食欲増進薬(食欲を高める薬)について
概要
食欲増進薬は、病気や治療、加齢などで食欲がわかないときに、食べる量を増やしやすくするために医師が処方する薬です。食欲そのものを無理に出す薬ではなく、栄養不足や体重減少を防ぐための支えの一つです。まず大切なのは、食欲がわかない原因を調べることです。気になる症状があるときは、自己判断せず医療機関に相談してください。
重要な事実
- 食欲増進薬は、医師が必要と判断した場合にだけ処方される薬です。
- 食欲がわかない原因は、体の病気、心の不調、薬の副作用、歯や飲み込みの問題などさまざまです。
- 薬だけでなく、栄養サポート、食事の工夫、原因の治療を組み合わせることが大切です。
食欲がわかないことはとてもよくあります。一方、食欲増進薬が処方されるのは、食事がとれず栄養や体重が心配されるときなどに限られます。
高齢者、慢性の病気を持つ人、がん治療中の人、手術や入院の後、うつや不安が強い人、認知症の人、飲み込みにくい人などに多くみられます。子どもでは、成長や脱水が心配されるときに検討されます。
症状
- 意識がもうろうとしている、ぐったりして反応が弱い(すぐに119番へ連絡してください)
- 飲み物をまったく受けつけず、ぐったりしている
- 尿がほとんど出ない、口や皮膚がひどく乾いている
- 息苦しい、胸が痛い、脈がとても速い
- 激しい腹痛、吐血、黒い便がある
- ⚠24時間以上、ほとんど食べられず水分もとれない
- ⚠繰り返す嘔吐や下痢で、水分がとれない
- ⚠高い熱と食欲不振が続く
- ⚠1か月で体重が急に減った気がする
- ⚠飲み込みにくくなり、むせることが増えた
- ⚠新しい強い痛みや、腹部の張りがある
一般的な症状
- 食事を始めてもすぐにお腹がいっぱいになる
- 食べ物がおいしく感じない、においで食べたくなくなる
- 体重が減る、服がゆるくなる
- 疲れやすい、力が出ない
- 集中しにくい、気分が落ち込む
- 水分をとるのも少なくなる
子供の症状
- 体重が増えない、成長曲線から外れる
- 元気がなくなる、遊ばなくなる
- 食事を拒む、吐く
- おしっこが少ない、口が乾く
- 不機嫌になる、眠りが浅い
高齢者の症状
- 体重が減る、筋肉が落ちる
- 脱水になりやすい、口や皮膚が乾く
- ふらつく、転びやすくなる
- ぼんやりする、混乱する
- 傷や床ずれが治りにくい
- 食事の準備や買い物がおっくうになる
原因
主な原因
- かぜや肺炎などの感染症
- 胃腸の病気、肝臓・胆のう・すい臓の病気
- がん、慢性の心臓・肺・腎臓の病気
- ホルモンの異常、糖尿病のコントロール不良
- うつ、不安、強いストレス、認知症
- 薬の副作用(複数の薬を飲んでいる場合を含む)
- 歯や口の中の痛み、入れ歯が合わない、飲み込みにくさ
- 嗅覚・味覚の変化、便秘、痛み、だるさ
- 手術後や入院中、治療の影響
- ひとり暮らし、経済的な不安、孤立など生活面の要因
リスク要因
- 高齢である
- 慢性の病気がある
- 複数の薬を飲んでいる
- 最近入院や手術をした
- がん治療を受けている
- うつや不安、認知症がある
- 歯や飲み込みに問題がある
- ひとり暮らし、孤立、経済的な困難がある
- 喫煙や飲酒が多い
受診の目安
緊急で受診すべき場合:
- 24時間以上、ほとんど食べられず水分もとれない
- 繰り返す嘔吐や下痢で、水分がとれない
- 高い熱と食欲不振が続く
- 1か月で体重が急に減った気がする
- 飲み込みにくくなり、むせることが増えた
- 新しい強い痛みや、腹部の張りがある
定期受診を予約すべき場合:
- 食欲が2週間以上戻らない
- 意図しない体重減少がある
- 食事の量が目に見えて減った
- 食べると痛みや吐き気がある
- 気分の落ち込みや不安が続く
- 薬を飲み始めてから食欲が落ちた気がする
診断
医師はまず、いつから、どれくらい食べられないか、体重の変化、飲んでいる薬、歯や飲み込み、気分、生活状況などを聞きます。そのうえで体を診察し、必要に応じて検査や栄養の評価を行います。食欲増進薬は、原因を調べたうえで、本当に必要かどうかを考えて処方されます。
行われる可能性のある検査
- 血液検査(貧血、感染、栄養、ホルモン、肝臓・腎臓の働きなど)
- 尿検査、便検査
- 胸部X線、腹部超音波、必要に応じて内視鏡(カメラで胃や腸の中を見る検査)など
- 体重と食事量の記録
- 飲み込みの評価(むせがある場合)
- 歯や口の中の診察
- 気分やこころの状態の確認
診察で予想されること
一度の診察ですべての原因がわかるとは限りません。検査を進めながら、食事や体重の変化をみていきます。診察では、食べられるもの、食べにくいもの、生活の困りごとも伝えると役立ちます。
治療
治療の中心は、食欲がわかない原因への対応です。たとえば、感染症の治療、痛みや吐き気の緩和、薬の見直し、歯の治療、気分の不調への支援などを行います。そのうえで、栄養のサポートや食事の工夫を組み合わせます。食欲増進薬は、こうした対応を行っても食べる量が足りない場合に、医師が利益と副作用を考えて処方することがあります。
自宅でのセルフケア
- 一度にたくさん食べようとせず、小さく分けて頻回に食べる
- 少量でもエネルギーとたんぱく質が多い食品を選ぶ
- 水分をこまめにとる。スープやゼリーも活用する
- 食べられる時間帯や好きな食べ物を記録する
- 食事の前に口の中を清潔にする
- ひとりで食べず、家族や友人と一緒に食べる
- 無理のない範囲で軽く体を動かす
- 体重を定期的に測る
医療治療
医師はまず原因の治療や、飲んでいる薬の見直しを行います。必要に応じて、栄養補助食品、吐き気や痛み・便秘への対応、気分の不調への支援、飲み込みのリハビリなどを組み合わせます。食欲増進薬は、医師が適切と判断した場合に限り処方され、効果と副作用をみながら使われます。薬を使う場合も、むくみ、眠気、おなかの不調など、気になる変化があれば医師や薬剤師に伝えてください。薬の名前や量は、医師や薬剤師の指示に従ってください。
手術が検討される場合
食欲不振そのもののために手術をすることはありません。手術が必要になるのは、腸の詰まりなど、手術で治せる原因が見つかった場合です。
この病気と共に生きる
食べることを責めず、今日は少しでも口にできたことを大切にしましょう。体重や食事の記録をつけると、変化に気づきやすくなります。食事の準備が大変なときは、宅配や周りの人の助けを借りてもよいです。
生活習慣のアドバイス
- 食事の時間をできるだけ決めて、無理のないリズムをつくる
- 食べる前に少し休み、疲れているときは小休止する
- 口の中を清潔に保つ
- たばこや過ぎた飲酒を控える
- 睡眠を十分にとる
- 人と話す時間をつくる
食事と運動
食事は、少量でもエネルギーとたんぱく質をとれるものを中心にしましょう。軟らかいもの、冷たいもの、香りのよいものが食べやすいことがあります。管理栄養士に相談すると、その人に合った工夫を教えてもらえます。体調に合わせた散歩や軽い筋力運動は、食欲や気分の助けになることがあります。
精神的健康と心の健康
食べられないことが続くと、不安、焦り、落ち込み、孤立感が強くなることがあります。これは弱さではなく、誰にでも起こりうることです。つらい気持ちが続くときは、医師や看護師、相談窓口に話してください。自分を傷つけたい気持ちがわいたり、緊急の危険があるときは、すぐに119番へ連絡するか、地域の緊急窓口を利用してください。
予防
すべてを防ぐことはできませんが、原因に早く気づき、体と心の健康を保つことは助けになります。定期的に体重を測り、食事量の変化に気づいたら早めに相談しましょう。飲んでいる薬が多いときは、薬剤師に相談するのも一案です。
ワクチン
食欲増進薬そのものにワクチンはありません。感染症を防ぐためのワクチンは、年齢や病気に応じて医師と相談してください。
検診プログラム
健康診断やがん検診、定期的な体重・栄養状態の確認が、原因の早期発見に役立つことがあります。厚生労働省や自治体の案内も参考にしてください。
合併症
治療しない場合
- 栄養不足、体重減少、筋肉量の低下
- 脱水、だるさ、ふらつき、転倒
- 感染症にかかりやすくなる、治りが遅くなる
- 入院が長引く、生活の質が下がる
- 気分の落ち込みや孤立が強くなる
長期的な見通し
食欲不振は、原因がわかって対応できると改善することが多くあります。食欲増進薬が助けになる場合もありますが、薬だけでなく、原因の治療と栄養のサポートを一緒に進めることが大切です。あせらず、医療者と相談しながら一歩ずつ進めましょう。
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最終更新: 2026年11月3日
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