CAR-T細胞療法(自分の免疫細胞を使うがん治療)
概要
CAR-T細胞療法(カー・ティーさいぼうりょうほう)は、血液のがん(リンパ腫、白血病、骨髄腫など)に対する治療のひとつです。患者さん自身の免疫細胞の一種であるT細胞(体の中に入ってきた病原体や、異常になった細胞を見つけて攻撃する細胞)を、いったん血液から取り出します。その細胞に遺伝子の操作を加えて「がん細胞を見つける目印(CAR)」を持つように育て、点滴で体に戻します。戻された細胞は体の中で増え、がん細胞を攻撃します。手術でもなく、一般的な薬の治療でもなく、「自分の細胞を薬のように使う」新しいタイプの治療です。
重要な事実
- 自分自身のT細胞を使う、その方だけのオーダーメイドの治療です。細胞を準備するのに数週間かかります。
- 主な対象は血液のがんで、すべてのがんに使える治療ではありません。
- 専門の大きな病院で、入院して行われます。治療のあとには発熱など体の反応(副作用)が出ることがあるため、注意深い観察が必要です。
多く行われる治療ではありません。血液のがんの中でも、いくつかの治療を試したあとの患者さんに検討されることが多く、実施できる施設も限られています。
血液のがん(リンパ腫、白血病、骨髄腫など)のある方の一部が対象になります。年齢や体力、心臓・肺・腎臓などの働き、これまでの治療の内容を総合して、担当医が適しているかどうかを判断します。
症状
- 38℃以上の高い熱、または激しい寒気と震え(細胞を戻したあと数日〜数週間の間に)
- 息苦しさ、呼吸が速い、顔や喉が腫れる
- 意識がぼんやりする、話がかみ合わない、けいれん、手足が動かしにくい
- ぐったりして反応が弱い、血圧が下がっていると言われた
- 尿が出ない、強い吐き気で水分がとれない
- ⚠38℃前後の発熱、強いだるさ
- ⚠吐き気や下痢のため水分がとれない
- ⚠発疹、かゆみ
- ⚠手足のしびれ、物忘れ、字が書きにくい
- ⚠点滴の針を入れている部分が赤い・腫れている
一般的な症状
- ここでは、CAR-T細胞療法の対象となる血液のがんの症状と、治療のあとに現れやすい体の反応(副作用)をまとめます。
- 長引く熱、汗(とくに夜の寝汗)
- 疲れやすい、息切れがする、顔色が悪い
- 首・わきの下・足の付け根などのリンパ節が腫れる
- 体重が減る、食欲がない
- あざができやすい、歯ぐきや鼻の出血が止まりにくい
- 治療のあと:発熱、寒気、だるさ、吐き気、味覚の変化
子供の症状
- 繰り返す発熱、青あざ、鼻血
- 骨や関節の痛み、歩きたがらない
- 食欲が落ちる、元気がない
- おなかやリンパ節の腫れ
高齢者の症状
- なんとなく続く疲れ、体重の減少
- 繰り返す感染症(肺炎など)
- 動悸、息切れ、むくみ
原因
主な原因
- 血液のがんは、血液やリンパの細胞の遺伝子に変化が積み重なって起こると考えられています。原因が1つにはっきり特定できることは多くありません。
- CAR-T細胞療法は、そのがん細胞を、体がもともと持っている免疫の力で攻撃するために行います。
リスク要因
- 血液のがんの種類と進行の程度
- これまでの治療の回数や内容
- 年齢、体力、心臓・肺・腎臓などの働き
- 感染症の有無や免疫の状態
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 治療のあとに38℃以上の熱が出た、または寒気と震えが強い
- 息苦しさ、顔や喉の腫れがある
- 意識がぼんやりする、話がかみ合わない、けいれんがある
- 水分がとれないほどの吐き気や下痢がある
定期受診を予約すべき場合:
- 症状の程度が変わらないが、治療の対象になるかどうか相談したい
- 治療後のだるさ、味覚の変化、手足のしびれが続いている
- 食事や睡眠、気分の落ち込みが気になる
- 予防接種や外出、仕事・学校への復帰について確認したい
診断
CAR-T細胞療法を受けられるかどうかは、血液検査や画像検査、骨髄検査などで、がんの状態と体の準備状態を確認してから判断します。治療の前には、T細胞を集めるために血液を機械で循環させる処置(アフェレーシス)を行います。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(血球の数、肝臓・腎臓の働き、感染症の有無など)
- 画像検査(CT、PET-CT、MRIなど)
- 骨髄検査(骨髄の細胞を調べる)
- 心臓・肺の検査(心電図、心エコー、呼吸機能など)
- リンパ球を集める処置(アフェレーシス)
診察で予想されること
細胞を集めてから点滴で体に戻すまでには、数週間かかります。その間に、がんの勢いを抑えるための治療が行われることもあります。細胞を戻したあとは、発熱や神経の症状などが出やすい時期があるため、入院して経過を見ます。
治療
CAR-T細胞療法は、おおよそ次の流れで進みます。①血液から細胞を集める、②施設で細胞を育てる、③点滴で体に戻す、④戻したあとの体の反応を注意深く観察する。治療の前後には、体の反応(副作用)をやわらげるための支持的な治療も合わせて行います。
自宅でのセルフケア
- 毎日の体温や体調の変化を記録し、少しでもいつもと違えば医療チームに連絡する
- 手洗い・うがい、人混みを避けるなど、感染予防を心がける
- 水分をこまめにとる
- 指示された通院と検査を欠かさない
- 体調や気持ちの変化を一人で抱え込まず、家族や医療チームに伝える
医療治療
治療は専門の医療チームが行います。細胞を戻したあとには、免疫が強く働きすぎて熱や血圧の変化が出る状態(サイトカイン放出症候群)や、神経の症状などが起こることがあるため、状態をこまめに確認し、必要に応じて点滴や酸素、その他の支持的な治療を行います。感染症の予防や、吐き気・痛みへの対応も合わせて行われます。具体的な薬や量は、担当医が状態に合わせて決めます。
手術が検討される場合
CAR-T細胞療法そのものは手術ではありません。ただし、細胞を集めたり戻したりするために、腕の血管から細い管を入れて留置する処置(カテーテル)を行うことがあります。
この病気と共に生きる
治療のあとしばらくは、発熱やだるさ、味覚の変化などが続くことがあります。無理をせず、体力に合わせて少しずつ日常を取り戻していく時期と考えてください。通院での経過観察が続きます。
生活習慣のアドバイス
- 規則正しい生活と十分な睡眠を心がける
- 手洗い・マスク・人混みを避けるなど感染予防を続ける
- 外出や仕事・学校については主治医に確認する
- 体調や体温の記録をつけておく
食事と運動
食事に特別な制限が必要ないことも多いですが、治療中は食欲が落ちたり味が変わったりします。食べられるものを少しずつ、たんぱく質と水分を意識してとりましょう。運動は散歩など軽いものから始めます。感染予防のため人混みでの運動は避け、どのくらい動いてよいかは主治医に確認してください。
精神的健康と心の健康
長い治療と入院、先の見えない不安は、こころに大きな負担になります。不安や落ち込み、眠れない日が続くのは自然なことです。一人で抱え込まず、医療チームや家族、心理の専門家に話してください。気持ちがとてもつらいとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療チームか地域の相談窓口に連絡してください。緊急の場合は119番に電話してください。
予防
CAR-T細胞療法そのものを予防するという考え方はありません。対象となる血液のがんについても、はっきりした予防法は確立していません。気になる症状が続くときは、早めに医療機関に相談することが大切です。
ワクチン
治療の前後は免疫の状態が変わることがあり、予防接種の時期や種類に注意が必要です。生ワクチンを含め、接種してよいかどうかは必ず主治医に確認してください。
検診プログラム
血液のがんに対する決まった検診はありません。健康診断で血球の異常を指摘されたら、放置せず医療機関で相談してください。
合併症
治療しない場合
- 対象となる血液のがんが進行すると、貧血や感染症、出血などの症状が強くなることがあります。
- 治療をしない場合の見通しは、がんの種類や状態によって大きく異なります。
- 治療のあとには、免疫が弱っている時期が続くことがあり、感染症にかかりやすくなることがあります。
長期的な見通し
CAR-T細胞療法は、血液のがんに対して大きな可能性を持つ治療として研究が進んできました。すべての方に効果があるわけではなく、体の反応への注意も必要ですが、これまでの治療では難しいとされた方にとって新しい選択肢になっています。経過には個人差が大きく、担当医と一緒に一歩ずつ進んでいくことが大切です。
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最終更新: 2026年11月3日
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