経頭蓋磁気刺激(TMS)治療ってどんなもの?
概要
TMS(経頭蓋磁気刺激法)は、頭の外側から磁気の力をあてて、脳の一部の神経の働きをやさしく整える治療法です。「経頭蓋」は「頭蓋(ずがい)=頭の骨を、経て=通って」という意味で、頭を切ったり穴をあけたりはしません。主に、うつ病で薬による治療や話し合いの治療(心理療法)があまり効かなかったときに使われます。椅子に座ったまま、頭の決まった場所にコイルという器具を近づけ、20〜40分ほど刺激を当てます。痛みはほとんどなく、麻酔も不要で、終わったらそのまま帰ることができます。
重要な事実
- 頭を切らない、麻酔も不要の治療です。椅子に座ったまま受けられます。
- 1回およそ20〜40分。日本では、うつ病に対して週に数回、数週間続けて行うことが多い治療です。
- 効果の感じ方には個人差があり、すぐに変化が出ないこともあります。主治医と相談しながら続けることが大切です。
うつ病の治療の選択肢のひとつとして、日本でも広がってきている治療です。すべての病院にあるわけではありませんが、精神科・心療内科の一部の医療機関で受けられます。
主に成人のうつ病の方で、薬による治療で十分な改善が得られにくい場合に検討されます。未成年や高齢の方では、体の状態や持病を確かめたうえで慎重に判断されます。
症状
- 治療中や治療後に、けいれん(体が勝手に震える、意識を失う)が起きた
- 意識が戻らない、呼びかけに反応しない
- 突然の激しい頭痛、何度も吐く、ろれつが回らない、体の片側が動かない
- 自分を傷つけたい気持ちが強くなり、がまんできない(すぐに119番へ)
- ⚠治療のあと、頭痛やめまいが強くなり、日常生活に支障がある
- ⚠気分の落ち込みが急にひどくなった、眠れない日が続く
- ⚠治療を続けるかどうか迷い、つらい気持ちが続いている
一般的な症状
- 気分の落ち込みが続く、何をしても楽しめない
- 眠れない、または眠りすぎる。食欲がない、または食べすぎる
- 疲れやすい、集中できない、物事を決められない
- 薬による治療を続けても、症状があまり良くならない
- 治療中に、頭皮の軽い痛みや違和感、コイルの音(カチカチという音)を感じることがある
- 治療のあとに軽い頭痛や疲れを感じることがある
原因
主な原因
- うつ病では、脳の一部の働きのバランスが変わっていると考えられており、TMSはその働きに働きかける治療です。
- 薬による治療や心理療法で十分な改善が得られにくいときに、次の選択肢として検討されます。
- TMSは診断のための検査ではなく、診断は診察や問診、必要な検査によって行われます。
リスク要因
- てんかんの既往がある、けいれんを起こしたことがある
- 頭の中に金属(クリップ、プレート、人工内耳など)が入っている
- 心臓のペースメーカーや神経刺激装置など、体に機械が入っている
- 妊娠中、または妊娠の可能性がある
- 飲んでいる薬(睡眠薬、抗うつ薬など)がある
- 過去に頭のけがや脳の病気をしたことがある
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 自分を傷つけたい、消えたいという気持ちが強い
- けいれん、意識が遠のく、強い頭痛などの症状が出た
- 治療後に体調が急に悪くなった
定期受診を予約すべき場合:
- 気分の落ち込みや眠れない状態が2週間以上続いている
- 薬を続けているが、よくならないと感じている
- TMS治療について知りたい、受けてみたい
- 治療の副作用や通院の負担が気になる
診断
TMSは「診断」ではなく「治療」です。まず医師が、症状の経過、これまでの治療、持病、飲んでいる薬などを丁寧に聞き取り、TMSが適しているかどうかを判断します。必要に応じて検査を行い、別の病気が隠れていないかも確かめます。治療を始める前には、効果と副作用、ほかの選択肢について説明を受け、納得したうえで決めます。
行われる可能性のある検査
- 問診と症状の評価(気分や睡眠、生活への影響を聞く、質問紙による評価)
- 血液検査(体の状態や、ほかの原因がないかを調べる)
- 頭部の画像検査(MRIやCTなど)
- 脳波検査(けいれんの起こりやすさを確かめる)
- 必要に応じて心電図や持病の確認
診察で予想されること
治療は個室や処置室で、椅子に座ったまま行います。頭にコイルという器具を近づけ、カチカチという音とともに磁気の刺激が入ります。痛みはほとんどありませんが、頭皮に軽い違和感や痛みを感じることはあります。1回およそ20〜40分で、終わったあとは通常どおり帰宅できます。日本ではうつ病に対して、週に数回・数週間続ける形で行われることが多く、効果を確かめながら続けるかどうかを話し合います。
治療
TMSは、うつ病などの治療の選択肢のひとつです。薬による治療や心理療法と組み合わせて行われることも多く、それだけで完結するものではありません。効果には個人差があり、数回受けただけでは変化を感じにくいこともあります。主治医と相談しながら、無理のないペースで続けることが大切です。
自宅でのセルフケア
- 治療の予定は、できるだけ続けられるように調整する(仕事や家事の予定を前もって相談しておく)
- 飲んでいる薬やサプリメントは、自己判断でやめず、必ず医師・薬剤師に伝える
- 睡眠時間をできるだけそろえ、起きる時間を大きくずらさない
- 治療のあとの頭痛や気分の変化をメモしておき、次の診察で伝える
- 飲酒は治療や薬に影響することがあるため、量や頻度について医師に相談する
- つらいときは一人で抱えず、家族や友人、医療者に話す
医療治療
うつ病などの治療には、薬による治療、心理療法(話し合いによる治療)、生活の調整、そしてTMSのような脳への刺激治療など、いくつかの方法があります。どれをどの順番で組み合わせるかは、症状の重さやこれまでの治療歴、持病、生活状況によって変わります。薬の名前や量はここではお伝えできません。自分に合う方法は、主治医と一緒に決めていきましょう。薬を自己判断でやめると症状がぶり返すことがあるため、変更は必ず相談してください。
手術が検討される場合
TMSは手術ではありません。頭を切ったり、麻酔を使ったりすることはありません。ただし、頭の中に金属が入っている方などは安全面から受けられないことがあるため、必ず事前に伝えてください。
この病気と共に生きる
TMSは通院で受ける治療なので、治療期間中は予定の調整が必要になります。週に何回か通うあいだは、仕事や家事を少し減らしたり、家族に協力を頼んだりしてよいでしょう。治療の日は無理をせず、ゆっくり過ごす時間をとることも大切です。効果は少しずつ現れることが多く、日々の小さな変化を記録しておくと、主治医との話し合いにも役立ちます。
生活習慣のアドバイス
- 起床・就寝の時間をできるだけ一定にする
- 朝に光を浴び、日中は軽く体を動かす
- カフェインやアルコールの量を見直す
- 一人で抱え込まず、信頼できる人と話す時間をつくる
- 治療の記録(体調、睡眠、気分)をつける
食事と運動
特別な食事制限は必要ありませんが、主食・たんぱく質・野菜をバランスよくとり、食事を抜かないことが体調の安定につながります。運動は、散歩など軽いもので十分です。無理のない範囲で、できれば毎日少し体を動かすと、睡眠や気分の面でも助けになります。治療の前後に激しい運動をして疲れやすい場合は、主治医に相談してください。
精神的健康と心の健康
うつ病そのものが、気分や考え方に大きな影響を与えます。治療を始めても、気分の波はすぐには消えません。よくなったり悪くなったりをくり返すこともあります。「昨日より少し楽だった」くらいの変化を拾っていくことが大切です。つらい気持ちが強いとき、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、がまんせずに医療者や周りの人に伝えてください。緊急の危険があるときは119番に連絡してください。
予防
うつ病などの発症を完全に防ぐ方法はまだわかっていません。ただし、睡眠を整える、ストレスを一人で抱え込まない、つらいときは早めに相談することが、再発や悪化を防ぐ助けになると言われています。TMSで症状が良くなったあとも、主治医と相談しながら生活のリズムを保つことが大切です。
検診プログラム
治療後も定期的な診察を受け、気分の変化を早めに相談できる関係をつくっておきましょう。
合併症
治療しない場合
- うつ病の症状が長引き、仕事・学業・家事など日常生活への影響が続くことがあります
- 睡眠や食欲が乱れ、体力が落ちやすくなる
- 人とのつながりが少なくなり、孤立感が強まることがある
- 自分を傷つけたい気持ちが強くなることがある(その場合はすぐに助けを求めてください)
長期的な見通し
TMSは、薬で十分な改善が得られにくかった方にとって、新しい選択肢のひとつです。効果の現れ方には個人差がありますが、治療を続けることで少しずつ楽になっていく方も多くいます。よくある副作用は、治療後の軽い頭痛や頭皮の不快感などで、多くは一時的です。めったに起きませんが、けいれんが起こる可能性もあり、医療者はその準備をして行います。心配なことは遠慮なく相談しながら進めていきましょう。
サポートを探す
外部リンクは第三者のウェブサイトを開きます。Ruqelo は外部コンテンツについて責任を負いません。団体名の掲載は推奨を意味するものではありません。
必ず医師に確認してください
健康に関する案内は国や地域によって異なります。このページは一般的な教育情報であり、お住まいの地域の指針、薬、診療と一致しない場合があります。心配な点はご自身の医師または医療提供者に相談し、地域の案内がある場合はそれに従ってください。
重要なお知らせ この情報は教育目的にのみ提供されています。専門的な医療アドバイス、診断、治療に代わるものではありません。ご自身の状況については、常に資格を持つ医療専門家にご相談ください。医療上の緊急事態が発生した場合は、直ちに最寄りの救急医療サービスに連絡してください。
関連する疾患
情報源とガイダンス
このトピックを名指しする指針はありません
このページには、このトピックそのものを名指しする健康ガイドラインや臨床の章は引用されていません。このページは一般的な教育と情報のみを目的としています。診断、治療計画、個人への医学的助言ではありません。ご自身の医師に確認し、その指示に従ってください。症状が重い、突然である、または心配な場合は速やかに受診し、緊急時は地域の緊急番号に電話してください。Ruqelo LLC は、この情報に基づく判断から生じる医学上または法律上の結果について責任を負いません。
最終更新: 2026年11月3日
教育上の注記: この情報は教育目的のみであり、診断ではありません。
免許を持つ医療者のアドバイスを補うために使い、代わりにはしないでください。
症状が重篤、悪化、または緊急の場合は、地域の救急番号に電話するか、緊急医療を受けてください。
Guidance may differ by country or region. Confirm local recommendations with a qualified healthcare provider.