ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)— 前立腺肥大症の手術を知る
概要
ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP:ホーレップ)は、前立腺が大きくなる「前立腺肥大症(良性のふくらみ)」による排尿の困りごとを、手術で改善する方法のひとつです。前立腺は男性だけにある、尿道を取り囲む栗の実くらいの臓器です。大きくなると尿道を内側から押して、尿が出にくくなります。HoLEPでは、尿道から細い内視鏡を入れ、レーザーで前立腺の内側の部分を「核出(かくしゅつ)」=まるごと剥がし取って、膀胱の中に落とし、最後に細かく砕いて体外へ吸い出します。おなかを切る必要がなく、体への負担が比較的小さい手術として行われています。
重要な事実
- 尿道から内視鏡を入れて行う手術で、おなかに傷はつきません。一般的には全身麻酔または下半身の麻酔で行います。
- 大きくなった前立腺でも対応しやすく、出血が少ない傾向があるとされています。手術後に前立腺が再び大きくなって困る可能性は低いとされますが、ゼロではありません。
- 手術後は「射精のときに精液が膀胱側に流れる(逆流性射精)」ことが多く起こります。健康への害はありませんが、妊娠を希望する場合は事前に医師と相談してください。
前立腺肥大症はとてもよくある病気で、50歳以上の男性の多くが何らかの排尿症状を経験します。HoLEPはその中でも広く行われるようになってきた手術のひとつで、特別な治療ではありません。
主に中高年の男性です。年齢とともに前立腺は大きくなりやすく、50代後半から増え始め、70代以上では多くの人に見られます。小児や若い男性が受ける手術ではありません。
症状
- 尿がまったく出ず、下腹部が硬く張って強い痛みがある(尿閉の可能性。緊急性が高い状態です)
- 血の塊が混じる赤い尿が続く、または尿がほとんど出ないほど血が出る
- 高い熱(38℃以上)に加えて、寒気・腰や背中の強い痛み・ぐったりした状態がある(腎盂腎炎など重い感染症の疑い)
- 意識がもうろうとする、呼吸が苦しい、顔色が悪いなど全身状態が急に悪くなった
- ⚠手術後に尿が出にくい、または出ない状態が続く
- ⚠手術後に血尿が続き、徐々に濃くなる
- ⚠手術後に38℃以上の発熱、排尿時の強い痛み、下腹部の痛みがある
- ⚠手術の傷や尿道周囲の腫れ・膿のような分泌物がある
一般的な症状
- 尿の出が弱い、尿の線が細い、途中で途切れる
- 排尿が始まるまで時間がかかる、いきまないと出ない
- 何度もトイレに行きたくなる(頻尿)、とくに夜中に何度も起きる(夜間頻尿)
- 尿が残っている感じがする(残尿感)、すっきりしない
- 急に尿がしたくなって我慢しにくい
- おなかに力を入れても尿が出にくい、最後にぽたぽたと垂れる
子供の症状
- この手術は小児には行いません。お子さんの排尿トラブルは、別の原因(便秘、膀胱の機能の未熟さ、感染など)が多いため、小児科や泌尿器科に相談してください。
高齢者の症状
- 高齢の方では症状が長く続いて膀胱の力が弱くなっていたり、尿閉(尿が出なくなる)を起こしやすかったりします。
- 心臓病や糖尿病などの持病があると、麻酔や手術のリスク評価が必要になります。持病の薬は自己判断で止めず、必ず手術前に医師へ伝えてください。
- 夜間頻尿による睡眠不足や転倒の増加など、生活全体への影響が出やすいのも高齢の方の特徴です。
原因
主な原因
- 前立腺が加齢とともに良性の形で大きくなること(前立腺肥大症)。男性ホルモンの影響が関係すると考えられています。
- 大きくなった前立腺が尿道を内側から圧迫し、尿の通り道が狭くなることで症状が出ます。
- 膀胱の筋肉が肥大や過敏を起こし、頻尿や急な尿意につながることもあります。
リスク要因
- 年齢(50歳以上で増え、70代以上で多い)
- 家族歴(父親や兄弟に前立腺肥大症がある)
- 肥満、特に内臓脂肪の多い体型
- 糖尿病やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病
- 運動不足、アルコールやカフェインのとりすぎ、便秘
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿がまったく出ない、またはほとんど出ない(尿閉)
- 尿に血が混じる、血の塊が出る
- 発熱を伴う排尿時痛や腰の痛み
- HoLEP手術後に、尿が出ない・血尿が強い・発熱がある
定期受診を予約すべき場合:
- 夜中に何度もトイレに起きて眠れない
- 尿の出が弱い、残尿感があるなど、症状が生活の支障になってきた
- 症状が数か月かけて少しずつ悪くなっている
- 薬で様子を見ているが、効果を感じにくくなってきた
診断
まず問診で、排尿の症状や生活への影響をくわしく聞きます。症状の強さを点数で表す質問票(IPSSなど)を使うこともあります。次に尿検査や超音波検査で、前立腺の大きさや尿の残り具合を確認します。前立腺がんとの区別のために血液検査(PSA検査)を行うこともあります。HoLEPを受けるかどうかは、症状の強さ・前立腺の大きさ・持病・生活の希望をふまえて、医師と一緒に決めていきます。
行われる可能性のある検査
- 問診と症状スコア(IPSS):排尿症状の強さと生活の質への影響を確認します
- 尿検査:感染や血尿がないかを調べます
- 血液検査(PSA検査を含む):前立腺がんの可能性を確認します
- 超音波検査:前立腺の大きさと、排尿後に膀胱に残る尿の量(残尿)を測ります
- 尿流量測定:尿の勢いと量を機械で記録します
- 必要に応じて内視鏡検査や尿路の画像検査
診察で予想されること
検査の多くは痛みが少なく、外来で短時間で終わります。超音波検査はおなかの上から当てるだけです。尿流量測定は、専用のトイレで自然に排尿するだけです。検査結果の説明を受け、手術の必要性や他の治療法との比較を話し合う時間をとってもらいましょう。
治療
治療は、症状の強さと生活への影響に応じて段階的に考えます。軽い場合は生活の工夫から始め、必要なら薬による治療、それでも不十分な場合や尿閉などを繰り返す場合に手術を検討します。HoLEPは手術の選択肢のひとつで、前立腺の大きさにかかわらず対応しやすい方法です。
自宅でのセルフケア
- 水分は1日に適量をこまめにとり、夕方以降の大量の水分は控えめにして夜間頻尿を減らす
- アルコールやカフェイン(コーヒー・濃いお茶・エナジードリンク)は膀胱を刺激しやすいので、量とタイミングを工夫する
- 便秘を防ぐ(食物繊維と水分、適度な運動)。便秘は排尿症状を悪化させます
- 排尿を我慢しすぎない。外出前や就寝前にあらかじめトイレに行く習慣をつける
- 排尿日誌をつけて、回数や量、夜間の起床回数を記録すると、受診時の相談がしやすくなります
- 市販の風邪薬や花粉症の薬の中には排尿を出にくくするものがあるため、購入前に薬剤師に相談する
医療治療
薬による治療では、前立腺の緊張をゆるめて尿の通りをよくする薬や、前立腺の大きさを少しずつ小さくする薬などが使われることがあります。症状の改善には数週間から数か月かかることがあり、効果や副作用には個人差があります。どの治療が合うかは医師が判断しますので、薬の名前や量について自己判断で変更せず、気になる副作用があれば医師や薬剤師に相談してください。
手術が検討される場合
薬による治療で症状が十分に改善しない場合、尿がまったく出なくなる状態(尿閉)を繰り返す場合、膀胱に尿がたまり続けて腎臓の働きが心配される場合、尿路感染症や膀胱結石を繰り返す場合、尿に血が混じる状態が続く場合などに、手術が検討されます。HoLEPは前立腺の内側をレーザーで剥がし取る手術で、入院期間は施設によって異なりますが数日程度のことが多く、術後は尿の管(カテーテル)を一時的に入れて経過をみます。
この病気と共に生きる
HoLEPの手術後は、数日間の入院で経過をみることが一般的です。退院後しばらくは尿の勢いが戻る一方で、一時的に尿がもれる、尿が少し赤い、トイレが近いといったことが起こりえます。多くは数週間から数か月かけて落ち着いてきます。術後は重い物を持ち上げる作業や激しい運動、長風呂やサウナ、性行為などを一定期間控えるよう指示されることが多いので、具体的な期間は退院時に医師に確認しましょう。
生活習慣のアドバイス
- 退院後の指示(入浴、運動、仕事復帰、車の運転、性行為の再開時期)を守る
- 水分をこまめにとり、便秘を防ぐ
- 骨盤底筋を意識した軽い運動は、尿もれの改善に役立つことがあります。開始時期は医師に相談する
- 飲酒は術後の一定期間控え、再開は医師の指示に従う
- 手術後も定期的な通院を続け、排尿の状態を確認する
食事と運動
バランスのよい食事と適度な運動は、体重管理を通じて排尿症状の悪化を防ぐ助けになります。塩分や脂肪のとりすぎに気をつけ、野菜・果物・食物繊維をとり、便秘を防ぎましょう。ウォーキングなど無理のない運動を続けることが勧められます。術後すぐの激しい運動や重い物を持つ作業は、指示があるまで控えてください。
精神的健康と心の健康
排尿の悩みは、睡眠不足や外出への不安、人に話しにくい気持ちなど、心の負担につながることがあります。手術への不安や、術後の尿もれ・射精の変化への戸惑いを感じるのも自然なことです。一人で抱え込まず、パートナーや家族、医療者に話してみてください。つらい気持ちが続くときは、医療機関で相談することもできます。
予防
前立腺が加齢で大きくなること自体を完全に防ぐ方法は知られていません。ただし、体重管理、便秘の予防、適度な運動、アルコールやカフェインのとりすぎを避けることなどで、排尿症状が悪化しにくくなる可能性があります。
検診プログラム
排尿の症状(夜間頻尿、尿の勢いの低下、残尿感)があれば、早めに泌尿器科で相談しましょう。自治体によっては前立腺がんの検診(血液検査)が行われており、受診の際に医師に相談できます。
合併症
治療しない場合
- 尿がまったく出なくなる(尿閉)。その場合は救急で尿を抜く処置が必要になります
- 膀胱に尿がたまり続け、膀胱の筋肉が弱くなって排尿機能が低下する
- 膀胱結石や尿路感染症を繰り返す
- 尿が腎臓へ逆流して腎機能が低下する、水腎症(腎臓が水で腫れる状態)になる
- 血尿が続く、夜間頻尿による睡眠不足や転倒の増加など生活の質の低下
長期的な見通し
HoLEPは、前立腺肥大症による排尿の困りごとを改善する手術として広く行われており、多くの方が術後の尿の出や生活の質の改善を実感しています。一方で、一時的な尿もれ、尿路感染、尿道が狭くなる狭窄、逆流性射精などの可能性はあります。多くは時間とともに落ち着いたり、治療で対応できたりします。心配な症状があれば早めに医師に伝えることが、安心につながります。
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最終更新: 2026年11月3日
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