三尖弁(さんせんべん)の手術 — 心臓の弁を修復・置き換える治療
概要
三尖弁は、心臓の右側にある3枚の弁で、血液が右心房から右心室へ流れるときに逆流しないようにする「一方通行のドア」の役割をしています。この弁がきちんと閉じなくなったり(逆流・閉鎖不全)、狭くなったり(狭窄)すると、血液の流れが悪くなり、息切れやむくみなどが起こります。三尖弁手術は、この弁を修復したり、人工の弁に置き換えたりする手術です。
重要な事実
- 心臓の右側にある三尖弁の働きを良くする手術です。
- 自分の弁を縫って形を整える「弁形成術」と、人工の弁に取り替える「弁置換術」があります。
- 手術のあとは、定期的な通院と日常生活の管理を続けることが大切です。
三尖弁だけを対象にした手術は、大動脈弁や僧帽弁の手術に比べると少なめです。ただし、ほかの弁の手術や心臓の手術と一緒に行われることはよくあります。
年齢を問わず起こりますが、高齢の方、心房細動(心臓の脈が不規則になる状態)のある方、左側の心臓の弁の病気や肺高血圧(肺の血管の圧が高い状態)がある方に多く見られます。生まれつき弁の形に異常があるお子さんに手術が必要になることもあります。
症状
- 急に息が苦しくなり、横になれない
- 意識がぼんやりしている、反応が鈍い
- 胸の強い痛み
- 気を失った(失神)
- 吐血や、血の混じった痰が出た
- 顔色が悪く、冷汗が出ている
- ⚠数日のうちに体重が2〜3kg以上増えた
- ⚠足のむくみが急にひどくなった
- ⚠動悸が止まらず続いている
- ⚠微熱や発熱が続く(心臓の感染症の可能性があります)
- ⚠尿の量が極端に減った
一般的な症状
- 動いたときの息切れ
- 足や足首のむくみ
- お腹の張りや食欲の低下
- 疲れやすい、だるい
- 首の血管が太く目立つ
- 動悸(心臓の鼓動が気になる)
- 体重が増える、尿の量が減る
子供の症状
- 母乳やミルクを飲むときに疲れて途中で休む
- 体重が増えにくい、成長がゆっくり
- 息が速い、呼吸が苦しそう
- 繰り返すかぜや肺炎
- 唇や爪の色が青っぽく見えることがある(まれです)
高齢者の症状
- 息切れが強く出やすい
- むくみが取れにくく、体が重く感じる
- 心房細動を伴いやすい
- 疲労感から動くのがおっくうになる
- 腎臓や肺など、ほかの病気を併せ持つことが多く、手術の可否を丁寧に評価します
原因
主な原因
- 右心室が大きくなることで弁の輪が広がり、閉じにくくなる(二次性の逆流。最も多い原因です)
- 左側の心臓の弁の病気や肺高血圧に伴うもの
- 心内膜炎(心臓の内側に細菌などが感染する病気)
- リウマチ熱の後遺症
- 生まれつきの弁の形の異常(エプスタイン奇形など)
- ペースメーカーやICDの細い電線(リード)が弁に触れて起こる逆流
- 胸部のけが(外傷)
- 一部の薬の影響(気になる薬があれば医師や薬剤師に相談してください)
- カルチノイド症候群など、まれな病気
リスク要因
- 心房細動
- 肺高血圧
- 左側の心臓の弁の病気
- リウマチ熱の既往
- 感染性心内膜炎の既往
- ペースメーカーやICDの留置
- 静脈注射による薬物の使用
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 息切れが急に悪化した、横になると息苦しい
- 足のむくみが急にひどくなった、体重が急に増えた
- 動悸が続いて落ち着かない
- 発熱が続く、だるさが強い
- 手術後の傷が赤く腫れる、膿が出る、熱がある
定期受診を予約すべき場合:
- 動いたときの息切れが続いている
- 足のむくみが続いている
- 疲れやすい状態が長引いている
- 心雑音を指摘されたことがある
- 心エコー(心臓の超音波検査)で弁の異常を指摘された
- 手術後の定期受診の時期が来た
診断
診察と心エコー(心臓の超音波検査)が中心になります。医師は心臓の音(心雑音)、首の血管の様子、足のむくみ、体重の変化などを確認し、心エコーで弁の形や逆流の程度、心臓の大きさや動きを調べます。
行われる可能性のある検査
- 心エコー(心臓の超音波検査)— 弁の状態を直接見る、痛みのない検査です
- 心電図 — 脈の乱れや心臓の電気の流れを調べます
- 胸部X線 — 心臓の大きさや肺の様子を見ます
- 血液検査 — 貧血、腎臓の働き、感染の有無などを調べます
- 心臓カテーテル検査 — 必要に応じて、圧や血流を詳しく調べます
- 心臓MRI・CT — 心臓の形や働きを詳しく見たいときに行います
- 歩行試験など — 運動したときの息切れの程度を確認します
診察で予想されること
検査の多くは痛みがなく、短時間で終わります。心エコーはゼリーを塗って機械を当てるだけで、放射線も使いません。検査の結果は、心臓の専門医と一緒に確認し、今後の方針を相談します。
治療
治療は、症状を和らげる薬物療法と、弁を治す手術が二本柱です。弁の状態、症状の強さ、心臓の大きさや働き、年齢やほかの病気を総合して、手術の時期と方法を決めます。手術には、自分の弁を縫って形を整える「弁形成術」と、人工の弁に取り替える「弁置換術」があります。
自宅でのセルフケア
- 塩分を控えめにし、むくみをためないようにする
- 毎日体重を測って記録する(急な増加はむくみのサインです)
- 足や足首のむくみを毎日チェックする
- 処方された薬を、自己判断でやめずに続ける
- かぜや感染症を防ぐため、手洗い・うがいを心がける
- 歯みがきなど口腔ケアを丁寧に行う(歯の感染は心臓の感染症の原因になりえます)
- 禁煙する
- 疲れすぎない範囲で体を動かす
- 手術後は、傷口を清潔に保ち、指示に従って通院する
医療治療
薬物療法では、体にたまった水分を減らす薬、心臓の働きを助ける薬、血圧を下げる薬などを使って、息切れやむくみを楽にします。心房細動がある場合は、脈を整える治療や、血液が固まりにくくなる薬を使うことがあります(薬の種類や量は医師が決めます)。薬は症状を和らげますが、弁の形そのものを治すものではありません。
手術が検討される場合
息切れやむくみなどの症状があり、弁の逆流が中等度から重度のとき、心臓の右側が大きくなったり働きが落ちてきたりしたとき、ほかの心臓手術と同時に行うとき、感染症で弁が壊れたときなどに、手術が検討されます。手術の時期や方法は、心臓の専門医とよく相談して決めます。
この病気と共に生きる
手術のあとは、定期的な通院と心エコーなどの検査を続けます。体重やむくみの変化を日々記録し、体調の変化を早めに気づけるようにしましょう。人工弁の種類によっては、血液が固まりにくくなる薬を続ける場合があります。旅行や歯科治療の予定は、事前に主治医に相談しておくと安心です。
生活習慣のアドバイス
- 禁煙する
- お酒は医師に相談して量を決める
- 十分な睡眠と休息をとる
- 口腔ケアを丁寧に行う
- インフルエンザや肺炎などの予防接種について医師に相談する
- 妊娠を考えている場合は、事前に主治医と相談する
- 体調が悪いときは無理をせず、早めに受診する
食事と運動
食事は減塩を心がけ、野菜やたんぱく質をバランスよくとりましょう。体重管理はむくみの早期発見にも役立ちます。運動は、主治医に確認したうえで、散歩など無理のない範囲から始めます。息切れが強いときは休みながら行い、心臓リハビリが受けられる場合は活用すると安心です。
精神的健康と心の健康
心臓の手術は、体だけでなく気持ちにも大きな負担がかかります。手術前の不安、手術後の疲れや落ち込み、将来への心配は自然なことです。眠れない日が続く、気分が晴れない状態が長引くときは、ひとりで抱え込まずに主治医や看護師、家族に話してください。つらい気持ちが強いときは、地域の相談窓口や医療機関に相談しましょう。日本では、いのちの電話や自治体の保健相談などの公的な相談先があります。連絡先はお住まいの自治体の窓口や医療機関でご確認ください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、リスクを減らせる場合があります。リウマチ熱をきちんと治療する、感染性心内膜炎を予防する(歯科治療の前に医師へ相談する)、心不全や心房細動などの基礎の病気を管理する、気になる薬の影響を医師に確認することが大切です。
ワクチン
インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンについて、主治医と相談してください。心臓の病気がある方は、感染症にかかると症状が悪化しやすいため、予防が役立ちます。
検診プログラム
心雑音を指摘されたときや、心臓の病気がある方は、心エコーなどの定期検査を受けることが早期発見につながります。健診で心臓の異常を指摘されたら、専門医に相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 右心不全(心臓の右側が弱って、全身に血液を送り出せなくなる状態)が進む
- 肝臓のうっ血による肝臓の働きの低下
- お腹に水がたまる(腹水)、足のむくみがひどくなる
- 心房細動などの不整脈
- 心臓の感染症(心内膜炎)
- 肺高血圧の悪化
長期的な見通し
三尖弁の手術は、息切れやむくみといった症状を和らげ、生活の質を保つ助けになります。手術には一定のリスクがありますが、心臓の専門チームが体の状態に合わせて丁寧に管理します。手術後も通院と生活管理を続けることで、安心して過ごせる方が多くいます。不安なことは、遠慮なく主治医にたずねてください。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年11月3日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.