人工股関節の再置換手術(もう一度の手術)について
概要
人工股関節(じんこうこかんせつ)の再置換手術(さいちかんせつしゅじゅつ)は、以前に入れた人工股関節がうまく働かなくなったときに、その部品を取り替えたり、入れ直したりする手術です。人工股関節は、すり減った軟骨の代わりに体への負担を減らす「人工の関節」です。長く使ううちに、部品がゆるんだり、すり減ったり、まれに感染したりすることがあります。そうしたときに、痛みをやわらげ、歩きやすさを取り戻すために行うのが再置換手術です。初回の手術と同じように、整形外科(骨と関節の専門)の医師が担当します。
重要な事実
- 目的は初回の手術と同じで、痛みをやわらげ、歩きやすくすることです。
- 再置換手術は初回より難しい手術になることが多く、時間や入院期間が長めになることがあります。
- 手術が必要かどうかは、痛みの程度、レントゲンの所見、日常生活への影響を合わせて医師が判断します。
人工股関節の手術を受けた人の多くは、そのまま長く使えます。ただ、10〜20年ほどたつと一部の人に再置換が必要になることがあります。初回の手術に比べると件数は少ないものの、決して珍しい手術ではありません。
以前に人工股関節の手術を受けた人なら、誰にでも起こる可能性があります。とくに、若い年齢で初回手術を受けた人、活動量が多い人、体重の負担が大きい人、骨粗鬆症(こつそしょうしょう:骨がもろくなる状態)のある人、過去に手術部位の感染があった人では、再置換が必要になることが比較的多いとされています。
症状
- 手術した股関節の周りが急に大きく腫れ、赤くなり、高熱を伴う(感染を疑う状態)
- 胸の痛み、息苦しさ、急な息切れ、ふくらはぎの腫れや痛み(血管に血の塊が詰まる可能性)
- 股関節が急に外れたような強い痛みで、脚の向きが変わって動かせない
- 手術した脚が急に動かせない、感覚がない、色が悪い
- ⚠手術部位から体液や膿のようなものがにじみ出ている
- ⚠発熱が続く、だるさが強い
- ⚠痛みが日ごとに強くなり、体重をかけられない
- ⚠転倒したあとから股関節が痛む
一般的な症状
- 手術を受けた股関節の痛みが再び出てくる、または強くなる
- 歩き始めや体重をかけたときに痛む
- 脚を引きずる、歩き方が変わった
- 股関節がこわばる、動かしにくい
- 立ち上がりや階段の上り下りがつらい
- 股関節から「きしむ」「こすれる」ような音や感覚がある
- 脚の長さが変わったように感じる、不安定で力が入らない
子供の症状
- この手術は、成長期の子どもには基本的に行われません。
- 子どもの股関節の病気や手術については、小児整形外科の専門医にご相談ください。
高齢者の症状
- 痛みで歩く機会が減り、筋力やバランスが落ちて転倒しやすくなることがあります。
- 手術後の回復に時間がかかったり、入院中に体力が落ちたりすることがあります。
- リハビリと、家族や周囲のサポートが特に大切になります。
原因
主な原因
- 部品のゆるみ(無菌性ゆるみ):時間とともに人工関節と骨の間がゆるむ
- 部品のすり減り(摩耗):軟らかい素材の部品が長年で薄くなる
- 感染:手術部位に細菌が入り、人工関節の周りで炎症が起きる
- 骨の破壊(骨融解):すり減った破片への反応で、部品の周りの骨が弱くなる
- 人工関節の周りの骨折:転倒などで骨が折れる
- 脱臼や部品の破損:強い力がかかったときなど
リスク要因
- 若い年齢で初回の人工股関節手術を受けた
- 活動量が多く、スポーツや重い作業が多い
- 体重の負担が大きい
- 骨粗鬆症や関節リウマチなどの持病がある
- 手術部位の感染の既往、糖尿病、喫煙
- 転倒しやすい環境、筋力の低下
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱、手術部位の発赤・腫れ・にじみものがある
- 急に体重をかけられないほどの痛みがある
- 転倒したあとから股関節の痛みが続いている
定期受診を予約すべき場合:
- 以前と比べて歩くときの痛みが増してきた
- 歩き方が変わった、脚の長さが違う気がする
- 長く歩けなくなってきた、日常生活がつらい
- 手術から年数がたち、定期の診察の時期が来た
診断
診察で痛みの場所や歩き方、股関節の動きを確認し、レントゲンや血液検査などを組み合わせて、再置換が必要かどうかを判断します。感染が疑われる場合は、関節に細い針を刺して少量の液体を調べる検査を行うことがあります。
行われる可能性のある検査
- レントゲン(X線)検査:部品のゆるみや骨の状態を確認します
- CT検査:骨の破壊や部品の位置をより詳しく見ます
- 血液検査:炎症の程度や感染の可能性を調べます
- 関節穿刺(かんせつせんし):関節内の液体を採って細菌の有無を調べます
- 必要に応じてMRIや骨シンチグラフィなどの画像検査
診察で予想されること
診察は20〜30分程度が目安です。レントゲンはその場で撮影でき、結果をその日のうちに説明されることが多いです。血液検査の結果は数日かかることがあります。手術の必要性や時期について、生活の状況も含めて相談できます。納得がいくまで質問してよい場です。
治療
治療は、痛みや生活への影響の大きさに応じて選びます。すぐに手術が必要とは限らず、まずは痛みをやわらげる工夫やリハビリを行うこともあります。状態が進んでいる場合や、生活に大きな支障がある場合に、再置換手術を検討します。
自宅でのセルフケア
- 杖やシルバーカーなどを使い、股関節への負担を減らす
- 痛みのない範囲で、太ももやおしりの筋肉を保つ運動を続ける
- 長時間の立ち仕事や重い物運びをなるべく避ける
- 体重管理を心がける
- 家の中の段差や滑りやすい床を整え、転倒を防ぐ
- 禁煙する(骨や傷の治りに関わります)
医療治療
手術以外の方法としては、リハビリ(理学療法)で筋力と動きを保つ、杖などの歩行補助具を使う、日常生活を工夫する、といったことが中心になります。痛みがつらいときは、医師の判断で痛みを和らげるお薬が使われることがあります。ただし、部品のゆるみや感染など人工関節そのものに問題がある場合は、お薬だけで解決することは難しく、手術が検討されます。治療の方針は医師とよく相談して決めてください。
手術が検討される場合
手術が検討されるのは、安静やリハビリをしても痛みが強く日常生活が難しいとき、レントゲンで部品のゆるみや骨の破壊がはっきりしているとき、感染があるとき、転倒などで人工関節の周りを骨折したときなどです。手術の方法や入院期間は、状態によって一人ひとり異なります。
この病気と共に生きる
再置換手術のあとは、初回手術のときと同じように、段階を踏んでリハビリを進めます。入院中は理学療法士と一緒に歩く練習をし、退院後も通院リハビリを続けることが多いです。回復には数か月かかることがあり、焦らず少しずつ進めることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 転倒予防:手すり、滑り止め、夜間の照明を整える
- 無理のない範囲で毎日体を動かす
- 正しい姿勢と歩き方を意識する
- 喫煙をやめる
- 定期的に整形外科で経過を確認する
食事と運動
骨と筋肉を保つために、たんぱく質、カルシウム、ビタミンDをバランスよくとりましょう。食事だけで足りないと感じるときは、かかりつけ医に相談してください。運動は、痛みのない範囲でのウォーキングや、椅子に座ってできる筋力運動から始めると続けやすくなります。水泳や自転車など、股関節にやさしい運動もおすすめです。
精神的健康と心の健康
もう一度手術を受けることへの不安や、回復に時間がかかることへのいらだちは自然な気持ちです。痛みが続くと気分が落ち込むこともあります。眠れない、気分の落ち込みが続く、不安が強いといったときは、一人で抱え込まずに医療者に伝えてください。整形外科の医師や看護師、必要に応じて心の専門家に相談できます。つらい気持ちが強いときは、地域の相談窓口や医療機関に早めに連絡してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、人工股関節を長持ちさせる工夫はあります。体重管理、禁煙、転倒予防、無理のかかりすぎない活動、定期的な診察が役立ちます。感染予防のために、歯の治療や体調不良のときは早めに医療機関に相談し、人工関節の手術歴を伝えるようにしましょう。
ワクチン
手術の前後は感染に気をつける必要があります。ワクチン接種が必要かどうかは、年齢や持病、地域の状況によって異なるため、かかりつけ医にご相談ください。
検診プログラム
人工股関節の手術を受けた人は、症状がなくても定期的に整形外科で診察とレントゲンを受けることがすすめられます。健診の機会に、股関節の状態も確認してもらいましょう。
合併症
治療しない場合
- 痛みが強くなり、歩ける距離が短くなる
- 筋力やバランスが落ち、転倒しやすくなる
- 人工関節の周りの骨がさらに弱くなる
- 感染がある場合は、体全体に広がる危険がある
- 股関節が外れやすくなる、脚の長さの違いが進む
長期的な見通し
再置換手術は初回より難しい手術ですが、多くの人は痛みがやわらぎ、歩きやすさを取り戻しています。回復には時間がかかりますが、リハビリと周囲のサポートで少しずつ日常生活を取り戻せます。心配なことは、遠慮なく医療者に相談しながら進めてください。
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最終更新: 2026年11月3日
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