温熱療法(ハイパーサーミア)とは
概要
温熱療法は、体の一部、あるいは全身を温めて、治療に役立てる方法です。がん治療の場面では「ハイパーサーミア」と呼ばれ、腫瘍(しゅよう=体の中にできた異常な細胞のかたまり)を40〜43℃くらいまで温めることで、放射線治療や抗がん剤治療の効き目を高めることを目指します。ただし、これだけでがんが治るという治療ではなく、ほかの治療と組み合わせて使う補助的な治療として位置づけられています。また、整形外科やリハビリの現場では、肩こり・腰痛・関節のこわばりなどをやわらげるために「温める」物理療法も温熱療法と呼ばれています。このページでは、主に治療としての温熱療法について説明します。
重要な事実
- 温熱療法は、体を温めることで治療の効果を高めることを目指す方法で、がん治療では「ハイパーサーミア」と呼ばれます。
- 腫瘍を40〜43℃くらいに温め、放射線治療や抗がん剤治療と組み合わせて行われます。温熱療法だけでがんを治す治療として確立しているものではありません。
- リハビリや整形外科では、痛みやこわばりをやわらげる「温める物理療法」も温熱療法と呼ばれます。目的がまったく違うため、どちらの話かを確かめながら聞くと安心です。
がんな治療としてのハイパーサーミアは、日本では一部の医療機関で行われている治療で、全国どこでも受けられるものではありません。保険が使えるかどうかや対象となる条件は、がんの種類・状態によって変わります。実際に受けられるかどうかは、主治医や施設の相談窓口で確認しましょう。一方、リハビリなどで行われる「温める物理療法」は、多くの病院や整骨院などで広く行われています。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけへの返事がおかしい、ぼんやりして目が合わない
- けいれんが起きた
- 息が苦しい、胸の強い痛みがある
- 脈がとても速い、または不規則で、立とうとするとふらつく
- 広い範囲のやけど、皮膚が白く/黒く変わる、大きな水ぶくれができた
- これらの症状があるときは、すぐに119番へ連絡してください。
- ⚠38℃以上の発熱が続く
- ⚠吐き気や嘔吐が強く、水分がとれない
- ⚠めまいや立ちくらみが続く、尿の量が極端に少ない(脱水のサイン)
- ⚠治療した部位の皮膚が赤く腫れて強く痛む、水ぶくれができた
- ⚠強いだるさで起き上がれない、日常生活が難しい
一般的な症状
- 治療した部位の皮膚が赤くなる、熱く感じる、少しひりひりする
- 体がほてる、汗をかく、のどが渇く
- 治療のあとにだるさや疲れを感じる
- 皮膚の低温やけど(温めすぎで起きるやけど)
- 治療中にじっとしていることへの落ち着かなさ、緊張や不安
- 一時的な血圧や脈の変化、立ちくらみ
子供の症状
- 子どもは体温の調節がまだ未熟で、大人より体温が上がりやすいため、適否は慎重に判断されます。
- じっとしているのが難しいことがあり、治療の協力が得られるかどうかも含めて検討されます。
- 怖さや痛さをうまく言葉にできないことがあるため、保護者の付き添いとこまめな声かけが大切です。
- 治療後はだるさや食欲低下が出ることがあり、水分と休息を特に意識してあげてください。
高齢者の症状
- のどの渇きを感じにくく、気づかないうちに脱水(体の水分が足りなくなること)になりやすいです。
- 心臓や肺、腎臓に持病があると、体を温めることで負担がかかることがあります。
- 皮膚が薄くなっているため、低温やけどを起こしやすいです。
- 血圧や体温に影響する薬を飲んでいる場合は、必ず主治医に伝えてください。
- 治療後のふらつきによる転倒にも注意が必要です。
原因
主な原因
- 温熱療法は「治療法」であり、病気の原因ではありません。ここでは、どういう場面で行われるかを説明します。
- 手術が難しい、または再発した一部のがんに対して、放射線治療や抗がん剤治療と組み合わせて行われる
- がんによる痛みなどの症状をやわらげるケアの一環として検討されることがある
- 整形外科領域で、肩こり・腰痛・関節のこわばりを温めてやわらげる物理療法として行われる
- リハビリの前に筋肉を温め、体を動かしやすくする目的で行われる
リスク要因
- 心臓・肺・腎臓などに持病がある
- 体温の調節に影響する薬を飲んでいる
- 皮膚が弱い、感覚が鈍い(糖尿病による神経の障害など)
- 妊娠中、または妊娠の可能性がある
- 体内に金属(ペースメーカー、人工関節、金属のプレートなど)が入っている(装置によっては受けられないことがあります)
- 発熱がある、感染症にかかっているとき
- 体力が低下している、食事や水分がとりにくい状態が続いている
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 意識がぼんやりする、けいれん、胸の痛み、息苦しさ → すぐに119番へ
- 38℃以上の発熱、水分がとれないほどの嘔吐、尿がほとんど出ない → その日のうちに医療機関へ連絡
- 治療部位の皮膚の水ぶくれや、広がる赤み・強い痛み → その日のうちに連絡
- 転倒した、立てないほどのふらつきがある → その日のうちに連絡
定期受診を予約すべき場合:
- 治療の効果や副作用について不安がある
- ほかの治療との組み合わせや、治療の順番を相談したい
- 皮膚の赤みやだるさが数日続いている
- 費用や保険の適用、通院の回数について知りたい
- リハビリ目的の温熱療法を続けるかどうかを相談したい
診断
温熱療法は病気を見つけるための検査ではなく、「治療法」です。そのため、ここでいう「診断」は、あなたがこの治療を受けるのに適しているかどうかを評価することを指します。担当医は、がんの種類・大きさ・位置、これまでの治療の経過、全身の状態や持病、飲んでいる薬などを総合して判断します。リハビリ目的の温熱療法の場合は、痛みの場所や動きの制限を診察で確認します。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(貧血や内臓の働き、脱水の有無などを確認)
- 画像検査(CT・MRI・PET など、腫瘍の位置や大きさを確認)
- 心電図や胸部の検査(体を温めることに耐えられるかの確認)
- これまでの治療歴・手術歴・飲んでいる薬の確認
- 体力や全身状態の評価(体重の変化、食事や水分がとれているか)
- 必要に応じて、腫瘍の組織を調べた結果の確認
診察で予想されること
まず担当医から、治療の目的・方法・期待できること・副作用の説明があります。同意したうえで治療が始まります。1回の治療は40〜60分程度が多く、週に数回を数週間続ける形が一般的です。治療中は温かさや汗ばむ感覚があります。スタッフがそばで様子を見守り、皮膚の状態や体調をこまめに確認します。初めてのときは緊張して当然です。気分が悪くなったら、我慢せずにその場ですぐ伝えてください。
治療
温熱療法は、ほかの治療と組み合わせて行うのが基本です。放射線治療や抗がん剤治療と同じ時期に行うことで、効果を高めることを目指します。温熱療法だけを単独で行うことが、確立された治療法として推奨されているわけではありません。治療の組み合わせ方や順番は、がんの種類や状態、体力に合わせて担当医が決めます。
自宅でのセルフケア
- 治療の前後は、こまめに水分をとる(のどが渇く前に少しずつ)
- 治療した部位の皮膚をやさしく扱い、熱い風呂・カイロ・湯たんぽ・電気毛布で重ねて温めない
- 体温と体調を毎日記録し、治療日にスタッフへ見せる
- 治療の日は予定を詰め込まず、休む時間を確保する
- 可能であれば家族や友人に付き添いを頼む
- 飲んでいる薬(特に体温や血圧に影響するもの)は、自己判断でやめず、必ず主治医に伝える
- 暑い季節は室温と服装を調整し、汗をかいたら拭いて着替える
医療治療
温める方法にはいくつか種類があります。体外から装置で患部を温める方法、体の中から温める方法、全身を温める方法などがあり、施設ごとに使える装置と治療の進め方が異なります。温度や時間は、施設の決まりに沿って安全管理されます。治療中はスタッフが皮膚の状態や気分、血圧などを観察し、必要に応じて皮膚を保護したり、水分を補ったり、痛みや不快感への対応を行ったりします。具体的な薬の名前や量、治療の細かい設定は施設によって異なるため、この記事ではお伝えしません。担当医・薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
温熱療法そのものは手術ではありません。手術と組み合わせて行われることもあれば、手術が難しい場合の選択肢のひとつとして検討されることもあります。手術を受けるかどうか、温熱療法をどのタイミングで行うかは、病状と体力を踏まえて主治医と相談して決めていきます。
この病気と共に生きる
通院のリズムに体を慣らしていくことが大切です。治療のある日は「がんばる日」、ない日は「回復する日」と分けて考えると、気持ちが楽になることがあります。体調の変化を家族やスタッフと共有し、ひとりで抱え込まないようにしてください。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠を十分にとり、疲れをためない
- 禁煙を心がけ、お酒はほどほどにする(主治医に相談)
- 入浴は熱すぎない温度にし、長湯を避ける
- 寒い時期の暖房器具の使いすぎに注意し、皮膚を直接温めない
- 体調の記録をつける習慣をもつ
- 治療の予定を手帳やカレンダーに書き、家族と共有する
食事と運動
食事は特別なものを無理に食べる必要はありません。たんぱく質と野菜を意識し、食べられる量を少しずつ複数回に分けると続けやすくなります。水分はのどが渇く前にとりましょう。運動は、散歩や軽いストレッチなど「話しながらできる程度」が目安です。痛みやだるさが強い日は無理をせず、体調のよい日に少しだけ動く形で構いません。
精神的健康と心の健康
治療が続くと、不安、いらいら、気分の落ち込み、先の見えなさ、家族への遠慮など、さまざまな気持ちがわいてきます。それは自然な反応で、弱さではありません。気持ちを話すだけで楽になることがあります。もし、つらい気持ちが長く続くとき、眠れない日が続くとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ひとりで抱えずに、医療機関の相談窓口や下記の相談先を利用してください。緊急の場合は119番、またはお住まいの地域の救急相談窓口に連絡してください。
予防
温熱療法は治療法なので、「予防する」という考え方はあてはまりません。ただし、低温やけどや脱水、転倒といったトラブルは、次のような工夫でかなり防げます。治療部位をほかの暖房器具で重ねて温めない、水分をこまめにとる、治療後はゆっくり立ち上がる、体調の変化は早めにスタッフへ伝える。これらを心がけるだけで、安全に治療を続けやすくなります。
検診プログラム
温熱療法そのものの「検診」はありません。ただし、がんは早期に見つかるほど選択肢が広がるため、自治体のがん検診を決まった年齢・間隔で受けることは大切です。受ける時期や対象年齢は、お住まいの地域の案内や厚生労働省の情報で確認できます。
合併症
治療しない場合
- 温熱療法を受けないことが、そのまま病気の悪化を意味するわけではありません。治療の選択肢はひとつではないため、受けないという選択も尊重されます。
- 低温やけどや脱水などのトラブルを放置すると、皮膚の傷が広がったり、体調が大きく崩れたりすることがあります。
- 痛みやだるさを我慢し続けると、体力や気力が落ち、日常生活がつらくなることがあります。
- 不安や孤独感を一人で抱え続けると、眠れない日が続いたり、気持ちが沈み込んだりすることがあります。
長期的な見通し
温熱療法は、ほかの治療と組み合わせて治療の選択肢を広げる可能性がある方法です。効果の出方には個人差があり、誰にでも同じように効くわけではありませんが、安全性を確認しながら進められる治療です。わからないことや希望は、遠慮なく主治医に伝えてください。あなたにとって納得できる選択を、一緒に考えていくことが何より大切です。
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最終更新: 2026年11月3日
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