血糖値のモニタリング(自己測定)
概要
血糖値のモニタリングとは、血液中のブドウ糖(血糖)の量を、自宅で定期的に測って記録することです。指先に小さな針を刺し、出てきた少量の血液を測定器にのせる方法と、腕などに付けた小さなセンサーで皮下の糖の値を続けて読む方法(CGM=持続血糖測定)があります。測った値は、食事・運動・薬・体調が血糖にどう影響しているかを知るための「目印」になります。
重要な事実
- 血糖値は、食事や運動、睡眠、ストレス、体調によって一日のうちに大きく変わります。
- 測る目的は「よい数字を出すこと」ではなく、自分の体の傾向を知り、日々の選択や治療の調整に役立てることです。
- 測った値は記録して、診察のときに医師・看護師・薬剤師に見せると、治療計画の話し合いがしやすくなります。
とてもよく行われています。糖尿病の治療を受けている人の多くが、自宅で血糖を測っています。最近は、糖尿病の一歩手前(境界型)と言われた人や、妊娠中に血糖が上がりやすい人も測定することがあります。
主な対象は、1型糖尿病・2型糖尿病のある人、妊娠糖尿病と診断された人、血糖を下げる薬(インスリン注射を含む)を使っている人です。また、健康診断で血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー:過去1〜2か月の血糖の平均をみる検査)が高めと言われた人、低血糖の症状が出やすい人も対象になることがあります。
症状
- 意識がもうろうとしている、呼びかけても反応が弱い
- けいれん(ひきつけ)が起きた
- 呼吸が深く速い、息が苦しい
- 倒れて動けない、立てない
- 自分で水分や糖分をとることができない
- ⚠血糖値がとても高い状態、またはとても低い状態が繰り返し続く
- ⚠嘔吐が続いて水分がとれない
- ⚠強いのどの渇きと尿の増加が数日続く
- ⚠発熱や下痢などの体調不良で、血糖値がいつもと大きく違う
- ⚠低血糖の症状が、自分で対処しても改善しない
一般的な症状
- のどが渇く、水をよく飲むようになる
- トイレ(尿)の回数が増える、夜中に起きてトイレに行く
- だるい、疲れやすい、集中しにくい
- 血糖が低いとき:手のふるえ、冷や汗、強い空腹感、動悸、めまい、イライラ
- 食後にとても眠くなる、頭がぼんやりする
- 傷が治りにくい、皮膚のかゆみがある
子供の症状
- 自分では症状をうまく言葉にできないことがあります
- 機嫌が悪い、元気がない、ぼんやりしている
- のどが渇いて水をがぶがぶ飲む、おしっこの回数が増える
- 夜尿(おねしょ)がまた始まる
- 体重が増えない、食欲が変わった
高齢者の症状
- 症状がはっきり出にくく、気づかないうちに血糖が大きく上下することがあります
- 物忘れや混乱、ふらつき、転びやすさとして現れることがあります
- 脱水(のどの渇きや尿の減少)に気づきにくいことがあります
- 低血糖のサイン(冷や汗・ふるえ)が出にくいことがあります
原因
主な原因
- 糖尿病の治療の一環として、血糖の変化を知るため
- 血糖を下げる薬(インスリン注射を含む)を使っていて、低血糖の確認が必要なため
- 食事・運動・生活リズムが血糖に与える影響を、自分で把握するため
- 妊娠中に血糖が上がりやすい状態(妊娠糖尿病)を管理するため
- 体調不良・手術・旅行など、いつもと違う状況で血糖が乱れやすいため
リスク要因
- 食事の量や時間が不規則、炭水化物に偏った食事
- 運動不足、または急に激しい運動をすること
- 睡眠不足、強いストレス
- 発熱・感染症・下痢・嘔吐などの体調不良
- 薬の量と、食事・運動のバランスが合わない
- 年齢や持病により、低血糖のサインに気づきにくい
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 血糖値が目標の範囲から大きく外れた状態が続く
- 低血糖の症状が繰り返し起きる、または夜間に起きる
- 発熱や嘔吐で食事がとれず、血糖の調整が難しい
- 測定器の値と体調が合わない、測定器の故障や不具合が疑われる
定期受診を予約すべき場合:
- 測定のやり方や目標の範囲について確認したいとき
- 記録を見て治療計画を見直したいとき
- 測定の回数が多くて負担に感じるとき
- 妊娠を考えている、または妊娠中
- 健康診断で血糖値・HbA1cが高めと言われた
診断
血糖モニタリングは「病名をつけるための検査」というより、治療や生活を調整するための道具です。始めるときは、医師・看護師・薬剤師から、測定器の使い方、測るタイミング、目標とする値の範囲、低血糖のときの対応を教わります。あわせて医療機関では、採血で血糖値やHbA1cを確認します。
行われる可能性のある検査
- 指先穿刺による自己血糖測定(SMBG)
- 持続血糖測定(CGM):腕などに付けたセンサーで皮下の糖の値を継続的に記録
- 採血による血糖値とHbA1cの検査
- 尿検査(ケトン体など)
- 測定器と試験紙の精度の確認(コントロール液や販売店への問い合わせ)
診察で予想されること
最初は針を刺すことに抵抗があるかもしれませんが、多くの人は数回で慣れます。測る回数やタイミング(食前・食後・寝る前など)は人によって違います。指導された通りに測れない日は、なぜ難しかったかを伝えれば、やり方や回数を一緒に見直せます。
治療
血糖モニタリングは、それ自体が治療ではなく「情報を集める行為」です。集めた記録をもとに、食事の内容や量、運動のタイミング、薬の調整、受診の間隔などを、医療者と一緒に決めていきます。
自宅でのセルフケア
- 測定前に石けんと水で手をよく洗い、しっかり乾かす(果物の汁や食べかすが付いていると値がずれることがあります)
- 針を刺す場所を毎回少しずつ変えて、指先をいたわる
- 測定器は清潔に保ち、試験紙やセンサーの保管方法と使用期限を守る
- 測った値だけでなく、食事・運動・体調・低血糖の症状も短くメモする
- 記録は紙でもアプリでもよいので、診察に持って行ける形にまとめる
- 低血糖に備えて、糖分(ブドウ糖のタブレットやジュースなど)を持ち歩く
- 測定器の表示がおかしいときは、自己判断せず販売店や医療機関に相談する
医療治療
記録をもとに、医療者が治療の内容や生活の組み立てを見直します。薬を使っている場合は、量や種類、飲み方・打ち方の調整が検討されることがあります。具体的な薬や量は、その人の状態に合わせて医師が決めることなので、この記事ではお伝えできません。測定の頻度や目標の範囲も、年齢・持病・生活スタイルに合わせて個別に決められます。
この病気と共に生きる
測定は「毎日の宿題」のように感じられることがあります。決まった時間にこだわりすぎず、生活に組み込める形を見つけるのがコツです。たとえば歯磨きの後、朝のコーヒーの前など、すでにある習慣にくっつけると続きやすくなります。
生活習慣のアドバイス
- 食事の時間と量をできるだけ整える
- 無理のない範囲で体を動かす(食後の軽い散歩など)
- 睡眠を十分にとる
- 飲酒は量とタイミングに気をつけ、医療者に相談する
- 体調不良のときの測定回数など、あらかじめ決めておく
- 記録が途切れても、また始めればよいと割り切る
食事と運動
食事は、炭水化物を抜くことではなく、量と組み合わせを整えることが大切です。野菜やたんぱく質を先に、主食を後から食べると、血糖の上がり方がゆるやかになることがあります。運動は、食後の軽い散歩のように続けやすいものがおすすめです。ただし薬を使っている人は、運動によって低血糖になることがあるため、運動の前後の測定や補食について、あらかじめ医療者に相談しておきましょう。
精神的健康と心の健康
数字を毎日見ていると一喜一憂してしまい、自分を責めてしまうことがあります。血糖値は体調や食事、睡眠、ストレスでも変わるもので、気持ちが揺れるのは自然な反応です。「数字は自分への成績ではない」と捉え、つらいときは医療者に話してください。気分の落ち込みや不安が続くときは、一人で抱え込まず、かかりつけ医や地域の相談窓口に相談を。緊急の場合は119番へ連絡してください。
予防
血糖モニタリング自体は「予防するもの」ではありませんが、測って記録することで、血糖の大きな乱れや低血糖を早く見つけ、合併症を防ぐことにつながります。また、健康診断で血糖値が高めと言われた段階で生活を見直すと、糖尿病への進行を遅らせられることがあります。
ワクチン
糖尿病などの持病がある人は、感染症にかかると血糖が乱れやすくなります。インフルエンザなどのワクチンについては、かかりつけ医に相談してください。
検診プログラム
健康診断や特定健診の血糖値・HbA1c検査が、血糖の異常に気づく最初の機会になります。自治体の健診案内を確認し、結果が高めだった場合は早めに医療機関へ相談しましょう。
合併症
治療しない場合
- 高い血糖が続くことで、のどの渇きやだるさが続き、体重が減る
- 低血糖に気づかず、意識がもうろうとするなどの重い状態になる
- 長い目で見ると、目(網膜症)、腎臓(腎症)、神経(足のしびれや感覚の低下)への合併症のリスクが高まる
- 心臓や血管の病気のリスクが高まる
- 感染症にかかったときや手術の前後で、血糖の管理が難しくなる
長期的な見通し
血糖モニタリングは、自分の体のことを知るための頼れる道具です。記録を続けることで体調の変化に早く気づけ、治療や生活の調整もしやすくなります。うまく続かない時期があっても大丈夫。医療者と一緒に、自分に合ったやり方を見つけていくことが、長く付き合っていく一番の近道です。
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最終更新: 2026年11月3日
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