子宮筋腫や内膜症であれば、痛みや出血が続くことがあります
- 手術そのものにも、出血、感染、血栓、周りの臓器への影響などの可能性があります。頻度や対処法は事前の説明で確認してください。
長期的な見通し
ダビンチ手術は、体への負担を抑えながら精密な操作ができる方法として、多くの人に選ばれています。回復の速さや術後の過ごし方には個人差がありますが、多くの方は時間をかけて日常生活に戻っていきます。不安なことは、遠慮なく医療者に話してください。一緒に考えていくことができます。
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最終更新: 2026年11月3日
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