尿管皮膚瘻(にょうかんひふろう)―尿管をおなかの皮膚から出す手術
概要
尿管皮膚瘻は、腎臓でつくられた尿を膀胱まで運ぶ管(尿管)を、おなかの皮膚の表面に小さな出口として出してしまう手術です。膀胱をとった、または膀胱がうまく働かないときに、尿の新しい出口をつくる方法のひとつです。皮膚に出した出口は「ストーマ」と呼ばれ、そこに袋(パウチ)を貼って尿をためます。膀胱にためてから出すのではなく、尿がたえず少しずつ袋に流れ出る形になります。
重要な事実
- 膀胱を摘出した場合や、膀胱から尿を出せなくなった場合に、尿の出口を新しくつくる手術です。
- おなか(多くは右下腹部)にストーマという小さな出口ができ、そこに尿をためる袋を貼って生活します。
- 尿をためておく膀胱がないため、トイレでまとめて出す感覚はなく、袋を定期的に交換する生活になります。
- ストーマのケアは慣れるまで時間がかかりますが、多くの人は数か月で自分のリズムをつかんでいます。
頻度は高くありません。膀胱がんなどで膀胱をとる手術が必要になったときや、生まれつき尿の通り道に問題があるときなど、限られた状況で行われます。
年齢や性別を問わず行われます。成人では膀胱がんなどで膀胱を摘出する方に多く、小児では生まれつきの尿路の病気や神経の病気で膀胱が働かない場合に行われることがあります。高齢の方では、皮膚が弱くなって装具によるトラブルが起きやすいことがあります。
症状
- 38℃以上の発熱と寒気があり、腰や背中が強く痛む(腎盂腎炎など重症の感染症のおそれ)
- 尿がまったく袋に出てこない状態が続く
- ストーマの色が黒っぽい、紫になる、白く変わる(血流が悪くなっているサイン)
- 意識がもうろうとする、会話がかみ合わない
- 繰り返す嘔吐で水分がとれない、尿の量が極端に減っている
- 激しい腹痛や腰痛が急に起こった
- ⚠尿が濁る、においが強い、血が混じる
- ⚠ストーマの周りの皮膚が赤くはれて痛む、ただれる
- ⚠ストーマが急に小さくなった、へこんだ、形が変わった
- ⚠軽い発熱やだるさが続く
- ⚠尿が漏れて装具が貼れない状態が続く
一般的な症状
- 手術の前には、血尿、尿が出にくい、頻尿、排尿時の痛み、腰や背中の痛み、発熱など、原因となった病気の症状があることが多いです。
- 手術の後は、おなかのストーマから尿が少しずつ出るようになります。
- 尿をためる袋(パウチ)を貼る必要があり、交換の手順を覚える必要があります。
- ストーマの周りの皮膚が赤くなったり、かゆくなったりすることがあります。
- 尿のにおいや見た目が気になることがあります。
子供の症状
- 生まれつき尿の通り道が狭い、膀胱がうまく働かない、脊髄の病気で神経がうまく働かない、といった状態で行われることがあります。
- 小児では体の成長に合わせて装具のサイズを替える必要があります。
- 自分でケアができるようになるまで、家族と学校の協力が大切になります。
- 手術後も排尿の感覚がないため、本人が自分の体の変化を理解できるよう、年齢に応じた説明が必要です。
高齢者の症状
- 膀胱がんや、長く続く排尿障害、寝たきりに伴う尿路管理の難しさなどが理由になることがあります。
- 皮膚が薄く弱くなっているため、装具によるかぶれや傷が起きやすい傾向があります。
- 手先の動きや視力の低下で装具の交換が難しくなることがあり、家族や訪問看護の助けが必要になる場合があります。
- 持っている病気や薬の影響で、尿の量や体の水分バランスが変わりやすいことがあります。
原因
主な原因
- 膀胱がんなどで膀胱を摘出する必要があるとき
- 膀胱が働かない、または尿を出せない状態(神経因性膀胱、脊髄の病気やけがなど)
- 尿管が詰まって腎臓の働きが悪くなっているとき
- 生まれつきの尿路の形の異常(小児)
- 放射線治療や手術の後で尿路に慢性的な問題が残ったとき
リスク要因
- 喫煙(膀胱がんの大きな危険因子です)
- 膀胱がんや前立腺の病気の治療歴
- 脊髄の病気やけが、糖尿病による神経の障害
- 長く続く排尿障害や、繰り返す尿路感染症
- 加齢に伴う膀胱や腎臓の働きの変化
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 発熱と寒気、腰の痛みが同時にある
- 尿がほとんど出ない、または袋に尿がたまらない
- ストーマの色がいつもと違う(黒っぽい、紫、白い)
- 尿にはっきりした血が混じる
- ストーマ周囲の皮膚が赤くはれて痛みが強い
定期受診を予約すべき場合:
- 装具の交換がうまくいかず、尿がもれる
- 皮膚のかぶれやかゆみが続く
- 尿の量や色、においの変化が気になる
- 体重が減る、だるさが続く、食欲がない
- 旅行や仕事、学校生活のことを相談したい
- 気分の落ち込みや不安が続いている
診断
尿管皮膚瘻が必要かどうかは、症状、画像の検査、腎臓の働きの結果などを合わせて、担当の医師が総合的に判断します。手術そのものを「診断する」というより、原因となっている病気の状態と、尿の通り道をどうするのが体にとって一番よいかを話し合って決めていきます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(腎臓の働き、電解質のバランスを調べます)
- 尿検査(感染や血尿の有無を調べます)
- 腹部の超音波検査(腎臓や尿管のむくみを見ます)
- CT検査やMRI検査(尿路の形や腫れ、原因の病気を調べます)
- 内視鏡検査(膀胱や尿管の内側を直接見ます)
- 腎臓の働きを詳しく見る核医学検査
- 手術前の心肺機能の検査や麻酔の相談
診察で予想されること
手術の前に、なぜこの手術が必要なのか、ほかに選べる方法はないかを医師から説明があります。手術の前に、おなかのどの位置にストーマをつくるかの印をつけることもあります。入院して手術を受け、術後は看護師と一緒に装具の交換を練習しながら、少しずつ自分でできるようにしていきます。
治療
尿管皮膚瘻そのものが治療の一つで、手術によって新しい尿の出口をつくります。手術の後は、ストーマの装具による毎日のケアが生活の中心になります。原因となった病気に対しては、それぞれ別の治療が続くことがあります。
自宅でのセルフケア
- 装具の交換のしかたを看護師と一緒に練習し、自分のやり方を身につけます。
- ストーマの周りの皮膚をやさしく洗って清潔に保ち、よく乾かしてから装具を貼ります。
- 尿の量、色、におい、皮膚の状態を日々見ておき、変化があれば記録して相談します。
- 外出時には予備の装具とゴミ袋を持ち歩くと安心です。
- 入浴やシャワーは多くの場合可能です。主治医や看護師に確認しましょう。
- 水分をこまめにとり、尿の流れを保つようにします。
医療治療
治療の中心は手術で、全身麻酔で行われます。手術の際に、尿の通り道を保つための細い管を一時的に入れることがあります。尿路の感染症を起こしたときは、医師の判断で感染を抑える治療が行われます。狭くなった部分を広げる処置や、装具が合いにくい場合の工夫など、合併症に応じた対応も行われます。使う薬や量については、必ず担当の医師や薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
膀胱を摘出する必要があるとき、膀胱から尿を出せない状態が続くとき、尿管が詰まって腎臓の働きが悪くなっているとき、生まれつきの尿路の異常があるときなどに検討されます。状態によっては緊急で行われることもあります。手術の方法はいくつかあり、体の状態や生活のことを考えて医師と相談して決めます。
この病気と共に生きる
朝など決まった時間に装具を交換するのが一般的です。交換の間隔は人によって異なり、1〜3日ごとが目安になることが多いですが、尿の量や装具の種類で変わります。ストーマからは尿がたえず出るため、袋がたまってきたら下の部分から出して捨てます。夜は大きめの袋を使うと眠りやすいこともあります。においが気になるときは、装具の消臭用品やごみの捨て方を工夫します。衣服は締めつけすぎなければ、ほとんどのものが着られます。
生活習慣のアドバイス
- 装具を交換する前には必ず手を洗います。
- 尿の量が減らないよう、こまめに水分をとります。
- 規則正しい生活と十分な睡眠で、体調を整えます。
- 禁煙は、感染症やほかの病気の予防にも役立ちます。
- 仕事や学校に戻る前に、交換の場所や時間の確保について相談しておくと安心です。
- 旅行のときは、予備の装具を多めに持ち、事前に主治医に相談しておきます。
食事と運動
食事は特別な制限が必要ないことが多いですが、塩分のとりすぎに気をつけ、バランスよく食べることが大切です。水分は十分にとりますが、心臓や腎臓に病気がある方は、どのくらい飲めばよいかを主治医に確認してください。ウォーキングなど軽い運動は体調の維持に役立ちます。腹筋を強く使う運動や重い物を持つ動作は、ストーマに負担がかかることがあるため、始める前に医師や看護師に相談しましょう。
精神的健康と心の健康
体に新しい出口ができることは、気持ちの面でも大きな変化です。恥ずかしさ、落ち込み、パートナーとの関係への不安、外出へのためらいを感じる方は少なくありません。これは自然な反応で、時間をかけて慣れていくものです。一人で抱え込まず、家族や信頼できる人、医療者に気持ちを話してみてください。つらい気持ちが続くときは、住んでいる地域の保健所や、かかりつけ医、地域のこころの相談窓口に相談してください。気持ちが追い詰められて自分を傷つけたいと考えたときは、すぐに医療機関や緊急の相談先を頼ってください。
予防
尿管皮膚瘻そのものを予防することはできません。ただし、原因となる膀胱がんや尿路の病気を早く見つけ、早めに治療することは大切です。血尿が出た、排尿がしにくいといった変化を感じたら、早めに医療機関を受診してください。
ワクチン
インフルエンザや肺炎などのワクチン接種は、感染症を防ぐ助けになることがあります。体の状態に合わせて接種の可否が変わるため、主治医と相談してください。
検診プログラム
自治体のがん検診や、血尿の検査などが早期発見の助けになります。膀胱がんのリスクが高い方は、主治医と検査の間隔について相談しておくとよいでしょう。
合併症
治療しない場合
- 尿路の感染症を繰り返し、腎盂腎炎など重症の感染症につながることがあります。
- ストーマが狭くなったり詰まったりして、尿の流れが悪くなることがあります。
- 尿の流れが悪いまま続くと、腎臓がむくんで働きが落ちることがあります。
- 尿路に石ができやすくなります。
- 体の水分と塩分のバランスが崩れることがあります。
- ストーマの周りの皮膚のただれやかぶれが慢性化することがあります。
長期的な見通し
尿管皮膚瘻は、尿の出口を新しくつくることで体の状態を安定させるための方法です。最初は戸惑うことが多いものの、ケアに慣れれば旅行や仕事など、これまでに近い生活を続けている方はたくさんいます。定期的に診察を受けて合併症を早めに見つけることが、長く元気に過ごすための鍵になります。不安なことは、遠慮なく医療チームに相談してください。
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最終更新: 2026年11月3日
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