子宮動脈塞栓術(UAE)について
概要
子宮動脈塞栓術(UAE)は、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ=子宮の筋肉にできる、がんではない「こぶ」のようなもの)などの治療に使われる方法です。おなかを大きく切らずに、太ももの付け根の血管から細い管(カテーテル)を入れて、子宮に血液を送っている「子宮動脈」という血管まで進めます。そこに小さな粒を流し込み、筋腫へ行く血液の流れを減らします。栄養が届きにくくなった筋腫は、時間をかけて小さくなっていきます。全身麻酔ではなく、局所麻酔や軽い鎮静で行われることが多い治療です。
重要な事実
- 子宮筋腫は女性ホルモンの影響で大きくなることが多く、成人女性の多くが何らかの筋腫を持っているといわれます。
- UAEは手術でおなかを切らずに行える治療で、入院期間や回復が比較的短いのが特徴です。
- 治療後すぐに効果が出るわけではなく、数か月から1年ほどかけて筋腫が縮小し、症状がやわらぐことが多いとされています。
子宮筋腫はとてもよく見られる病気で、月経のある年齢の女性の多くが持っているといわれます。そのため、UAEを受けられる方も珍しくありません。ただし、症状の強さや筋腫の場所によって、どの治療が合うかは人によって変わります。
症状
- 大量の性器出血が止まらない、または大きな血のかたまりが続く(1時間でナプキンが何度も替わる、など)
- ふらつき、冷や汗、意識がぼんやりする、立っていられない(重度の貧血や出血性ショックの可能性)
- 突然の激しい下腹部痛で、動けないほどつらい
- 高い熱と下腹部の激痛、悪臭のあるおりもの(感染を起こしている可能性)
- ⚠月経の量が多く、日中の眠気やだるさ、階段で息が切れるなど貧血を思わせる症状がある
- ⚠月経が10日以上続く、または月経以外の日に出血がある
- ⚠治療後に38度前後の発熱や痛みが続く、おりもののにおいが気になる
一般的な症状
- 月経の量がとても多い、または月経の期間が長い(血のかたまりが大きいこともあります)
- 強い月経痛や、下腹部の重い痛み
- おなかが張る、下腹部にしこりを感じる
- 頻尿(トイレが近い)、便秘、腰の痛みなど、まわりの臓器が圧迫されることによる症状
- 貧血による疲れやすさ、めまい、動悸(どうき)、息切れ
- 妊娠しにくい、または妊娠を続けにくい(筋腫の場所によって起こります)
子供の症状
- 思春期前のお子さんでは、子宮筋腫はほとんど見られません。このため、UAEが小児に行われることは基本的にありません。
- 10代で月経が非常に重い、痛みが強いなどの場合は、別の原因がないか婦人科で相談してください。
高齢者の症状
- 閉経後は女性ホルモンが減るため、筋腫は自然に小さくなることが多いです。
- 一方で、閉経後に出血がある、おなかが大きくなってきた、痛みが続くといった場合は、早めに婦人科を受診してください。
- 閉経後の方がUAEを選ぶことは少なく、年齢や持病に合わせて治療法を相談します。
原因
主な原因
- 子宮筋腫の主な原因は、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の影響と、遺伝的な体質の組み合わせと考えられています。
- UAEは治療の方法であり、何かの原因で起こるものではありません。
- 筋腫が大きくなることで、月経過多や圧迫による症状が現れます。
リスク要因
- 30〜40代の女性(筋腫が育ちやすい年齢です)
- 家族(母や姉妹)に子宮筋腫がある
- 肥満気味である
- 出産の経験がない、または少ない
- 月経が早く始まった、といったホルモンに関わる背景
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 出血が多く、ふらつきや動悸がある
- 突然の強い下腹部痛
- 発熱と下腹部の痛みが同時にある
- 治療後に症状がどんどん悪くなる
定期受診を予約すべき場合:
- 月経の量が多い、期間が長いと感じる
- 月経痛が年々強くなっている
- 頻尿や便秘、おなかの張りが気になる
- 妊娠を考えていて、筋腫と言われたことがある
- UAEを含む治療の選択肢を知りたい
診断
まず問診で、月経の量や痛み、出血の期間、生活への影響などを聞きます。そのうえで内診や超音波(エコー)検査を行い、筋腫の大きさや数、位置を確認します。貧血の程度は血液検査で調べます。UAEを検討するときは、血管の走行を詳しく見るためにMRIや造影検査が使われることがあります。
行われる可能性のある検査
- 問診(月経の記録があると役立ちます)
- 経腟(けいちつ)超音波検査、またはおなかの上からの超音波検査
- 血液検査(貧血の有無、ホルモンの状態など)
- MRI検査(筋腫の位置や大きさを詳しく見る)
- 造影CT・血管造影(UAEの前に血管の状態を確認する)
- 必要に応じて子宮鏡(しきゅうきょう)検査や組織検査
診察で予想されること
検査は外来で行えるものがほとんどで、痛みも軽いことが多いです。MRIは横になるだけで、放射線は使いません。検査の結果はすぐに出ないこともあるため、説明を受ける日をあらかじめ確認しておくと安心です。検査の前に、妊娠の可能性やアレルギーの有無を必ず伝えてください。
治療
治療は、症状の強さ、筋腫の大きさと場所、年齢、妊娠の希望、貧血の程度などを合わせて選びます。症状が軽ければ定期的に経過を見ることもあります。選択肢には、薬による治療、手術(筋腫だけを取る方法と子宮を取る方法)、UAE、そのほかの新しい治療法があります。それぞれ長所と短所があるため、ひとつに決めつけずに話し合うことが大切です。
自宅でのセルフケア
- 月経の量・期間・痛みを手帳やアプリに記録しておくと、受診のときに役立ちます。
- 鉄分を意識した食事(赤身の肉や魚、ほうれん草、豆類など)と、ビタミンCを含む食品を組み合わせると、鉄の吸収が助けられます。
- 貧血があるときは無理な運動を避け、体調に合わせて軽い散歩などから始めましょう。
- 痛み止めや鉄剤は自己判断で増やさず、医師や薬剤師に相談してください。
- 治療後は、指示された安静の期間を守り、水分をとってゆっくり休みましょう。
医療治療
症状をやわらげるための薬による治療が行われることがあります。痛みや出血を抑える薬、貧血を補う薬、筋腫を小さくする働きを持つホルモンに関わる薬などが一般的ですが、効果や副作用、使える期間は人によって異なります。薬の種類や量は医師が判断しますので、この記事では具体的な薬名はお伝えしません。UAEは、カテーテルという細い管を血管から入れて、筋腫へ向かう血流を減らす治療です。局所麻酔で行われ、治療後は痛みや微熱、だるさが数日続くことがあります。痛みのコントロールは医療スタッフが行います。
手術が検討される場合
症状が強い、貧血が進んでいる、筋腫が大きい、妊娠の希望がある、といった条件によって手術が検討されます。手術には、筋腫だけを取り除く方法と子宮を取る方法があります。UAEは手術に比べて体への負担が少ない一方、妊娠や出産への影響についてはまだ十分にわかっていない点があり、妊娠を希望する場合は医師とよく相談する必要があります。将来の妊娠を考えているかどうかを、早い段階で伝えておきましょう。
この病気と共に生きる
UAEの後は、数日から1週間ほど、下腹部の痛み、微熱、だるさ、おりものの増加などがみられることがあります。多くは時間とともに落ち着きます。仕事や家事への復帰の時期は体調により異なりますが、1〜2週間ほどを目安に無理せず戻す方が多いとされています。月経の量は、治療後数か月かけて少しずつ減っていくことが多いです。
生活習慣のアドバイス
- 治療後しばらくは重い物を持ち上げる、長時間立つなどの負担を避けましょう。
- 月経の記録を続けて、変化を主治医に伝えましょう。
- 睡眠と休息を十分にとり、体調の回復を優先してください。
- 喫煙は血管や回復に良くない影響があるため、禁煙を考えましょう。
- 気になる症状があれば、遠慮せず医療機関に連絡しましょう。
食事と運動
出血が多い時期は鉄分が失われやすいので、赤身の肉や魚、卵、豆類、緑黄色野菜などをバランスよくとりましょう。カフェインの多い飲み物は鉄の吸収を妨げることがあるため、食事の直前直後を避けるとよいといわれます。運動は、体調が戻ってきたら散歩やストレッチなど軽いものから始め、貧血があるときは無理をしないことが大切です。
精神的健康と心の健康
月経過多や痛み、貧血は、仕事や家事、人間関係にまで影響し、気分の落ち込みや不安につながることがあります。治療を選ぶときに迷うのも自然なことです。つらい気持ちが続くときは、ひとりで抱え込まず、医療者や信頼できる人に話してください。気持ちの面でもサポートを受けられます。つらい気持ちが強いときや、自分を傷つけたい気持ちがわいたときは、地域の相談窓口や医療機関にすぐ相談してください。
予防
子宮筋腫を確実に防ぐ方法は、今のところわかっていません。UAEは治療の方法なので、「予防」という考え方は当てはまりません。ただし、バランスのよい食事、適正体重を保つこと、禁煙、定期的な婦人科受診は、体全体の健康にとって役立ちます。
検診プログラム
症状がなくても、年に一度は婦人科で相談する機会を持つと安心です。自治体のがん検診(子宮頸がん検診など)は筋腫を見つけるためのものではありませんが、受診のきっかけになります。月経の異常や下腹部の張りが続く場合は、検診を待たずに受診してください。
合併症
治療しない場合
- 出血が続くことで貧血が進み、疲れやすさや息切れが強くなることがあります。
- 筋腫が大きくなると、頻尿や便秘、腰の痛みなど圧迫による症状が強まることがあります。
- 妊娠を希望する場合、筋腫の場所によって妊娠しにくくなることがあります。
- まれですが、筋腫が急に変性したり、感染したり、根元がねじれたりして強い痛みが出ることがあります。
- UAEの後には、発熱、痛み、感染、月経の変化、卵巣の働きが一時的に低下することなどが起こる可能性があります。まれに追加の処置や手術が必要になることもあります。
長期的な見通し
多くの方で、UAEの後に月経過多や痛み、圧迫による症状がやわらぎ、日常生活が楽になったと感じられます。筋腫は数か月から1年ほどかけて縮小していくことが多いです。再び症状が出てくることもありますが、その場合も別の治療を選ぶことは可能です。症状や希望は人それぞれです。あなたに合った方法を、医療者と一緒にゆっくり考えていきましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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