着用型除細動器(ウェアラブル除細動器)ってどんなもの?
概要
着用型除細動器は、心臓の電気のリズムを24時間見守り、命に関わる危険な不整脈が起きたときに自動で電気ショックをあたえる、ベスト型の医療機器です。肌着の下に着けて、入院中だけでなく自宅でも生活しながら使えます。心臓の働きが弱っている時期に、突然の心停止から身を守る「一時的な安全ベルト」のような役割をします。
重要な事実
- 心臓の電気信号を24時間監視し、危険な不整脈(脈が乱れて血液を送り出せなくなる状態)を自動で見つけます。
- 危険な不整脈が起きると、まず警報と音声で知らせ、意識が戻らない場合に電気ショックをあたえます。
- 多くは一時的な使用です。原因の治療が進むと、体内に植え込むタイプの機器に切り替わったり、不要になったりします。
心臓病の人全体から見ると、決して多い機器ではありません。ただし心臓のポンプ機能が低下している人など、一定の条件にあてはまる人にとっては標準的な選択肢のひとつです。
心臓のポンプ機能が低下している人(心不全)、心筋梗塞のあとの人、遺伝性の不整脈がある人、心臓の感染症で体内の除細動器を一時的に取り出した人、心臓移植を待つ人などが対象になります。子どもでは使用自体がまれです。
症状
- 意識がない、呼びかけに反応がない
- 呼吸がない、または正常な呼吸ではない(あえぐような呼吸)
- 倒れてけいれんした、脈が触れない
- このようなときはためらわず119番に電話し、救急隊の指示に従ってください。AED(自動体外式除細動器)が近くにあれば使用を検討します。
- ⚠一時的に意識を失った、気を失いそうになった
- ⚠胸の痛みをともなう動悸、動悸が長く続く
- ⚠急に息苦しくなった、足のむくみが強くなった
- ⚠機器の警報が鳴り続ける、ショックが作動した(作動したら体調が良くても必ず医療機関に連絡してください)
一般的な症状
- 着用中も症状はなく、ふだんどおり生活できることが多いです。
- 動悸(心臓がドキドキする、脈が乱れる感じ)
- ふらつき・めまい
- 一時的に意識が遠のく(目の前が暗くなる感じ)
- 胸の不快感
子供の症状
- 小児では使用自体がまれです。
- 症状を言葉で伝えにくいため、顔色が悪い、哺乳の力が弱い、ぐったりしている、意識を失ったように見えるなどに注意します。
- 装着を嫌がる場合は、無理に押さえつけず医療者に相談してください。
高齢者の症状
- 皮膚が弱くなり、装着によるかぶれ・かゆみが出やすいです。
- 認知機能が低下している場合は、家族の見守りや装着の声かけが大切です。
- 立ちくらみや転倒、失神のリスクにも気を配ります。
原因
主な原因
- 心筋梗塞や心筋症などで心臓の筋肉が弱っている
- 生まれつきの心臓の電気の流れの異常(遺伝性不整脈)
- 心臓の炎症やサルコイドーシス(心臓に炎症の塊ができる病気)
- 体内に植え込んだ除細動器が感染し、一時的に取り出した後の「つなぎ」
- 心臓移植や治療の待機中
リスク要因
- 心臓のポンプ機能(駆出率)が低下している
- 過去に心停止や危険な不整脈があった
- 家族に突然死や遺伝性不整脈の人がいる
- 心不全と診断された、心筋梗塞の既往がある
- 高血圧・糖尿病・喫煙など、動脈硬化を進める要因がある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 倒れた、意識を失った、けいれんした
- 機器のショックが作動した
- 警報が止まらない、装着の指示どおりに作動しない
- 胸の強い痛み、息苦しさの急な悪化
定期受診を予約すべき場合:
- 装着のしかたや締め付けが合わない
- 皮膚のかぶれ・かゆみ・赤みが続く
- 電池や充電、旅行・入浴・運転について相談したい
- 不安や気持ちの落ち込みが続く
- 定期受診のとき
診断
着用型除細動器は「診断」ではなく、循環器内科の医師が必要と判断して処方する医療機器です。あわせて、土台にある心臓の病気をくわしく調べます。
行われる可能性のある検査
- 心電図(心臓の電気の記録)
- 24時間心電図(ホルター心電図)
- 心エコー(超音波で心臓の動きと形を見る検査)
- 血液検査
- 心臓MRI
- 冠動脈の検査
- 必要に応じて遺伝子の検査
診察で予想されること
体に合うサイズを選び、装着の練習と、警報が鳴ったときの対応の説明を受けます。計測データは医療機関へ送信され、定期的な外来で経過を確認します。
治療
機器は「見守り役」です。危険な不整脈から身を守りながら、土台にある心臓の病気の治療を並行して進めます。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示どおり、入浴・シャワー以外は装着します(多くは1日22〜23時間程度)。
- 毎日、肌を清潔で乾燥した状態に保ち、かぶれがないか確認します。
- 電池はこまめに充電し、予備を用意しておきます。
- 家族や同僚に、警報が鳴ったとき・ショックのあとの対応を伝えておきます。
- 水泳、入浴、サウナでは外します。
- 機器をぶつけない、コードを引っ張らないようにします。
- ショックが作動したら、体調に問題がなくても必ず医療機関に連絡します。
医療治療
土台の心臓病の治療(心不全の管理、不整脈の治療)、カテーテルアブレーション(心臓の電気の通り道を焼いて整える治療)、体内に植え込むタイプの除細動器の植え込みなどが検討されます。薬は医師が状態に合わせて選びます。
手術が検討される場合
状態が安定し、体内に植え込む除細動器が必要と判断されたとき、感染が治まったとき、心機能が回復して機器が不要と判断されたときには装着を終了します。アブレーションや心臓移植が検討されることもあります。
この病気と共に生きる
肌着の下に装着するため、服の上からは目立ちにくいことが多いです。睡眠中も装着し、入浴のときだけ外します。空港などの保安検査では、機器の説明書を見せるとスムーズです。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を心がける
- お酒は医師に相談して量を控える
- 十分な睡眠と体重管理
- 運転してよいかは必ず医師に確認する
- 激しく体がぶつかるスポーツは事前に相談する
食事と運動
減塩とバランスのよい食事を心がけます。運動は心臓リハビリテーションなどを通じて、医師の許可のもとでウォーキングなどから少しずつ始めると安心です。
精神的健康と心の健康
警報への不安、装着による睡眠の変化、体の見た目への悩みなど、気持ちの負担がかかることがあります。つらさを一人で抱え込まず、家族や医療者に話してください。落ち込みが続くときは、かかりつけ医やお住まいの地域の相談窓口(保健所・精神保健福祉センターなど)に相談できます。
予防
この機器は突然死のリスクを下げるためのもので、土台の心臓病そのものを治すものではありません。禁煙、血圧・血糖・体重の管理など、生活習慣を整えることが心臓病の進行をゆるやかにする助けになります。
検診プログラム
健康診断の心電図は、不整脈や心臓病を見つける手がかりになります。家族に突然死や遺伝性不整脈の人がいる場合は、早めに医師に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 危険な不整脈による突然の心停止
- 脳への血流が減ることによる後遺症
- 命に関わる状態になる可能性
- 機器があっても100%防げるわけではないため、基礎の治療と定期受診が大切です
長期的な見通し
多くは一時的な使用で、土台の治療が進めば外せる可能性があります。不安はあると思いますが、医療者と一緒に一歩ずつ進めていけば大丈夫です。気になることは何でも相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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