静脈疾患のバイパス手術
概要
静脈疾患のバイパス手術は、脚などから心臓へ戻る血液の通り道である静脈が、血栓の後遺症や瘢痕などで長く詰まったり狭くなったりしたときに、別の血管を使って血液の迂回路(バイパス)を作る手術です。すべての静脈の病気に必要なわけではなく、症状や血管の状態を詳しく調べたうえで、専門医が適しているかを判断します。
重要な事実
- 静脈は血液を心臓に戻す血管で、詰まると脚のむくみや痛み、皮膚の変化が起こることがあります。
- バイパス手術は、他の治療で改善が難しい大きな静脈の詰まりに対して検討される特別な治療です。
- 手術のあとも、圧迫療法や生活の工夫、定期的な診察を続けることが大切です。
一般的な手術ではありません。静脈の病気自体はよくありますが、バイパス手術が必要になる人は限られています。
主に成人、特に深部静脈血栓症の経験がある人や、大きな静脈の狭窄・閉塞がある人です。小児では非常にまれです。
症状
- 突然の片脚の腫れと強い痛み、息切れ、胸の痛みがある(肺塞栓症など重い血栓が疑われるとき)
- 脚の傷や潰瘍から大量に出血して止まらない
- 意識がもうろうとする、顔や喉の腫れ、呼吸が苦しいなど重いアレルギー反応がある
- 緊急の症状があるときは、ためらわず119番に連絡してください。
- ⚠脚の腫れや痛みが急に強くなった
- ⚠皮膚が赤く熱をもち、発熱や悪臭がある(感染の疑い)
- ⚠新しい潰瘍ができた、または潰瘍が悪化している
- ⚠手術後の傷から膿(うみ)が出る、出血が続く、痛みが強くなる
一般的な症状
- 脚のむくみ(片側だけのこともあります)
- 脚の重だるさ、痛み、疲れやすさ
- 静脈瘤(ぼこぼこした血管)
- 皮膚の色の変化、かゆみ、硬さ
- 治りにくい脚の潰瘍(皮膚がえぐれた傷)
- 長時間立つと悪化し、足を上げると軽くなることがある
子供の症状
- 小児では非常にまれです。先天性の血管の異常などが関係することがあります。
- 脚の左右差のある腫れ、皮膚の色の変化、歩きにくさなどがあれば、小児科や専門医に相談してください。
高齢者の症状
- 高齢者では、慢性的なむくみ、皮膚の硬さや色の変化、治りにくい脚の潰瘍が出やすいことがあります。
- 動脈の病気や心臓・腎臓の病気、薬の影響も重なることがあるため、全体をみてもらうことが大切です。
原因
主な原因
- 深部静脈血栓症(脚の深い静脈に血の塊ができる病気)の後遺症
- 大きな静脈の狭窄や閉塞(血管が狭くなったり詰まったりする状態)
- 手術やカテーテル治療の後の瘢痕(きずあと)による血流の妨げ
- 腫瘍や周囲の組織による圧迫
- 先天性の血管の異常
リスク要因
- 過去に深部静脈血栓症や肺塞栓症と言われたことがある
- 長時間動かない状態が続いた(入院、手術後、長距離の移動など)
- 手術や大きなけがの経験
- がんやその治療の影響
- 家族に血栓症の人がいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 脚の腫れや痛みが急に強くなった
- 皮膚が赤く熱をもち、発熱や悪臭がある
- 新しい潰瘍ができた、または潰瘍が悪化している
- 手術後の傷から膿が出る、出血が続く、痛みが強くなる
定期受診を予約すべき場合:
- 脚のむくみや重だるさが続く
- 静脈瘤や皮膚の色の変化が気になる
- 長時間立った後や夕方に脚が腫れやすい
- 家族に深部静脈血栓症の人がいる、または過去に血栓症と言われたことがある
診断
まず問診と診察で、症状の経過や過去の血栓症、手術歴などを確認します。次に、静脈の流れや詰まりを調べる検査を行い、必要に応じて大きな静脈の状態を詳しく見る画像検査や専門医への紹介があります。
行われる可能性のある検査
- 問診と診察(症状の経過、過去の血栓症、手術歴などを確認)
- 血管超音波検査(脚の静脈の流れや詰まりを調べる)
- CT静脈造影やMRI静脈造影(大きな静脈の状態を詳しく見る画像検査)
- 静脈造影(必要に応じて行う、血管に造影剤を入れて調べる検査)
- 血液検査(血栓の傾向や全身状態を確認)
診察で予想されること
問診と診察のあと、まず超音波検査など体への負担が少ない検査を行います。必要に応じて画像検査や専門医への紹介があります。検査結果の説明を受け、治療の選択肢を一緒に検討します。
治療
治療の目的は、症状を減らし、皮膚の傷や潰瘍を防ぎ、生活の質を保つことです。まず生活習慣の調整や圧迫療法などを行い、それでも改善が難しい場合にカテーテル治療やバイパス手術を検討します。
自宅でのセルフケア
- 医師の指示に従って弾性ストッキングなどの圧迫療法を使う
- 長時間の立ちっぱなしや座りっぱなしを避け、ときどき歩く
- 休むときは脚を心臓より高く上げる
- 皮膚を清潔に保ち、傷や赤み、腫れを毎日確認する
- 禁煙し、適正体重を保つ
- 水分を適切にとり、医師から制限がある場合はそれに従う
医療治療
医師の判断で、血液を固まりにくくする薬、痛みや炎症を和らげる薬、むくみを減らすための工夫などが用いられます。静脈の狭い部分には、風船で広げる治療やステント(網状の筒)を入れる治療が行われることがあります。薬の種類や量は、必ず医師・薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
静脈の詰まりが強く、脚のむくみや痛み、皮膚の潰瘍が続き、圧迫療法やカテーテル治療では十分に改善しない場合に、専門医が手術の適否を判断します。手術は、詰まった静脈の血液が別の血管を通って流れるようにする方法です。全身状態や血管の状態を詳しく調べてから決めます。手術には出血、感染、血栓など一般的なリスクがあるため、専門医とよく相談しましょう。
この病気と共に生きる
手術後も、脚のむくみや皮膚の状態を毎日確認し、医師の指示に従って圧迫療法や通院を続けることが大切です。長時間同じ姿勢を避け、無理のない範囲で歩く習慣をつけましょう。
生活習慣のアドバイス
- 長時間の立ちっぱなしや座りっぱなしを避ける
- ときどき歩いたり、足首を動かしたりする
- 休憩時は脚を上げる
- 禁煙する
- 適正体重を保つ
- 皮膚の傷や赤みを早めに医療者に相談する
食事と運動
バランスのよい食事と、無理のない範囲の散歩や足首の運動が役立ちます。急に激しい運動を始める前に、医師に相談してください。塩分のとりすぎに気をつけ、水分は医師の指示に従って適切にとりましょう。
精神的健康と心の健康
慢性的なむくみや痛み、手術への不安は気持ちの負担になります。不安が続くときは、一人で抱え込まず、家族や医療者、地域の相談窓口に話してください。必要に応じて心理面のサポートも受けられます。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、深部静脈血栓症を予防し、早期に治療することで、静脈の後遺症を減らせる可能性があります。手術後や入院中は、医師の指示に従って早めに動くことや、必要に応じた圧迫療法が大切です。
ワクチン
この病気を防ぐワクチンはありません。
検診プログラム
症状がない人を対象にした一般的なスクリーニング検査はありません。脚のむくみや痛み、皮膚の変化が続く場合は医療機関に相談してください。
合併症
治療しない場合
- 慢性的な脚のむくみや重だるさが続く
- 皮膚が硬くなったり、色が変わったりする
- 治りにくい脚の潰瘍ができる
- 潰瘍や皮膚の傷から感染することがある
- 血栓ができる、または肺に飛ぶ(肺塞栓症)ことがある
長期的な見通し
静脈のバイパス手術は、適した人には症状の改善や潰瘍の治癒を助けることがあります。手術後も定期的な診察と生活の工夫が必要ですが、医療チームと一緒に長く付き合っていくことができます。手術には出血、感染、血栓によるバイパスの詰まりなどのリスクもあるため、専門医とよく相談して決めましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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