静脈の病気とその治療――脚のむくみ・血管のふくらみが気になるとき
概要
静脈は、体のすみずみから血液を集めて心臓へ戻す血管です。脚の静脈には血液が逆流しないように「弁」があり、ふくらはぎの筋肉がポンプの役割をしています。この弁が弱ったり、血管が詰まったり、血管の壁がゆるんだりすると、血液が脚にたまりやすくなります。これをまとめて「静脈の病気(静脈疾患)」と呼び、代表的なものに、脚の表面近くの血管がふくらむ「静脈瘤(じょうみゃくりゅう)」、脚の重さやむくみが続く「慢性静脈不全」、深いところの静脈に血の塊ができる「深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)」があります。治療は、症状の程度に合わせて、生活の工夫、圧迫療法、血管内治療、手術などから選ばれます。
重要な事実
- 静脈の病気は「血管の弁がうまく働かず、血液が脚にたまりやすい状態」が中心で、命に関わるものから見た目だけのものまで幅があります
- 多くは圧迫療法(弾性ストッキングなど)と生活の工夫で症状が軽くなります
- 脚が突然片側だけ大きく腫れた、息苦しい、胸が痛いといったときは、すぐに救急受診が必要です
はい、とてもよくある病気です。脚の静脈瘤は成人のおよそ数人に1人ともいわれ、年齢とともに増えます。軽いむくみやだるさだけで日常生活に困らない方も多くいます。
立ち仕事や座りっぱなしの時間が長い方、女性(妊娠・出産を経験した方を含む)、ご家族に静脈瘤のある方、年齢が上がった方、体重が多い方に多くみられます。男性にも起こります。子どもではまれですが、生まれつき血管の形に特徴がある場合もあります。
症状
- 片方の脚が突然大きく腫れて痛い(深い静脈に血の塊ができた可能性があります)
- 突然の息苦しさ、胸の痛み、呼吸が速い、冷汗が出る(血の塊が肺の血管に詰まった可能性があります)
- 脚の傷や血管から大量に出血して止まらない
- ⚠脚の腫れが急に強くなった、赤みと熱感があり発熱もある
- ⚠皮膚に黒ずみや硬さが急に広がった、傷ができて治らない
- ⚠痛みで歩くのがつらい、夜も眠れないほどつらい
一般的な症状
- 脚がむくむ、特に夕方に腫れぼったくなる
- 脚が重い、だるい、疲れやすい
- 皮膚のすぐ下の血管が青や紫に見えたり、ボコボコとふくらんだりする
- 夜中に脚がつる、こむら返りが起きる
- 脚のかゆみ、ピリピリする感じ、じんじんする感じ
- かかとや足首の皮膚が黒ずむ、硬くなる、湿疹のようになる
子供の症状
- 子どもでは非常にまれです
- 生まれつき血管の形に特徴がある場合は、脚の左右差や皮膚の色の違いとして気づかれることがあります
- 成長に伴って目立ってきた血管のふくらみは、小児科や皮膚科に相談してください
高齢者の症状
- 加齢で皮膚が薄くなり、血管のふくらみが目立ちやすくなります
- 皮膚の色の変化や硬さが進み、傷が治りにくくなることがあります
- 長時間の安静や入院のあとで血栓ができやすくなることがあります
- 複数の持病やお薬が関係することもあるため、かかりつけ医にまとめて相談すると安心です
原因
主な原因
- 脚の静脈の「弁」が弱くなり、血液が逆流してたまる
- 長時間の立ち仕事や座りっぱなしで、ふくらはぎのポンプが働きにくくなる
- 深い静脈に血の塊ができたあと、その跡で血液の流れが悪くなる
- 加齢により血管の壁が伸びやすくなる
- 生まれつき血管の形や弁に特徴がある
リスク要因
- ご家族に静脈瘤や静脈の病気がある
- 妊娠・出産を経験した、あるいは現在妊娠中
- 長時間の立ち仕事、座り仕事、長時間のフライトや車の移動
- 体重が多い、肥満がある
- 手術後や病気で長く寝たきりになった
- ホルモンの影響を受けるお薬を使っている(妊娠中に使うお薬を含む)
- 喫煙、高齢、脚のけがの経験
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 片方の脚が突然腫れて痛い、赤くなって熱を持つ
- 息苦しさや胸の痛みがある(ためらわず119番に電話してください)
- 脚の傷や湿疹が広がり、痛みが強い、出血が続く
定期受診を予約すべき場合:
- 脚の血管のふくらみが気になる、見た目が変わってきた
- 夕方になると脚がむくむ、重い、だるい状態が続いている
- 夜中に脚がつる回数が増えた
- 足首の皮膚の色が黒ずんできた、かゆみが続く
診断
まず問診と診察で、症状の出方、仕事や生活の様子、ご家族の病史、お薬の使用を確認し、脚の腫れ・皮膚の変化・血管のふくらみを直接みます。そのうえで、多くの場合、痛みのない超音波(エコー)検査で静脈の流れと弁の働きを調べます。必要に応じて血液検査や別の画像検査が行われることもあります。
行われる可能性のある検査
- 診察(脚の観察と触診、左右の太さの比較)
- 血管超音波検査(エコー)――ゼリーを塗って機械を当てるだけで、痛みはありません
- 血液検査(血栓が疑われるとき)
- 必要に応じた画像検査(CTやMRIなど)
診察で予想されること
検査は外来で行えることがほとんどで、所要時間は20〜40分程度が目安です。超音波検査のときは、脚にゼリーを塗って機械を当てます。恥ずかしさがある場合は、タオルで覆ってもらえることを伝えてください。結果の説明はその日のうちに受けられることが多いですが、施設によっては後日になることもあります。
治療
静脈の病気の治療は、症状の強さと生活への影響に合わせて段階的に選びます。中心になるのは、脚にたまった血液を押し戻す「圧迫療法」と、生活の工夫です。見た目や痛みが強い場合、皮膚の変化や傷がある場合には、血管を閉じる・取り除く治療が検討されます。血栓がある場合は、血液が固まりにくくなるお薬を使う治療が行われます。治療方針は、年齢、持病、妊娠の予定、生活スタイルによって変わります。
自宅でのセルフケア
- 長時間同じ姿勢を続けず、1時間ごとに数分立って歩く、足首を動かす
- 座るときは脚を組み続けない、足を少し高く置く
- 休むときは脚を心臓より高く上げて10〜15分休む
- 弾性ストッキング(着圧ソックス)は、サイズと強さが大切です。自己判断で強いものを選ばず、医師や薬剤師、専門の販売員に相談してください
- 体重を適正に保つ、水分をとりすぎず不足もしない
- 皮膚を乾燥から守り、傷ができたら早めに手当てをする
医療治療
治療の柱は次のとおりです。(1) 圧迫療法:弾性ストッキングや弾性包帯で脚の外側から圧をかけ、血液のたまりを減らします。症状の軽い方から手術後の方まで幅広く使われます。(2) 血管を閉じる治療:細い管を血管内に入れて熱で血管を閉じる方法や、硬化療法(薬を使って血管を縮める方法)などがあり、からだへの負担が比較的小さいのが特徴です。(3) 手術:ふくらんだ血管を取り除く手術が行われることがあります。(4) 血栓への対応:血の塊がある場合は、血液が固まりにくくなるお薬を一定期間使う治療が行われます。お薬の種類や期間は、血栓の場所や持病によって医師が判断します。妊娠中や授乳中、他のお薬を飲んでいる方は、必ず事前に医師・薬剤師に伝えてください。
手術が検討される場合
痛みやだるさが強く日常生活に支障がある、皮膚の黒ずみ・硬さ・治りにくい傷(潰瘍)がある、圧迫療法を続けても改善しない、見た目の悩みが大きい、といった場合に手術や血管内治療が検討されます。急を要するのは、血栓が大きい、出血を繰り返すといった場合です。治療の利益とリスクを医師とよく話し合って決めてください。
この病気と共に生きる
静脈の病気は、付き合い方次第で症状をかなり軽くできます。朝は調子がよくても夕方にむくむ、というように一日の中で変化が出やすいので、夕方に脚を上げる時間を作る、仕事中にこまめに歩くなど、生活のリズムに工夫を組み込むと続けやすくなります。弾性ストッキングは、朝起きた直後、脚がまだむくんでいない時間に履くのがコツです。
生活習慣のアドバイス
- 歩く、自転車、水中ウォークなど、ふくらはぎを使う運動を日常に取り入れる
- 長時間の立ち仕事では、足踏みやかかとの上げ下げをこまめに行う
- 座り仕事では、1時間に一度は立ち上がる
- 喫煙を控える
- 長時間のフライトや車移動では、水分をとり、足首を動かし、ときどき歩く
- 休息時は脚を少し高くして休む習慣をつける
食事と運動
特別な食事制限は必要ありません。塩分のとりすぎはむくみを強めることがあるので、バランスのよい食事を心がけてください。食物繊維をとり、便秘を防ぐことも、脚の静脈の負担を減らす助けになります。運動は、ウォーキング、軽いジョギング、水泳、サイクリングなど、脚の筋肉を動かすものが向いています。痛みや皮膚の傷があるときは、無理をせず医師に相談してから始めてください。
精神的健康と心の健康
脚の見た目やむくみが続くと、「人前で脚を出しづらい」「疲れが取れない」といった悩みが生まれ、気分が落ち込みやすくなることがあります。これは特別なことではなく、よくある気持ちの反応です。症状は治療や工夫で軽くなることが多いので、一人で抱え込まずに話してください。つらい気持ちが長く続くとき、眠れない日が続くときは、かかりつけ医や地域の相談窓口に相談してください。もし自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、ためらわず119番、または地域の救急・相談窓口に連絡してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、症状を軽くしたり、進みにくくしたりすることはできます。長時間の同じ姿勢を避け、ふくらはぎを動かす習慣をつけることが一番の近道です。リスクの高い方は、早めに相談することが予防につながります。
ワクチン
静脈の病気はワクチンで防げる病気ではありません。ただし、入院や手術のあとは血栓ができやすくなるため、医師の指示に沿って早めに体を動かすことが大切です。
検診プログラム
症状がない方に一律の検診はありません。脚の血管のふくらみ、夕方のむくみ、皮膚の色の変化が気になるときは、かかりつけ医に相談してください。ご家族に静脈瘤が多い方、立ち仕事が長い方は、早めの相談が役立ちます。
合併症
治療しない場合
- むくみやだるさが慢性化し、日常生活がつらくなる
- 皮膚が黒ずみ、硬くなり、湿疹やかゆみが続く
- 皮膚に傷(潰瘍)ができて治りにくくなる
- 表の静脈に炎症と血の塊ができる(腫れて痛む)
- 深い静脈に血の塊ができ、それが肺の血管に詰まると命に関わることがある
- ふくらんだ血管が破れて出血することがある(高齢の方に多い)
長期的な見通し
多くの方は、圧迫療法と生活の工夫で症状が軽くなり、普段どおりの生活を続けられます。皮膚の変化や傷がある場合も、治療で改善が期待できます。血栓ができた場合も、早く気づいて治療を始めれば回復できることがほとんどです。気になる症状があるときは、早めにかかりつけ医に相談することが、いちばんの安心につながります。
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最終更新: 2026年11月3日
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