経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー(TEM)ってどんな手術?
概要
TEM(経肛門的内視鏡下マイクロサージェリー)は、おしりの穴(肛門)から細い筒のような器具を入れて、直腸(大腸のいちばんおしりに近い部分)のポリープやごく早期のがんを、おなかを切らずに取り除く手術です。直腸は肛門から近い場所にあるため、肛門を通るルートで届く範囲の病変は、この方法で体への負担を小さくして治療できることがあります。専用の器具で病変を大きく映し出し、細かく正確に切り取るのが特徴です。
重要な事実
- おなかを切らず、肛門から器具を入れて行う手術のため、体の負担が比較的小さい方法です。
- 対象になるのは、直腸の比較的低い位置(肛門に近い場所)にある、ポリープやごく早期のがんなどです。
- すべての病変に使えるわけではなく、大きさ・位置・深さによって向き不向きがあります。担当医とよく相談して決めます。
- 手術後は数日間の入院となることが多く、排便の変化などがしばらく続くことがあります。
直腸や大腸のポリープ自体はとてもよく見られるものです。一方でTEMは、専用の器具と経験を必要とするやや専門的な手術で、実施できる医療機関は限られています。決して珍しい病気というわけではなく、必要に応じて選ばれる治療のひとつとお考えください。
主に成人、とくに中高年の方に見られる直腸のポリープや早期がんが対象になります。年齢を重ねるほどポリープが見つかる割合は高くなります。男女どちらにも起こり、生活習慣や家族歴も関係すると言われています。
症状
- 大量の血便や出血が止まらず、ふらつき・冷や汗・意識がもうろうとする(救急車を呼んでください:119)
- 激しい腹痛や、おなかが硬く張って痛む
- 高熱と強い痛みが同時にあり、動けない
- ⚠血便が数日続く、または回数が増えている
- ⚠立ちくらみや息切れなど、貧血を思わせる症状がある
- ⚠手術後に発熱、強い痛み、出血、排便がまったくない状態が続く(当日中に医療機関へ連絡してください)
- ⚠便がまったく出ない、おなかが張って気持ち悪い
一般的な症状
- 便に血が混じる、またはトイレットペーパーに血がつく(血便)
- 便の表面に粘液がつく、粘液だけが出る
- 便が細くなる、排便してもすっきりしない感じ(残便感)が続く
- 排便の回数やリズムが以前と変わった
- おなかの張りや、軽い腹痛
- 症状がまったくなく、健康診断や大腸内視鏡検査で見つかることも多い
子供の症状
- 子どもでは直腸ポリープはまれですが、若年性ポリープという種類が見つかることがあります
- 子どもの血便は、肛門の裂け目(裂肛)や便秘など別の原因が多いため、まず小児科で相談してください
- TEMは主に成人向けの手術で、子どもに用いられることはほとんどありません
高齢者の症状
- 年齢とともにポリープが見つかりやすくなります
- 心臓や肺などの持病がある場合は、手術の方法を慎重に選ぶ必要があります
- 複数の薬を服用している場合は、手術前に必ず医師・薬剤師に伝えてください
- 入院期間や術後の回復には個人差が大きく、体力や生活環境も含めて相談することが大切です
原因
主な原因
- 大腸・直腸の粘膜にできるポリープ(腺腫という良性のできもの)
- 直腸のごく早期のがん
- 粘膜の細胞が何らかのきっかけで変化し、盛り上がってできると考えられていますが、はっきりした原因はすべて解明されていません
リスク要因
- 年齢(中高年になるほど見つかりやすい)
- 家族に大腸ポリープや大腸がんの人がいる
- 喫煙、飲酒の習慣
- 肥満、運動不足
- 赤身の肉や加工肉の多い食事、野菜や食物繊維の不足
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病など)にかかったことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 大量の出血があり、ふらつきや冷や汗がある(119番へ)
- 強い腹痛、発熱、おなかの張りが急に出た
- 手術後に出血が続く、発熱する、排便ができない
定期受診を予約すべき場合:
- 血便が一度でもあった(自分で痔だと決めつけないことが大切です)
- 便が細い、残便感が続く、排便の習慣が変わった
- 健康診断で便潜血検査が陽性と言われた
- 家族に大腸がんの人がいる
診断
まず問診と、肛門から指を入れて直腸の状態を確かめる診察(直腸診)が行われます。その後、大腸内視鏡検査で病変を直接見て、必要に応じて組織を少し採取して調べます(生検)。病変の深さや広がりを確認するために、超音波の検査やCT・MRIなどの画像検査を組み合わせることもあります。これらの結果をもとに、TEMが適しているかどうかを検討します。
行われる可能性のある検査
- 問診(症状、既往歴、家族歴、服薬の確認)
- 直腸診(肛門から指で触れて確認する診察)
- 大腸内視鏡検査(カメラで大腸の内側を観察)
- 生検(組織を一部採取して顕微鏡で調べる)
- 超音波内視鏡検査(病変の深さを調べる)
- CT検査・MRI検査(周囲への広がりの確認)
- 血液検査(貧血や全身状態の確認)
診察で予想されること
検査の前日は決められた食事や下剤で腸をきれいにする準備が必要です。大腸内視鏡検査は多くの場合、鎮静剤を使いながら行われ、強い痛みは少なくなるよう配慮されます。結果の説明では、病変の種類・大きさ・位置・深さと、治療の選択肢について話を聞くことになります。質問は遠慮なくメモしてお持ちください。
治療
治療の目的は、ポリープや早期のがんを安全に取り除くことです。病変の大きさ・位置・深さ、そして全身の状態によって、内視鏡で取る方法、肛門から手術する方法(TEMを含む)、おなかを小さく切る方法などから最適なものが選ばれます。TEMはその中のひとつで、肛門から届く範囲の病変に向いた方法です。
自宅でのセルフケア
- 手術前は、指示に従って腸をきれいにする準備を行います。水分は指示どおりにとりましょう。
- 服用中の薬(とくに血液をサラサラにする薬)は、自己判断で中止せず必ず医師・薬剤師に相談してください。
- 手術後は、便通を整えることが大切です。水分をしっかりとり、必要なら医師の指示のもとで便を柔らかくする工夫をします。
- 術後しばらくは、長時間の運転や激しい運動、重いものを持つことを控えめにしましょう。
- 排便の回数や状態を記録しておくと、診察のときに役立ちます。
医療治療
TEMは手術による治療ですが、病変の種類によっては、内視鏡を使って切除する方法(ポリープをワイヤーで切除したり、粘膜をはがすように切除したりする方法)が選ばれることもあります。また、手術の前後には、感染予防や痛みの緩和のために医師が必要と判断した薬が使われることがあります。どの方法が合うかは、病変の状態と体の状態をあわせて担当医が判断します。具体的な薬の内容や量は、必ず担当の医師・薬剤師の説明に従ってください。
手術が検討される場合
TEMが検討されるのは、直腸のポリープや早期がんが、内視鏡だけでは取りきれない大きさ・形である場合や、肛門に近い位置にあって内視鏡の処置が難しい場合などです。一方、病変が深くまで及んでいる場合やリンパ節への広がりが疑われる場合には、別の手術方法が適することもあります。手术の適否は、検査結果をもとに担当医と十分に話し合って決めてください。
この病気と共に生きる
TEMの後は、数日間の入院が一般的です。退院後しばらくは、排便の回数が増えたり、肛門のあたりに違和感や軽い痛みが出たりすることがあります。多くは時間とともに落ち着いていきますが、回復の速さには個人差があります。気になる症状は我慢せず、診察時に伝えてください。
生活習慣のアドバイス
- 水分をこまめにとり、排便を我慢しない習慣をつける
- 長時間同じ姿勢で座り続けず、ときどき体を動かす
- お風呂や入浴は、医師の指示に従って再開の時期を確認する
- 飲酒・喫煙は控えめにし、再発予防にもつながる生活を心がける
- ストレスをためこまず、睡眠をしっかりとる
食事と運動
食物繊維(野菜、きのこ、海藻、豆類、全粒穀物など)をしっかりとり、赤身の肉や加工肉、脂っこい食事は控えめにすると腸にやさしいと言われています。アルコールはほどほどに。運動は、術後の回復を待ってから、散歩などの軽いものから少しずつ始めましょう。無理のない範囲で続けることが大切です。
精神的健康と心の健康
「がんだったらどうしよう」「また再発したら」という不安は自然な気持ちです。手術や検査の前後は落ち着かないこともあるでしょう。一人で抱え込まず、家族や友人、医療スタッフに気持ちを話してみてください。つらい気持ちが続くときは、医療機関の相談窓口や、地域の相談支援を利用することもできます。
予防
直腸のポリープや大腸がんを完全に防ぐことは難しいですが、リスクを下げることはできます。禁煙、節酒、適正体重の維持、定期的な運動、バランスのよい食事が役立つと言われています。また、ポリープは見つけて取り除くことで、その後の経過をよくすることが期待できます。
検診プログラム
日本では、40歳以上を対象に自治体の大腸がん検診(便潜血検査)が行われています。厚生労働省も受診を勧めています。便潜血検査で陽性の場合は、必ず大腸内視鏡検査を受けて詳しく調べることが大切です。家族歴などがある方は、かかりつけ医に相談して検査の間隔を決めましょう。
合併症
治療しない場合
- ポリープが大きくなり、内視鏡で取るのが難しくなることがある
- 出血が続いて貧血になることがある
- 一部の病変は、時間とともに深く広がっていく可能性がある
- 症状がないまま進行することがあるため、検診を飛ばさないことが大切
長期的な見通し
直腸のポリープやごく早期のがんは、適切に取り除くことで良好な経過が期待できます。TEMは体への負担が比較的小さい方法として、条件が合う方には有用です。手術後に出血や痛みなどの合併症が起きることはありますが、多くは対応可能です。定期的な通院と検査を続けることで、安心して生活していくことができます。
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最終更新: 2026年11月3日
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