心臓手術(心臓の手術)について
概要
心臓手術は、心臓や心臓に血液を送る血管(冠動脈)の病気を治したり、症状をやわらげたりするために行う手術です。代表的なものには、狭くなった冠動脈の代わりに別の血管をつなぐ「冠動脈バイパス術」、正しく開閉しなくなった弁を修復・置き換える「弁膜症の手術」、生まれつきの心臓の形の異常を直す手術、不整脈を治す手術などがあります。手術の方法は、胸を大きく開く方法だけでなく、体への負担を少なくする小さな切開やカテーテル(細い管)を使う方法など、病気の種類や体の状態に合わせて選ばれます。
重要な事実
- 心臓手術は「心臓そのものの病気」に対する治療で、薬だけでは症状や心臓の働きの改善が難しいと判断されたときなどに検討されます。
- 手術の目的は、息切れや胸の痛みといった症状を減らし、心臓の働きを保ち、生活の質と寿命を守ることです。
- 手術の前には、心臓の状態をくわしく調べる検査と、麻酔や手術の方法についての丁寧な説明が行われます。
- 手術後は、心臓リハビリテーション(体力を少しずつ取り戻す program)や定期的な通院が大切になります。
はい、日本でも心臓手術は決して珍しいものではありません。冠動脈バイパス術や弁膜症の手術は毎年多くの医療機関で行われており、高齢化にともなって受ける人の数は増えています。技術や安全性は年々向上しています。
主に中年以降、とくに60代以上の方に多い治療です。動脈硬化(血管が硬く狭くなること)や弁の劣化が背景にあることが多いためです。一方、生まれつきの心臓の病気では、赤ちゃんや子ども、若い成人が手術を受けることもあります。
症状
- 胸の強い痛みや圧迫感が数分以上続き、冷や汗や吐き気をともなう(心筋梗塞のおそれ)
- 急に息が苦しく、話すのもつらい
- 意識がもうろうとする、呼びかけへの反応がにぶい
- 失神した、倒れて意識が戻らない
- 顔や唇が青白い、脈がとても速い・とても遅いと感じる
- ⚠安静にしていても息苦しさが強い、横になれない
- ⚠足のむくみが数日で急に強くなった、体重が短期間に大きく増えた
- ⚠動悸が長く続いて落ち着かない
- ⚠軽い胸の痛みや違和感が繰り返す
- ⚠手術を受けたあとで、傷の腫れ・発熱・膿のような分泌物がある
一般的な症状
- 歩いたり階段を上ったりしたときの息切れ、動悸(心臓の鼓動が強く感じる、乱れる)
- 胸の痛みや圧迫感(とくに体を動かしたとき)
- 疲れやすさ、体を動かすのがおっくうになる
- 足や足首のむくみ、体重が急に増える
- 夜に横になると息苦しく、起き上がると楽になる
- めまい、立ちくらみ、失神(一時的に意識を失うこと)
子供の症状
- 哺乳(おっぱいやミルクを飲むこと)が弱い、飲みながら疲れてしまう
- 体重が増えにくい、成長がゆっくりに見える
- 息が速い、泣いたり動いたりすると顔色が悪くなる
- 唇や爪の色が青みがかる(チアノーゼ)
- 汗をよくかく、とくに授乳中に多い
高齢者の症状
- 少し動いただけで息が切れる、疲れやすい
- 足のむくみが取れにくい、靴がきつくなる
- 夜間に何度もトイレに起きる、横になると息苦しい
- 食欲低下や体重の急な増減
- もの忘れや元気のなさとして現れることがある(心臓の不調が気づきにくい形で出る)
原因
主な原因
- 冠動脈の動脈硬化(コレステロールなどが血管の壁にたまり、血管が狭くなること)
- 心臓の弁が硬くなったり、閉まりが悪くなったりする変性(加齢による変化を含む)
- 生まれつきの心臓の形や血管のつながりの異常(先天性心疾患)
- 心臓の筋肉の病気(心筋症)や、心筋の炎症(心筋炎)
- 感染症(菌が心臓の弁などに付く病気)
- 不整脈(心臓の電気の流れの乱れ)の中には手術が必要なものがある
リスク要因
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症(血の中のコレステロールや中性脂肪が多い状態)
- 喫煙、過度の飲酒
- 肥満、運動不足
- 塩分の多い食事、野菜や魚が少ない偏った食事
- 家族に心臓病の人がいる(家族歴)
- 年齢(加齢にともないリスクは上がります)
- 強いストレスや睡眠不足が続く生活
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 胸の痛みが続く、冷や汗をともなう
- 安静にしていても息が苦しい、横になれない
- 気を失った、もうろうとする
- 足のむくみや体重増加が数日のうちに急に進んだ
- 心臓手術後の発熱、傷の腫れや膿、胸の強い痛み
定期受診を予約すべき場合:
- 階段や坂道で以前より息が切れるようになった
- 動悸(心臓の鼓動の乱れや強さ)をときどき感じる
- 足が夕方にむくむ、靴がきつくなった
- 健康診断で心雑音(心臓の音の異常)や心電図の異常を指摘された
- 家族に心臓病が多いので相談したい
診断
まず問診で、症状の出方や生活習慣、既往歴(これまでの病気)、家族の病歴をうかがいます。そのうえで聴診(聴診器で心臓の音を聞くこと)や心電図、心臓超音波検査(エコー)などで心臓の形や働きを調べます。必要に応じて、より詳しい検査を組み合わせて、手術が必要かどうか、どの方法が合うかを判断します。
行われる可能性のある検査
- 問診・診察・聴診(心雑音や脈の確認)
- 心電図(心臓の電気の流れを調べる)
- 心臓超音波検査(心エコー:心臓の形、弁の動き、ポンプの力を映像で見る)
- 胸部レントゲン検査
- 血液検査(心臓に負担がかかっているか、貧血や腎臓の働きなども確認)
- 負荷試験(歩行や運動をしながら心臓の反応を見る)
- 心臓カテーテル検査(細い管を血管から入れて冠動脈の狭さや心臓の中の圧を調べる)
- CT・MRIなどの画像検査
- 必要に応じて24時間心電図(Holter:ホルター心電図)
診察で予想されること
検査の多くは痛みが少なく、短時間で終わります。カテーテル検査などでは事前の説明と準備があります。検査結果は医師から図や画像を使って説明されます。よくわからない点は遠慮なく質問し、必要であれば家族や信頼できる人と一緒に説明を聞くと安心です。
治療
心臓の病気の治療は、大きく分けて「生活習慣の見直し」「薬による治療」「カテーテル治療」「手術」があります。手術はその中の一つで、症状や心臓の働き、体の状態を総合して選ばれます。治療の目標は、症状を楽にし、心臓の負担を減らして、ふだんの生活をできるだけ長く続けられるようにすることです。
自宅でのセルフケア
- 禁煙する(受動喫煙も避ける)
- 塩分を控えめにし、バランスのよい食事を心がける
- 医師に相談しながら、無理のない範囲で体を動かす
- 体重と血圧を記録し、変化に気づけるようにする
- 処方された薬は自己判断でやめず、決められたとおりに続ける(薬の名前や量は医師・薬剤師の指示に従う)
- 睡眠を十分にとり、過度の飲酒を避ける
- 風邪や感染症を予防する(手洗い、うがい、口腔ケア)
医療治療
治療の方法は、病気の種類によって異なります。血管を広げる薬、心臓の負担を減らす薬、血圧やコレステロールを整える薬、血液が固まりすぎるのを防ぐ薬、むくみを取る薬などが、状態に合わせて組み合わせて使われることがあります。薬は症状を和らげたり進行をゆるやかにしたりする助けになりますが、形の異常や狭くなった血管そのものを元に戻すものではありません。効果や副作用、続け方については、必ず処方した医師や薬剤師の説明を受けてください。
手術が検討される場合
手術が検討されるのは、薬による治療だけでは息切れや胸の痛みが十分に改善しないとき、心臓のポンプの力が低下してきているとき、冠動脈の狭まりが強いとき、弁の狭まりや逆流が進んでいるとき、生まれつきの異常で心臓に大きな負担がかかっているときなどです。また、緊急を要する状態ではすぐに手術が必要になることもあります。手術を受けるかどうかは、心臓の専門医とよく相談し、メリットとリスクの両方を理解したうえで決めていきます。
この病気と共に生きる
手術を受けたあとは、退院後の通院とリハビリが生活の中心になります。傷が安定するまでは無理をせず、医師の指示に従って少しずつ活動量を増やしていきます。手術を受けない場合も、症状の変化に気づけるよう体重・血圧・脈を記録し、定期的に受診することが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙を続ける(家族の協力も大切)
- お酒は量と頻度を控えめにする
- 睡眠をしっかりとり、疲れをためない
- ストレスを一人で抱えず、話せる人や相談先を持つ
- 風邪や肺炎などの感染症を予防する
- 歯のケアを丁寧に行う(口の中の菌が心臓に影響することがあります)
- 自動車の運転や仕事への復帰は、主治医の指示を確認してから
食事と運動
食事は、塩分を控えめにして、野菜・果物・魚・全粒穀物などをバランスよくとることを心がけます。加工食品や汁物の塩分にも気を配るとよいでしょう。運動は、心臓リハビリテーションや主治医の指示に沿って、散歩など無理のない範囲から始めます。息切れや胸の痛みが出たら休み、続くようなら医療機関に相談してください。
精神的健康と心の健康
心臓の手術や手術後の生活は、不安・落ち込み・いらいら・眠りにくさなど心の負担を伴うことがあります。これは特別なことではなく、多くの人が経験します。気持ちが晴れない状態が続くときは、一人で抱え込まず、主治医や看護師、心理の専門家に話してみてください。ご家族や身近な人に気持ちを話すことも大きな支えになります。
予防
すべての心臓の病気を防ぐことはできませんが、生活習慣を整えることでリスクを下げられる場合があります。とくに動脈硬化が関係する病気では、血圧・血糖・コレステロールの管理、禁煙、適正体重の維持、バランスのよい食事、適度な運動が役立ちます。生まれつきの心疾患は予防できませんが、早期の発見と継続的なフォローが大切です。
ワクチン
心臓の病気がある人は、感染症にかかると重症化しやすいことがあります。インフルエンザや肺炎などのワクチンについて、年齢や状態に応じて接種が勧められる場合があります。接種の可否や時期は、主治医やかかりつけ医、地域の予防接種窓口に相談してください。
検診プログラム
健康診断や特定健診(メタボ健診)で、血圧・血糖・脂質・心電図を定期的に確認することが早期発見につながります。心雑音や心電図の異常を指摘されたら、症状がなくても受診して詳しく調べてもらいましょう。
合併症
治療しない場合
- 心不全(心臓のポンプの力が弱まり、息切れやむくみが続く状態)
- 不整脈(脈の乱れ)による動悸やめまい、失神
- 心筋梗塞(冠動脈が詰まり心筋が傷む状態)
- 弁の病気が進み、心臓に大きな負担がかかる
- 突然の危険な状態(緊急の治療が必要になることがあります)
- 生活の質の低下(歩く、階段、家事などがつらくなる)
長期的な見通し
心臓手術は、症状をやわらげ、生活の質を高めるための有効な選択肢の一つです。多くの方が手術後にふだんの生活へ戻り、長く安定した状態を保っています。回復のスピードや経過には個人差があり、年齢や持病、手術の種類によっても異なります。不安な点は早めに医療チームに相談しながら、一歩ずつ進んでいくことが大切です。
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最終更新: 2026年11月3日
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