V/Qスキャン(換気・血流シンチグラフィ)— 肺の空気の流れと血流を調べる検査
概要
V/Qスキャン(ブイキュー・スキャン)は、正式には「換気・血流シンチグラフィ」と呼ばれる画像検査です。肺の中に空気がきちんと入っているか(換気)と、肺に血液がきちんと流れているか(血流)を、別々に写真に写して比べます。放射線を出すごく微量の検査用の物質(放射性医薬品)を吸ったり注射したりして撮影します。この2つの写真をくらべることで、肺の血管が血のかたまり(血栓)で詰まっていないか、つまり肺塞栓症(はいそくせんしょう)という病気がないかを調べます。検査そのものは痛みがほとんどなく、終わったあとはふつうに日常生活を送れます。
重要な事実
- 肺の「空気の通り道」と「血管」を別々に写し、両方をくらべる検査です。
- 主に、肺の血管が血栓で詰まる「肺塞栓症」が疑われるときに行われます。
- 検査時間はおおよそ30分〜1時間ほどで、入院せずに受けられることがほとんどです。
- 検査で使う放射線の量はごくわずかで、体から自然に消えていきます。
肺塞栓症が疑われるときによく行われる、標準的な検査のひとつです。健康な人が定期的に受けるタイプの検査ではなく、息切れや胸の痛みなどの症状があって、医師が必要と判断したときに行われます。
年齢を問わず行われますが、血栓ができやすい状況にある方が対象になりやすいです。たとえば、長時間動けない状態が続いた方、手術のあとの方、妊娠中や出産後まもない方、血栓の既往がある方、がんの治療中の方などです。子どもにはあまり行われませんが、必要があれば体格に合わせた量で行われます。
症状
- 突然の激しい息切れで、横になれない・話すのがつらい
- 胸の強い痛みが続き、冷や汗が出る
- 唇や指先が青白くなる、顔色が悪い
- 意識を失う、気を失いそうになる
- 血を吐く、血が混じった痰が続く
- ⚠息切れが急に悪くなってきた
- ⚠片脚だけが腫れて、痛みや熱感がある
- ⚠動悸が続き、脈が速い
- ⚠原因不明の微熱とだるさが続く
一般的な症状
- 突然の息切れ、呼吸のしづらさ
- 胸の痛み(特に深く息を吸うと痛む)
- 理由のわからない動悸(心臓のドキドキ)
- 乾いた咳、ときに血が混じった痰
- 片脚のふくらはぎや太ももの、腫れ・痛み・熱感(血栓が脚の静脉にできているサインのことがあります)
- めまい、ふらつき、軽い失神
子供の症状
- 息切れや胸の痛みをうまく言葉にできないことがあり、元気がない・遊ばないといった様子で気づかれることがあります。
- 子どもでは肺塞栓症自体がとてもまれで、V/Qスキャンが行われることも多くありません。
- 検査が必要な場合は、体格に合わせて検査用物質の量が調整されます。
高齢者の症状
- 高齢の方では、強い胸の痛みよりも「なんとなく息苦しい」「急に体力が落ちた」「ぼんやりする・混乱する」といった形で現れることがあります。
- もともとの心臓や肺の病気と症状が似ていて、区別がむずかしいことがあります。
- 持病や飲んでいる薬が多いため、検査前に医師・薬剤師にまとめて伝えておくと安心です。
原因
主な原因
- 肺塞栓症(肺の血管が血栓で詰まる病気)が疑われるとき
- 脚の深い血管に血栓ができる「深部静脈血栓症」が疑われるとき
- 手術前後の血栓リスクの評価が必要なとき
- 造影剤を使う検査が受けられない方(腎臓の機能が低下している方、造影剤にアレルギーのある方、妊娠中の方など)で、肺の血流を調べたいとき
- 治療中の血栓が小さくなっているかを確認したいとき
リスク要因
- 長時間同じ姿勢で動かない(長距離の移動、入院や寝たきりなど)
- 手術を受けたあと、とくに脚や股関節、腹部の手術
- 妊娠中・出産後まもない時期
- 肥満、喫煙
- 過去に血栓ができたことがある、家族に血栓の病気の人がいる
- がんの治療中、あるいは最近の感染症や発熱
- 女性ホルモンを含む薬(避妊薬やホルモン補充など)を使っている
- 加齢、脱水、心臓や肺の慢性的な病気
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 突然の息切れや胸の痛みがあるときは、がまんせずすぐ受診してください。
- 片脚だけが急に腫れて痛む、赤くなる、熱を持つ
- 脈がとても速い、動悸が止まらない
- 手術後や長時間の移動のあとに、息苦しさが出てきた
定期受診を予約すべき場合:
- 医師からV/Qスキャンを勧められ、検査の内容や注意点を知りたい
- 息切れや疲れやすさが続いていて、原因を調べたい
- 血栓の治療中で、経過の確認が必要と言われている
- 検査前後の過ごし方や、妊娠・授乳中の場合の注意点を相談したい
診断
V/Qスキャンは「換気」と「血流」の2つの写真を撮る検査です。まず換気の写真では、マスクなどからごく微量の検査用ガスを吸って、肺に空気が入る様子を撮ります。次に血流の写真では、腕の細い血管から検査用の物質を注射し、肺に血が流れる様子を撮ります。2つの写真をくらべて、空気は入っているのに血が流れていない場所があれば、血栓が疑われます。検査は痛みがほとんどなく、終わったあとは通常どおり過ごせます。
行われる可能性のある検査
- V/Qスキャン(換気・血流シンチグラフィ)
- 血液検査(血栓が溶けるときに増える物質を調べる検査など)
- 胸部X線検査
- 造影剤を使った胸部CT検査(V/Qスキャンの代わりに選ばれることがあります)
- 脚の血管の超音波(エコー)検査
- 心臓の超音波検査
診察で予想されること
検査着に着替え、ベッドに横になって撮影装置の下に寝ます。撮影中は体を動かさないようにしますが、息を止め続ける必要はありません。注射のときに少しチクッとする程度で、あとは痛みはありません。換気と血流の撮影の間に少し待ち時間ができることがあります。検査の前には、妊娠の可能性・授乳中かどうか・アレルギーの有無・持病・飲んでいる薬(市販薬やサプリメントも含む)を必ずスタッフに伝えてください。検査後は水分をとって、ふだんどおり過ごして問題ありません。
治療
V/Qスキャンは「調べる検査」であり、それ自体が治療ではありません。結果をもとに、血栓が見つかれば血栓を減らして再発を防ぐ治療が始まり、見つからなければ症状の原因を別の面から調べていきます。治療の方針は、症状の強さ、血栓の場所、持病、生活背景を合わせて医師が決めます。
自宅でのセルフケア
- 検査前に、妊娠の可能性・授乳中かどうか・アレルギーの有無を必ず伝える
- 検査前に、飲んでいる薬やサプリメントをすべて伝える(自己判断で中止しない)
- 検査後は水分を多めにとり、ふだんどおり過ごす
- 検査結果は必ず医師から説明を受ける
- 息切れが強くなった、胸痛が出たなど変化があればすぐ連絡する
医療治療
結果に応じて治療方針が決まります。血栓が見つかった場合は、血液が固まりにくくなる治療(注射や飲み薬)を一定期間続けることが多く、場合によっては入院して経過を見ることもあります。血栓ができやすい原因(長時間動かない、喫煙など)があれば、あわせて生活面の見直しを行います。治療の内容や期間、通院の間隔は医師が個別に判断します。薬の名前や量、飲み方は自己判断で変えず、必ず処方した医師・薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
多くの場合は薬による治療が中心ですが、血栓が大きく血の流れを強く妨げている場合など、ごく一部の方には血栓を取り除く処置や、血管の内側から治療する処置が検討されることがあります。適応があるかどうかは、担当の医師が画像や全身の状態をもとに判断します。
この病気と共に生きる
V/Qスキャンを受けたあとは、特別な制限はほとんどありません。ふだんどおり食事や仕事をして大丈夫です。検査の結果や治療方針について説明を受けたら、気になることは遠慮なく質問してください。血栓の治療が始まった場合は、通院の予定を守り、体調の変化をメモしておくと受診のときに役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 長い間同じ姿勢をとらず、ときに脚を動かしたり歩いたりする
- 水分をこまめにとる(脱水は血栓のリスクを高めます)
- 禁煙を心がける
- 適正体重を保つ
- 長時間の移動のときは、足首を回す・つま先立ちをするなど軽い運動をする
- 医師の指示がある場合は、弾性ストッキングなどを活用する
- 手術後は、医師や看護師の指示に沿って早めに体を動かす
食事と運動
特別な食事制限が必要なわけではありませんが、バランスのよい食事とこまめな水分補給は血栓の予防に役立ちます。運動は、体調に合わせた散歩などの軽い運動から始めるとよいでしょう。治療中に運動の制限があるかどうかは、担当の医師に確認してください。
精神的健康と心の健康
「肺の血管が詰まるかもしれない」と言われたり、検査を待つ時間は、不安や緊張が強くなりがちです。検査の仕組みや流れを知っておくだけでも、気持ちが少し落ち着くことがあります。不安が続いて眠れない、気持ちが沈むといったときは、がまんせず医師や看護師、身近な人に話してください。つらい気持ちが長く続く場合は、地域の相談窓口やかかりつけ医に相談することが助けになります。
予防
V/Qスキャン自体は検査なので「予防する」ものではありませんが、この検査で調べる肺塞栓症(肺の血管の血栓)は、生活の工夫である程度リスクを下げることができます。長時間動かない場面では脚を動かす、水分をとる、禁煙する、手術後は早めに体を動かすなどが役立ちます。血栓ができやすい状況がわかっている場合は、あらかじめ医師に相談しておくと安心です。
検診プログラム
肺塞栓症を早期に見つけるための、健康な人を対象とした定期的なスクリーニング検査は一般的ではありません。症状があるとき、あるいは血栓のリスクが高いと医師が判断したときに、必要な検査が行われます。
合併症
治療しない場合
- 肺の血管の血栓が見逃されると、息切れや胸の痛みが続くことがあります。
- 大きな血栓が肺の血流を大きく妨げると、心臓に負担がかかり、重症になることがあります。
- 治療が遅れると、血栓が再発しやすくなることがあります。
- 血栓のあとに肺の一部の血流が長く低下し、息切れが残ることがあります。
長期的な見通し
V/Qスキャンは、肺の血流の異常を見つけるための確立された検査で、多くの場合、結果をもとに適切な対応ができます。血栓が見つかっても、早期に治療を始めれば回復が期待できます。検査結果の意味や今後の見通しは一人ひとり異なるため、必ず担当の医師から説明を受けてください。心配なことがあれば、そのつど医療者に相談することが大切です。
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最終更新: 2026年11月3日
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