積極的監視(アクティブ・サーベイランス)
概要
積極的監視(せっきょくてきかんし)とは、アクティブ・サーベイランスとも呼ばれ、病気が見つかったときに「すぐに治療を始める」のではなく、「定期的な検査でようすをしっかり見守る」という管理の方法です。たとえば、進行がとてもゆっくりで、すぐに体に害を及ぼす心配が少ないタイプの早期前立腺(ぜんりつせん)がんなどで選ばれます。治療をしないで放っておくこととは違います。検査を続けて変化がないかを見張り、もし変化の兆しが出たら、その時点で治療に切り替える、という考え方です。治療による体への負担や副作用を、必要になるまで先に延ばせるという利点があります。
重要な事実
- 「治療しない」のではなく、「今は治療せず、検査でしっかり見守る」という治療方針のひとつです。
- 決まった間隔での血液検査や画像検査など、継続的な通院が必要になります。
- 検査で変化が見られたときには、いつでも本格的な治療に切り替えられます。
はい。特におうぎ形の早期前立腺がんで広く行われるようになっています。日本でも、健康診断や検診で早い段階のがんが見つかることが増え、積極的監視を選ぶ方は年々増えています。甲状腺(こうじょうせん)のがんや、腎臓(じんぞう)の小さな腫瘍(しゅよう)、一部の血液のがんなどでも検討されることがあります。
主な対象は、進行がゆっくりなタイプの早期前立腺がんと診断された方で、中高年の男性が多くなります。ほかに、甲状腺の小さながん、腎臓の小さな腫瘍、低悪性度(ていあくせいど:おとなしい性質)のリンパ腫などと診断された方にも検討されます。年齢や他の病気の状況、本人の希望をふまえて、主治医と一緒に決めていきます。
症状
- 突然の激しい痛みで動けない
- 高熱と寒気・震えが同時にあり、ぐったりしている
- 意識がぼんやりする、会話がかみ合わない
- 呼吸が苦しい、息ができない感じがする
- 大量の血が出ている、止まらない
- ⚠尿がまったく出ない(尿閉:にょうへい)
- ⚠血尿が続く、または血のかたまりが出る
- ⚠38度以上の発熱がある
- ⚠腰や背中、骨の強い痛みが続く
- ⚠通院が長く途切れてしまい、不安が強い
一般的な症状
- 積極的監視そのものによる症状はありません。多くは健康診断や検診がきっかけで見つかります。
- 前立腺が関係する場合、夜間に何度もトイレに起きる、尿の出が弱い、尿が切れにくい、残った感じがするなどの排尿の変化が出ることがあります(前立腺肥大でも同じような症状が出ます)。
- 自覚症状がまったくなくても、検査の数値の変化だけで治療に移ることがあります。
- だるさや痛みなど、体調の変化に気づいたら、次の通院を待たずに連絡しましょう。
子供の症状
- 小児で積極的監視が行われることはほとんどありません。
- 小児では、病気の種類によって「しばらくようすを見る」対応がとられることはありますが、呼び方も進め方も異なります。
- お子さんの症状については、必ず小児科の医師に相談してください。
高齢者の症状
- 高齢になるほど、他の病気や体力、生活の状況を考え合わせて選ばれやすくなります。
- 寿命に影響しにくいと判断される場合には、治療による負担を避ける選択肢として検討されます。
- 加齢による排尿の変化と区別しにくいことがあるため、症状の記録が役立ちます。
- 一人暮らしの方は、通院の負担や不安についても早めに相談しましょう。
原因
主な原因
- 積極的監視は病気そのものではなく、あくまで「管理のしかた」です。ですから「原因」というより、「どんな病気で選ばれるか」という形で説明されます。
- 早期で進行がゆっくりな前立腺がん(低リスクと判断されたもの)
- 甲状腺の小さながん
- 腎臓に見つかった小さな腫瘍
- 低悪性度のリンパ腫など、おとなしい性質の血液のがん
- いずれも、すぐに治療を始めなくても、見守ることで不利益が少ないと判断された場合に選ばれます。
リスク要因
- 監視中に病気が進む可能性を高める要因として、次のようなものが知られています。
- 検査の数値(前立腺がんであればPSA)が短い期間に大きく上がる
- 腫瘍の悪性度(グレード)が高いと判断されている
- 腫瘍の大きさが大きい、または複数の場所にある
- 家族に同じ種類のがんになった人がいる
- 診断を受けたときの年齢が比較的若い
- 通院の間隔があいてしまい、検査が続けられない
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 尿がまったく出ない、おなかが張って苦しい
- 血尿が続く、または血のかたまりが出る
- 38度以上の発熱がある
- 突然の激しい痛みがある
- 転倒して骨を痛めた、痛みが強くなっている
定期受診を予約すべき場合:
- 決められた通院の予定が近づいている(予定どおり受診しましょう)
- 検査の数値や結果について説明がよくわからなかった
- 新しい症状に気づいた、前と違う感じがする
- 治療に切り替えるべきかどうか迷っている
- 不安や心配が強く、日常生活に支障が出ている
診断
積極的監視は、検査の結果から「今すぐ治療しなくてもよいタイプかどうか」を主治医が判断し、あなたと相談して決めていきます。判断のもとになるのは、血液検査の数値、画像検査、組織を調べる検査(生検:せいけん)の結果などです。これらを組み合わせてリスクの低いグループに当てはまる場合に、選択肢として提示されます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(前立腺がんであればPSAと呼ばれる数値など)
- 画像検査(超音波検査、MRI検査、CT検査など)
- 組織を採って調べる検査(針生検)。腫瘍の性質やグレードを確認します
- 尿検査や触診(直腸診)など
- 監視中は、主治医が決めた間隔で血液検査や画像検査を続けます。必要に応じて組織の検査をやり直すこともあります
診察で予想されること
検査の結果をもとに、なぜ積極的監視が適しているのか(または適していないのか)を説明してもらえます。検査の間隔、どんな変化があったら治療に切り替えるのか、をあらかじめ確認しておくと安心です。納得がいかない場合は、別の医師の意見を聞く(セカンドオピニオン)こともできます。遠慮はいりません。
治療
積極的監視では、治療を「しない」のではなく、治療を「今は始めない」という方針をとります。定期的な検査で状態を確認し、変化の兆しが出たとき、あるいはあなたが希望したときに、本格的な治療へ切り替えます。監視そのものが体に負担をかけることはほとんどありませんが、通院を続けることが何より大切です。
自宅でのセルフケア
- 決められた通院の予定を守る。予定を変えるときは必ず医療機関に連絡する
- 検査の結果を手元に記録しておき、数値の変化を自分でも把握する
- 気づいた症状は日付とともにメモしておき、受診時に伝える
- 禁煙を心がける。吸烟は回復力や体力に影響します
- 適度な運動と、バランスのよい食事を続ける
- 睡眠と休息を十分にとる
- 信頼できる人に状況を話し、一人で抱え込まない
医療治療
監視中は、定期的な血液検査や画像検査が中心になります。必要に応じて組織を採り直して、性質に変化がないかを確かめます。検査で進行の兆しが見られた場合は、手術や放射線治療、場合によっては薬による治療などが検討されます。どの方法がよいかは、病気の性質、年齢、体力、他の病気、そしてあなたの希望を合わせて主治医と相談して決めます。具体的な薬の名前や量については、主治医や薬剤師に確認してください。
手術が検討される場合
監視の途中で、検査の数値が上がり続ける、腫瘍の性質が悪くなった、画像で大きくなった、といった変化が見られたときには、手術や放射線治療などの本格的な治療に切り替えることがあります。また、変化がなくても、あなた自身が「早めに治療を始めたい」と希望した場合は、その気持ちを尊重して治療方針を選べます。切り替えるタイミングは、主治医とよく相談して決めましょう。
この病気と共に生きる
日常生活の制限はほとんどありません。普段どおり仕事や家事、趣味を続けられます。ただし、通院の予定を生活の中心に置いて、カレンダーに印をつけておくと安心です。体調の変化に気づいたらメモを残し、次の受診のときに忘れず伝えましょう。
生活習慣のアドバイス
- 通院しやすい曜日や時間帯をあらかじめ決めておく
- 検査結果を一冊のノートやアプリにまとめておく
- 家族や友人に「見守る治療をしている」と伝えておく
- 喫煙をしている場合は、禁煙を検討する
- お酒はほどほどにする
- ストレスをためず、自分なりの息抜きの時間をつくる
食事と運動
特別な食事制限が必要になることは多くありません。野菜や果物、魚、大豆製品などを取り入れたバランスのよい食事を心がけ、塩分や脂肪の取りすぎに気をつけましょう。運動は、ウォーキングなど無理のないものを定期的に行うのがおすすめです。体力を保つことは、もし将来治療が必要になったときにも役立ちます。持病がある方は、主治医に相談したうえで始めてください。
精神的健康と心の健康
「治療をしていない」という状態に、不安や罪悪感を感じる方は少なくありません。検査のたびにドキドキする、という声もよく聞かれます。そうした気持ちは自然なものです。不安が強いときや、眠れない日が続くとき、気分が落ち込んで生活に支障が出るときは、一人で抱えずに主治医や看護師、相談窓口に話してください。つらい気持ちが続く場合の相談先は、お住まいの自治体の相談窓口や医療機関で確認できます。命に関わるほど追い詰められている、と感じたら、ためらわず救急(119)に連絡するか、地域の救急医療機関を受診してください。
予防
積極的監視は「予防」の方法ではなく、あくまで病気の管理のしかたです。ただ、監視中に進行するリスクを下げるために、禁煙、節酒、バランスのよい食事、適度な運動、十分な睡眠といった生活習慣を整えることが役立つと考えられています。また、決められた検査を欠かさず受けることが、いちばんの「備え」になります。
検診プログラム
早期に見つけるための検診は、地域や自治体によって内容が異なります。前立腺がんであれば、健康診断の血液検査(PSA検査)が手がかりになることがあります。受けるべきか迷う場合は、年齢や家族歴をふまえて主治医に相談してください。厚生労働省や自治体の案内も参考になります。
合併症
治療しない場合
- 監視を続けるうちに病気が進み、治療の選択肢が狭くなる可能性があります。
- 通院が途切れてしまうと、変化に気づくのが遅れることがあります。
- 症状が出てから見つかった場合、治療がより大がかりになることがあります。
- 検査のたびに不安が続き、心の負担になることがあります。
長期的な見通し
積極的監視を選んだ方の多くは、長い期間そのまま落ち着いて過ごせています。もし途中で変化が見つかっても、その時点で適切な治療に切り替えられるように検査を続けているので、慌てる必要はありません。定期的な通院を続け、気になることは早めに相談することが、安心につながります。
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最終更新: 2026年11月3日
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