鼻中隔矯正術(びちゅうかくきょうせいじゅつ)— 鼻のとおりを整える手術
概要
鼻中隔(びちゅうかく)とは、左右の鼻の穴を仕切っている「鼻の真ん中の壁」のことです。この壁が曲がっている状態を鼻中隔弯曲症(びちゅうかくわんきょくしょう)といい、空気の通り道が狭くなって鼻づまりが起こります。鼻中隔矯正術は、曲がったこの壁をまっすぐに近づけて、鼻のとおりを良くする手術です。鼻の外観を大きく変える手術ではなく、鼻の中の通り道を広げることを目的としています。
重要な事実
- 鼻中隔が曲がっていること自体は珍しいことではなく、多くの人に見られます。症状が強い場合に手術が検討されます。
- 手術は耳鼻咽喉科(じびいんこうか)で行われ、一般的には鼻の中を切って形を整える方法で、顔の皮膚を切ることは通常ありません。
- まずは点鼻薬やアレルギーの治療などが試され、それでも生活に支障がある場合に手術が選ばれることが多いです。
鼻中隔の曲がりはとてもよく見られる状態で、鼻づまりの原因として耳鼻咽喉科でよく扱われます。矯正術も比較的よく行われる手術のひとつです。
大人(思春期以降)に多いですが、子どもでも鼻のけがや生まれつきの曲がりで起こることがあります。子どもの場合は鼻や顔が成長の途中なので、手術の時期は慎重に判断されます。
症状
- 鼻血が大量に続き、20分以上おさえても止まらない
- 呼吸が苦しく、息が吸えない感じがする
- 顔を強くぶつけたあと、顔の形が変わって息がしづらい
- 意識がもうろうとしている、ぐったりしている
- ⚠発熱と顔の腫れ・強い痛みが一緒に起こった(鼻の奥の炎症が強い可能性)
- ⚠急ににおいが分からなくなった
- ⚠片側だけの鼻づまりが急に悪くなり、出血や痛みを伴う
- ⚠手術のあとで、止まらない出血や強い痛み、発熱がある
一般的な症状
- 片側、または両側の慢性的な鼻づまり
- 口で呼吸することが増える(口呼吸)
- いびき、眠りの質の低下、日中の眠気
- においを感じにくくなる(嗅覚の低下)
- 繰り返す鼻血
- 顔の奥の重い感じや頭重感
- かぜでもないのに副鼻腔炎(ふくびくうえん:鼻の奥の空洞の炎症)を繰り返す
- 鼻をかんでもすっきりしない感じ
子供の症状
- いびきがひどい、寝ているときに口で呼吸している
- 鼻づまりで哺乳(ほにゅう)や食事がしづらそう
- 鼻声が続く、鼻水が長引く
- 眠りの質が悪く、日中の集中が続かないように見える
- 鼻のけがのあとから鼻づまりが始まった
高齢者の症状
- 加齢による鼻の粘膜の乾燥と、鼻づまりの重なり
- いびきや睡眠時無呼吸(すいみんじむこきゅう:寝ている間に呼吸が止まる状態)が悪化しやすい
- 鼻づまりによる睡眠不足が血圧や体調に影響することがある
- 他の病気の薬を服用していることが多く、手術の前に主治医との相談が必要になる
原因
主な原因
- 生まれつき(先天的)の鼻中隔の曲がり
- 成長の過程で鼻中隔の形が偏ること
- スポーツや事故、転倒などによる鼻のけが
- 加齢に伴う鼻の形や粘膜の変化
リスク要因
- 鼻をぶつけた経験がある
- アレルギー性鼻炎(花粉症など)があり、鼻の粘膜が腫れやすい
- 副鼻腔炎を繰り返している
- 鼻の手術を受けたことがある
- いびきや睡眠時無呼吸を指摘されたことがある
- 家族に鼻の曲がりや鼻づまりが多い人がいる
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 鼻血が20分以上止まらない、または何度も繰り返す
- 呼吸が苦しい、息苦しさが強い
- 顔をぶつけたあとに腫れや変形があり、息がしづらい
- 発熱と顔の強い痛み・腫れがある
定期受診を予約すべき場合:
- 鼻づまりが数週間以上続いている
- 片側だけの鼻づまりが長く続く
- いびきや眠りの質の低下が気になる
- 副鼻腔炎を繰り返している
- においを感じにくくなった
- 鼻づまりで生活や仕事、勉強に支障が出ている
診断
まず問診で、鼻づまりの時期や程度、けがの経験、アレルギーの有無などを伺います。次に鼻の中を直接見て、鼻中隔の曲がり方や粘膜の腫れ、通り道の狭さを確認します。必要に応じて画像の検査や、鼻のとおりやすさを調べる検査を組み合わせます。
行われる可能性のある検査
- 鼻鏡(びきょう)や鼻内視鏡(びないしきょう)による観察
- 鼻や副鼻腔のCT検査
- アレルギー性鼻炎の検査(血液検査や皮膚の検査など)
- 鼻の通りやすさを測る検査(鼻呼吸抵抗検査など)
- 嗅覚(きゅうかく)の検査
- いびきが強い場合の睡眠検査
診察で予想されること
診察は数分から十数分程度で、痛みはほとんどありません。鼻の中に細いカメラを入れることがありますが、不快感はあっても強い痛みは通常ありません。検査の結果をもとに、保存的な治療を試すか、手術を考えるかを相談します。
治療
治療は大きく二つに分かれます。一つは手術をしない方法で、鼻の炎症やアレルギーをやわらげて通りを良くする治療です。もう一つは手術で、曲がった鼻中隔の形を整える鼻中隔矯正術があります。まずは手術をしない治療から始めることが多く、生活への支障が大きい場合に手術が検討されます。
自宅でのセルフケア
- 生理食塩水(せいりしょくえんすい)で鼻の中をやさしく洗う
- 部屋を加湿して、鼻の粘膜が乾燥しないようにする
- 水分をこまめにとる
- たばこの煙を避ける(粘膜への刺激になります)
- 花粉やほこりなど、症状を悪くするものをできるだけ避ける
- 鼻を強くかみすぎない
- 寝るときは少し上半身を高くすると、鼻づまりが楽になることがある
医療治療
鼻の炎症をやわらげる点鼻薬や、アレルギーを抑える飲み薬などが使われることがあります。どの治療が合うかは症状や体質によって変わるため、自己判断で長期間使わず、医師や薬剤師に相談しながら進めてください。鼻中隔の曲がりそのものを薬でまっすぐにすることはできないため、薬は主に鼻の腫れやアレルギーを和らげる目的で使われます。
手術が検討される場合
手術は、手術以外の治療を続けても鼻づまりが強く、睡眠や仕事、勉強など生活に支障がある場合に検討されます。いびきや睡眠時無呼吸、繰り返す副鼻腔炎、においの低下が関係している場合も相談の対象になります。手術は鼻の中を切って形を整えるもので、麻酔の方法や入院・日帰りの選択は施設や体調によって異なります。術後は鼻の中の腫れやかさぶたがあり、通りの改善を実感するまでに数週間から数か月かかることがあります。
この病気と共に生きる
鼻づまりがあると、集中しにくい、眠りが浅い、口が乾くなど、毎日の小さな負担が積み重なります。加湿や鼻の洗浄、刺激を避ける工夫だけでも楽になることがあります。手術を受けた場合は、術後の通院と鼻の中の処置を続けることが大切です。
生活習慣のアドバイス
- 睡眠時間を確保し、寝室の乾燥を防ぐ
- ほこりや花粉を室内に持ち込まない工夫をする
- 鼻をかむときは片方ずつ、やさしく
- 喫煙を避け、受動喫煙にも気をつける
- 風邪をひいたら早めにケアし、長引かせない
- 手術後は医師の指示に従って運動や入浴の再開時期を守る
食事と運動
特別な食事制限は必要ありません。バランスのよい食事と適度な運動は、免疫や体調の維持に役立ちます。手術のあとは、しばらく激しい運動や鼻に圧力がかかる動作(重いものを持ち上げる、強く息をこらすなど)を控えるよう指示されることが多いので、再開の時期は医師に確認してください。
精神的健康と心の健康
長引く鼻づまりや眠りの浅さは、気分の落ち込みやイライラにつながることがあります。手術を考えるときも、期待と不安の両方を感じるのは自然なことです。つらさが続くときは、一人で抱え込まずに医療者や身近な人に話してみてください。
予防
生まれつきの鼻中隔の曲がりは予防できません。ただし、スポーツや日常での鼻のけがを防ぐこと、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎をきちんとケアして鼻の粘膜の腫れを長引かせないことは、鼻づまりを軽くする助けになります。
検診プログラム
症状がない場合に、鼻中隔の曲がりだけを調べる決まった検診はありません。鼻づまりやいびきなどの気になる症状があるときに、耳鼻咽喉科で相談するのが一般的です。
合併症
治療しない場合
- 慢性的な鼻づまりが続き、生活の質が下がる
- 口呼吸が増えて、のどや口の中が乾きやすい
- 眠りが浅くなり、日中の眠気や集中力の低下につながる
- いびきや睡眠時無呼吸が悪化することがある
- 副鼻腔炎を繰り返しやすくなる
- においを感じにくくなる
- 子どもの場合は、睡眠や成長、学習面に影響が出ることがある
長期的な見通し
鼻中隔の曲がりは多くの人にあるもので、症状が軽ければ大きな心配はいりません。生活に支障がある場合も、手術以外の治療や手術によって鼻のとおりが改善したと感じる方は少なくありません。一方で、改善の程度には個人差があり、術後も腫れが落ち着くまで時間がかかることや、状況によっては追加の治療が必要になることもあります。あせらず、主治医と相談しながら進めていきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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