卵巣摘出術(卵巣を取る手術)
概要
卵巣摘出術(らんそうてきしゅつじゅつ)は、卵巣を手術で取り除く治療です。卵巣は子宮の両側にひとつずつある、親指くらいの大きさの臓器で、卵子を育てるほかに、女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)を作る働きがあります。手術では、片方だけを取る場合(片側卵巣摘出術)と、両方を取る場合(両側卵巣摘出術)があります。両方を取ると妊娠する力がなくなり、閉経前の方では女性ホルモンが急に減るため「手術による閉経」が起こります。手術が必要かどうか、どこまで取るかは、病気の種類・年齢・これからの妊娠の希望などをふまえて、主治医とよく相談して決めます。
重要な事実
- 卵巣は女性ホルモンを作る臓器なので、両側を取ると体にさまざまな変化が起こります。
- 片側だけを取った場合は、もう片方の卵巣がホルモンを作り続けることが多く、閉経が大きく早まることは多くありません(個人差があります)。
- 手術の方法には、おなかに小さな穴をあけて行う腹腔鏡下手術と、おなかを開く開腹手術があります。
- 取った組織は病理検査(顕微鏡で調べる検査)に出され、良性か悪性かを確かめます。
- 手術後の体調や気持ちの変化は、一人で抱えずに医療者や家族に相談できます。
婦人科ではよく行われる手術のひとつです。卵巣のう胞(水がたまった袋)、子宮内膜症、卵巣のがん、卵巣捻転(卵巣がねじれる状態)など、さまざまな病気で行われています。
症状
- 胸の急な痛み、息が苦しい、意識が遠のく(肺の血管に血のかたまりが詰まった可能性があります)
- 傷口から血が止まらない、大量の出血がある
- 高い熱と激しい腹痛があり、おなかが硬い
- 立てないほどの下腹部の激痛(卵巣捻転などが考えられます)
- ⚠38度以上の熱が続く
- ⚠傷口が赤く腫れる、膿のようなものが出る、痛みが強くなる
- ⚠嘔吐が続いて水分がとれない
- ⚠尿が出にくい、排尿時に強い痛みがある
- ⚠片脚のふくらはぎが腫れる、痛む(血のかたまりの可能性があります)
- ⚠立ちくらみや動悸が続く
一般的な症状
- 下腹部の痛みや、重い・張る感じが続く
- 月経のときの強い痛み(子宮内膜症など)
- おなかがふくらんできた、張っている感じがする
- 月経以外の出血や、月経の乱れ
- トイレが近い、便秘がちになる(大きくなった腫瘍が周りを圧迫するため)
- 手術後しばらくは、傷の痛み、だるさ、疲れやすさ
- 両側を取った場合は、のぼせ・ほてり・汗・眠りにくさなど閉経に似た症状
原因
主な原因
- 卵巣のう胞や良性の腫瘍(できもの)が大きい、または痛みがある
- 子宮内膜症やチョコレートのう胞で、強い痛みや不妊の原因になっている
- 卵巣がん、またはその疑いがある
- 卵巣捻転(卵巣がねじれて血流が悪くなる)
- 子宮の手術(子宮摘出など)のときに一緒に取る場合
- 遺伝的にリスクが高い方の予防的な切除
- 炎症や感染による膿(うみ)がたまり、治療でよくならない場合
リスク要因
- 糖尿病や高血圧などの持病
- 以前のおなかの手術による癒着(組織がくっつくこと)
- 血のかたまりができやすい体質、血栓の既往
- 閉経前か閉経後か(ホルモンの変化による影響が変わります)
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 急な下腹部の激痛、嘔吐、冷や汗がある
- 手術後に38度以上の熱が出た、傷口から膿が出ている
- 胸の痛み、息苦しさ、片脚の腫れがある
- 出血が多く、ぐったりする感じがある
定期受診を予約すべき場合:
- 下腹部の痛みや張りが続く
- 月経痛が強い、月経以外の出血がある
- おなかが大きくなってきた気がする
- 手術後の疲れやホルモンの変化による症状がつらい
- 妊娠を考えているので、手術の影響を知りたい
診断
まず問診と内診(腟から指で触れて子宮や卵巣の状態を確かめる診察)を行い、超音波検査で卵巣の大きさや中身を観察します。必要に応じてCTやMRI、血液検査(腫瘍マーカーを含む)で詳しく調べます。手術後に取った組織を顕微鏡で調べる病理検査で、良性か悪性かが確定します。
行われる可能性のある検査
- 問診と内診
- 経腟(腟から入れる)超音波検査
- 腹部超音波検査
- MRI検査
- CT検査
- 血液検査(腫瘍マーカーを含む)
- 妊娠検査
- 手術前の全身チェック(心電図、胸部レントゲンなど)
- 病理検査(取った組織を顕微鏡で調べる)
診察で予想されること
診察はなるべく痛みの少ない方法で行われます。手術が決まったら、麻酔科の診察や術前検査を受け、手術の方法・範囲・入院期間について説明があります。不安なことはメモしておき、遠慮なく質問してください。
治療
治療は、病気の種類・大きさ・年齢・妊娠の希望によって変わります。手術が不要な場合や、まず薬で様子を見る場合もあります。手術には、おなかに小さな穴をあけて行う腹腔鏡下手術、おなかを開く開腹手術、手術支援ロボットを使う方法などがあります。卵巣を全部取るか一部を残すか、片側だけにするかは、病気の性質とこれからの人生の計画を合わせて相談して決めます。
自宅でのセルフケア
- 術後は無理のない範囲で早めに歩く(血のかたまりを防ぎ、回復を助けます)
- 傷口は医師の指示どおりに清潔に保つ
- 重いものを持ち上げる、激しい運動は許可が出るまで控える
- 禁煙する(傷の治りと血栓の予防に役立ちます)
- 水分をとり、便秘を防ぐ
- 痛みや体調の変化をメモして、診察のときに伝える
医療治療
手術以外にも、痛みをやわらげる薬、ホルモンの働きを調整する薬、炎症を抑える治療など、症状に合わせた選択肢があります。両側の卵巣を取った方では、のぼせやほてりなどの症状に対してホルモン補充療法などの方法が検討されることがあります。どの方法が合うかは、持病やリスクをふまえて医師と相談して決めます。
手術が検討される場合
手術がすすめられるのは、強い痛みが続く、腫瘍が大きい、悪性(がん)が疑われる、卵巣がねじれている、薬での治療で改善しない、といった場合です。緊急で行うこともあれば、日を決めて行うこともあります。
この病気と共に生きる
手術後は数週間、疲れやすさや傷の違和感が続くことがあります。仕事や家事は少しずつ再開し、体の声を聞きながらペースを戻していきましょう。両側の卵巣を取った方は、のぼせ・ほてり・汗・気分の波・腟の乾燥など、閉経に似た変化を感じることがあります。多くは時間とともに落ち着きますが、つらいときは我慢せずに相談してください。
生活習慣のアドバイス
- 定期的な婦人科検診を続ける
- 骨を守るために、カルシウムを含む食品と適度な運動を心がける
- 禁煙し、お酒はほどほどにする
- 睡眠をしっかりとる
- 気持ちの変化を家族や友人、医療者に話す
食事と運動
骨が弱りやすくなることがあるので、乳製品・小魚・大豆製品・緑黄色野菜などカルシウムの多い食事をとり、日光を浴びて体を動かしましょう。ウォーキングや軽い筋力運動は、骨と心の健康の両方に役立ちます。無理のない範囲で、続けられることを見つけてください。
精神的健康と心の健康
卵巣を取ると、妊娠できなくなることへの悲しみ、女性らしさを失ったような感覚、ホルモンの変化による気分の落ち込みなどが起こることがあります。これは自然な反応で、あなたの弱さではありません。つらい気持ちが続くときは、一人で抱えずに医療者や相談窓口を頼ってください。気持ちがひどく落ち込む、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、すぐに医療機関や相談窓口に連絡してください。
予防
卵巣摘出術そのものを予防することはできませんが、手術が必要になる病気の多くは、早めの受診と検診で見つけやすくなります。遺伝的に乳がん・卵巣がんのリスクが高いとわかっている方は、予防的な手術という選択肢について専門医と相談できます。
検診プログラム
婦人科検診(問診・内診・超音波など)を定期的に受けることが、卵巣や子宮の変化に気づく助けになります。気になる症状があるときは、検診を待たずに受診してください。検診の内容や頻度は、年齢やリスクに応じて医師に相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 卵巣のう胞や腫瘍が大きくなり、痛みや圧迫の症状が強くなることがあります
- 卵巣捻転で血流が止まり、卵巣を失うことがあります
- がんであれば、周りやほかの臓器に広がる可能性があります
- 子宮内膜症による強い痛みや不妊が続くことがあります
- 感染や膿(うみ)が広がることがあります
長期的な見通し
卵巣摘出術は、多くの場合、症状をやわらげ、病気の進行を防ぐための有効な方法です。片側だけを取った方は、もう片方の卵巣が働き続けることが多く、妊娠の可能性が残ることもあります。両側を取った方も、ホルモンの変化による症状には対応する方法があり、生活の工夫で穏やかに過ごせることが多いです。心配なことは主治医に何でも相談しながら、少しずつ前へ進みましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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