低侵襲脊椎手術(からだにやさしい背骨の手術)
概要
「低侵襲脊椎手術」とは、背骨(脊椎)の病気を治療する手術のうち、体への負担をできるだけ小さくする方法をまとめた呼び方です。背中や腰を大きく切らず、数センチほどの小さな切開(体の表面を切る小さな穴)や、細い管についたカメラ(内視鏡)を使って、飛び出した椎間板や骨の一部を治療します。筋肉や骨を傷つける範囲が小さいため、手術後の痛みが少なく、入院が短く、回復が早いことが期待されています。ただし、すべての脊椎の病気に使えるわけではなく、症状や画像の所見によって向き・不向きがあります。
重要な事実
- 小さな切開と専用の器具・カメラを使って行う手術で、背中の筋肉を大きく切らないのが特徴です。
- 内視鏡手術、顕微鏡を使う手術、小さな切開で行う固定術など、いくつかの方法があります。
- 回復が早いといわれますが、手術の安全さや向き・不向きは一人ひとりの状態によって違います。
脊椎の手術全体の中で、低侵襲の方法は年々増えています。日本でも、腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどに対して広く行われるようになっています。
腰や首の痛み、脚のしびれなどで日常生活がつらい人が対象になります。中高年以降に多いですが、若い人の椎間板ヘルニアで行われることもあります。
症状
- 急に両脚が動かない、力が入らない
- 尿や便を自分でコントロールできなくなった(尿が出ない、もれる)
- 股(また)や肛門のまわりの感覚が急になくなった
- 手術後に息苦しさ、胸の強い痛み、意識がもうろうとする状態がある
- ⚠手術後の傷口が赤く腫れる、膿のような液体が出る、38℃以上の熱がある
- ⚠脚のしびれや麻痺がどんどん強くなっている
- ⚠痛みで眠れない、普段の痛み止めで楽にならない
- ⚠ふくらはぎが片方だけ腫れて痛む(血の塊ができる血栓の可能性があります)
一般的な症状
- 腰や背中の痛み
- お尻から脚にかけての痛みやしびれ(坐骨神経痛といわれる痛み)
- 歩くと脚がしびれたり痛くなったりして、休まないと歩き続けられない
- 脚の力が入りにくい、つまずきやすい
- 首の病気の場合、手や腕のしびれ、細かい作業がしにくい
- 長く立つ、座る、歩くのがつらい
子供の症状
- 子どもで脊椎の手術が必要になることは多くありません。
- 背骨が曲がる側弯症(そくわんしょう)など、別の病気が関係することもあります。
- 子どもの腰や脚の痛み、歩き方の変化は、小児科や整形外科で相談してください。
高齢者の症状
- 加齢で骨や椎間板が変化し、脊柱管狭窄症(神経の通り道が狭くなる病気)や圧迫骨折(骨がつぶれる骨折)が増えます。
- 高血圧・糖尿病・心臓病などの持病がある場合は、手術前の体の状態の確認が特に大切です。
- 骨粗しょう症があると、手術後のリハビリや骨の回復に時間がかかることがあります。
原因
主な原因
- 椎間板ヘルニア(椎間板の中身が飛び出して神経を圧迫する病気)
- 脊柱管狭窄症(神経の通り道が狭くなって神経を圧迫する病気)
- 腰椎すべり症(背骨の骨が前にずれる病気)
- 圧迫骨折(骨がつぶれて形が変わる骨折)
- 変形性脊椎症(加齢による骨と椎間板の変化)
リスク要因
- 重いものを持つ仕事や、腰に負担のかかる作業
- 喫煙(骨や椎間板に届く血流を悪くします)
- 運動不足や長時間の座り仕事
- 糖尿病などの持病
- 骨粗しょう症(骨がもろくなる病気)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急に脚の力が入らなくなった、歩けなくなった
- 排尿・排便のトラブルが出てきた
- 股や肛門のまわりの感覚がなくなった
- 手術後の傷の腫れ、膿、発熱がある
定期受診を予約すべき場合:
- 腰や脚の痛み・しびれが2〜3週間以上続く
- 歩ける距離がだんだん短くなってきた
- 痛みのため仕事や家事、睡眠に支障が出ている
- 手術を勧められたが不安があり、ゆっくり相談したい
診断
問診(症状や生活の様子を聞くこと)、診察(神経の働きや脚の力を確認すること)、画像検査を組み合わせて診断します。手術が向いているかどうかは、症状の強さ、日常生活への影響、画像の所見、持病や体力などを総合して判断します。必要に応じて、別の医療機関の意見を聞く(セカンドオピニオン)こともできます。
行われる可能性のある検査
- レントゲン(X線)検査
- MRI検査(神経や椎間板の状態を詳しく見る画像検査)
- CT検査(骨の形を詳しく見る画像検査)
- 神経伝導検査や筋電図(神経の働きを調べる検査)
- 血液検査や心電図(手術前の全身状態の確認)
診察で予想されること
診察では、どこがどのように痛むか、どんなときに悪くなるかを伝えると役に立ちます。画像検査では、検査の前に金属類を外すなどの説明があります。手術の説明では、低侵襲の方法が使えるか、従来の方法と比べてどうか、合併症の可能性などを医師に確認しましょう。
治療
治療は、まず手術以外の方法から始めるのが一般的です。安静や生活の工夫、リハビリ、神経ブロック注射などを行い、それでも強い痛みや麻痺が続く場合に手術を検討します。手術には低侵襲の方法と、従来の開放手術があり、状態に合わせて選ばれます。
自宅でのセルフケア
- 痛みの少ない姿勢や動作を工夫する
- 医師や理学療法士に教わったストレッチや筋力トレーニングを無理のない範囲で続ける
- 長時間同じ姿勢を避け、こまめに休憩する
- 適正な体重を保つ
- 禁煙する
- 温めると楽になる場合は温める(感覚が鈍い部分はやけどに注意)
医療治療
痛みをやわらげる薬や、神経の痛みに使われる薬、湿布、神経ブロック注射(神経の近くに注射して痛みの流れを和らげる方法)、理学療法などが行われます。薬の種類や量、使い方は医師や薬剤師に確認してください。手術には、内視鏡を使う方法、顕微鏡を使う方法、小さな切開で行う固定術などがあり、状態に合わせて選ばれます。
手術が検討される場合
手術は、手術以外の治療を続けても強い痛みやしびれが改善しないとき、排尿障害や急速に進む麻痺があるとき、歩行が著しく難しいときなどに検討されます。急を要する症状がある場合は、早めの受診が大切です。
この病気と共に生きる
手術後は、決められた期間、姿勢や動作に気をつけて過ごします。退院後はリハビリを続けながら、少しずつ日常生活に戻っていきます。回復の速さには個人差があるため、周りと比べすぎず、自分のペースを大切にしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 腰に負担のかかる重いものを持ち上げる動作を避ける
- 椅子と机の高さを調整し、姿勢を整える
- 長時間の運転や座り続けることを避ける
- 睡眠を十分にとる
- 禁煙を続ける
- 痛みが強い日は無理をせず、医療機関に相談する
食事と運動
バランスのよい食事で体重を適正に保つことは、腰への負担を減らす助けになります。骨の健康のため、適度な運動と日光を浴びることも大切です。運動は、医師や理学療法士に相談して、自分に合った内容から始めましょう。
精神的健康と心の健康
手術前後の不安、痛みが続くつらさ、回復への焦りから、気分が落ち込むことがあります。これは珍しいことではありません。つらい気持ちが続くときは、医療者や家族に話し、必要に応じて相談の場を利用してください。
予防
脊椎の病気すべてを防ぐことはできませんが、生活習慣を整えることでリスクを下げられる場合があります。手術を受けた後も、同じような工夫が再発予防に役立ちます。
検診プログラム
脊椎の病気のための決まった検診はありません。腰や脚の痛みやしびれが続く場合は、早めに整形外科を受診してください。
合併症
治療しない場合
- 神経の圧迫が続くと、しびれや麻痺が残ることがあります
- 排尿・排便のトラブルが続くことがあります
- 歩ける距離が短くなり、外出が難しくなることがあります
- 痛みによる睡眠不足や気分の落ち込みが起きることがあります
長期的な見通し
多くの人は、手術やリハビリによって痛みやしびれが軽くなり、日常生活を取り戻しています。低侵襲の手術でも合併症の可能性はゼロではありませんが、医療チームとよく相談して進めることで、安心して治療に臨めます。
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最終更新: 2026年11月3日
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