腎尿管全摘除術(腎盂・尿管のがんの手術)
概要
腎尿管全摘除術(じんにょうかんぜんてきしゅじゅつ)は、片方の腎臓と、その腎臓から膀胱(ぼうこう)まで続く尿管をまとめて取り除く手術です。「腎盂(じんう)」は腎臓の中で尿が集まるところ、「尿管」は腎臓と膀胱をつなぐ細い管のことです。この部分の内側にできたがん(尿路上皮がん)を治すために行われます。片方の腎臓を失っても、もう片方の腎臓が働きを補ってくれることが多く、多くの方は手術後も日常生活を続けられます。
重要な事実
- 片方の腎臓と尿管を一緒に取り除く手術です。
- 多くの場合、体の外に尿の袋(人工肛門のようなもの)を作ることはありません。
- 残ったもう片方の腎臓が働きを補うため、生活への影響は比較的少ないことが多いです。
- 手術のあとも、膀胱(ぼうこう)に新しくがんができないかを定期的に検査します。
腎盂・尿管のがんは、膀胱のがんに比べると少ない病気です。ただし、腎尿管全摘除術は泌尿器科で行われる標準的な手術のひとつで、多くの医療機関で行われています。
50〜70代の方に多く、男性にやや多くみられます。喫煙歴のある方、染料・ゴム・皮革などの化学物質を扱う仕事をしてきた方、慢性の腎臓病や腎結石の既往(これまでの病歴)がある方に多くみられます。家族に尿路のがんが多い場合(遺伝性の体質)もあります。
症状
一般的な症状
- 尿に血が混じる(血尿)。痛みを伴わないことが多いです。
- 腰や脇腹のしつこい痛み。
- 排尿時の痛み、頻尿(トイレが近い)。
- 疲れやすさ、食欲の低下、体重が減る。
- 症状がほとんどなく、健康診断の尿検査で見つかることもあります。
原因
主な原因
- 尿の通り道の内側を覆う細胞(尿路上皮)からできるがんが原因です。
- 喫煙がもっとも大きな要因と考えられています。
- 膀胱のがんが尿管側に広がってできることもあります。
リスク要因
- 喫煙(現在も吸っている方も、過去に吸っていた方も)。
- 染料・ゴム・皮革・塗料などの化学物質を扱う仕事。
- 慢性の腎臓病、長く続く腎結石や炎症。
- 高齢であること、男性であること。
- 家族歴や遺伝性の体質(リンチ症候群など)。
- 膀胱がんの治療を受けたことがある。
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿に血が混じる(特に痛みのない血尿)。
- 脇腹の痛みと発熱が同時にある。
- 尿が出にくい、または出ない。
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断の尿検査で血が混じると言われた。
- 膀胱炎のような症状(排尿時痛・頻尿)が繰り返す。
- 家族に尿路のがんの人がいる。
- 腰や脇腹の違和感が続いている。
診断
まず問診と尿検査を行い、画像検査で腎臓・尿管の様子を確かめます。必要に応じて内視鏡で中の様子を見たり、組織を少し取って調べたりします。
行われる可能性のある検査
- 尿検査(血尿や感染の有無を調べる)。
- 血液検査(腎臓の働き、貧血の有無を調べる)。
- 超音波(エコー)検査。
- CT検査、MRI検査。
- 膀胱尿管鏡(ぼうこうにゅうかんきょう)検査。
- 組織検査(生検):取った細胞を顕微鏡で調べます。
診察で予想されること
検査の多くは外来で受けられ、CTなどは10〜20分ほどで終わります。内視鏡検査は麻酔を使うことがあり、その日は車の運転を控えるよう案内されることがあります。結果がそろうまで数日から2週間ほどかかることがあります。
治療
治療の中心は、がんを手術で取り除くことです。腎尿管全摘除術を行うかどうかは、がんの広がり方、もう片方の腎臓の働き、年齢や体力を総合して決めます。手術には、お腹を開く方法と、小さな穴から器具を入れる方法(腹腔鏡・ロボット支援)があり、施設や状況に応じて選ばれます。
自宅でのセルフケア
- 手術前に禁煙する(回復に役立ちます)。
- できる範囲で歩くなど、体力を保つ。
- 水分をこまめにとる。
- 退院後の通院予定を確認し、忘れずに受診する。
- 傷や体調の変化をメモしておき、受診時に伝える。
医療治療
手術のほか、状況に応じて、がんの薬(抗がん薬)や、免疫の働きを利用した治療、放射線による治療が検討されます。どの治療を組み合わせるかは、がんの種類・広がり・腎臓の働きによって変わります。具体的な薬や量については、担当の医師から説明があります。
手術が検討される場合
がんが腎盂や尿管にとどまっている、もう片方の腎臓が十分に働いている、体力が手術に耐えられる、といった場合に検討されます。腎臓の働きが低い方や高齢の方では、腎臓を残す方法や、体への負担が少ない治療を選ぶこともあります。
この病気と共に生きる
片方の腎臓でも、多くの方はふだんの生活を続けられます。手術後は、膀胱にがんができないかを見る検査(膀胱鏡)を定期的に受けることが大切です。水分をとり、排尿を我慢しすぎないようにしましょう。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける。
- お酒はほどほどにする。
- 水分をこまめにとる。
- 血圧を管理する。
- 決まった通院を欠かさない。
- 睡眠と休息を十分にとる。
食事と運動
塩分を控えめにして、野菜やたんぱく質をバランスよくとると、残った腎臓の負担を減らせます。食事について不安があれば、管理栄養士に相談できます。運動は、手術後は医師の指示に従って少しずつ始め、散歩など無理のない範囲から続けましょう。
精神的健康と心の健康
手術や「腎臓をひとつ失う」という経験は、不安や喪失感、体への戸惑いを伴うことがあります。落ち込むこと自体は自然な反応です。つらい気持ちが続くときは、ひとりで抱えず、医療者や家族、相談窓口に話してください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えたときは、ためらわず救急(119番)や地域の相談窓口に連絡してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、禁煙は最も効果的な方法のひとつです。化学物質を扱う仕事では防護具を使い、慢性の腎臓病や結石は治療を続けましょう。
検診プログラム
健康診断の尿検査は、血尿を見つける大切な手がかりです。膀胱がんの治療を受けたことがある方は、膀胱鏡による定期検査が勧められます。
合併症
治療しない場合
- がんが大きくなり、周りの組織に広がる。
- リンパ節や肺・肝臓・骨などへ転移する。
- 血尿が続いて貧血になる。
- 尿の流れが悪くなり、腎臓の働きが落ちる。
- 痛みや発熱が続き、生活の質が下がる。
長期的な見通し
腎盂・尿管のがんは、早く見つけて手術で取り除ければ、根治を目指せる病気です。片方の腎臓を失っても多くの方は生活を続けられます。手術後も定期的な検査を続けることで、変化に早く気づけます。不安なことは、遠慮なく担当医に聞いてください。
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最終更新: 2026年11月3日
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