リードレスペースメーカー(心臓のペースメーカー)を知ろう
概要
ペースメーカーは、心臓がゆっくりしか動けないときに、電気の小さな信号を送って心臓の拍動(脈)を助ける装置です。心臓は自分で電気を作って脈を刻んでいますが、その電気の通り道が弱ると脈が遅くなり、めまいや失神が起きます。ペースメーカーはその代わりに規則正しいリズムを作ります。リードレスペースメーカーは「リード(電線のような細い線)」を使わないタイプで、小さなカプセル状の装置を脚の付け根の血管からカテーテル(細い管)で心臓の中まで運び、そのまま心臓の中に留置します。胸にポケットを作る必要がなく、傷が小さいのが特徴です。
重要な事実
- ペースメーカーは「脈が遅くなる病気(徐脈)」に対する治療で、心臓の働きを補助する装置です。
- リードレスタイプは胸を切開せず、脚の付け根の血管からカテーテルで心臓内に留置するため、体への負担が比較的小さい方法です。
- 留置したあとは、定期的な通院チェックと、電磁波(家電や医療機器)への注意が必要です。
ペースメーカーの植込みは日本でも年間数万件行われている、よく行われる治療です。ただしリードレスタイプは比較的新しい方法で、すべての人に使えるわけではなく、心臓の状態や必要な治療内容によって選ばれます。
主に、脈が遅くなる徐脈(洞不全症候群や房室ブロックなど)と診断された方です。高齢の方に多い傾向がありますが、若い方や小児でも、心臓の病気や心臓手術のあとに脈が遅くなることがあり、その場合は治療の選択肢になります。
症状
- 意識を失った、呼びかけに反応がない
- けいれんが起きた
- 呼吸が苦しそうで、顔色が青白い
- 胸の強い痛みが続いている
- 脈がとても遅い、または触れないように感じる
- ⚠ふらつきが強くなり、歩くのが不安になった
- ⚠気が遠くなる感じ(失神しかけた)があった
- ⚠新しい息切れや動悸が続いている
- ⚠ペースメーカーを留置した部位(脚の付け根など)が赤く腫れる、痛む、発熱がある
一般的な症状
- 脈が遅いと言われる(自分で脈を測ると少ない、あるいは不規則)
- 立ちくらみ、ふらつき、めまい
- 急に意識を失う(失神)、またはその手前のような気が遠くなる感じ
- 少し動いただけで息切れがする、階段で息が上がる
- 疲れやすい、だるさが続く
- 胸のあたりの不快感、力が入らない感じ
子供の症状
- 小児ではまれですが、生まれつきの心臓の病気や心臓の手術のあとに脈が遅くなることがあります。
- 赤ちゃんでは、ミルクを飲む勢いが弱い、体重が増えにくい、顔色が悪いといった形で気づかれることがあります。
- 幼児・学童では、走るとすぐ疲れる、運動中に気を失う、学校でぼんやりする時間が増えるなどが見られることがあります。
高齢者の症状
- 加齢とともに心臓の電気の通り道が弱くなり、脈が遅くなりやすくなります。
- 「年のせい」と思われがちな、ぼんやりする、疲れやすい、動作がゆっくりになるといった変化の背景に徐脈が隠れていることがあります。
- 転倒や失神によるけがのリスクが高くなるため、気になる症状は早めに相談することが大切です。
原因
主な原因
- 洞不全症候群:心臓の電気を作る部分(洞結節)の働きが弱くなり、脈が遅くなる状態
- 房室ブロック:電気が心臓の上の部屋から下の部屋へ伝わりにくくなる状態
- 加齢による心臓の電気の通り道の劣化
- 心筋梗塞(心臓の血管が詰まる病気)や心筋症など、心臓の筋肉の病気の影響
- 心臓の手術やカテーテル治療のあとの影響
- 一部の薬の影響で脈が遅くなることがある
- 生まれつきの心臓の病気(先天性)
リスク要因
- 高齢であること
- 心臓の病気の既往(心筋梗塞、心不全、心筋症など)
- 心臓の手術やカテーテル治療を受けたことがある
- 甲状腺の病気など、体の代謝に影響する病気
- 脈を遅くする作用のある薬を使っている(薬の自己判断での中止はせず、必ず医師・薬剤師に相談してください)
- 睡眠時無呼吸や強い疲労・感染など、心臓に負担がかかる状態
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 意識を失った、または失神しかけた
- 転倒してけがをした、けがの原因がわからない
- 強い息切れや胸の痛みがある
- ペースメーカー留置後に発熱、留置部位の発赤・腫れ・痛みがある
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断の心電図で「脈が遅い」「ブロックがある」と言われた
- めまい、ふらつき、疲れやすさが続いている
- 動いたときの息切れが以前より強くなった
- 脈が遅いと言われたことがあり、定期的な診察の予定を決めたい
診断
まず問診で、めまいや失神があったか、どんなときに症状が出るかを確認します。そのうえで心電図で脈の速さや電気の伝わり方を調べます。症状がときどきしか出ない場合は、24時間や数日間心臓のリズムを記録する検査を行います。必要に応じて心臓の超音波検査や血液検査も行い、ほかの病気がないかを確認します。診断はこれらの結果を総合して行われます。
行われる可能性のある検査
- 心電図(安静時の心電図)
- ホルター心電図(24時間の心臓のリズムを記録)
- 植込み型心電計(長期間のリズムを記録する小さな装置)
- 心臓超音波検査(心臓の形や動きをみる)
- 血液検査(甲状腺の病気や電解質の異常などを確認)
- 運動負荷心電図(運動したときの脈の変化をみる)
診察で予想されること
検査の多くは痛みがなく、短時間で終わります。ホルター心電図は装置を身につけたまま普段どおり過ごせます。検査結果の説明では、脈が遅い原因と、治療が必要かどうかを医師と一緒に確認します。リードレスペースメーカーが適しているかどうかは、心臓の状態や生活背景をふまえて検討されます。
治療
治療の目的は、脈が遅くなることで起きるめまいや失神、息切れを防ぎ、安全に日常生活を送れるようにすることです。症状がなく心臓の働きに問題がない場合は、定期的な観察でよいこともあります。症状がある場合や、命に関わるリスクがある場合はペースメーカーの植込みが検討されます。リードレスペースメーカーは、胸に傷を作らずに心臓内へ留置する方法で、体格や心臓の状態、必要とする治療の内容に応じて選ばれます。
自宅でのセルフケア
- 脈や体調の変化をメモしておき、診察のときに伝える
- 急な立ち上がりを避け、ふらつきがあるときは座る・つかまるなど安全を優先する
- 脱水や暑さで体調を崩さないよう、水分と休息を心がける
- 処方されている薬は自己判断でやめたり量を変えたりせず、気になる点は医師・薬剤師に相談する
- ペースメーカー手帳(機器の情報が書かれた手帳)を常に持ち歩く
医療治療
治療の中心は、脈が遅くなる原因に応じた対応と、必要に応じたペースメーカーの植込みです。植込みは、心臓の中に電極を留置して心臓のリズムを補助する方法で、リードを使うタイプとリードレスタイプがあります。リードレスはカテーテルで心臓内に留置するため、胸の皮膚の下に装置を入れるポケットが不要です。また、脈を遅くする薬が原因と考えられる場合は、担当医が薬の内容を見直すことがあります。植込み後は、機器が正しく働いているかを定期的に確認します。具体的な方法や薬の扱いは、必ず担当医の指示に従ってください。
手術が検討される場合
症状のある徐脈がある、失神を繰り返す、心不全を伴う徐脈があるなど、命や生活の安全に関わると判断された場合に植込みが検討されます。手術の適応や方法は、心臓の状態・年齢・生活背景をふまえて担当医と相談して決めます。
この病気と共に生きる
植込み後は、多くの方が以前と同じように日常生活を送っています。傷の治り具合や運動の制限については、退院時に担当医から具体的な指示があります。機器の状態は通院で定期的に確認します。遠隔モニタリング(自宅から機器の情報を送る仕組み)を利用できる場合もあります。
生活習慣のアドバイス
- ペースメーカー手帳を携帯し、旅行や受診の際に提示する
- 強い電磁波を出す機器には近づきすぎない(IH調理器の上に体を近づけない、スマートフォンは植込み部位と反対側のポケットに、など)。具体的な距離は担当医・医療機関の説明に従う
- 空港などの金属探知機では、ペースメーカーがあることを係員に伝える
- MRIなどの検査は、機器の対応状況を事前に医療機関へ伝える
- 激しい接触のあるスポーツは、担当医に相談してから始める
- 運転に関する注意は担当医の指示を必ず確認する
食事と運動
食事は、心臓にやさしいバランスのよい食事を心がけます。塩分や脂質のとりすぎに注意し、野菜や魚を意識して取り入れるとよいでしょう。運動は、散歩など無理のない範囲から始め、息切れやふらつきがあれば休みましょう。運動の強さや始め方については、退院時の指示と担当医のアドバイスに従ってください。
精神的健康と心の健康
「体に機械が入る」という経験は、不安や戸惑いを伴うことがあります。動悸やふらつきへの心配、電磁波への気がかり、生活の変化への適応などで気持ちが落ち着かないのは自然なことです。一人で抱え込まず、家族や友人、医療スタッフに話してみましょう。つらさが続くときは、かかりつけ医や地域の相談窓口に相談してください。
予防
脈が遅くなる病気そのものを完全に防ぐことは難しい面があります。ただし、心臓の病気を早めに見つけて管理すること、健康診断で心電図を確認すること、薬の影響を医師・薬剤師と確認することは、リスクを減らす助けになります。
ワクチン
心臓の病気がある方は、かぜやインフルエンザなどの感染症にかかると体への負担が大きくなることがあります。予防接種については、かかりつけ医に相談して受けるかどうかを決めましょう。
検診プログラム
健康診断の心電図検査は、脈の遅さや電気の伝わり方の異常を見つける手がかりになります。動悸やふらつき、失神があったときは、健診を待たずに医療機関で相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 失神による転倒やけが、骨折のリスク
- 息切れやだるさが続き、日常生活の活動が制限される
- 心臓の働きが弱まり、心不全の状態になることがある
- まれに、命に関わる危険な不整脈につながることがある
長期的な見通し
ペースメーカーによる治療は、長い年数にわたって多くの方の症状をやわらげ、生活の質を保つ助けになってきました。リードレスペースメーカーも選択肢のひとつとして行われています。機器の種類や治療の進み方は一人ひとり異なりますが、定期的な通院と注意点を守ることで、多くの方が安心して日常を送っています。不安なことは、遠慮なく担当医にたずねてください。
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最終更新: 2026年11月3日
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