心室中隔心筋切除術(心臓の壁を削る手術)
概要
心室中隔心筋切除術(しんしつちゅうかくしんきんせつじょじゅつ)は、心臓の左右の部屋を仕切っている壁(心室中隔・しんしつちゅうかく)が厚くなりすぎて、血液の通り道が狭くなったときに、その分厚くなった部分を外科的に削って取り除く手術です。この手術が検討されることが多いのは「閉塞性肥大型心筋症(へいそくせいひだいがたしんきんしょう)」という病気です。肥大型心筋症は、心臓の筋肉(心筋)が原因不明に厚くなる病気で、遺伝が関係していることが多いとされています。厚くなった筋肉が血液の出口をふさぐように狭くすると、息切れや胸の痛み、失神などが起こりやすくなります。手術の目的は、狭くなった通り道を広げて、血液がスムーズに流れるようにすることです。
重要な事実
- 心臓の仕切りの壁(中隔)が厚くなった部分を削り、血液の通り道を広げる手術です。
- 多くの場合、お薬で症状が十分に良くならない人が対象になります。
- 全身麻酔と人工心肺を使う心臓の手術で、数日から数週間の入院が必要になります。
肥大型心筋症はおよそ500人に1人くらいといわれる、比較的よくみられる心臓の病気ですが、そのうち手術まで必要な人は一部です。この手術自体は、心臓血管外科のある大きな病院で行われています。
子どもから高齢者まで、幅広い年齢でみられますが、多くは30〜50代で見つかります。遺伝の影響が大きいため、家族に同じ病気の人がいる場合は特に注意が必要です。
症状
- 意識を失った、または倒れて失神した
- 胸の中央に強い痛みや締めつけられる感じが続く
- 急に息が苦しくなり、横になれない
- 冷汗が出る、顔色が悪い、唇が紫色になる
- 脈がとても速く、意識が遠のく感じがする
- ⚠動悸が数時間続く、脈が速く不規則に感じる
- ⚠めまいが強くなり、日常生活が難しい
- ⚠足のむくみが急に増えた、数日で体重が急に増えた
- ⚠息切れが急に悪化してきた
一般的な症状
- 坂道や階段を上るときの息切れ
- 胸の痛みや圧迫感(特に体を動かしたとき)
- 動悸(心臓がドキドキする、脈が乱れる感じ)
- 立ちくらみ、または一瞬意識を失う失神
- 疲れやすい、だるい
- 足のむくみ(心臓の働きが落ちてきたサインのことがあります)
子供の症状
- 症状がまったくないことも多い
- 授乳のときに疲れてすぐやめてしまう、体重が増えにくい
- 遊ぶとすぐ息が上がる、走れない
- 学校の運動中に立ちくらみや失神
- 動悸を訴える
高齢者の症状
- 加齢とともに息切れが強くなることがある
- 買い物や入浴など、日常の動作で息苦しくなる
- 心房細動(脈が不規則になる不整脈)を合併しやすい
- 高血圧や弁膜症など、ほかの心臓の病気をあわせ持つことがある
- 立ちくらみから転倒し、骨折につながることがある
原因
主な原因
- 心臓の筋肉のタンパク質をつくる遺伝子の変化(変異)が主な原因と考えられています。
- 家族の中で同じ病気の人がいる場合、遺伝している可能性があります。
- 一部は、高齢による変化や高血圧などほかの病気に伴って心筋が厚くなることもあります。
リスク要因
- 家族に肥大型心筋症や突然死の人がいる
- 遺伝子の変化(変異)が確認されている
- 高血圧などの心臓に負担をかける病気がある
- 激しい運動時の脱水や暑さ、飲酒などで症状が出やすくなることがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 失神した、または失神しかけた
- 胸の痛みが続いている
- 動悸が止まらず、気分が悪い
- 息苦しさが急に強くなった
定期受診を予約すべき場合:
- 健康診断の心電図で異常を指摘された
- 家族に肥大型心筋症の人がいる
- 運動時の息切れや動悸が続いている
- 足のむくみや疲れやすさが気になる
診断
問診と診察、家族歴の確認に加えて、心臓の超音波検査(エコー)が中心になります。超音波検査では、心筋の厚さや血液の通り道の狭さ、心臓の動きを直接見ることができます。必要に応じてほかの検査を組み合わせて、手術が必要かどうかを総合的に判断します。
行われる可能性のある検査
- 心臓超音波検査(心エコー):心筋の厚さと血液の流れを調べます
- 心電図:心臓の電気の流れを調べます
- ホルター心電図:24時間の脈の乱れを記録します
- 心臓MRI:心筋の状態をより詳しく見ます
- 運動負荷試験:体を動かしたときの症状や血圧の変化を調べます
- 心臓カテーテル検査:心臓の中の圧や血管の状態を調べます
- 遺伝カウンセリング・遺伝子検査:家族への影響を考えるために行われます
診察で予想されること
超音波検査や心電図は痛みがなく、短時間で終わります。心臓カテーテル検査などは入院が必要になることがあります。検査の結果はすぐにそろうとは限らず、手術の必要性は複数の検査と症状をあわせて医師が判断します。
治療
治療は、症状の程度や心臓の状態にあわせて選ばれます。まずお薬で症状を和らげる治療が行われ、それでも日常生活に支障がある場合に、手術やカテーテル治療が検討されます。治療の目標は、息切れや胸の痛みを減らし、失神や突然死の危険を下げて、生活の質を保つことです。
自宅でのセルフケア
- 決められた通院を欠かさず、状態の変化を医師に伝える
- 脱水を避ける(暑い日や運動時はこまめに水分をとる)
- 飲酒は控えめにする
- 睡眠を十分にとり、無理な徹夜や過労を避ける
- 体重を毎日同じ条件で測り、急な増加に気づく
- 症状が出たときの状況(運動中か、安静時か)をメモしておく
医療治療
心臓の収縮を抑えたり、脈を整えたりして症状を和らげるお薬が使われることがあります。お薬の種類や量は医師が状態にあわせて決めるもので、自分で判断して始めたりやめたりしないでください。心不全の管理が必要なこともあります。突然死の危険が高いと判断された場合には、体内に植え込む除細動器(けいれんを止める装置)が検討されることもあります。手術としては、今回の心室中隔心筋切除術のほかに、カテーテルで中隔の厚くなった部分を小さくする治療が選ばれることもあります。どの方法が合うかは、心臓の専門医とよく相談して決めます。
手術が検討される場合
お薬で息切れや胸の痛みが十分に良くならない、日常生活に強く支障がある、失神の危険がある、血液の通り道の狭さが強い、といった場合に手術が検討されます。年齢やほかの病気の有無も含めて、心臓血管外科の医師と相談して決めます。手術では全身麻酔と人工心肺を使い、胸を開いて厚くなった中隔を削ります。術後は集中治療室で経過を見てから、一般病棟へ移ります。出血や感染、不整脈、まれにペースメーカーが必要になることなどのリスクがあり、事前に説明を受けます。
この病気と共に生きる
手術のあとは、体力が戻るまで数週間から数か月かかることがあります。退院後も定期的な通院を続け、心臓の状態を確認します。疲れを感じたら休む、無理をしないといったペース配分が大切です。
生活習慣のアドバイス
- 医師に相談せずに激しい運動や競技スポーツを始めない
- 暑さや脱水を避け、こまめに水分をとる
- 禁煙を心がける
- 十分な睡眠と休息をとる
- 歯のケアを丁寧に行い、感染症の予防に気を配る
- 体調の変化を記録し、通院時に伝える
食事と運動
食事は塩分を控えめにし、バランスよく食べることが基本です。運動は、担当医に相談したうえで、散歩など無理のない範囲から始めます。激しい運動や、息を止めて力を入れるような動作は控えるよう指導されることがあります。自分だけで判断せず、必ず医師やリハビリの専門職に確認してください。
精神的健康と心の健康
心臓の病気と言われると不安になるのは自然なことです。手術前後の緊張や、症状への心配から気分が落ち込むこともあります。つらい気持ちが続くときは、一人で抱え込まず、かかりつけ医や地域の相談窓口、専門の相談サービスに話してみてください。気持ちが追い詰められたときは、ためらわずに支援を求めることが大切です。
予防
多くは遺伝が関係するため、完全に防ぐことは難しい病気です。しかし、早く見つけて定期的に経過を見ることで、症状の悪化や危険な合併症を防ぐことにつながります。
検診プログラム
家族に肥大型心筋症の人がいる場合は、症状がなくても心臓超音波検査や心電図を受けることがすすめられます。遺伝カウンセリングを受けられる病院もあります。健診で心電図の異常を指摘されたら、早めに医療機関に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 心不全(心臓のポンプ機能が落ちて、息切れやむくみが出る状態)
- 心房細動などの不整脈
- 失神や、まれに突然死の危険
- 血栓ができて脳の血管を詰まらせる危険
長期的な見通し
手術を受けた多くの人で、息切れや胸の痛みが軽くなり、生活の質が上がることが報告されています。手術後も定期的な通院は必要ですが、長く安定した生活を送れている人は少なくありません。心配なことがあれば、遠慮なく主治医に相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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